台所のすみっちょ...風子

 

 

就活その4「登録の巻」 - 2005年04月29日(金)

私は昔から大事な場面になると、ついくだらないことを

考えてしまう人間である。

例えば、彼氏とケンカの最中、結構な修羅場にも関わらず、

(夕飯はあそこのラーメンがいい・・)

などと考えたり、

そこが海だったりすると、寄せ来る波を見つめては、

(ほ〜、波ってのは一つも同じ形がない。すごい)

なんて考えてる。

そういえば、幼い頃、母親に叱られたときなども、

(あっ、アゴにヒゲが・・)

と、母の顎に一本の髭が生えているのを見つけてしまい、

顎一面に髭が増殖した彼女の顔を想像して、噴出しそうになったこともある。


おととい、転職を支援してくれる会社に行った。

そこはファッション業界専門の支援会社で、もうすでにWebで

登録をすませてあり、より詳しくインタビューを受けるために行ったのである。

メールで送った私の経歴を見ながらいろいろ話をしたのだが、

やはりテキスタイル業界は不景気らしく、すぐには紹介できないとのこと。

特に私みたいに、専門の人に考えた柄を絵にしてもらい、

それを染工場にプリントして貰う、というような

すべて他人任せ、右から左へのお手伝い、口が達者なら誰にでもできる、

みたいな仕事をしていた者はダメらしい。


「う〜ん、たまに、パリコレとかミラノコレクションに出るブランドなんかで
 募集があることはあるんですがね〜。でも、そういうとこが求める人材は・・」

担当である、40半ばの女性が悪そうに言う。

「アーテイストっぽい人が良いってことなんですよね?」

「そ、そうなんですよ〜。この前もね、ミヤ○イッセ○の募集が来たんですね
 で、決まった人は、もう糸から作っちゃうような人で・・・」


「糸から作る」

この言葉を聞いた時、一生懸命話す彼女を見ながら、

ごめんなさい、、ついくだらないツッコミを心の中で・・してしまいました・・

「蚕かよっ!!」って。



おしまい。



...

この町 - 2005年04月27日(水)

以前に4ヶ月ほどこの町に住んでいた私だが、

今さらながら改めて驚いていることがある。

それは町の風景。

例えば車。

やけに族車ふうの車が多い。

真っ黒に塗りすぎてクジラみたいになってしまった、大きいバンとか、

白いセダンの高級車のシャコタンとか。


で、車がそうなら、当然それに乗る人も・・といった感じで、

この町では良くパンチ頭の人や、「水割り作って30年!」と

いったような女性を良く見かける。


駅まで続く細い路地には、一昔前のキャバレーを思わせる電飾のキツイ店構えの

スナックやパブがひしめき、道にはゴミが溢れている。

そして、自転車置き場の立て看板に書かれてる注意は、

「自転車泥棒は犯罪です!」

おいおい、それが犯罪なのは当たり前。


で、今日の夕方。

道を歩いていたら、

後ろから自転車で来たハゲたオヤジに、

追い越し様に手を振られた。

ニッコリと笑ったその顔には、歯がない。

オヤジは私の前をふらふらと走りながら、何度も振り返り、手を振る。

何度も・・。


この町を出るまで、残り半年とちょっと。

無事でいられるのか?





おしまい。


...

保健所の人 - 2005年04月25日(月)

昨日、出掛けるときのこと。

家を出、集合郵便受けの前を通り、階段を下りてアパートの外に出ようとしたら、

背後から男の人の声がした。

「ちょっとぉ〜ちょっとぉ〜、すみません」

振り向くとそこに、顔が2段腹にそっくりな

アパートの住人であろうおじいさんが一人立っていた。

彼は私を見て言うのだった。

「もしかして、保健所の方ですか?」


昨日の私の服装は黒い胸の空いたカットソーに黒いジャケット、

細身のジーンズにエナメルのヒールといった格好で、

とても、衛生に目を光らせる人間には見えないのであった。

それに、何故、このアパートで保健所なのかがまったく分からない。


当然、「ハッ?」と言うしかない。

で、その反応におじいさんも間違いに気がついたようで、

「あっ、間違えました、あなた1○○号室の□□さんですね?」と

「失敗しちゃったなぁ〜」ふうに笑ったのだが、私はかなり驚いていた。

(この人誰だっけ?)

