びっと日記
びっと



 想いは甦るか?

 西暦2000年5月4日、書店に見慣れない名前の本が並んだ。
「マルチノベル」。
いったいどんな本なのか?(ちなみに、タイトルはPS版で発売された
コンシューマゲームのものと同じである)
ゲームのノベライズだろうか? そう思って本を手に取ると、
そこには見たことのあるパラグラフ表示が。

 そう、これは長い沈黙を経て甦ったゲームブックなのだ!

 筆者の藤浪智之氏は、今は「ビースト・バインド」や
「ゼノスケープ」などのTRPGのゲームデザイナーとして知られている。
 だが実は、かなりの筋金入りのゲームブックファンらしい。
同人で「銀河宅急便」などのゲームブックを発表しており
(これは旧ウォーロック誌の再録本だが)、
さいろす民芸資料館++などのゲームブック系サイトの掲示板にも
顔を出している。
 ゼノスケープの前書きにある、

 さあ。ページをめくりたまえ。
 TRPGの世界へようこそ。

 この言葉が、ゲームブック(ファイティングファンタジーなど)の
前書きへのオマージュであることに、どれだけの人が気づいただろう?
(恥ずかしながら私も某掲示板の書き込みを見るまで気づかなかった)

 ゲームブックとはいっても、この作品「だんじょん商店会」には
技術点も冒険記録用紙もない。バッドエンドすらほとんどない。
(バッドエンドではないが、死亡エンドはパラグラフ14番、かのJ・H・
ブレナン氏のドラゴン・ファンタジーシリーズと同じである(笑))。
 古参のゲームブックファンの中には、
こんなものはゲームブックではないと感じる人もあるだろう。
 だが、思い出してみてほしい。かつてゲームブックが、
一時期あれだけの隆盛を誇りながら
(何しろ、一般書店に平積みされていたのだ!
刊行された作品の数からいっても、
最盛期のTRPGを遥かに超えるのではないだろうか?)
衰退していったのは、そのシステムがあまりにも複雑になりすぎ、
また世界設定なども多くなりすぎたからではなかっただろうか?
 ゲームブック一冊と鉛筆一本だけあれば、気構えもなく手軽にできる。
そのことが、進化と共に忘れられてしまったせいではないだろうか。

 「だんじょん商店会」が一冊限りの懐古趣味な作品となってしまうか…
あるいは魂を受け継ぐものが、いつかまた現れるのか。
いつかまた、あの冒険の日が帰って来ることを夢見て。

 今日の一言。

未来というのはね。
ぼんやりしていて、定まらない、
変わってゆくものだから……。

どんな未来にしていくかは、
サララちゃんが
決めていくことなんだよ。

ステキな未来が、つくれるといいね。

〜ファミ通文庫「だんじょん商店会 魔女のお店はじめました」〜



2001年10月11日(木)
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