ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■ぼくらはただそうやって世界を手にした 5
 それは一緒に暮らして半年を過ぎた頃に初めて起こった。


 季節はもう春爛漫といった頃で、食料となるものもどんどん豊富になっていた。こうなると人間どうしの争いごとは冬に比べて減ってくる。ギンと乱菊も少し安心して、数軒がかたまっている集落の外れにあったあばら屋で暮らしていた。その集落は比較的まともな人間が多く、二人と同様の霊力のある人間もいなかったので食料争いはほとんど起きなかった。
 油断していたのかもしれない。
 ある夜、引き戸の向こうの砂が踏みしめられる音にギンは跳ね起きた。隣で眠っていた乱菊も目を覚ます。
「何……」
 乱菊の言葉に振り返ることもせず、ギンは乱菊を庇うように背にして、引き戸の方角を睨みつけた。霊圧は感じない。けれど数人の気配がする。なんでこんな近づかれるんまで気づかなかったんや、とギンは唇を噛んだ。
 乱暴に引き戸が開けられ、ずんぐりとした男が一人、ゆっくりとした足取りで入ってきた。他の人間の気配は家の周囲に散っている。おそらく、窓の下などにいて、逃げ出すのを捕まえようとしているのだろうとギンは考えた。この現れた男と、一人……二人……三人が外にいる。全部で四人。
「なんだ、二人かわいいのがいるって聞いて来てみたら、片方は男かよ」
 低い、からみつくようないやらしい声で男が言う。その態度は横柄で、ギン達が子供であることに安心しきっているようだ。
「でももう片方のガキはべっぴんさんじゃねえか。その娘と食い物を置いてきな。そうしたら、お前は逃がしてやるよ」
「誰がそないなことするか。阿呆が」
 ギンは低い声で答える。乱菊は声も出さずに逃げる体勢をとった。乱菊にも、襲いに来た男達に霊圧がないことは分かっていた。ここは、落ち着いて対処すれば大丈夫。乱菊が霊力を溜めはじめた気配に、ギンも右手に霊力を集めた。
 その様子を見て男は舌をならした。
「霊力持ちかよ……! お前らっ! 入ってこい!」
 男が叫ぶと同時にギンは男に向かって霊力を放った。力の塊が男のみぞおちにあたり、男は白目を剥いて前のめりに倒れ込む。同時に入り口とから二人、一つあった窓から一人、男達が入ってきた。窓を向いて待ち構えていた乱菊が足をかけて体を入れてきた男にめがけてなんとか塊になった力をぶつけると、男は外に吹っ飛んでいく。急いで振り返ると、ギンが一人を殴りつけて倒していたところだった。右手に集中的に集められた霊力で拳が薄ぼんやりと光っている。もう一人の男がギンに襲いかかろうとしていることに気づいて、乱菊は慌てて傍にあった薪を投げつけた。
「乱菊! 逃げ! ボクもすぐ行くわ!」
 薪に怯んで体勢を崩した男に躍りかかって殴り倒すと、ギンはそう叫んで乱菊に外を指し示した。
「はよ行き! おばさんトコロに逃げ! そしておっさん達呼んでくれたらそれでええわ!」
「……わかった!」
 一緒にいたかったが、乱菊はあばら屋を飛び出した。後ろで人を殴る音がする。これは多分、ギンが殴っているんだ。そう自分に言い聞かせて、全力で走る。近所の家まで、数十秒は走らなければならない。急がないと、急がないと。
 夜道を月が照らしている。男達が襲ってきたのに、とても明るい月夜だ。夜に静かに沈みこんでいる集落に走り込み、乱菊はなじみの中年の女の家に飛び込んだ。
「おばちゃんっ、助け…………!!」
 声にならない悲鳴が漏れるのを、自分で感じていた。目の前にはおびただしい血溜まり。その中に倒れ込み、血に浸るのはもう動かなくなったなじみの女の体。むせかえる血の臭い。そして数人の男達が血塗れになって、部屋の中を物色していた。そして一人の男からは。
 霊圧。
 気づくのが後れた。
 飛び退いて逃げるより先に男から霊力の塊が飛んできた。避け損ない、乱菊は右太股のあたりに強い衝撃を受けて、倒れ込む。そこに別の男の手が伸びてきて乱菊を家の中に引きずり込んだ。咄嗟に全身から霊力を放出しようとしたが、霊力持ちの男が乱菊の両肩を押さえて、自分の霊圧で乱菊の放出を押さえ込む。
 圧迫感で息が浅くなる。乱菊の放出が弱まったのをみて、男が乱菊の頬を殴った。床に叩きつけられて、乱菊の集中が途絶える。

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01月10日(月)
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