素性を当てられているのに、まったく覚えが無いのだ。

覚えがないので、「ハイ、そうです」とだけ答えると、

「そうだ、そうだ、1○○の□□さんだぁ〜」とおじいさんは

より嬉しそうになった。

そしてさらに

「なに?弟さんのとこに遊びに来たの?今は住んでないんでしょ?」と聞く。

(だから、誰だっけ?)

そう思っていても、ここではジジババに嫌われては生きていけないので、

「あっ、今はまた住んでるんです。ご挨拶にも伺わないですみません」と

満面の笑みで謝った。


きっと、私の顔を知ってるってことは、5年前、ここに少し住んでいたときに

接触のあった人だとは思うのだが、その2段腹顔にはぜんぜん覚えが無い。

「またよろしくお願いしますぅ〜」

取りあえず、頭を下げると、おじいさんも「いえいえこちらこそ〜」とニッコリ。

その後、ゆっくりきびすを返し、余韻の笑顔を崩さず歩き出した私だが、

心の中はモヤモヤでいっぱいであった。

(で、誰なんだっけ?どうやってよろしくすればいいんだ?)と。


おしまい。


...

スーツ。 - 2005年04月22日(金)

今日、テレビを見ていて、いや、番組はぜんぜん関係ない

やつをやっていたのだが、ふと、思った。

「就職活動をするなら、スーツがいる・・な・・」


もちろん、脇のラインが絞られてない、ダボついたリクルート

スーツのようなものではない。

頭に浮んだのは、ラインが適度に絞られている、キャリアっぽいのだ。



清潔さを感じる格好であればOKだって人は言うけれど、求人誌の

「就活Q&A」には面接時にスーツを促すようなことが書いてある。

だが、どうなんだろう。

働かなきゃいけない、と職探ししている人間が、

どうしてスーツを買う金があるのだ。

あるなら働かない。

それに、今は安い家賃で暮らしているといっても、これから

車の税金とか保険とか、お金はどんどんかかるのだ。


さっき、そんな自分のもやついた気持ちを旦那に打ち明けてみた。

「スーツは欲しいけど、この先いろいろかかるでしょ・・・
 だから、やっぱ買うのやめようかと思ってんだ」

すると、普段、所帯じみた私の姿しか見てない彼は言うのだった。

「買いなよ!それ着ておまえがピシ!っとしたら、俺もうれしいよ」



ありがとうあなた。

けど、家計的にはぜんぜんうれしくない。


おしまい。



...

その印象。 - 2005年04月21日(木)

うちの旦那は自称「サーファー」だけに、普段着は

とてもカジュアルだ。

サーファインブランドのロゴ入りTシャツを着、下にはチノパンを履く。

日焼けした褐色の肌にやや明るく染めた髪と相まって、

その姿はなかなかのエセサーファーぶりが板についているように見える。


だが、彼に似合のは、本来、そういったカジュアルなものではない。

その肌色と茶髪。そしてごつい輪郭の顔、広い肩幅、

なにより大きく作られすぎている目と、太い眉に似合うのは、

黒シャツのボタンを3つぐらいはずして、その間から金ジャラの

ネックレスをチラチラと見せるような、

チンピラふうな格好なのだと私は思っている。


旦那がコンタクトを止めて、眼鏡をかけ始めたのは、前にこの日記に書いた通り。

背広に細渕の眼鏡は彼をややインテリ風に見せているのだが、

今日、同僚にこう言われたそうだ。

「ホスト崩れのサラリーマン」って。


おしまい。


...

就活 その3 「でっしゃろ」の巻き - 2005年04月19日(火)

