[ 月刊・夢の図書館 ] * 読書特集 & ブックトーク *


☆7月の本:さまざまな「夏」を体験する。

こちらでは、先日、梅雨が明けました。
昨年よりも、20日も早い梅雨明けだそうです。
(というか、昨年の梅雨が例年になく長かったのですが。)
今日、ふっと、あたりのざわめきが消えた瞬間、いっせいに蝉の声が降ってきて、
ああ、夏だなあと、窓の外の緑を振り返りました。

みんなが出かけて、一人で留守番をしている夏休みの午後。
小学生の私にとっては、一日は充分に長くて、どんなことでもできたし、
どこにでも行くことができた。
本を開けば、そこには胸躍る冒険があり、踏み込んではいけない恐ろしい世界があり、
あるいは、いつでも、私を待っていてくれる仲間との出会いがあった。

そういう、子どもの頃の夏の「ワクワク」感が薄れてきて久しいのですが、
今年初めて意識した蝉の声に、仕事も忘れて、つかの間 子どもの頃の夏の躍動感を思い出していました。
(シィアル)



「ねじれた夏」 著者:ウィロ・デイビス・ロバーツ / 訳:笹野洋子 / 出版社:講談社

少女シシーの14歳の夏。おとなとこどもの狭間で揺れ動く時期。
身近で起きた殺人事件の余波。ほのかな恋。大切な人との永遠の別れ。
人の心の機微や、今まさに脱皮して蝶になろうとしている少女の揺れが描かれた、ゆたかな味わいのあるミステリです。


「異人たちとの夏」 著者:山田太一 / 出版社:新潮文庫

たとえ、自分の命を削ったとしても、死別した大切な人に会えるのなら。
幼い頃死に別れた父母とそっくりな二人と出逢った男。
いつの間にか、両親の年齢を追い越しているけれど、懐かしさに何度も足を運んでしまう。大切な人・大切な人とのかけがえのない時間を慈しむ物語です。


「ひと月の夏」 著者:J・L・カー / 訳:小野寺健 / 出版社:白水Uブックス

第一次世界大戦後のイングランドの田舎町。
教会の壁画の修復にやってきた青年のひと夏の物語。
図書館で借りて読んでいたのですが、どのページを開いても、静かな豊かさに満ちていて、どうしても傍らに置きたくなり、すぐに買ってしまった本です。
(ガーディアン賞受賞作)


「夏の王」 著:O・R・メリング / 訳:井辻朱美 / 出版社:講談社

夏というと、妖精王の物語。
事故死した妹は妖精の国で生きている。
ローレルは、妖精を信じていた妹の代わりに「夏の王」をさがしはじめる。
この使命を果たしたとき、オナーが妖精世界へと迎え入れられるのだから。
行間からケルト音楽が聞こえてくる現代を舞台にしたハイファンタジーです。
(O・R・メリングのケルトファンタジー第4弾)



※その他の「夏」が題名にある本。

「夏の夜の夢・あらし」 著者:シェイクスピア / 出版社:新潮文庫

他愛なくてなんだかハッピー。シェイクスピア作品の中でも大人気の「真夏の夜の夢」マイケル・ホフマン監督の映画「真夏の夜の夢」も楽しめます。


「夏草の記憶」 著者:トマス・H・クック / 出版社:文春文庫

テーマは永遠不変の物語、輝かしく苦いハイスクールの恋。海外ミステリランキングで毎回上位を占める実力派トマス・H・クックの「記憶シリーズ」



※追記
高校生の夏に読んですっかり魅了されてしまった大切な本があります。
ハインラインの「夏への扉」(早川文庫)
きちんと取り上げていないので、
この夏、読み直してから、ご紹介したいと思います。
ご存じの方はご存じでしょうが、猫好きの方にもお薦めの一冊です。

2004/07/13(Tue)
by お天気猫や
2004年08月31日(火)

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