ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 6
乱菊のいる組は学年でも優秀な学生ばかりを集めていて、魂葬実習も入学から半年ほどした頃から行われていた。その度に学生達はそれぞれ三、四人で組んで彷徨っている魂を探し、最上級生の監視の元、それらを尸魂界へと送る。
ギンと乱菊の実力は他の学生達とはかけ離れて強く、そのため二人は必ず、学級の中でも特に弱い……霊力の差だけではなくその扱いに慣れていない……学生と組むことが多かった。互いが互いと組むことはまずなかった。それを乱菊は理解していたし、幾度か魂葬を経験してみて、この任務はギンにとっては危険なものではないことが分かったので、姿が見えなくても安心していた。
夏が終わり、秋も過ぎて、もうすぐ冬も去ろうとする頃だった。
それは一年次で最後の魂葬の実習日だった。
その日は、現世でも陽射しが和らぎ、木々の枝には緩やかな生命の息吹が感じられていた。現世は焦臭い戦乱の時代に突入していて、各地で血みどろの争いが勃発し、身分も性別も年齢も関係なく、巻き込まれて命を落とした者の魂が溢れていた。その数は尋常ではなく、そして彼らは虚になる可能性が高かったため、戦いの地に実習の学生が送られることはなかった。
乱菊達は、ある小さな村の外れにいた。
この地はまだ戦禍を被ってはおらず、人々は不穏な世の動きに不安げにしていたものの平和に暮らしていた。ここで命を落とす者の多くは病や怪我で、希に人殺しがあるくらいだった。実習には最適の場所で、前々回も実習地として選ばれている。
乱菊達も慣れており、最上級生の合図と共に一斉に町に飛び出した。
乱菊はこの日、まだ刀も鬼道も上手く扱えない男子二人と組んでいた。それでも乱菊のサポートもあり彼らの真面目な学生であったため、余裕を持って決められた件数の魂葬を終える。夕焼けの空の下、記録を確認して、乱菊は安堵の溜息をついた。魂葬実習ではときどき事故が起きる。これまでの実習ではそんなことはなかったが、乱菊はこれまで起きた事故の話を聞いてからは、実習が終わるまで気を抜かなかった。
男子二人と顔を見合わせて、乱菊は微笑んだ。彼らは照れたように目をそらし、それでも笑みを浮かべる。そして集合場所に向かった。
その時だった。
右手後方でスミレの悲鳴がかすかに聞こえた。乱菊は瞬間的に体を強張らせ、すぐに振り返る。もう一度、細い悲鳴が聞こえた。
「先に帰って」
乱菊は男子らに告げた。彼らは怯えたような眼をして、視線を彷徨わせる。乱菊は強い口調で繰り返した。
「先に帰って。それで先輩を呼んで。あたしが一人で行ってくるから、ちゃんと、落ち着いて先輩に場所を言って。頼んだわよ」
そうゆっくりと言い聞かせるように告げ、乱菊は踵を返し、走り出す。もうスミレの悲鳴は聞こえない。乱菊は背中に冷たい汗が流れたのを感じた。スミレはツワブキ、リンドウの三人で組んでいた。実習に向かう前、一人だけ外れてしまった乱菊を慰めるように、三人が話しかけてきたことを乱菊は思い出す。三人の霊圧が普段より強く感じられ、乱菊はそれを頼りに走っていた。自然と刀を握る手に力が入る。乱菊は歯を噛みしめて、一跳びに家々を越えた。
急に異質な霊圧が乱菊を押し戻そうとするかのように溢れ出た。
乱菊は水の中に飛び込んだような感覚に息を止め、けれど目は見開いたまま町外れの広場に降り立った。そして、すぐに走り出す。
目の前には一体の、巨大な虚。
そして、虚を村から引き離そうとするかのように霊圧を解放して、外れの森の方へ逃げる三人の姿。
「乱ちゃん」
リンドウがこちらを向いて、呟いた。その顔はひどく白かった。
乱菊は立ち止まると両足を開いて踏ん張り、一気に霊圧を解放する。その勢いで肩の下まで伸びていた髪が吹き上げられ、金色の炎のように揺らめいた。
霊圧を感知したのか、虚がゆっくりと乱菊を振り向いた。無機質な白い仮面と、虫のような、細く長い手足がこちらに向けられる。その先には鋭く光る爪が三本。
それがいきなり伸びてきた。
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06月08日(木)
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