前に日記に書いた、何の音沙汰もないギャラリーとは違う、別の

ギャラリーから返信が来た。

「是非一度、お会いしたいと思います。僕は一日中ギャラリーにいます」


募集は「アソシエイトスタッフ」というものだが、

どんなスタッフなのかちっとも分からなかったので、

とりあえず話だけでも・・と、先週の木曜日、銀座まで行ってみた。


メールでのやり取りで、オーナーは40歳前後ぐらいかと

思っていたが、出た来たのは60歳ぐらいのおじさん。

紺のブレザーにチェックのシャツ。髪の毛はシルバーグレーで、

いかにも銀座の紳士風だ。


だが、口を開くと、思いっきり大阪弁で、

「そう思いますねん」「でしゃろ〜」「あきまへん」

などなどを連発し、これからのギャラリー事業のビジョンを

延々と聞かされ、2時間があっという間に経過した。

それは、「作家を世に送り出したり、美術を一般の人に広めたい」というよりは

「この仕事で儲けたいんでんがな」という堺の商人みたいな感じであった。


私がようやく「アソシエイトスタッフ」の意味を聞けたのは、さらにそれから

30分ほど経過した面接ももう終わり、という頃であった。

「あの〜、アソシエイトスタッフというのは・・お金は〜?」

「出まへんなぁ〜。今の人はすぐお金言いますけど、ギャラリーの
 仕事はそんな甘いもんやありまへん。地道な仕事なんですわ。
 まあ、でっち奉公みたいなもんですわな」

「てことは、無償・・?ボランティアですか・・?」

「そうですなぁ〜。逆に金払うと、それに甘えて人が育ちませんのや。
 教えるのやから、こっちが授業料払ってもらいたいぐらいですわ」

つまり、アソシエイトスタッフというのは、ギャラリーを広めるための

ボランティアのお手伝い要員のことで、空いてる時間、自分んとこの

ギャラリーの活動に参加しつつ、学んでみなはれ、ということらしい。

だが、オヤジの真の狙いは、

スタッフが他のギャラリーの展示会を見に行く→芳名帳に自分の所のギャ

ラリー名を書く→それを続ける→自分のギャラリーが有名になる→

有名な絵描きが是非個展を!と言ってくる→儲かる

または

国立西洋美術館とか有名な美術館に行く→そこに自分の所で今後やる展覧会の

ハガキを置いてもらえるように直談判する→来た客がそれを手に取る

→人がドシドシ来て集客力のあるギャラリーになる→作家たちが競ってそこで個展

を開きたがる→儲かる

と、そんなところにあるらしい。


何か良く分からない考え方だったが、

唖然とする私にオヤジはこう言った

「良い考えでっしゃろ〜?」


・・・・・・・でっしゃろ?って言われても・・。


おしまい。
 


...

企み。 - 2005年04月18日(月)

旦那がいけないことを企んでいる・・。

それは

「新しいマンションに入ったら、ローンが始まるから、
 ウエットスーツ買っとくかぁ〜〜」

ということである。

何でも、今はサーフィンのシーズンオフに当たるそうで、

普段手の届かないセミオーダーでも、グッと安いんだそうだ。


今日の夜もその話になり、旦那はこう訴えた。

「もう3年も着てるんだぜ〜。良く頑張ったと思わない?」

そんなこと言われても、いくら安くなっているとはいえ、

その値段は5〜6万なのである。

だから、言ってやったさ

「あ〜ら、私は小学校6年生のとき買った油絵の道具を
 大学四年まで使ってましたよ〜〜〜だ!」って。


おしまい。



...

写真。 - 2005年04月15日(金)

バイトを辞めてからというもの、寝るのが朝の4時、と

すっかり遅くなってしまった私。

当然、旦那と一緒の時間に寝るなんてことは無くなっていたのだが、

昼夜逆転しすぎるのも、体に良くないような気がして、一昨日の夜は

旦那に合わせて寝てみようと試みた。


並べた蒲団にそれぞれ入り、旦那はケータイのアラームで

次の日の起きる時間をセット。

私はうつぶせになりながら、求人誌を見ていた。

するとしばらくして、ケータイをいじっていた彼が

「ねえねえ〜、これ見て〜〜」とそれを見せながら私に声をかけた。


ケータイの画面には一枚の写真。見ると、狭い、箱のような暗い場所を写したもので、

隅っこの方に、白いものがぼやけて見える。

「ここどこ?暗くて良くわかんない。その白いの何?」

怪訝な顔して私が質問すると、

「白いのはトイレットペーパーでぇ〜す!」と旦那はニコニコしなが答え、

それを撮った一部始終を告げた。

「じゃ〜〜ん!実はここは俺の会社のトイレでえぇ〜〜す!
 うんこしてる時、暇だったから撮りましたぁ〜!」



大丈夫か・・・?

その調子で今月の売上は大丈夫なのか・・・?


おしまい。


...

