ケイケイの映画日記
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2012年12月16日(日) 「007 スカイフォール」




面白かった!そしてとっても安心した!何故安心したかと言うと、監督が私の大好きなサム・メンデスなんですね。アクションなんて初めてなのに、「007」50周年記念作に抜擢なんて、無謀過ぎでしょ?それが蓋を開ければ、歴代ボンド映画一の興行収入が期待出来ると聞き、まずは欧米では受けたと一安心。そして我が目で確かめると、先達が作り上げてきたボンド映画に敬意を表しながら、新しい息吹も吹き込んでいて、とても感激しました。

イギリスMI6の諜報部員ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)。スパイリストが盗まれ、それを奪還する作戦に送り込まれましたが、失敗。その事でM(ジュディ・デンチ)は窮地に立たされ、MI6の存続も危うくなります。そんな時、MI6の本部が爆弾により破壊。首謀者はMに恨みを持つ元MI6の諜報部員シルヴァ(ハビエル・バルデム)であると判明。ボンドとシルヴァの戦いの火蓋が切って落とされます。

冒頭すぐでの、トルコでのカーチェイス&列車上のアクションがお見事。もうこの辺でメンデスが、私の大好きなメンデスが、ちゃんとアクション撮れてるやん!と、感激して涙が出そうになる私(実話)。その直後のビルでのアクションも面白かったなぁ。ちょっとケバいネオンや暗闇を上手く使っていました。その後、トム・フォードのデザインしたスーツに身を包み、華麗な香港の夜景をバックに颯爽と現れるボンドに、おぉ!と、手の前で小さく拍手する私(実話)。この異国情緒も、過去のボンド映画へのオマージュかと思います。

今回の敵のシルヴァは元身内。色んな方が仰っているように、私怨でイギリスをぶっ潰す事件を起こしていいのか?と言う問題ですが、まっ、Mがそれほど魅力的な女性だと言う事で、納得しますか。と言うか、ボンドが孤児だと、ダニエルが新ボンドになってから語られています。今回Mのセリフで、誰も身寄りが無い者の方が、スパイには都合が良いと語られるので、シルヴァもそうなのでしょう。ナヨナヨ得体が知れず、ハビエルがMに対しての愛憎の塊のシルヴァを強烈に演じながら、その内面の「母恋し」も存分に感じさせるので、ボンドと表裏、または兄弟のように感じるのです。ザ・鉄の女風のデンチのMは、作品中では非情さばかりが浮かびましたが、明日のわからぬスパイたちの母親として、人知れず心の拠り所であったのでしょうね。おぉ、この辺の味わい深い心理なんぞ、メンデスらしい描き方じゃございませんか。




今回Qが若いベン・ウィショーに代わりました。あれこれアイディア満載でワクワクさせてくれた、先代Qのアイテムと比べれば面白みに欠けますが、これも作品の中で生かせていました。そのウィショーQなんですが、天才的なコンピューター使いの腕を持つという設定で、オタク丸出しの風貌がすごーくチャーミング。間の抜けたユーモアが楽しく、今後活躍してくれぞうです。ダニエルになってから、ユーモアが少なく、変に社会派ヅラしたアクション映画になっていた007ですが、にやりとするユーモアもあちこち復活しています。

そしてボンドの生い立ちを明かしながらのオーラスのアクションなのですが、古式ゆかしいボンドカーが出て来たり、火薬ドカンドカンに銃もあれにこれもの銃撃戦の中、アナクロな仕留め方も良かったです。大物レイフ・ファインズの起用も、そうだったのか・・・と納得でしたし、何よりMの「身の施し」は、これ以上なく男前で、老齢のMに女性としてもMI6の長としても花を持たせて、最高の描き方だったと思います。

ダニエルのボンドは、馴染んできたのかもですが、三作の中で一番セクシーで知的なユーモアも感じ、素敵でした。早くも老いのレッテルを張られていたけど、後10年は充分大丈夫のはず。ボンドガールも地味だと言われていますが、アフリカン・ビューティー(ナオミ・ハリス)とアジアン・ビューティー(ベレニス・マーロウ)で、ステロ的なブロンドの青い瞳から脱却。私は良かったと思っています。

終わってみれば、キャストに新陳代謝が激しかった割には、古くて新しい007で、過去への敬意もたっぷり織り込まれていました。007らしい華やかさと、メンデスらしい礼節と敬意、人物たちの掘り下げもきちんと共存していました。いみじくも、シルヴァの台詞で語られた「何故そんなに動き回る。少し休もうじゃないか」は、冷戦終結後、スパイとしての役割や身の振り方に対して、迷いが生じていた007映画へ、メンデスの思いが込められた今回の内容だったのかと思います。これが007史上最高作とは思いませんが、50周年の記念作として、私は充分合格点をあげて良いと思います。やっぱりメンデス最高!


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