ミドルエイジのビジネスマン
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2006年05月28日(日) ミコちゃんとの再会(2)

座敷の灯かりは広く開け放たれた玄関の外まで明るく照らしていた。入り口では座卓を前にしたおじさんが、一生懸命香典の計算をしている。そうこうするうちに、喪主の従兄弟がやってきて、先ほど納棺したばかりだと説明してくれた。挨拶をしていると、あらーっと明るい声がした。見覚えのある、なつかしい従姉妹のミコちゃんの顔がそこにあった。再会するのは何十年ぶりだろう。

小さいときに遊んでくれたお姉さんの顔そのままに笑顔で迎えてくれたのだが、お通夜のことでもあり、こちらはどんな顔をしたものか、ちょっと戸惑った。男兄弟ばかりだったので、優しく覗き込むようにして話しかけてくれた彼女の顔を甘い思い出として持っている。その当時、なぜか分らないがミコちゃんには無条件に受け入れてもらっているという安心感があった。ただ、その笑顔は何故かいつも淋しそうにも見えたものだった。

大学生か社会人になって間もない頃、母から、海辺の町で夫婦で割烹を営んでいるミコちゃんを訪ねて、ご馳走になってきたという話を聞いて羨ましかった。演歌の世界のようだとも思った。いつか、その割烹を訪ねてカウンターに座って昔話をしている自分の姿を夢想したりしたものだ。そうして、彼女はどんな大人になったのだろうかと想いをめぐらせていた。だが、わざわざ海辺の町まで行く理由も見つからないし、こちらはこちらで頭の上のハエを追うのに忙しくて、その機会もないまま歳月が過ぎてしまったのだった。

従兄弟に勧められてそっと棺の窓を開けると、安らかな顔の叔母がいた。もう九十歳近くになっていたので、点滴を受けながら、最後は心臓が動いたり止まったりしながら眠ったまま息を引き取ったという。


2006年05月21日(日) ミコちゃんとの再会(1)

日本海に注ぐ大河の中流域に開けた地方都市から、さらに小さい地方都市まで川を遡る薄暮のローカル線は、高校生や専門学校生そして早めに帰宅するOLたちでいっぱいだった。走っているのは田園地帯だが、腰までズボンを下げて床に座り込みドアにもたれている男子高校生たちや、友人と話しながらも携帯電話の画面から目を離さない専門学校生の姿は東京と同じだ。専門学校生のトートバッグの中には接客、接遇というようなタイトルの教科書が入っている。ホテルか旅行関係の勉強をしているのだろう。

到着した駅にはキオスクもあったがシャッターが下りていた。街は生気を失っている。駅前から乗ったタクシーの中から田園風景を眺めていると水田の真ん中に赤く塗った巨大な建物が出現した。若いタクシーの運転手は、関東資本のスーパーセンターだという。きっと、周辺何キロかの人々を全て、都心ではなくこの一店に集中させることができれば、大都会でなくてもこのような巨大な店舗が成立するということなのだろう。

幼いときに遊びに来た豊かな農村は、登り降りした覚えのある、大河の堤防に取り付けられた坂道も、夏に遊んだその直ぐ下の神社もそのままだ。ただ、はるかな記憶と比べて集落の景色に重厚感を感じないのは、思ったより大きな木々が少ないせいだろうか。おそらく、それぞれの家で機密性の高い堅牢で近代的な家に建て替えたり、サッシを入れて改築したときに、それまで北風から家を守ってくれた一方で、陰気で湿気をともなう屋敷林を伐採し、あるいは、ただ単に道路を拡げる障害となって切り倒されたのだろう。

本当に暗くなる頃、タクシーの運転手は家の外に白い大きな花輪が並んでいるのを見つけ、通夜が営まれる叔母の家に到着した。


2006年05月14日(日) 多忙につきお休み

週末に仕事を持って帰り、あと日曜日は雑用で丸一日潰したので、本日はお休み。

まあ、こんなこともあるさ。


2006年05月07日(日) 穏やかなゴールデンウィーク

天候に恵まれた穏やかなゴールデンウィークは恒例の九十九里浜ドライブに出掛けた。少しだけ浜に出た後、ハマグリの網焼きを食べに手頃な浜茶屋を探す。素朴さが売り物の千葉の九十九里浜も近年は資本投下による設備投資を図るところも出始め、通年営業の立派な浜茶屋もいくつか出現している。

「網元」という立派なお店は、見るからに豪華で、いかにも今年完成したばかりというたたずまいだ。お客さんも殺到し、先払いの勘定をするにも、20分ほど並ばなければならない。建物も立派だが、値段も立派だった。この日ばかりは、子供たちに好きなだけ食べさせてあげることにしているので、言うがままに注文したら、お店の人に「本当に全部出していいのか」と確認された。握りこぶしほどもある大きなハマグリが5個で3千3百円、お店も立派だが、値段も立派だ。その他に、車海老やイカ、アジなど好きなものを頼み、家族全員大満足であった。

その後、砂浜に出て、みんなでキャンプ用の椅子に座り、風に吹かれながら沖合いを眺めたりしてのんびり過ごした。

家族揃って写真を撮ってもらおうと、シャッターを押してくれそうな人がいないかと見渡すと遠くに4人連れの女の子たちが追いかけっこをしていた。ジャージー姿の彼女たちは、近くの中学生だという。コロコロ笑い合いながら写真を撮ってくれた。彼女たちもデジカメを持っていたので、全員で写るようにシャッターを押してあげた。若いエネルギーがあふれるようなスナップショットになった。


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