ヌード - 2005年04月14日(木)

新潟の実家に泊まるとき、私は必ず部屋にスーパーの袋を2つ用意する。

一つは燃えないゴミ用。もう一つは燃える用で、これはここ2、3年のことだ。

ある日、帰ったら、ゴミ出しへの母の志が180度変わっていたのがその原因。

「この前、ゴミ工場の見学に行ってきたんさ。それがさ〜、手作業で仕分けしたり
 してるんだがね。係りの人の話だと、燃えるゴミにたまにガラスの破片とか
 入ってたりして、怪我することもあるんだと。だから混ぜちゃだめなんて」

私もそんな話を聞いて、きっちり分別するようになった。


が、それは実家だけの話。東京に戻れば、ビニール程度なら、

今までは「まっ、いいか・・」とズルなどしていた。


引越して早3週間。なかなかここの生活には慣れないのだが、

その一つがゴミ出し。

袋の中身に少しでも不手際があると持って行ってもらえない。というか、

恐ろしいことに、ゴミ当番の人が、ここでは一つ一つの袋を念入りに

チェックし、時に中を開けて確かめ、ダメなものは回収車が来る前に

除けて端に置いちゃうのである。


缶も瓶もペットボトルもきっちり洗って乾かさなければならない。

今まで、そのまま燃えるゴミに捨てていた資源ごみのパックも、

解体して重ねて束ねて捨てるなんて初めての経験だ。


燃えないゴミと資源ごみ、缶や瓶の収集日は金曜日。

「こっちに缶〜。ここは瓶〜。雑誌や資源ごみは少し離れた倉庫に〜」

などと捨てるのが面倒くさくて、一週目も二週目もゴミ出しは

しなかったのだが、ついに三週目の先週の金曜日、

泣く泣く早起きして、ゴミ出しに望んだ。


出すに当たって、何もかもがマニュアルどおりに準備できていたハズだった。

なのに、さぁ!出すぞ!と意気盛んに集積所に行ったら、

皆さんの出したペットボトルの様子にすっかり驚いてしまった。

商品名とか書かれたラベルまで剥いであったのだ。


ペットボトルは、一紙まとわぬ姿である。

あんなにセクシーなペットボトルは生まれてこの方、集積所で見たことない。


おしまい。


...

就活 その2 - 2005年04月13日(水)

ネットを見ていたら、渋谷のギャラリーで求人の募集を

しているのを見つけ、メールで問い合わせをしてみた。

そこは、60年代調のインテリアが素敵な、Cafeも併設

している、おしゃれなギャラリーだ。


次の日、早速、アートプロデューサーと名乗る男性から返信が来た。

「お問い合わせありがとうございます。
 つきましては、あなた様の経歴を取り急ぎお教えください」


「取り急ぎ」という言葉に、餌を前に興奮するブルドックのような、

おねだりさ加減が見て取れたので、なんだかうれしくなり、

その日のうちに箇条書きにした経歴と、素直に年齢を書いてメールを

返したら・・・

あれから一週間・・・未だ返事来ず。



おしまい。


...

ブラジャー - 2005年04月12日(火)

先週木曜日、午後三時。

歯医者に行く為に、仕度を始めた。

私は一ヶ月ぐらい前から、歯の神経の治療をしている。


部屋着を脱ぎ、スッポンポンになった姿にブラジャーをつけ、

白い長袖のTシャツを着ると、ブラジャーの肩紐が

なんだか緩いような気がした。動くと肩からズレ落ちそうであった。

そこで、紐をいつもより短めに調節。ややきつめにし、早々に身支度を

整え、家を出た。


さて、神経の治療は大変だ。

歯のずっと根底の治療になるので、それ専門の医師が、

大きな顕微鏡のようなもので歯の奥を覗きながら治療していく。

それは丸々一時間きっちりかかるほど。


治療を終え、受付で料金を払い、次の予約をし、帰るべく病院を出たのだが、

駅までの道程の途中、私は胸に違和感を感じた。

なんだか、おっぱいの真ん中あたりのところで、締め付けられるような

キツイ感じがある。

周りをやや気にしながら、そ〜っと触ってみると・・・

ブラジャーがずれて、本来ならふくらみの付け根にあるはずの

ワイヤーが乳首のすぐ下の方まで上っていた。

それは、あと数ミリで乳首が「コンニチハ!」の位置であった。


肩紐がズレないようにと、短めに紐を調節したのがいけなかった。

一時間も診察台に寝ている格好だったから、伸びた上半身に紐が引っ張られて、

ブラジャーが上ってしまったのだ。


服の上からくっきりと浮き出る、中年女の乳首を目にしたとき、

ギョッとする人はいても、喜ぶ人など誰もいない。

世の中の迷惑になる前に気がついて、良かった。


おしまい。


...

