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夢の図書館新館

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-- 2004年09月16日(木) --

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『夕顔』

☆言葉の力。

最近、自分の言葉は軽いなあと、しみじみ思うことがある。 全然、重みもなくて、後に残らないけれど、 そのかわり、すらっと忘れ去られるので、後々のトラブルの種に なるような心配もあまり無い。 だからこそ、むしろ、そんな風に意図的・意識的にそうしていた のだけれど、ふっと気づくと、当然ながら、若い頃の言葉にあった、 経験不足だけれど、一生懸命の誠実さが消え失せている。 人は年齢とともに、その経験とともに、 言葉が深くなっていくはずなのに、 こういうことになってしまって、 言葉だけのことではなく、これは、私自身の生き方の現れなのだと、 故白洲正子さんの本を読みながら考え込んでしまった。

『夕顔』は、新幹線の車内誌からクロワッサンをはじめ、 様々な雑誌や新聞に載せられた随筆を集めた、 白洲さんの日々の雑感集である。 だから、能の話から工芸、明恵上人、西行、 白洲さんと交友のあった文壇の人など、 「白洲正子」の入門編という感じだ。 実際、もうちょっと、詳しく読みたくて、『西行』や『明恵上人』など、 白洲さんの本をたくさん買い込んでしまった。

白洲さんに興味を持つようになったのは、白洲さんの回顧展を見に行ってから。 その後、何冊か斜め読みをしたけれど、最近『夕顔』をじっくり読む機会があり、 いままでの自分が知らなかった世界が目の前に現れ、強く心惹かれた。 後半の西行や死に触れて書かれた言葉(西行の和歌や言葉ももちろん)には、 とても重いものがあった。

この本を読んだ直後、タイトルに惹かれて購入した 『運命をかえる言葉の力』(著者:井形慶子・集英社)を読んだけれど、 言葉の力の強さは、さらりと書かれている随筆集である『夕顔』の方が はるかに勝った。 やはり、言葉だけではなく、その背後に、著者自身の生き方や 言葉と向き合う姿勢の違いが、 はっきりと感じられるからかもしれない。 『運命をかえる言葉の力』も、興味深い本で、面白かったけれど、 あまりにも簡単に著者の言葉が流れ去ってしまったような気がする。

いま、この『夕顔』から、気に入った言葉や話を抜き書き しようと思ったけれど、 肩の張らない身辺雑記だけに、どこかを切り取ることはできなかった。 結局、どのページを開いても、さり気なく、生き方や言葉の力について、 再考させられるのだから。 (シィアル)


『夕顔』著者:白洲正子 / 出版社:新潮文庫1997

2003年09月16日(火) 『銀のいす』その1
2001年09月16日(日) 『イラストレイテッド・ファンタジー・ブック・ガイド』 (参考)

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