ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雰囲気的な5つの詞(ことば):祈
01.その姿は祈りに似ている
02.ともすれば零れそうな想いが
03.誰でもない、君の為に
04.献花の如く、それは
05.祈る言葉なんて持っていないけど
拍手御礼文050926-1013 配布元 Title--Melancholy rainy day
『01.その姿は祈りに似ている』
ギンが、また姿を消した。
朝、隣の空間を見て乱菊は溜息をつく。いまだ幼い自分の手を置くと、そこにはまだ微かに温もりが残っていて、ギンが出ていったのはつい先程だと知らせていた。無駄だと知りつつ、それでも乱菊は戸口へと向かう。
戸を開けると、朝靄で何も見えなかった。
乳白色に包まれて、乱菊は二、三歩進んで足を止めた。
唇を引き結び、まるで睨むかのように靄の奥まで見るかのように真っ直ぐに眼を前に向け、乱菊はどこに向かっているのかすら知らないギンを見送る。背筋を伸ばし、脚を肩幅に開き、ただ一人。
わずかに空気が流れ白い靄が流れ、それに溶けるように山吹色の髪が揺れる。乱菊は身動ぎもせず、遠いギンをただ想っていた。何も見えない白い世界に溶けるようで、けれど決して混じらない高潔さで、乱菊は見えない先を見つめていた。
『02.ともすれば零れそうな想いが』
十番隊副隊長が怪我をしたという一報が三番隊に入ってきた頃には、すでに彼女は四番隊から十番隊に戻っていた。
「……えらい珍しいなあ、副隊長さんが。イヅル、詳細聞いとる?」
反射的にソファから体を起こし、一拍置いて落ち着かせてから、ギンはその一報を持ってきた吉良に尋ねる。声に本音が混じりそうで、ギンは口元の笑みを深くした。
ただのお喋りとしてそれを話していた吉良は、書類から顔を上げた。
「現世での任務中、部下を庇って虚を斬った際に足場が悪くて転んだだけらしいですよ。右足首の捻挫だそうで。確かに珍しいですよね、松本さんが」
少しおかしそうに笑って話す吉良に、ギンは眉間に入っていた力を抜いて笑みを浮かべた。
「なんや、捻挫なん。ほな心配いらんねえ」
「お元気そうでしたよ。先程、雛森君と十番隊にお菓子を持っていったら喜んで召し上がってましたから」
「抜け駆けしよったね、イヅル。……ボクの分は?」
「この書類を書き上げてくださったら休憩時間です」
吉良から渡された書類を手に持ち、ギンはつい息をついた。そこから何かが零れていってしまいそうで、誰にも見せられない何かが零れてしまいそうで、ギンはソファに寝そべると、隠すように顔の高さまで書類を持ち上げた。
『03.誰でもない、君の為に』
中庭を挟んだ向こうの渡り廊下に銀髪が輝くのを見て、乱菊はほうっと息をついた。
「どうしたんですか」
隣にいた雛森が覗き込むように尋ねてくる。乱菊は雛森に振り返ると、無言でただ微笑んだ。雛森は乱菊の見ていた方向を見て、そして明るい声で、
「あ、吉良君だ。無事に帰ってきたんだ」
と言った。そして乱菊を振り仰ぐ。
「難しい任務って聞いていたから少し心配していたんです。よかったあ」
「そうね。あたしもそう思って」
「やっぱりそう思いますよね。吉良君ってしっかりしてるのに、ときどき、あれっ? てところで怪我したりするから」
雛森はそう笑うと、ギンの後ろを歩く吉良に手を振る。こちらに気づいていたらしい吉良が、遠目でもよく分かるほど嬉しげに手を振り返した。前を歩いていたギンがそれに気づき、こちらを見る。
微かに微笑んだ気配がした。
慌てて礼をする雛森の横で乱菊は小さく会釈をする。表情もよく見えないこの距離で、それでも伝わるだろうと乱菊は思う。もうあまりに遠すぎて、肌にほんの少し、感じられるくらいだろうけれど。
この安堵も、祈りも。
ただ一人にだけ向けられているこの笑みも。
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02月06日(水)
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