ID:104863
G*R
by K・カヲル
[120055hit]

■ぼくらはただそうやって世界を手にした 4
 乱菊の熱心さに、ギンは感心していた。殺されるのもイヤだが殺すのもイヤ、という乱菊は、繊細に調節した霊力で確実に相手を気絶させようとする。怪我はさせるだろうけど、殺すのはできるだけ避けたいの、とあるとき乱菊は話した。誰かに襲われたのか、放置されていた死体を見つけて埋めた後のことだ。こんな場所で暮らす限りそんなこと無理かもしれないけど、殺さなくても大丈夫なら無闇に殺すことはないし……とまだ迷いがあるように、眉を顰めてゆっくりと言った。
 これまでそんなことを考えもしなかったギンは、乱菊は優しい子や、と誰に自慢することなく自慢げに考えていた。乱菊自身は自分の考えにいろいろ迷っているようだったが、乱菊が死体の刀傷を見たときに、痛かったでしょうにと小さく呟いたのをギンは聞いていた。
 ギンは無闇に弱い者を殺すことこそしてこなかったが、他人がどうなろうと心が痛んだことはなかったし、邪魔をする人間は容赦なく殺した。そんな自分を思い返しすと、乱菊が傍にいてくれて本当によかったと思う。乱菊を中心に、世界は綺麗で優しくて暖かいものにかわっている。その中にいると自分もそうなれているように感じて、ギンはこれまでになく穏やかな気持ちになる。誰か襲ってきても、別にボクが守るんやから乱菊は頑張らんといいんやけどな、とはギンは思っていたが、乱菊の目の前で人を殺さないようにと、霊力を瞬時に調節して正確に当てる訓練を真面目にしていた。乱菊と一緒に何かをすることそのものが嬉しいので、ギンにとっては別に何でもいいのだ、ということもあった。
 昼間は食料を集めて、夜は一緒に訓練をして、眠る。そんな穏やかな日々が過ぎていった。時には暴漢に襲われたり野犬の群に出くわしたりしたが、それらも怪我することもなく追い払うことができていた。ギンの霊力は安定して強く、乱菊もまた、比較対照がギンだからこそ自分で弱いと思っていたものの、決して弱くはなかったからだ。




目次

01月08日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る