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夢の図書館新館

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-- 2004年01月20日(火) --

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『死体が多すぎる』その2

修道士といってもカドフェルは、若いときは十字軍の戦士で、 海千山千の強者です。 このシリーズの魅力は、カドフェルの冷静な犯人探しだけでなく、 カドフェルの豊富なハーブの知識が描かれていることや、 どの物語にも、若い恋人たちのロマンスが描かれていること でしょうか。 さらに、作者エリス・ピーターズの文章は時に繊細で、 この物語では、久々に心に残るとても美しい文章に出会うことが できました。

この内乱の中で、身の安全のために先に逃がされた娘ゴディス。 女帝モードの拠点が陥落し、同志たちは全員処刑されたが、 辛うじて父親が脱出したことを知る。 それを知ったゴディスの複雑な心とわき上がる喜びが、 美しくそして、あますことなく表現されています。

ほんの一瞬、春の雪解けのように彼女の目に涙があふれたが、 すぐに春の日差しのように彼女は光り輝いた。 悲しみの種は多く、うれしいことも同じくらい多かった。 彼女はどちらを先に表したらいいかわからなくなり、 四月という季節のように同時に表現したのだ。 しかし、彼女の年齢は四月そのものだったから、 希望に輝く日差しが勝ちをおさめた。(P60より)

ゴディスの心だけではなく、四月という季節そのものの力強さや 生命力までもが、あらためて、伝わってきます。 物語のおもしろさはもちろん、 こういう気の利いた表現に出会うと本当にうれしくなります。

小説は、まだ全巻読み終えていないのですが、 ドラマでも小説でも、もっとも面白かった物語が、 この『死体が多すぎる』と、『氷の中の処女』 私にとってのカドフェルシリーズの一番の魅力は、「情」。 どの物語も、「情」がしっかりと描かれていること。 愛情・憐情・人情、そしてまた憎しみも。 しかし、どの物語も、若い恋人たちの愛は成就し、 修道士であるカドフェルの「情」の深さが強く伝わってくるのです。 (シィアル)


『死体が多すぎる』―修道士カドフェルシリーズ(2) 著者:エリス・ピーターズ / 訳:大出 健 / 出版社:光文社文庫2003

2003年01月20日(月) 『町かどのジム』
2001年01月20日(土) 『わたしの日曜日』&『とっておきの気分転換』

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