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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年02月10日(火) --

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☆1800年代の後半。

楽しみにしていた割には、ずっと後回しにしていた本を、 今、やっと開いている。 開いた途端に、 「エジプト、ナイル(1859年)」 という文字に目がとまり、はたと読書も止まっている。 『八月の博物館』(瀬名秀明 / 角川文庫)の1ページ目で。

そういえば、昨日読み終わった『半身』( サラ・ウォーターズ / 創元推理文庫)も1800年代で、同じ1800年代でも時代の空気というか、 物語のテイストが、当然ながら『十五少年漂流記』( J・ベルヌ / 講談社青い鳥文庫)とは、全然違うと、妙に感じ入ったこと である。

だからどうと言うこともないけれど、 ふっと、1800年代の後半というのは、割と最近のこと、 100年そこそこ前の、「実体」のある時代だなあと、 意外なくらい身近に感じたのだ。

『半身』は、1874年、ロンドンのミルバンク監獄をある貴婦人が 慰問したことから謎に満ちた物語が始まる。

『十五少年漂流記』は、1860年15人の少年を乗せた船が遭難し、 無人島に流れ着き、そこからサバイバルの日々が始まる。

『八月の博物館』は、まだ読み始めで、全然ストーリーを 知らないのだけれど、 あらすじ紹介によれば、小説の意味を問い続ける作家、 小学校最後の夏休みを駆け抜ける少年、 エジプトに魅せられた19世紀の考古学者による、 三つの物語が展開するようで、何はともあれ、冒頭は、 1859年のエジプト。

全くの偶然だけれど、立て続けに、 19世紀後半の小説を読んでいると、そのころの世界は どんなだったろうと、 ちょっと興味が湧いてきた。

お隣の中国では、 1840年から1860年まで、 アヘン戦争、アロー号戦争、太平天国の乱と、 激動の時代である。 ロシアはクリミア戦争(1853〜56)で英仏に敗北し、 ドイツ・ビスマルクのベルリン会議(1878年)もあれば、 フランスは、二月革命やらパリ・コミューンやら。 イギリスは、ヴィクトリア女王の時代で、 セポイの反乱後、イギリス領インド帝国が成立したり。

まさに、19世紀から20世紀へ、時代が大きくうねり変動している。

で、日本はどうかというと、 現在の大河ドラマ(『新撰組!』)の頃である。 幕末から明治への時代の転換期。 1867年の大政奉還で江戸幕府がたおれ、 王政復古の大号令により、翌1868年から明治が始まる。

15人の少年たちが遭難し、サバイバル生活を余儀なくされていた頃、 新撰組が京を闊歩していた。 ミルバンク監獄を舞台にしたある貴婦人と霊媒の娘の奇妙な交流が 行われていた頃、戊辰戦争が終わり、明治の中央集権制が 整備されている。

ところで。 19世紀後半の日本を舞台にした小説は何があるだろうかと 首を傾けたけれど、ほとんど翻訳物しか読まない私には なかなか思いつかない。

1850年代くらいだと、  
『竜馬がゆく(1)〜(8)』(司馬遼太郎 / 文春文庫)  
1860年代だと、  
『和宮様御留』(有吉佐和子 / 講談社文庫)  
『新選組血風録』(司馬遼太郎 / 角川文庫)

もちろん、面白くて優れた歴史小説・時代小説はもっともっと あるだろうけど。

ジャンルや舞台は違っても、 同時代の本を続けて読むことで、 時代を横断して、ちょっと世界を俯瞰した気分になっている。 (シィアル)

2003年02月10日(月) 『ひかりの国のタッシンダ』
2001年02月10日(土) 『夏草の記憶』

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