ケイケイの映画日記
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2012年12月02日(日) 「ドリームハウス」

12/1より今作主演のダニエル・クレイグの「007」が公開ですが、まずは先に観たこちらから感想をば。監督のジム・シェリダンの作品では、「イン・アメリカ」が一番好きです。今回監督初のサイコミステリーながら、可愛い姉妹が出演の家族ものと言う事で、「イン・アメリカ」を彷彿させます。ミステリーとしては、平凡な出来ですが、家族を愛し守ろうとする男性のお話としては、とても好ましく仕上がっていて、私は好きな作品です。

編集者のウィル(ダニエル・クレイグ)は、妻リビー(レイチェル・ワイズ)や二人の娘、トリッシュとディディと共に郊外に引越し、多忙な仕事に別れを告げて、小説家に転身しようとしています。理由の一つは最愛の妻子との時間を増やしたいがため。新たな生活に心弾む一家でしたが、引っ越した家には不吉な事が起こり始め、その家は以前、夫による一家惨殺現場であるとわかります。

決して内容は話さないで下さい系。最初からおかしいなぁとは思っていました。妻は夫が仕事を辞める日も知らず、地下室には近所の悪ガキたちが勝手に入ってこれるし、第一家を買うのに地下室も見ないの?隣人や警察の様子もおかし過ぎるし、う〜んと思っていたら、中盤重要な事実が明かされます。

普通はこれがラストの驚愕の真実になるのですが、この作品は、この後何があったのかを追いかけます。しかしその展開がお安くまとめ過ぎ、値打ちを下げてしまいました。とっても残念!

何故かと言うと、この家族の様子がとても素敵なのです。家族は夫以外は女性と言う事もあり、ウィルは頼りがいのある良き夫ぶりで、深く家族を愛しています。殺人鬼の陰に怯える娘たちに、「パパが帰ってきたから、もう大丈夫よ」と伝える妻リビーの何気ない言葉に、この家族の全てが現れています。子供たちも、絶叫したくなるほど可愛かった「イン・アメリカ」のボイジャー姉妹にはちと負けるけど、充分愛らしいし、夫を立てる美しい奥さんの良妻賢母ぶりも素敵。平凡でも、夫が家庭の中心である家は、やはり良きものだなと、微笑ましく痛感しました。

あぁそれなのに。せっかくナオミ・ワッツのような当代一の女優を隣人にキャスティングしながら、あれでは彼女には役不足です。彼女の役をもっと深くこの家族に絡ませるようにしなければ。変にサイコサスペンス仕立てにしなくても、家族愛を掘り下げるヒューマンドラマのみにすれば良かったと思います。

とは言え、私の苦手だったクレイグですが、段々と彼のインテリジェンスやエレガントさを感じられるようになってきました。そんな人が妻子を守ろうと誠実な男らしさを全力で発揮するのですから、私にはボンド以上に魅力的に感じました。何でもこの作品が縁で、ワイズと結婚したのだとか。なるほどなぁ。

私がこの作品を好きなのは、自分が過ごした時間を、過去に遡って観ている気がするからでしょう。もちろんこれ程超が付くほど素敵ではなかったけれど、私の結婚生活も善きものだったのだと、肯定できるのです。欧米ではクリスマスツリーのてっぺんの星は、必ずその家の夫がつけるのだとか。それは大事な事だよねと、感じる作品です。独身の人には、きっと結婚したくなる作品です。


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