ケイケイの映画日記
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2012年12月11日(火) 「恋のロンドン狂騒曲」




アレン作では一番のヒットとなった「ミッドナイト・イン・パリ」の大好評を受けて、それより前に作られた今作の公開だったとか。いや面白かった。華やかでファンタジックだった「ミッドナイト〜」は、それなりに面白かったです。でも取り立てて愛せる作品じゃなかったですが、こちらは現実感に満ちた、背伸びすれば手に届く夢と、現実的な皮肉がいっぱいで、何だか身につまされるのです。私は断然こちらが好きです。監督・脚本ウディ・アレン。

40年連れ添ったアルフィ(アンソニー・ホプキンス)とヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)夫妻。突如アンチエイジングに目覚めたアルフィは、自然に老いて行くつもりだった妻と離婚を宣言。悲嘆にくれるヘレナは怪しい占い師を崇拝しだします。二人の間の一人娘サリー(ナオミ・ワッツ)は、一発屋の小説家の夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)との生活は困窮状態で、母ヘレナに経済的に援助してもらっている始末。生活のため画廊に働き始めたサリーは、ダンディでお金持ちの雇い主クレッグ(アントニオ・バンデラス)に惹かれ始め、ロイはお迎えの妙齢の美女ディア(フリーダ・ピント)を陥落させんと虎視眈々。そんな時、アルフィは結婚したいと、元コールガールの娘ほど若い女性シャーメイン(ルーシー・パンチ)を、サリーに引き合わせたいと言い出します。

まず偉いのは、これだけの人数が絡み合っているのに、どれも内容が整理されて、人物の心の内が手に取るように解って、混乱がないです。各々三角関係が生じるわけですが、下手に四角関係にしないのが良かった。脚本も然ることながら、演技巧者を集めたのが勝因かな?ナオミがバンちゃんを見つめる目など、吐息まで聞こえてきそうだし、色呆けホプキンスが、傷だらけの顔で台詞を語る様子で、正気に戻ったんだとわかるのです。

男女関係には、「ときめき・性欲・親睦」のうち、二つが必要なんだと、聞いた事があります。確かに上記「恋の始まり組」には、それぞれ二つが揃っておる。なるほどなぁ。しかし前半は登場人物たちに夢を見させておいて、後半はバッタバッタと現実で切って行きます。それなりの年齢の人なら、ほら見たことか・・・と言う顛末ばかりですが、これが滑稽でありながら、哀愁も感じます。後から考えてみると、今一歩で手に届くはずの夢は、結局は他力本願ばかりでした。身の丈を知り、足るを知るのは実に難しい。知りすぎて向上心が失くなっても困るしなぁ。ほんと、見につまされます・・・。

私はアンチエイジングと言う言葉が嫌いです。どうして歳を取るのがダメなの?いつも若々しいのはいいけれど、それも年齢相応があるのにと、いつも思います。しかし見え隠れするアルフィとヘレナの「亡くした男の子」の影が、もしや彼のアンチエイジングへの妄執だとすると、これまた切ない。こればっかりはヘレナでは無理ですから。

だからって、老妻を捨てるとはもっての他だ!怒っていたら、どっこい年季の入った女は強し。「クリスタル(占い師)が・・・」が口癖で、妙ちきりんな「オーラの世界」の話ばかりでしたが、、あれは上手に事を運ぼうとしたヘレナの知恵かも?だったら凄いなぁ。私が当代一の女優だと思っている才色のナオミですが、役柄に合わせてか、今回はちっとも綺麗じゃない。しかしラスト、ロイが遠目に眺める黒のランジェリー姿の彼女は、とってもセクシーに撮れていました。あれって後々、アルフィのように悲嘆にくれる日が来るという前触れでしょうか?

「現実より幻想に逃げている方が幸せな時もある」的なナレーションが入り、エンディング。それはある程度歳を重ねた人だけが受けられる恩恵かな?アレンも、もう枯れて良い年齢ですけど、フリーダ・ピントの愛らしさや、ルーシー・パンチのエロエロぶりを観ていると、まだまだ煩悩に悩まされる方が、アレンには似合っていると思います。


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