さようなら。
先日ニッキに書いたMさんが亡くなった。
眠るように静かに逝ったということを聞いて、少しだけ救われた。
今日、医療費の件で連絡を取った。これはわたしがやらねばと思った。 奥さんが電話に出た。案外元気そうな声で安心した。 でもわたしの名前を告げると、泣き声になった。
一通りの説明をしたのだけれど、奥さんには難しかったらしく、なかなか 理解できなかったので、娘さんに電話を変わってもらった。 ものすごくしっかりした娘さんで、あー、この方々の娘さんだなぁと思った。
お昼前に、奥さんがお支払いに見えた。 あれほど急がなくてもいいよ、落ち着いてからでいいのよ、と言ったのに。
わたしの顔を見たら、また泣きだした。
「本当に本当にお世話になって…。」
奥さん、これはね、わたしの仕事なんですよ、お世話だなんてそんな…と 言うと、とんでもない、最後までお世話になりっぱなしで…と涙をこぼす。
最期はね、本当に苦しまずに逝ったんですよ。 そして火葬にしたときも、本当にきれいな骨だったの。 頭も、お腹も…。(脳にも肝臓にも転移していた)
そしてね、これ、あの人のお財布なんだけど。 見て、きっかり20万円入ってるの。 病院にお支払いする金額は19万円ちょっとでしょう。 本当にあの人は、そういう人だったの。 わかってたんでしょうかね、自分の入院費のこと。ほんとあの人らしい…。
聞いているうちに、わたしまで涙が浮かんできて。
「わたしね、○○さんのこと大好きだったんです」
そう告げると、奥さんは「ありがとう」と言って、わたしに深々と頭を 下げた。そして涙を浮かべながらニッコリと微笑み、
「わたし、頑張ります。頑張りますから。」と言って窓口をあとにした。
奥さんが病院を出て行くまで、頭を上げれずにわたしはずっとお辞儀を していた。涙が溢れて困ったから、頭を下げたまま給湯室に駆け込んだ。
席に戻ると、隣で会計していた同僚が「わたしまでウルウルしてきて 困りました・・・」と言ってきて、2人でまた思い出し泣き。 どうしてこの患者さんにだけ、こんなふうに思ってしまうのか自分でも よくわからない。病院職員としてどうなの…と自分でも思うのだけど、 でもどうしようもなかったんだ。
あー、人ってどんな人でも死んじゃうんだなぁ。 そういう当たり前のことに気づかされる。
残されたものの悲しみ。 愛する人を残して逝く悲しみ。
どっちが悲しいのだろう。
お昼休み外に出て。 見上げた空があまりに高くて。 秋が来たなぁと思ったらまた泣けてきた。
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