ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雰囲気的な5つの詞(ことば):無
01.だって意味なんかない 乱菊
02.気付いてすらいなくて 雛森
03.誰もう何も言えない 吉良
04.空の両手を空へと 乱菊
05.ただ傍にいたかっただけ ギン
拍手御礼文051013-1101 配布元 Title--Melancholy rainy day
『01.だって意味なんかない』
ギンの消えた日を思い出すと、乱菊を襲うのはどうしようもない無力感だ。
空っぽの冷えた寝床を見て、少しだけ隙間のあいた引き戸を開けて、外が音もなく降りしきる雨だったりすると、乱菊はいつも全身の力が抜けるのを感じた。そういうとき、乱菊はうなだれないように意識して顔を上げ、霧のような細かい雨の向こうを睨む。せめて、晴れていたらよかったのに。恨めしげに空を見上げても、濡れて重そうな雲から水が滴り落ちているばかり。
晴れていれば何も考えずに体を動かせる。曇りでも構わない。雨が振るなら盛大に降ってくれればいい。
霧雨や雪のような、音のない日には何かが体に浸みていき、じとりと体は重くなった。そういうときに考えることは、いつもどうでもいいくだらないことで。
自分が思い出したことを一笑し、乱菊は目の前で刀を構える同僚を睨んだ。
「意味とか、理由とか、どうでもいいわ。そんなこと」
自分の存在の意味など、どうでもよかった。一緒にいる理由などなくて構わなかった。ただ、一人どこかへ消えてしまうあの男の、その思いを知りたかった。その思いの向かう先を、少しでいいから知らせて欲しかった。
『02.気付いてすらいなくて』
「嘘」
自分の体に突き刺さる刀は鈍く光っていた。どうしてだろう、痛みは感じない。雛森は優しく微笑む憧れの人を見上げて、呆然と呟いた。
彼の人は今も優しく微笑んで自分を見下ろしていた。
体の中に異物がある感触が妙だ。途方もない違和感がそこにある。そこから何かが流れ出し、体から力が抜けていくのが分かる。雛森は、自分の体から抜けていくものを知っている。それは生暖かくて少しだけねとりとまとわりつくものだ。思い出せないほどの昔、まだここに来るときにも、自分はそれにまみれていたような気がする。
ああ。
もう一度、あれを繰り返すのか。
自分を見つめる彼の人の眼差しは柔らかく、暖かで。 雛森は見つめたまま、彼の人の姿が遠くなるのを感じた。上にいってしまう。いや、自分の体が沈み込んでいるのか。ぼんやりと感じながら、雛森は初めて気付いた。
注がれる眼差しの奥の奥にあるその仄暗さに。
そうかそうなのかそういうことなのでしょうか。暗く狭くなる視界はさいごまでその眼を捉えていた。
『03.もう何も言えない』
遠くの空がひび割れるのが見えていた。
吉良は座り込んだまま、壁により掛かりその光景を眺めていた。ただ、瞳に映していた。空から下ろされた光は三本。先程の報せを思い出し、あの光の中にいるであろう人は誰かを理解する。脳味噌がゆるりと回転し、自分が担った役割を理解する。そしてその行動によりもたらされた結果は、先程の報せの通りなのだろう。
「ふふ」
思いがけず、乾いた笑いが吉良の口から漏れた。
「ふふふふ、は、ははははは、はは……っ」
笑い出すと止まらない。体の横に投げ出されていた掌が堅く握られ、その拳を太股に打ち付ける。閉じていく空の割れ目を映した瞳はゆらりと滲んだ。
吉良は空を見上げたまま、かたかたと体を震わせて絞り出すように笑い続ける。
『04.空の両手を空へと』
掴んでいた手首は振り払われ、腕の中にいた体は光の中に消えた。
乱菊は閉じていく空を見上げる。もう姿はぼんやりと、光の柱のなかにしみのようにしか見えなかった。途端に、手の中の空洞が大きく感じられ、乱菊は手を堅く握る。
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02月08日(金)
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