再びの。 - 2005年04月11日(月)

土曜日、サーフィンから帰って来た旦那は嬉しそうであった。

波がすごく良かった、というのもその原因らしいが、

なんてったって、会ったらしいのだ。また再びカモちゃんに。

「今度は近くじゃなかったんだけどさ〜、遠くの方で相変わらず
 坊主みたいな頭、ポコって出したりしてた〜」

彼の声は前と同じぐらい弾んでいた。
 

旦那の話によれば、土曜日の鴨川はすごかったらしい。

青天の空の下、ひと目カモちゃんを見ようと、

ギャラリーがわんさかいたそうだ。

旦那が言う

「それがさ〜、写真撮ってるおじさんが多かったんだよね。
 なが〜い望遠レンズとか持って来ちゃって、本格的なんだよ」


ところが、かもちゃんはああ見えてもなかなかすばしっこいらしく、

「そこにいたと思ったら、次に顔出す時はこっちって感じで、
 すごく動くんだよね。だからおじさん達はそのたんびにカメラ
 持って、それに合わせて移動するわけ」


で、何度かあっちこっちと移動を繰り返した末、まったく動かず、

一点だけに集中してカメラを構える人々が出てきたという。

「その人達、ずっとサーフィンしてる俺たちに向かってカメラを構えてるんだ」


ちなみに、旦那が今日一緒に行ったメンバーは、

高校の時からサーフィンをやっている、I君と、超初心者のS君である。

「それって、みんな、浮いてるしかないS君をカモちゃんと間違ったんじゃん?」

私の口から思わず、そんな言葉が出た。


だって、S君は、今時珍しい・・・

坊主頭である。


おしまい。


...

猫2 - 2005年04月09日(土)

起きてカーテンを開けると洗濯機の上にまた猫がいた。

この前、洗濯機の洗い槽にハマっていた猫ではなく、

黒白のブチだ。

実はこいつ、我が家へ訪問回数が多いヤツである。

ベランダの洗濯機が大好きで、日向ぼっこをする時は

ほとんどそこ。


ヤツはまるで、公園にいる鳩のようだ。人なつっこいと思わせておいて、

近寄るとパ〜っと逃げて行く。

ある時などは、開けた窓から音もなく入って来て、気がつくと

タバコを吸う私の近くにちょこんと座っていた。


人の家の敷地内に足を踏み入れるときは、

挨拶ぐらいするのが常識というものだ。

だが、ヤツはフニャ〜とも、ギャ〜とも言わない。

だから、洗濯機の上で日向ぼっこをするヤツを、

私はその都度、ちょっと恐い顔をして追い払う。

ところが、追い払っても追い払っても、また来るのだ。



そして今日のヤツといったら、

いつものようなお行儀の良い日向ぼっことは違い、

洗濯機の上で、前足は体の方に引き寄せていたものの、

右の後ろ足が思いっきり伸び、洗濯機からはみ出てブ〜ラブ〜ラしていた。


あんなにシッシッ!とやられているのに・・・

リラックスしすぎで

笑った。


おしまい。


...

就活。 - 2005年04月08日(金)

火曜日。友人M子とお昼を食べた。

で、ついでに履歴書も買ってみた。


求人誌などによると、企業に提出する際の履歴書は、

空白の部分が多くあってはいけないそうで、

そういった意味で自分の書きやすい、自分に合った

ものを選ぶものらしい。

だが、普免以外に、なんの資格も取り得もない私である。

まさか、中学生の時、担任からの強制でクラスの大半が採れてしまった、

「実用英語検定3級」なんて書けない。


さて、M子とお昼を食べたあと、一度解散し、互いの用事を済ませ、

再度落ち合って、お茶をした。

店の中はいっぱいだった。

ふと見ると10代後半ぐらいの青年が、友人となにやら

話していたかと思いきや、バックの中から履歴書を出し、相談しながら

書き始め、また、後から入って来た、スーツ姿の20代半ばぐらいの

女性は席に座るなり、まだ何も書かれていない履歴書をテーブルの上に置いた。

さらに、視線を窓際のカウンターに向けたら、

ドレッドヘアーのボンバーな感じの、これまた10代後半の若い男性が、

求人誌を真剣に見つめている。


そんなに店は広くない。席数は30といったところなのに、この景色。

やはり、就職難・・。やはり皆、仕事を求めている・・と実感したその瞬間、

一番焦らなきゃいけないのは、年齢制限で思いっきり門戸が狭くなっている、

そう、こうしてM子と楽しくお喋りを4時間もここで続けている、

私じゃないのか?と思った。



おしまい。


...

