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■ 「砂漠の王と漂流王、どちらが強いのか?」第4夜
さてさて。三夜に渡って続けてきた、カシュー王対アシュラム卿の対決の行方であるが、これまでの二回ではカシュー王が連続負け。この辺で物語のとおり、せめて一矢くらいは報いたいところである。
最後の一戦は、ファンタジーTRPGの大御所にして老舗、D&Dで決着をつけていただこう。
えっ? なぜD&Dかって? それは、昔コンプティークに連載していた最初のロードス島戦記のリプレイが、D&Dのシステムを使用していたからである。もっとも、単行本になる時は大人の事情というヤツかロードス島戦記TRPGシステムで再録されていたが…。
さて、D&Dもまたロードス島戦記TRPGと同様、クラスシステム制を採るシステムである。従ってまずは、レベルを比べてみよう(申し訳ないが、当時の資料を参照することが困難であるため、私の記憶をもとにさせていただく)。私の記憶が確かならば、二人のレベルは15と14。つまり二人ともネームレベル(D&Dでは9レベル以上のPCをこう呼ぶ)のファイターである。命中判定表とセービングスロー表は同じなので、二人の差はHPだけだ。
問題は次だ。つまり装備である。カシュー王の「ソリッドスラッシュ」については、最初のリプレイの段階では言及がない…それもそのはず、D&Dには「ダメージを減少させるアーマー値」という概念がない。どんなに強力なアーマーを身につけていても受けるダメージは変わらず、アーマーは命中率のみに影響を与える。つまりソリッドスラッシュの特殊効果にあたるものが、D&Dには存在しない。ではカシュー王の剣はどんな剣か…? まぁ、この時カシュー王はドラゴンと戦うことを想定していたと考えると「バスタードソード+3、対ドラゴン+5」ぐらいだろうか(ちなみにD&Dに詳しい方ならお分かりと思うが、このデータでさえかなりレアな剣である)。
では、アシュラム卿の装備はどうだろうか? まずは(順序は変わるが)アーマーから。これはリプレイ中ではっきり断言されている。「魔法のスーツアーマー」である、と。
ご存知の方なら、思わず耳血が噴き出すこと請け合いである。
メディアワークス版のルール・エンサイクロペディアを紐解いても、この「スーツアーマー」なるアーマーの解説はどこにもない。それもそのはず。このアーマーは新和版D&Dのマスタールールセット(対応レベル25〜35)に初めて登場するアーマーなのだ。基本アーマークラスは0。魔法によるボーナスが+1だったとしても、カシューの攻撃は50%しか当たらない(逆は少なくとも+15%ぐらい命中しやすい)。他にも、スーツアーマーは(魔法がかかっているわけでもないのに)
・攻撃魔法のダメージを減少させたり、
・ドラゴンブレスのダメージを減少させたりする。
まさに夢のようなアーマーなのだ。唯一の欠点は「重すぎて一人では着脱できない」という点なのだが…D&Dには「魔法のアーマーの重さ軽減」というルールがある。たぶんアシュラム卿のアーマーは一人でも着脱できる重さだろう。
次に、剣である。これも悩むところだ。アーマー値の概念と同様、D&Dには精神力という概念がない(魔術師のみ呪文使用回数を持つ)。ソリッドスラッシュ同様、やはりソウルクラッシュを再現できる剣はないのか…? いや、ある。魂を砕き生命力をすする魔神の剣に相応しい魔法の剣…それは「トゥハンデットソード+?、エナジードレイン」である。一撃与えるごとに、相手の生命力を削り取る魔剣。すなわち一撃食らうたびにレベルを吸い取られる魔剣である。
本来なら、ここで二人の力量を比べるところなのだが、ここでもう一つ別の要素を考えたい。それが「武器習熟度」(ウェポンマスタリィ)ルールである。これは、前述のD&Dマスタールールセットで初めて導入される新ルールだ。それまでD&Dでは、武器のダメージは誰が使おうと(ダメージボーナスを除き)武器ごとに固定されていた。しかしこのルールを使うと、同じ武器を使っていても慣れている人間の方が大ダメージを与えることができるのだ。
カシュー王は、ご存知の方もいると思うが、元はフォーセリアの剣闘士奴隷である(SWではグラディエーターという一般技能を持っていた)。「アイテムコレクション」によれば、剣闘士というものは、どれか一つの武器だけではなく、あらゆる武器に習熟していなければならない、とされている。つまりカシュー王は、広く浅く武器の扱いを学んでいるといえるだろう(高くてもEX/エキスパートレベルくらいか?)。
では、アシュラム卿はどうか。マーモという過酷な環境で生き抜いてきたのでいろいろな武器に精通していそうに見えるが、実は彼はアラニアの騎士隊長の息子である。で、マーモではベルドの親衛隊長(つまり、騎士だ。騎士だから剣しか使えないというのは偏見だが…)。いろいろなメディアに登場する彼だが、剣以外の武器はおろか盾すら使ったという描写がない。要は、剣の扱いに全てを賭けているということだ。
しかし、である。ウェポンマスタリィルールには、師匠が必要というルールがある。果たして、アシュラム卿に剣を指南できる人間などいるのだろうか?
いる。ベルド王その人である。彼について学んでいれば、MA/マスタリーレベルの力量があっても不思議ではないだろう。
まとめると…カシュー王は、基本ダメージ(+α)のバスタードソードで、基本より遥かに高いダメージのトゥハンデットソード(しかも当たるとレベルが減る)と斬り合わねばならず、しかも自分の攻撃は半分しか相手に当たらない(アシュラムはもっと当たる)というまさに絶望的な戦いを強いられることになる訳だ(ちなみに、ドレインソードの攻撃が当たるたびにカシューは最大HPが減少し、命中判定表も低レベルの物にシフトしていくことも忘れてはならない)。
どうやっても、カシュー王には勝ち目がないという結論が出てしまった(笑)。
次回、最終夜。なぜカシューはアシュラムに勝てたのか? カシューとアシュラムの対決に隠された秘密を暴く(というほど大げさなものではないが)。
今回の科白。
「何故だ! 何故我等を拒むのだ!
今や食料は尽き、命運も尽きようとしている。邪悪なる者は、生きる資格さえないというのか!
神よ! 答えてくれ!」
〜クリスタニア劇場版「はじまりの冒険者たち」より〜
2001年10月21日(日)
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