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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年11月11日(月) --

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『ビロードうさぎ』

絵本の原題は『The Velveteen Rabbit』。 タイトルからもわかるように、 私の専門分野となりつつある(笑)、おもちゃ文学の 堂々たる一員である。

ビロードうさぎは、ある男の子の友だちになり、 長年しあわせに暮らしていたが、やがて・・・ 後半1/3の、ぬいぐるみとしての生命が終わろうとする ところからの展開が、意外性をもって迫る。

本書は、1953年に岩波から出ていた 『スザンナのお人形・ビロードうさぎ』に収録されていたものを、 同じ訳者の新訳に加え、原書の雰囲気に 近い装丁で、新たに刊行したもの。

絵本作家としてのウィリアムズ(1881-1944)の第一作というが、 30作も作品がありながら、後世には残るほどでなかった、と 巻末の作者紹介に記されている。 この絵本を読んだかぎり、じゅうぶん後世に残るものだと 思えるので、意外な評価だった。 だからこそ、この2002年になって再刊されたのだろうけれど。

おもちゃ仲間のビロードうさぎに、 子どもに本当にかわいがられて「ほんとうのもの」になるには 時間がかかるの?と 聞かれた賢い木馬は答えて言う。

だんだんに、なるんだ。 とてもながい時間がかかるんだ。 だから、すぐこわれてしまうものや、とんがっているものや、 ていねいにさわらなくちゃならないものは、 めったに、ほんとうのものになれない。
(中略)
いったん、ほんとうのものになってしまえば、 もう、みっともないなどということは、 どうでもよくなるのだ。 そういうことがわからないものたちには、 みっともなく見えてもね。
(本文より)

おもちゃの物語を語るときに大切な鍵となるのは、 時間のようである。おもちゃたちの時間と、 どんどん変化する人間の時間の流れのちがいが、 他のジャンルにはない喜びや悲しみを生み出す。 それはどこか、アンドロイドやロボットと人間の SF物語に似ていなくもない。

ビロードうさぎの身の上に起こった不思議なことを 思うにつけ、うちの猫たちがどこからやって きたものだろうと、彼らの過去に思いを飛ばせる。

同時に、この物語を書いた作者が生まれた当時の ロンドンの子ども部屋のようすを思い浮かべながら。 (マーズ)


『ビロードうさぎ』 著者:マージェリィ・ウィリアムズ / 絵:ウィリアム・ニコルソン / 訳:石井桃子 / 出版社:童話館出版

2000年11月11日(土) ☆ アメリカ大統領選

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