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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2007年01月23日(火) --

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『迷路』

シャーロックという名のヒロイン、職業はFBI捜査官。そんな名前をもらったせいか、行く先々で振られる名探偵ネタを切り返し、どこへ行っても負けていない。レーシー・シャーロックの髪は、赤毛に近い茶色がかった金髪、でいいのだろうか。

対する上司のディロン・サビッチは、前半ではどうなることかというぐらい、シャーロックになびかない(ように見える)。シャーロックも意地になって、サーと付け加える。それに、職場の女性とは付き合わないのがサビッチの前提だと何度も念押しされるので、これってロマンス系のスリラーだよね、といぶかしくなるころ、犯人のおかげでやっとふたりが急接近。そうなると後はリンダ・ハワードで読み慣れたパターンへ突入。つまり、女性が男性の保護下におかれる安心感、具体的には男性の家に女性が住み始める、というコース。

前半はやけどしそうに丁々発止だったふたりの会話も、いたって恋人らしいものに落ち着く。この前半の会話に見られる先手必勝の乾き具合こそ、アメリカ的洗練の極みだと思うので、それがなくなるのは少々残念ではあるが。

シャーロックがFBIを目指したのは、異父姉のベリンダが、ストリングキラーと呼ばれる殺人鬼に殺されたからだった。犯人のマーリン・ジョーンズをつかまえるために。すべての謎が明らかになる結末と、その一瞬後の微笑ましい光景は、それぞれが抱えてきた重すぎる人生の秘密をしばし忘れさせてくれる。

本作がシリーズ第一作となり、シャーロックとサビッチは結婚してからも、事件に巻き込まれつづけるらしい。未読なのでふたりが一緒に働いていられるのかどうかはわからない。シャーロック家のかなり奇矯な家族縁者たちが、そこでどんな役割を演じるものかも気になるところである。(マーズ)



『迷路』著者:キャサリン・コールター / 訳:林 啓恵 / 出版社:二見文庫2003


2004年01月23日(金) ☆絵本や児童書のパワー
2003年01月23日(木) ☆冬のロマンス
2002年01月23日(水) 『気持ちよく暮らす100の方法』
2001年01月23日(火) 『閉じられた環』

お天気猫や

-- 2007年01月05日(金) --

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『五月の鷹』

「すべての女性が最も望んでいることは?」 その問いの答えを探さねば、命がない。

騎士ガウェインは、一年間の猶予を、答えを探す旅に費やす。 彼は伝説の王、アーサーの甥で一族の総領だった。 並びなき礼節の騎士と謳われたガウェインを待ち受ける叔母モーガン・ル・フェイがらみの陰謀、イングランドの美しい自然、魔法と運命の恋。 ここには静かな空気とともに、それらがすべて詰まっている。

とりわけ彷徨う旅の途上で描写されている静謐な風光と、出会うべくして出会う人びとの姿は、他の物語にはない光を投げかけている。騎士と愛馬、その犬。

ガウェインと他者との関係、自分との闘い、誰かを信じようとする強さ。 武器を手に戦をするわけでない、一見平和な王国における騎士道精神は、時代的にかの『アイヴァンホー』よりも古い時代の物語なのである。

そしてロマンス。ヒロインの設定は、ハウルのシリーズ第一作にかなりのインスパイアを与えたらしい。それともイギリスではこのような年齢差カップルに伝統があるのだろうか? ちなみにこの物語では王妃グウィネヴィアは良識ある美女として描かれる。というか、モーガンはじめ、他の女性たちが強すぎるのかもしれない。実母も含めて一族の強烈な女たちに操られたくない、と願うガウェインが、どんな女性と恋に落ちるのか、読んでのお楽しみ。

著者のアン・ローレンスは1987年に44歳で他界。本作はガーディアン賞次席にノミネートされている。

すべての女性が求めること、 その答えは確かに納得のゆくものだった。(マーズ)


『五月の鷹』著者:アン・ローレンス / 訳:斎藤倫子 / 出版社:福武書店1992

2005年01月05日(水) 『ナチュラル・ハウスキーピング』
2002年01月05日(土) 『南の島の魔法の話』
2001年01月05日(金) 『ハムレット狂詩曲』

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