ケイケイの映画日記
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2012年11月11日(日) 「悪の教典」




面白かった!登場人物がすごく多くて、多分貴志祐介の原作では、人物の背景をしっかり描いているのでしょう。しかし二時間の映画では全部描くのは無理。なので主人公の蓮実(伊藤英明)がサイコパスであると言う事のみに力点を置いた描き方で、とても潔いです。この描き方、私は成功していると思います。監督は三池崇史。

高校の英語教師の蓮実聖司は、ハンサムで優秀、生徒からの人気も同僚教師からの人望も厚い先生です。しかし彼は、実はサイコパスのシリアルキラーと言う影の顔を持っていたのです。

予告編で蓮実がガンガン生徒を殺す場面が出ているのは、ある意味大きなネタバレのはずです。それを意に介さず観られる工夫が、あちこちにあります。まず生徒役に新進の有望株がいっぱい出ています。染谷将太と二階堂ふみの「ヒミズ」コンビに、林遣都。「桐島」からは、松岡茉優に浅香航大。青春スポ根俳優・遣都君は、今回意外や文系美術部の子。それも今までの爽やかイメージを覆す役柄で、それが何とも彼の美形にマッチして似合っていました。松岡&浅香組も、今回は純情かつ素朴な役柄で、その落差を楽しんだし、他の主要な生徒も、これから赤丸付きになりそうな子もおり、フレッシュな高校生らしい雰囲気作りが良かったです。

教師の生徒へのセクハラや肉体関係の描写はありますが、レイプや女性との裸はなし。代わりにサービスで出てるのが、ほとんどオールヌードの伊藤英明が体を鍛えるシーンです。私は「蘇る金狼」の松田優作を思い出しました。そうだよな、シリアルキラーは体を鍛えなきゃなと、妙に納得。

「マック・ザ・ナイフ」が流れ、ハスミンのアメリカでのシリアルキラーの様子がブラックユーモアたっぷりに描かれる場面が垢抜けていて秀逸。蓮実が何故サイコパスなのか?全く背景を追わないのです。医者の息子であったが一家惨殺事件の生き残りであること、京大やハーバードを出て、アメリカの一流企業に勤めるも何故か退職。そして教職へ。類い稀な頭脳と容姿を持ったナイスガイは、実はサイコパスだった、理由なんてありませーん!と、それだけで充分に納得。以降の殺戮場面に無理を感じません。

前半は昔懐かしい学園モノの先生って感じの「ハスミン」。いつもの伊藤英明の延長線上の雰囲気です。その魅力的な姿を目に叩き込んでいたのも良かった。かなり血生臭い殺戮場面が繰り返されますが、妙に明るいです。何故か健康的。男子は女子を守ろうとするし、それに応えるかのように、女子は純愛を示めす。そして凶器は散弾銃なので即死。あまりいたぶって楽しむ様子は少なく、それも妙に健康な「殺し」に見えた理由でしょう。ところどころ挿入される緩いギャクも上手く間合いを外してグッド。御蔭で追い詰められる怖さが少し減ってしまったのは、残念です。

伊藤英明は売れっ子で、そうした人がこのようなピカレスクな役柄に臨むのは大変な冒険だったはず。しかしそれはそれは魅力的でした。中途半端な薄汚い犯罪者役より、いっそ突き抜けていて、殻を破るにはふさわしいです。彼の代表作になると思います。吹越満の「ほら、俺性格悪いでしょ?」以下の蓮実への推察は、スゴーく納得。根暗な様子がキモくて本当に上手い。山田孝之は、よくこんな役で出演したなと思いますが、これも彼の男気かな?良かったです。

本当に呆気なくバンバン殺されるので、ラストはどうなるのか読めませんでした。ラストのラストまで、ハスミンは明るく頭脳明晰なまま。あの様子は法律と世の中を知り尽くしてんのよね。To be continuedと出てきたので、次もあるのかな?ジェイソンやフレディに統合性は求めないでしょ?そういうつもりで、ハスミンを観て下さい。


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