ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■中詞5題
特別ではないある晴れた午後の日 ギンと乱菊 051121
あなたなしでは空も飛べなくなった私を許して 乱菊とやちる 051201
君のその笑顔を守るために、 ギンと乱菊 051212
くだらぬ嘘のための犠牲 ギン 051216<注:人によっては不快な内容かもしれません(グロ?)
僕を動かす世界でただ一つの存在 ギン 060106NEW
配布元 キョウダイ
『特別ではないある晴れた午後の日』
三番隊の執務室に通されてみると、そこには誰の姿もなかった。首を傾げている乱菊の後ろで、乱菊を案内した席官が慌てふためく。
「あっ、す、すみません……っ」
「ああいいのよいいのよ。市丸隊長のことだもの。天気が良いし、昼休み後で満腹だし、どこかへ昼寝でもしに行かれたんでしょ。あたしだってコレがなければそうしたいくらいよ」
振り返って乱菊はそう笑いかけるが、気の毒なくらいに眉を八の字の形にした席官が項垂れる。
「ですが、その書類はすぐに確認印が必要なのですよね」
「うーん。吉良がいればいいんだけどねえ」
「申し訳ありません」
二人で向かい合って考え込む。そのとき窓の外からのんびりとした調子でギンの声がした。
「十番隊副隊長さんやないの。どうしはったん」
席官が跳ねるように窓に飛びつき、身を乗り出して上を見上げた。
「隊長っ、こちらにいらして下さいよっ」
「えー、こんな天気ええ日に部屋にこもるの、もったいないわあ」
「でしたら後で屋外演習でも訓練でもしますからっ」
「それはいやや」
叫ぶ席官の背中を眺めて苦笑いをすると、乱菊は彼の後ろから身を乗り出して上を見上げた。
青い空を背景に、こちらに目を向けている屋根の上のギンと眼があう。その眼は普段の薄っぺらい笑みよりも少しだけ深くなり、それを見て乱菊も笑みを返した。
「市丸隊長。とりあえず確認して頂きたい書類があるのですが」
「印鑑なら持ってきとるし、こっち来てくれはるかなあ」
ギンの言葉に席官が何か言おうと口を開けるが、乱菊は彼の背を軽く叩いて微笑むと、窓枠に脚をかけた。
「了解しました」
僅かな取っ掛かりを頼りに、乱菊は軽々と屋根まで飛び上がる。屋根の上には柔らかな午後の日差しが降りそそぎ、ギンはそよ風に吹かれてそこにいた。
「こちらの書類をお願い致します」
一礼して、乱菊は書類を手渡した。ギンはそれを眺めてにやりと笑い、懐から紙包みを取り出して乱菊に渡す。中身は金平糖だ。
「ちょお時間かかりそうやし、ここでひなたぼっこでもしといてな」
「では、お言葉に甘えまして」
二人は見つめ合うと、穏やかに微笑んだ。乱菊はギンから近くはない場所に腰を下ろし、空を見上げる。空は淡く青く高かった。
『あなたなしでは空も飛べなくなった私を許して』
羽をもがれたようだと思うときがある。
遠い昔はよく一人だけ取り残されていたのに。大人になってからはお互いに関わり合いのない生活をしていたのに。一人には慣れたと思っていた。もう、それが常態で、だから奴がいなくなっても何の問題もないと思っていたのに。
どうしてこんなに体が重いのだろう。
どうしてこんなに空が遠いのだろう。
「らんちゃん」
宵の空を見上げていた乱菊は、背後からの高い声に振り返った。乱菊が座っているせいで同じ目線になったやちるが乱菊を見つめている。桃色の髪が揺れた。
乱菊はいつも通りに艶やかな笑みを浮かべる。
「どうしたの、やちる。こんなところに」
そういう乱菊の髪も風に揺れる。腰まである山吹色の髪は東の空にようやく顔を出した月の光を反射して、屋根瓦に光が零れる。瓦は日中の日差しに熱せられていたが、それも夕暮れの風に冷やされて心地よい熱にまで冷めていた。
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02月09日(土)
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