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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年02月06日(金) --

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『中原淳一の幸せな食卓―昭和を彩る料理と歳時記』

☆幸せって、何だろうか。

昭和という時代は、生活の中に「四季」があった時代だと、 今、ふっと、思った。 四季折々の衣・食・住。 季節感。 現在は、季節感が失われた奇妙な時代だ。 一年で一番寒い二月、如月。 あまりの寒さに、衣服を重ねて着ようと思うけれど、 店頭はとうに、春の服一色だ。 文句を言いつつも、 暖房の利いた部屋で、Tシャツでアイスクリームをなめたりしている。

季節を愛でることができる、豊かさのあった時代が それが昭和だったのじゃないかと、今、思う。 家族で食卓を囲み、四季それぞれの旬を味わう。 当時は、普通のことだったけれど、 今や「中食(なかしょく)」の全盛時代で、 食卓を家族で囲むことはあっても、 食卓の主役は出来合いのお弁当やお総菜だったり。

そんなことを思いながら、開く『幸せな食卓』。 歳時記ものや、暮らしのスタイルを取り上げたものが大好きな私は、 一も二もなく、買ったのだった。 それに、中原淳一さんの本は、高価なものが多いので、 文庫で手にとれるのは、嬉しかった。 1月から12月まで、イラストで綴られた 季節のメニューや暮らしのヒント、 そこからは「時代」の匂いが感じられる。 几帳面できまじめな時代。 昭和20年代や40年代にかかれた雑誌の連載が ここにまとめられているのだが、 中原さん個人の価値観だけでなく、 「当時」がどのような時代であったか、察せられる。

決して豊かではない時代に、 贅沢を求めるのではなく、 暮らしの中で、いかに豊かさを失わないでいるか。 たとえ現実的でなくても、 豊かさを夢見ることも、 日々の暮らしの中の大切な潤いであったろう。 昭和20年代のレシピの文言を見つつ、 そんなことを思った。 戦争があった時代の、 少女が憧れた華やかな食卓のメニューは、 庶民の暮らしとは無縁であったろうけれど、 夢を、明日の希望を、形にしたものだと思う。

戦争が終わった直後の昭和22年、23年のレシピには、 入手困難だった砂糖の代わりにサッカリンやズルチンが使用されている。 24年のレシピには、「お砂糖の配給がありましたから」と、 お砂糖を使ったスポンジケーキのレシピが。 食べていくこと、そのものが難しかった時代で、 戦争はまだ、身近にあり、昭和25年には朝鮮戦争が勃発した。

とても可愛らしいイラストブックだが、 行間からかいま見られる「時代」を思うと、 「幸せな食卓」というものは、 まずはとりあえず、「平和」の食卓であろうと、 そんなことをついつい、考えてしまった。(シィアル)

※ 本自体は、乙女度の高い、ほんとうに可愛い本です。

ひな祭のお客のために(3月)  乙女のパーティーのために(4月)  苺のお菓子と苺のジャムと夏蜜柑のマーマレード(5月)  歴史を映すクリスマスケーキ(12月)  食卓は招く人の心のあらわれ e.t.c.


『中原淳一の幸せな食卓―昭和を彩る料理と歳時記』 著者:中原淳一 / 出版社:集英社be文庫2003

2003年02月06日(木) 『ロザムンドおばさんのお茶の時間』
2002年02月06日(水) ☆すき間読書、じっくり読書。
2001年02月06日(火) 『巫子』

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