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G*R
by K・カヲル
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■ぼくらはただそうやって世界を手にした 7
 乱菊は洞窟の外に座り込んで、ギンの帰りを待っていた。森の中で見つけた蔓を編んで簡単な籠を作っているのだが、あの銀髪が見えないかと気になってなかなか完成しない。あの夜以来、ギンが何か考え込んでいるようで、そして何を考えているのかさっぱり分からなくて、乱菊はできるだけギンと離れたくはなかった。何かが不安にさせる。乱菊はその不安をじっと押し殺す。
 あの夜を思い出すと胸が潰れるように感じて、乱菊は籠を編む手を止めて、両腕で自分を抱え込む。親しくしてくれていた人達の死も哀しいが、あの、嵐のような霊圧が消えた後のギンの姿を思い出すと、どうにも切なくてやりきれない。
 自分がギンに殺させた。
 ギンの疲れ切った表情は、痛々しくて乱菊の胸をぎりぎりと締める。
 乱菊は、ギンが人を殺すことについて何の躊躇もないことには実は気づいていた。乱菊と出会う前のことはほとんど聞いていないが、言葉の端々から、どこか冷めた、感情にもなっていない何かを感じていた。幾度か襲われたときの暴漢への対応からも、冷や水を浴びせられたような何かを感じたことがある。それは子供故の残酷さではない、もっと違う何かだった。
 それでもギンはあのときあの表情をした。
 溜息がもれる。ギンは自分がどんな顔をしているかなんて気づかない。
 普段のギンは無闇に人を、生き物を殺したりはしない。
 ギンがとても強いため、必死になるあまり勢い余って殺してしまうということがないこともあるだろう。余裕があって、どうすればいいのか判断がきちんとできて、必要最小限の行動ができるからだと思う。
 でもそれだけではない。乱菊は一緒にいるときのギンを思い浮かべる。一緒に歩いているときのギンは本当に嬉しそうに笑っているのだ。乱菊と一緒に、花や虹や空や、いろいろなものに対して喜んでいる、あれは本当だと思う。
 そしてなによりも。ギンは乱菊を拾ってくれたのだ。この荒んだ人達の中で、大人ですら自分自身の命を守るだけでも大変なこの場所で、ギンは子供の手で乱菊を拾い、守り、きれいな世界を与えてくれた。
 あたしの全てはギンがくれたものだ。
 乱菊はここまで考えて、ほうっと息を付いて体の緊張を緩めた。木々の間から空を見上げると、もう茜色に染まっている。
 ギンと全てを半分こにしよう。
 食べ物も飲み物も、衣服も毛布も、喜びも哀しみも、楽しい出来事も重い暗い現実も、紅く染める血もそれを洗い流す水も、温もりも幸せも罪も罰も希望も何もかも。
 全てを分け合おう。全てを一緒に味わえるように。
 かなり大人びているとはいえまだ子供の乱菊には、全てという言葉がどれくらいの重さを持つものなのか具体的にはわからない。ただ感覚的に乱菊はそれを正確に捉え、見据えていた。
 暮れなずむ空の下、乱菊はギンを待っていた。乱菊の中の不安はまだ消えないけれど、自分自身がどう考えているのかはっきりしたように感じて、乱菊はただギンを待つことができた。そして木立の向こうに夕日に紅く光る銀髪を見つけたとき、大きな声でその名を呼んだ。ギンは大きく手を振りかえしていた。




目次

01月17日(月)
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