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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年01月29日(水) --

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『チープスリル』

☆どきどきが、いっぱい。

学生の頃を思い出すと、気恥ずかしいことの連続。 少女マンガのように、甘美でも、甘酸っぱくもないけれど、 一人前にいろいろと切ない思いだけは抱えていた。 …思い出すだけで、本当に恥ずかしいことばかり。

そういう現実の高校生活にすごく近くて、 全然、別次元の高校生活が、くらもちふさこさんや岩館真理子さんの 少女マンガの世界。 すっごくリアルに感じられるけれど、 絶対にあり得ない、女の子のためのおとぎ話。

何の話からか、急に“くらもちふさこ”の話になり、 同僚が、速攻で『チープスリル(全3冊)』を貸してくれた。 くらもちふさこさんは好きな漫画家の一人で、 何冊も保存版のコミックスも持っているけれど、 今さら、中高生の恋愛物もねえと、 児童書やロマンス小説を読みあさっている割には、 ちょっと、冷ややかに距離を置いていた。 いろいろとせっぱ詰まって忙しかったのに、 何気なく、1ページめくったが最後、 仕事も何のその、一気に読み終わってしまった。

『チープスリル』は、3人の女の子の恋の物語で、 それぞれ、独立した別々のお話(短編)として、物語は進んでいく。 3人の女の子の物語に共通しているのが、 「梅ちゃん」と呼ばれる男の子への三者三様の思い。 「梅ちゃん」をキィに、3人の女の子のばらばらのお話が、 最後に、ひとつに収斂されていく。鮮やかだ。 大人が読んでも、少女マンガとして、十分おもしろかったけれど、 くらもちふさこさんのダイナミックかつ緻密な構成力や 微妙な一瞬を切り取る繊細さに、心から感動してしまった。 女の子の小さな心の揺れが、余韻を持って伝わってくる。 切ない気持ちが、体温を持って伝わってくる。

伝えたいことを、読み手に的確に伝えていける表現力。 言葉であっても、絵であっても、それがマンガであっても、 小説であっても、エッセイであっても、言うまでもなく一番大切なことだ。 マンガにせよ、小説にせよ、物語を編み上げていくために必要な、 要素が凝縮されているようだった。

マンガのおもしろさを離れて、 文章を書くこと、物語を編んでいくことについて、 大切なことは何か、しみじみと考えさせられたりもした。 (シィアル)


『チープスリル』(文庫版・全2巻) 著者:くらもちふさこ / 出版社:集英社

2002年01月29日(火) 『やわらかい手』
2001年01月29日(月) 『雪女のキス』

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