デイドリーム ビリーバー
INDEXpastwill

2002年07月29日(月) せつないキス

なんだかさみしかった。

彼がかまってくれないとか、そういうわけじゃなく
どちらかと言えば、問題は私。私の気持ちが、さめてきたような気がする。
さめてきたと言うと、語弊があるかも。
もちろん、嫌いになったとか、そういうんじゃない。
ときめかないとか、そういうんでもない。

あいかわらず、彼のことは大好きだし、彼の寝顔を見ているだけで
ほんわぁと胸があたたかくなる。彼が笑ってくれるだけで
嬉しくてたまらないから、最近では芸人街道まっしぐら。


だけどさ。なんていうか。
「いつキスしてもいい関係」って、すごく幸せなことでもあるけど

キスしたくてしたくてたまらなくて、でもできない、しちゃいけない
だけどしたい、いいのかな、彼もしたいと思っているかな
この唇と唇をくっつけちゃったらどうなるんだろう…

なんてドキドキ絶頂のキスって、
やっぱり最初しかできないじゃないですか。

ドラマみたいな映画みたいな。
お互いの気持ちが盛り上がっていてこそ、というか。



彼とはじめてキスした時は、彼にはまだ彼女がいた。
絶対ダメだって、私達は友達同士だって、ブレーキをかけて
お互い、バカみたいな冗談ばっかり言い合って、大笑いして
でもどうしても、とめられなくてとまらなくて、キスしてしまった時は
ドキドキして苦しくて、何も考えられなくて、
翌日は部屋でひとり、毛布にくるまったまま、ソファに座って
胸がぎゅうぎゅう痛むのに耐えて、泣いていた。

あのときのキスは
いくら、そのあとすぐに、彼が彼女と別れたからといって
やっぱりしちゃいけないものだったと思う。逆に私が彼女の立場なら
絶対にしてほしくなかったと思うし。

私にとっては、好きな人とはじめてキスをした、大切な思い出。
だけど彼にとっては
長くつきあっている彼女がいたにもかかわらず
気になる女の子ができて、デートして、キスしてしまったっていう
言うなれば浮気よね。
違うあれは本気や、って彼は言い張っていたけど。

だから、美しい思い出にするのも、なんだか違う気がして
このキスだけにかかわらず、あの、曖昧な頃の出来事はすべて
いまだに、心の中の位置付けとして、迷っているところがある。


だけど、やっぱり懐かしい。
私達はもう、あんなせつないキスはできない。

例えば、一時的に遠距離になるとか、大ゲンカをするとか
乗っていた船が氷山にぶつかって、沈みそうになる中二人で逃げまどうとか
そういうことでもない限り、
私達にできるのは、あいさつみたいな軽いキスか
えっちなキスか、あたたかい愛情あふれるキス。

バリエーションから言ったら、今の方が贅沢だと思う。幸せだとも思う。
あの頃は、「せつないキス」しか、選択の余地はなかっただろうから。


…ああ、だけどやっぱり懐かしい。せつないキスがしたい。

そう思ったら、なんだかさみしくなった。
どんなにあたたかいキスをされても、足りなかった。
ていうか、私がそんな風だったら、そう口に出してはいなくても
彼にも何かが伝わるから、どこかぎこちなくて、あたたかいキスもない。
あからさまなギスギスではないけれど。



何で急にこんな気持ちになったんだろう?
デートから帰ってから考えに考えて、ようやく犯人にたどり着いた。

レンタルビデオです。「金枝玉葉」です。
8年前の香港映画です。昨日、寝る前に見たんでした。

プロデューサーのサム(レスリー=チャン)と、歌手のローズ(カリーナ=ラウ)は
誰からも憧れられる、ベストカップル。
だけどサムは、二人の関係に、しっくりこないものを抱えている。
そんな二人の前に、新人歌手のウィン(アニタ=ユン)が現れる。
ウィンは、オーディションに出るために男の子のフリをしているけど
実は女の子。
女だということを隠したまま、3人は仲よくなっていく。
そしてそのうちサムが、ウィンに惹かれはじめる。
だけどサムから見たウィンは、あくまで男の子。
サムには「自分はゲイじゃない」という葛藤があって
それでも二人は、とうとう気持ちがとめられなくなって。

「だめだよ」
「かまわん」
「僕は男だよ」
「おれもだ」
みたいな。

唇が、近づきはじめては離れ、近づきはじめては離れ
みたいな。

ああもう、単純ですみません。そうよ悪いか。重ねて見たよ。
私と彼と、元彼女に(←間に、読点を打っているのは、ささやかな抵抗)

そんで、じれったいキスシーンにドッキドッキして
羨ましかったのよ。ものすごーく。


理由がわかってすっきりした頃、
家まで車で送ってくれていた彼から「家につきました」のメールが届いたから
いつもなら「おやすみ」ってメール送って終わりなんだけど
携帯に電話して

でも、別にケンカしたわけでもないし、ギスギスしていたわけでもないし
あやまるのも変かな、意味不明かなって思いつつ
「今日はごめんね」って言ってみたら
笑いながら「ハイハイ」って言っていたので
やっぱり気付いているようでした。


彼の前では、いつも笑っていられたらと思う。
いつも優しく彼に接することができたら、どんなにかいいだろうと思う。
でも私は、こんな小さなことで、すぐに心を揺らす。結構安っぽい人間だ。

大きな人間になりたい。


2002年07月23日(火) 近況

つきあいはじめて、8ヶ月。

片思いだった頃。二人で会った日は
一年365分の1日を一緒に過ごせた、それだけで
すごくすごく幸福だった。
両思いになって、だんだん欲張りになってきている自分に気付く。

このあいだなんて、一緒にみていたドラマの内容が
彼と、彼の前の彼女に重なって、
彼が何かを言ったわけでもないのに
(誰にも渡したくない)
(この人は私のものだもん、私のものだもん、私のものだもん)
って呪文みたいに思いながら
彼の首にしがみついて、バカみたいに泣いてしまった。

「人は誰のものでもない」とか
「独占欲なんて、相手に対して失礼な感情だ」とか
「失望するのは、ゆがんだ先入観で相手を見ていた証拠」とか
8ヶ月前まで、えらそうにほざいていた、この私が。


私は彼と、いったいどこまで一緒に歩いていけるんだろう。

いや別に、大きな障害に立ちふさがれているわけじゃないけど。
いたって普通の、ごく一般的な恋愛だと思うけれども。

彼との恋愛を育てていくには、何と何が必要なんだろう。
そして何と何が、心を引き離す原因になるんだろう。

すべてリストアップしても、きっとそれだけじゃ足りないんだ。
答えなんて、多分一生わからない。きっと、とても単純な答えなのに。


彼の笑顔を守るためなら、どんな怪物とだって闘ってみせる。
そんなふうにも思いはじめた、今日このごろ。

そして、その闘うべき怪物は、きっと私の心に棲んでいる。


INDEXpastwill
MAIL