ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 3
 ギンが口を挟もうとすると、乱菊がきっと睨んだ。
「あんたは何にもしちゃだめよ」
「そうよねえ。ギンちゃんがいなかったから、あんなことになっていたのにね」
「ほら、奥さんもそう言ってるじゃないの」
 女二人に挟まれて何も言えず、ギンは黙りこくって奥方が出してくれた白湯を飲んだ。乱菊はどことなくはしゃいで奥方と話している。そんな笑顔を見ていると、怒られてもええか、とギンはのんきに思う。もうこれからずっと一緒にいられるのかと思うと、ギンは何をされても嬉しかった。初めて味わう開放感に、ギンは浮かれていた。
 乱菊は、いろいろと詰め込んだ籠を奥方に差し出した。
「あら、どうしたの、これ」
「あのね、あたしとギン、もう少ししたらここを出ていこうと思うの。これは持っていかないし、あたしが決まりとは別に個人的に集めたものだから奥さんに貰ってほしいと思って」
「あら……」
 奥方は眉を顰めた。
「どこに行くの」
「死神になろうと思って、中央に」
「あらあらあら」
 乱菊の言葉に奥方は泣き始めた。乱菊が奥方の肩にそっと手を伸ばす。
「寂しくなるわ、そんな遠くに」
「ごめんなさい。急にこんなことを言い出して」
「ううん、いいのよ。ごめんなさいね、泣き出しちゃって。恥ずかしいわ」
 袂でそっと涙を拭う奥方を見て、乱菊はここにいた自分は恵まれていたんだなと思う。これまでギンと乱菊は定住ということをほとんどしてこなかったけれど、この集落には一番長く住んだはずだ。ここだからギンを待っていられたのかもしれない。
「みんなに迷惑じゃなかったら、数日したら出ていこうと思って」
「長老達には言った?」
「これから言いに行くつもり」
「そう……うん、そうね、早く言ったほうが良いわ。いってらっしゃい」
 奥方が乱菊を抱きしめた。そして肩越しにギンを見つめる。
「ギンちゃん、乱菊ちゃんをよろしくね。もう離れちゃだめよ」
 涙目に見つめられて、ギンは神妙に頷いた。もう、離れる気はどこにもなかった。




目次

03月22日(水)
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