ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■神は自粛をするか (1-5)
月の見えない日  剣八とやちる 051024
子供の頃よく歌った唄  勇音と荻堂 051025
蝉を食らう蟻  やちると弓親 051027
思い出と変わらない場所  恋次 051028
まな板の上  ルキア 051031
信じることで傷つくなら  二番隊 051101
両の目が焼けた  東仙と狛村 051104
そして僕らは日常へ帰る  十番隊 051107
欲望羨望誘惑嫉妬  檜佐木と吉良 051110
神は自粛をするか  ギン 051114 NEW



配布元 キョウダイ




月の見えない日

「剣ちゃん」
 左肩の上でやちるが囁いた。剣八は聴いていることを示すように軽く頭を揺らす。そうすると剣八のざんばらな黒髪がやちるの横で揺れ、やちるはくすぐったそうに笑い声をあげた。
「今夜は、少し暗いね」
「月がねえからな」
 剣八の返事に頷いて、やちるは夜空を見上げる。銀色の砂を撒き散らしたかのような星々がそれぞれ勝手気ままに瞬き、なのに音はなくただしんと静まりかえっている。世界に二人きりのような、錯覚すらおぼえるほどに。
「星がすごいね」
「そうだな。だからそんなには暗くねえだろ」
「うん。きれいだね」
「そうだな」
 星明かりだけでは剣八の表情はよく見えない。しかしその声の調子で、深さで、やちるは満足げに微笑んだ。体全体で剣八の頭に擦り寄ると、剣八はやちるの小さな体を支えなおそうと左手を伸ばす。
「もう眠いだろ。今夜の寝床を探さねえとな」
「平気。どこでもいいよ。剣ちゃんと一緒だもん」
 剣八は左手に暖かい体温を感じ、笑みを浮かべた。
「そうだな」
 やちるの体を頭の方に寄せると、手をそのままに剣八は大股で歩を速めた。




子供の頃よく歌った唄

 埃くさい倉庫の中で、勇音は小さく唄を口ずさみながら備品を調べていた。天井近くの小さな窓から、光がくっきりと輪郭を持って倉庫内に入り込んでいる。その斜めに射し込む四角い光の柱の中で舞い上がり踊る埃がはっきりと見えている。他の部分は薄暗い。勇音はその暗さを気にするふうでもなく、備品一つ一つに顔を近づけて確認しては、手元の紙になにやら書き付けている。
 ふと、その声が止む。勇音は屈めていた長身を伸ばし、扉を振り返った。それと同時に引っかかったような音を立て金属製の扉が開く。ゆっくりと開けられるそれの隙間から光があふれて倉庫内を照らし、勇音は眩しそうに眼を細めた。大きな光の四角の中に、黒い影がある。
「荻堂八席、どうしたんですか」
 勇音は微笑んで声をかけた。影は音もなく倉庫内に入ると、扉を完全には閉めずに細く開けておく。その隙間から外界の光が薄く入り込み、白壁を照らした。
「幾つか薬を取りに来たんですよ。副隊長こそ暗い中で閉め切って、何をなさっているんですか」
 先程より明るくなった室内で、荻堂の髪が光を柔らかく放っている。勇音はそれを見て笑みを深めたが、自分の髪もまた同じように仄暗い中にあるとは知らない。
「そろそろ不足しているものを補充しないといけないかなと思って、残存量を確認していたんです」
「扉を少しは開けておかないと、目が悪くなりますよ。それに、中に副隊長がおられることを知らない隊員が鍵をかけてしまうかもしれませんし」
「あ、確かに」
 勇音は今気付いたように、両手を胸の前でぱちんと合わせた。荻堂はいつも通りの、感情の浮かばない顔で頷く。

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02月07日(木)
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