ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■君といられる残された日々を数えているのに
ああ、あのときから不機嫌になってたんやろか。ギンは昨夜の己を呪いつつ、それでも反論する。
「せやかて、ここ、地区境の山とは違うんやで? 言うたやないの。山の向こうにもう地区ないで。尸魂界の端やないの。それにここ、たぶん霊山や。なんかあったら」
ずだ袋にすがるようにしっかりと抱きしめてギンは言い募り、そこで失速した。
「……まあ、乱菊は一度上まで登ってはるんやもんね」
「そういうこと」
乱菊は立ち上がり、尻を軽くはたいて土埃を落とした。
「あんた、あたしの言うこと聞かないでさっさと話は終わりましたって顔するんだもの。人の話は最後まで聞きなさいよね、ホント」
「すんません……」
項垂れるギンの頭を乱菊は軽く小突くと、脇に置いていたらしい小さな袋を手に取った。ギンは小突かれた場所に手を当てて、窺うように乱菊を覗き見る。それを見て乱菊は小さく笑った。
霊気の霧が漂いはじめてしばらくすると、生き物の気配が消えた。
木々はやがて低木になり、そして岩にはりつく苔になった。地面は岩場になり、大きな岩も転がっている。霊気の向こうに太陽が見えるが、うすくぼんやりと円く光っていた。はっきりとはしないが、太陽はもう天頂を通り過ぎたらしい。見るたびに少しずつ、その位置を下げていた。
霊気はどこかひやりとしている。ギンは息を大きく吸い込んで、その感触を肺で味わう。どこか冷たく、そして濃い。きつい斜面を登ることで体力は奪われるが、霊気が熱を帯びる体を冷ましていく。疲れが気にならない。
「乱菊」
振り返ると、息は荒いがすっきりした顔の乱菊がギンの方を向いた。
「なぁに?」
「何か、不思議な心地やねえ。疲れとるのに、あまり苦しゅうならんよ」
乱菊は頷いた。
「そうね。もしかするとあたし達にチカラがあるから大丈夫なのかもしれないけどね」
「そうかもなあ。生き物、おらへんもんなあ」
ギンは周囲を見渡した。ときどき石の転がる硬い音がするばかりで、他は何の音も聞こえない。霧に全て吸収されていくような気がする。ギンと乱菊の声も響くことはなく、どこかに消えていく。
「てっぺん、まだ遠いなあ」
斜面はかなり先まで続いているようで、ギンは目を凝らしてその行方を見定めようとした。霧は先に行くほど濃くなるから、少し先はもう見えない。
乱菊がギンの横に並んだ。
「いいのよ。本当に頂上までは行かなくても」
「そうなん?」
振り向くと、乱菊は神妙な顔をしている。
「この先で、切り通しにみたいになっているところがあるの。そこを通って山の向こう側に行けるわ」
「山のてっぺんやのうて、単に向こう側に行くつもりやったんか」
ギンの言葉に乱菊は頷いて、背をぽんぽんと叩いた。
「もう少しよ。ホントにもうちょっとで向こう側なの」
「うん、ボク平気やねん。もうちょっとでも、一日中でも」
そう言ってギンが笑いかけたとき、腹から大きな音がした。慌ててギンが手で腹を押さえるのと同時に、乱菊が吹き出す。
「……でも、腹減った……そない、笑わんでも」
「ご、ごめん。向こう側に行ったらごはん食べよう。干し芋を持ってきたから」
笑う口を押さえて乱菊は言い、慰めるようにギンの頭を撫でる。ギンはふて腐れて歩き出した。
「ほら、行くで」
「はいはいはい」
ギンの後ろをくすくすと笑っている乱菊がついてくる。ギンはわざと足を速めた。乱菊は構わず笑っていて、そのうちにギンの、固く結んでいた口も緩んだ。
→続
続きます。
01月15日(火)
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