デイドリーム ビリーバー
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2002年08月06日(火)

このところ雷続きだけど、何を隠そう私、実は、雷がだいすき。
台風も好き。
こっちはまだ晴れているのに、低気圧の雲がぐんぐん近づいてきて
遠くでゴロゴロ鳴っているときなんて、わくわくしてたまらない。

「雷が鳴るかもしれない」
たったそれだけの理由で、この季節が楽しみだったりする。


子供の頃は、台風が来ると、母の目を盗んで家を飛び出して
「秘密基地」に行っていた。
ようやく帰ってからも、怒る母を無視して、窓にへばりつき
雨と雷の鑑賞。明日がテストだろうがなんだろうが、おかまいなし。
テストよりこっちの方が大事だと、真剣に思っていた。


もちろん、被害にあうのはイヤだし、被害にあわれた方は気の毒だと思う。
雷や台風が好きだなんて、不謹慎もいいところなのかもしれない。

でも、顔がニヤケてしまうのは、止めようがない。


私は、つい最近まで、みんなこうなのだと思い込んでいた。
今でも覚えている、大学1年の夏(ってあれ?最近じゃないのか?十年近く前?)
バイト先で、雷が鳴り始めた時、思わずつぶやいてしまった。
「ああ帰りたいなぁ…」

バイト先のみんなは
「ねー、帰りたいねー。怖いよねー」
「まじやばそうだよなー。これ終わるまでに、やめばいいけど」
「ここには落ちないよねえ。キャッまた光ったー!」

私が帰りたいと言ったのは、
バイトなんかやめて鑑賞していたい、と、そういう理由からなのだけど。
いつもは態度の大きい、ワイルド系の男の子でさえ、少しびびっていた。
ま、ハンバーガー屋でバイトしている時点で、そのワイルドっていうのも
たかが知れてるんだけど。


で、私は今回も、例によって部屋で一人、雷鑑賞をしていたわけです。
アパートの私の部屋はベランダがなく、窓だけなので、開けてその窓わくに座る。
両足は鉄柵のあいだから、ぶらんと垂らす。
よい子は真似しちゃいけませんよね。雷って避雷針に落ちたら、壁をつたって
地面におちるんだっけ?うちのアパートにも避雷針ってついているのかな。

とにかく、光の模様が素晴らしいです。アホな私は、涙すら出そうでした。
ていうか、実は泣きました。エヘ。

そのうち、机の上で携帯がなった。窓のそばの、パソコンを置いてある机。
手を伸ばしたらなんとか届く距離だったので、足は柵から抜かずに
(抜けなかったんじゃありません、あくまで、抜かずに)
左手で鉄柵をにぎって、体を傾け、ぶらーんと右手を伸ばして
だらしない格好で携帯をとったら、彼からだった。

恋する乙女の私は、一瞬にして恥ずかしさで、耳まであつくなる。
いや、ほんとにほんとに。

彼のタイプは、
決してこんな格好で雷鑑賞する女ではないはずなのです。
ましてや、こんな格好で携帯をとる女では。
実家の母も、この進歩しない娘の姿をなげいているに違いない。

だけど、彼からは思いがけない一言。
「雷見てる?すごいよなあ!興奮するなあ!」



お母さん。
あなたが、つきあいを大反対しているこの人は、やっぱり私に似合いだよ。
一緒にいると楽しいし、本当に顔が笑っちゃうんだよ。

もちろん、お母さんと彼は一度も会ったことがないわけだし、
会えば、ひとめで気に入るのかもしれない。
母親として、心配しすぎているだけなのかもしれない。
お母さんの気持ち、半分もわかってあげていないかもしれないけど

私達、まだ数年は結婚とかしないんだ。お母さんには理解できないみたいだけど。
だから今の状態では、まだ会わせられないよ。

お母さんに言わせれば、結婚を前提にしていない付き合いは「ただの遊び」
なんだそうだけど、私は本気で彼が好きだし、もう彼に決めちゃったんだ。
今の関係を、「こういうものだから」って、お母さんを説得して
納得させることなんてできない。「何年後に結婚するから」なんて
安易な約束もできない。「すぐに結婚」しない以上、お母さんの不安全部は
とりのぞけない。

だから今は少し時間をちょうだい。

たった今、お母さんが死んだら後悔するかもとか、そういうことも考えたよ。
お母さんが好きだから、不安なままにさせておくのも、苦しいよ。
だけどやっぱり今は、お母さんを納得させるよりも
彼との関係を大事にすることを、一番に考えたいんだ。冷たいようだけど。

私がこれからの月日を、幸せに過ごすのを見てもらうことで
ある程度は安心させられると思う。だからごめんね。



彼と私の家とでは、距離の分だけ、雷の見え方や音の聞こえ方が違った。
携帯で30分ぐらい、実況中継しあった。

とても楽しい夜だった。


2002年08月02日(金) てのひら

私の手のひらはデカい。デカくて肉付きがいい。

女の人の手というものは
白くて、細くて、小さくて
きめがこまかくて、しっとりしていて、ひんやりと冷たい、
そういう手が理想だと、私は勝手に思っているので
彼と手をつないでいるとき
「プニ、プニ、プニ、プニ…」
と唱えながらモミモミされると、腹が立つ。

「なんで怒るん。いいやん、やわらかくて気持ちいいねんから。
 ほんま、赤ちゃんみたいな手やなー。プニ、プニ、プニ、プニ…」

赤ちゃんみたいじゃないっつうの。デカいっつうの。
ただ、それで、私が自分の手をきらいかといえば、そうでもない。


いつだったか、友人のお母さんで、手相を見るのが趣味の人がいて
みんなで見てもらうことになった。
その人はちょっと変わった人で、私たちの手をとっては
「まあ、かわいらしい手」「まあ、白いわねえ」
「まあ、指が細いこと」「まあ、爪がきれいね」
などと必ず褒める。さて私の番になり、私の手をとったその人は

「まあ、…のびやかな手」と言った。

私は嬉しかった。
ああそうか、確かにな、なんて思った。
キレイとかカワイイとか言われるよりも、私は嬉しくて。
ああ、私がめざすのは、キレイな手なんかじゃないんだ、なんて
そんなことを思ったりもした。



私と彼の手は、似ていると思う。

似てるよね、という私を、彼は否定する。
「えー、全然似てないやろ」
そうかなあ。肉厚感とか、手のひらの大きいところとか、似ていると思うんだけど。
「だって俺、指短いもん。宙ちゃんは長いやん」
「でも爪のかたちとかさあ」
「それこそ全然違うやん!」

だからそれは、私が爪をのばして、ネイルでごまかしているからだってば。
今どき、こんなものに騙されてくれているなんて、嬉しいわ。ふふふ。


手だけに限らず、私たちの体は似ていると思う。
骨格とか、肉のつき方とか、肌の質感とか。

もちろん私は女の体で、彼は男の体で、
そういった意味では、骨格も、肉のつき方もまったく違うけど。
もしも私が男だったら、彼のような体になっていたんじゃないかと思うのだ。

これってヘンかな?
もしかしてナルシスト?



ちなみに、私の手は、父の手と似ている。

だから、彼の手も、父の手と似ている。

それが、なぜか嬉しい。
私は、少しファザコンっ気があるのかもしれない。


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