ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 5
「ううん、石蕗でしょ。大きな葉に強い茎で、その上に可愛い花が沢山咲いていて、あれを見つけたとき、ほっとするもの」
乱菊はだいぶ昔、薬効のある植物を探して歩いていた心細い時を思い出して言う。ギンもまた同じ過去を思い出したのか、納得したように頷いた。
「ああ、あの子、確かに逞しいのか可愛らしいのか分からんもんなあ」
「そういう言い方は違うでしょ」
ギンの言葉に乱菊がギンを肘で突く。ギンは体を捩ってそれを避けた。
「そうやねえ、女の子は花のようやね……でも乱菊が一番ようきれいに咲いとる」
自分を見つめている乱菊に、ギンは笑いかけた。そしてしみじみと呟く。
「良かったなあ、乱菊。友達できて」
「そうね。でも、あんたともこうして話をしたいのよ。本当は」
「……そうやね」
「こんな、誰も周囲に人のいない時くらいはいいでしょう。ギン」
「うん」
即答し、ギンは口の中で、そうしぃひんとボクもキツイと呟いた。
「あたし、入学式のときからずっと、話したかったのよ………あんた、人に級長押しつけるし」
「怒っとる?」
「かなりね」
ギンは無言になり、そして
「すんません」
と囁くように言った。乱菊は苦笑して、もういいわと言った。
涼しい風が木々の間を吹き抜けていた。あの春の日はもう遠くなっていた。
そうしているうちに、林の中は夕闇に沈んだ。お互いの制服の白がぼんやりと浮かび上がる。
「乱菊、そろそろ帰らなあかんやろ」
ギンがそう切り出すと、乱菊はふて腐れた。それを見てギンが柔らかく笑う。
「あかんて。もう帰らな皆心配しよる」
そう言ってギンは乱菊の片頬を軽く摘んだ。柔らかいそれがギンの指に吸い付くようで、ギンはすぐにそっと離す。乱菊はただそれを笑みを浮かべて眺めているだけだ。
「今度はいつ、こんな風に話せるのかしら」
「分からん。けど、乱菊が今日みたいに危のうなったら、ボクすぐ駆けてくるさかい。な」
「あんたが来てくれるのは嬉しいんだけど、今日みたいなのは鬱陶しいから嫌だなあ」
苦笑して、乱菊は肩を竦めた。ギンも同じように笑う。
「ボクも、乱菊にあんなんが付きまとうの、嫌や」
互いに顔を見合わせて、そして同時に枝から飛び降りる。微かに音を立てるだけで、二人は地面に立った。
「もう他の子らは帰ってきとるんか」
「帰ってきてる。宿題を終わらせようと必死だったわね」
そう言って、ふと乱菊は顔をしかめた。
「ギン」
「なんや」
「あんた、ちゃんと宿題やった?」
ギンが何も言わずに、にやりと笑う。乱菊は顔を引きつらせる。
「ちょっとギン、怒られるの、あたしなのよ?」
「大丈夫やて、ちゃあんとボクも説教くらうさかい」
「そういう問題じゃなくて」
眉尻を上げる乱菊の肩を軽く叩き、ギンは笑って促した。
「ほれ、見つからん程度まで送るさかい、帰ろ」
叩かれた肩を落とし、そして乱菊は諦めたように溜息をついた。顔を上げるとギンが楽しそうに笑っている。つられて乱菊も、微笑んだ。
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06月07日(水)
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