ケイケイの映画日記
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2011年11月24日(木) 「ラブ・アゲイン」

いや〜、面白かった!実力派豪華キャストの上、私の大好きな「フィリップ、君を愛してる!」の監督、グレン・フィカーラ&ジョン・レクアのコンビなので、あんまり好みじゃないラブコメですが、すごく楽しみにしていました。少々捻りすぎてドタバタした場面もありますが、ストーリーに破綻はありません。大いに笑って切なくなって、結論は道徳的でとても純粋なものでした。

結婚して25年のキャル(スティーブ・カレル)とエミリー(ジュリアン・ムーア)夫妻。高校時代からの付き合いの美しい妻と結婚し、子供に恵まれ家も建て、仕事も順調と、自分なりに順風満帆だと思っていたキャルは、突然妻から離婚を申し渡されます。原因はエミリーが職場の同僚デイヴィッド(ケヴィン・ベーコン)と浮気したこと。咄嗟に離婚を承諾したものの、エミリーに未練タラタラのキャル。毎夜バーに繰り出して、一人愚痴をこぼします。その様子を観ていたのがプレイボーイのジェイコブ(ライアン・ゴズリング)。さっぱりイケテナイ風情のキャルに、ファッションから改革し、女性に対してのプレイボーイ指南を始めます。舎弟のようにジェイコブの言うまま、プレイボーイ修行に励むキャル。しかし心はいつもエミリー恋しさに逆戻り。果たしてキャルは妻の心を取り戻せるのか?

と言うのが大まかなストーリー。ここにキャル夫妻の子供たちのベビーシッターの17歳のジェシカ(アナリー・ティプトン)が実は父親のような年齢のキャルが好きで、そのジェシカはキャルの13歳の息子ロビー(ジョナ・ボボ)の初恋の人で、「魂の伴侶(ソウル・メイト)」だと言ってジェシカを追いかけ回す。ワンナイトラブ至上主義のジェイコブは、真面目な弁護士の卵ハンナ(エマ・ストーン)によって、その主義が怪しくなります。キャルの最初のナンパ相手にマリサ・トメイなんて、こんな捨てキャラに豪華だわぁ〜と思っていたら、これがきっちり後で絡んで・・・と言う具合。

とっても忙しいのですが、脚本と演出に無駄がなく、さくさくテンポ良く笑わせながら進むので、混乱はなし。ペーソス溢れる場面では小技が効いており、余韻が残ります。ベタな描写はなくて、小市民的な人々を描いているのに、ユーモアも涙もすれ違いも、とても洗練されていたと思います。

イケてる旦那さんを、「イケダン」と言うのだとか。キャルは今も美しい妻が、自分がイケてないせいで愛想を尽かした、だから見返してやる!と思っていますが、これが違うんだな。いきなりの妻からの「離婚して!」宣言の裏には、浮気が原因ではなく、夫婦のすれ違いを感じます。結婚には段階を踏んでステージがあり、夫と妻の役割もそれぞれ変わって行きます。それも一つの成長なのに、キャルは「安定」と言う名の元、十年一日の如しだったのでしょう。夫婦として成長して行きたいと思っていたエミリーには、それが夫の慢心に感じたのだと思います。わかるわ・・・。イケテないのは外見ではなく、中身なのですね。

女性はエミリーしか知らないキャルは、盛りがついたように女性に手を出し始めます。これどっかで観たプロットだなぁと思っていたら、「ER」で私の愛しのグリーン先生@アンソニー・エドワーズも、妻しか女性を知らなかったのに、妻に浮気されて離婚。その後箍が外れたように女遊びしていましたっけ。その時指南していたのは、ダグ先生@ジョージ・クルーニー。しかしダグもジェイコブも、芯からプレイボーイのはずが、本当の愛を見つけると、これが13歳のロビーのように純情になってしまいます。どんなにベッドの相手が充実していても、そこに愛がないと、いくら食べても満足しないものです。愛の狩人なんて、やっぱり寂しい人なのですよ。

ジェシカに猪突猛進のロビー君が大変よろしい。男子たるもの、若いときはあれくらい勢いがなくっちゃね。ロビーの卒業式にジェシカがプレゼントしたのが小粋なもので、大人たちの喧騒の中、恋愛について少年少女たちが、ちょっぴり学べた様子も微笑ましいです。

いっぱい好きなシーンのある作品でしたが、一番心に残っているのは、離婚後、エミリーが用事があると、嘘の電話をキャルにかける場面です。用事がなくちゃかけられないのは、離婚前もそうだったかも。嘘だとわかっているのに、丁寧に誠実に答えるキャル。見て貰えればわかるのですが、長年暮らした夫婦でなくては、醸し出せない哀愁がありました。



出演者は映画好きには実にゴージャスでしたが、一般的にはジュリアン・ムーアくらいなんでしょうか?子役に至るまで自分の見せ場はきちんと演じるので、本当によくまとまった作品に仕上がっていました。特筆はライアン・ゴズリング。変幻自在にどんな役でも飄々とこなすので、一見わかりづらいですけど、実は演技派だと思います。今回はとってもカッコ良かった!来春は前評判の高い「ドライヴ」の主演も控えているし、これから大物になっていく俳優さんだと思います。

私事ですが、最近外国人登録の切り替えがあり、写真を撮りました。前回の切り替えは七年前。写真を見比べてびっくり。今の方が若いのです。夫や子供たちに見せたところ、息子たちは「お母さん、フォトショしたやろ?」と冗談を言う子や、「この時(7年前)は、お母さん色々しんどかったんやな」と労いを言う子あり。しかし肝心の夫はと言うと、知らん顔です。まぁいいんですよ。この7年、これは私は私なりに「成りたい自分」になるべく努力した証なんですから。でもあれくらい劇的なもんはないのだから、一言くらいあってもいいんじゃない?

ちょっと前に小学校の同窓会がありました。本当に久しぶりの再会で、子育ても終えた女子たちは、一様に若々しかったのに対し、男子の方は年齢相応か、やや老けて見える人が多かったです。でも私は、むしろその「健康的に老けた外見」に、世間のしがらみから妻子を守って生きてきた彼らの人生が感じられ、好感を持ったもんです。世のご主人様方、イケダンは外見じゃないんですよ。中身よ中身。妻には適切な労いの言葉と会話を忘れずに。うちはそう教えても、思い切り的を外した発言ばっりなので、もう諦めましたが。

映画は「魂の伴侶」を見つけて、末永く愛し合うのが幸せと言う結論です。脇目をふると、後で痛い目に遭うぞ、と言う教訓付きで。男性にとても厳しかった「ブルーバレンタイン」のアンサームービーのような内容で、コミカルにこの男心、わかってちょうだいよ、と言う作品です。どちらの妻を選ぶかは、あなた次第。私はやっぱり元から大好きなジュリアン・ムーアがいいな。





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