割増。 - 2005年04月07日(木)

時代もあったのかもしれないが、

旦那は若いとき、茶色の太いフレームの

あられちゃんのような眼鏡をかけていた。

だが、ある時、「オレさ〜コンタクトにする!」と急に

それを止めてしまった。

彼のあられちゃん姿は結構気に入っていたので、私には

とても残念でならなかった。


日曜日、旦那が突然、急性結膜炎になった。

この病気は一種の感染症。目が血走ったように真っ赤になり、

目やにがゴロゴロ出る。

もちろん手で触ってはいけないので、コンタクトはご法度。

眼科に行ったら、眼鏡を薦められたらしい。


火曜日、早速、彼が眼鏡を買った。

今、家にあるものは、フレームの部分が少し壊れていて、

とても会社にはしていけないのだ。


眼鏡は営業時間中に買ったらしく、その日、彼は眼鏡をかけたまま帰って来た。

新調した眼鏡に彼は少し落ち着かない様子で、

照れながら何度も自分の「イケテル度」を私に確認する。

「ねえ、どう?どうかなぁ〜?似合う?」

「似合うよ〜、レンズが小さくて、フレームが四角っぽくて・・
 いいじゃん!ものすごくインテリに見えるよ」


そうなのだ、確かに、もの凄く仕事ができそうな、例えば

IBMに勤めてる人ぐらいのインテリに見える。

だから、何度も繰り返される確認のやり取りの中で、

ついこんなことを口走ってしまった。

「ホントに良いよ!なんかね、脳みそが3割増しって感じ」って。



おしまい。


...

その理由 - 2005年04月06日(水)

普通、退職するときは、「お世話になりました」という意味でお菓子とかを渡す。

だが、解雇される私達の気持ちは

「経営者側の都合だし、副支配人から勧告された後は社長からも支配人からも
 何の言葉もないしね〜。いいんじゃん、あげなくても」

であった。

結局、何もあげない、ということで話はまとまったのだが、

シフトの関係上、一番初めに辞めることになったSさんが、

花束をもらったことで状況は一変。

「花までもらうのに手ぶらでサヨナラはマズイ・・」と。


そこで、一番最後に終わりになる、Kさんに代表で渡して

もらおうということにしたのだが、

お願いしても彼女は頑なに「イヤだ!」と言うのだった。

彼女は大学生の娘さんもいる、50もとおに過ぎた人である。

もともと、自分から表立って何かしようとするタイプではなかったが、

渡すだけなのに・・と私はいささか不可解であった。


ところが、この前、仲の良かった同僚の0さんからその理由を聞いた。

どうやら、Kさん、事務所にもう10年も勤める主、ハエ採り草のような

マスカラまつ毛を持つTとトラブルがあったようだ。

うちのスポットにはパソコン2台につき、プリンターが一台の割合で

セットされている。

印刷用の紙は安いものだが、お客からは1枚30円もらっていた。

Tは頻繁に来て、インターネットをしては、良くページを印刷していったらしい。

その枚数は一回につき膨大で、あまりの多さに、真面目なKさんはある日、

お金を払って欲しいとチラっと頼んだそうだ。

すると、Tはその日プリントした紙すべてを本人の前でビリビリ〜といきなり

破ったそうである。


どんなにビックリしただろう。

ていうか、普通いるかよ?そんなヤツ。

それじゃあ、事務所に菓子なんて・・・渡す気にもなれんわな・・。



おしまい。



...

造形美 - 2005年04月05日(火)

自分で言うのも何だが、

小さい頃から美術というものに接して来たからか、

私は「美しいもの」には敏感である。

実は、旦那に惹かれたのも、彼の美しさがその大きな理由だった。


おっとっと、、別に顔が、というのではない。

美しかったのは、彼の顎から首、鎖骨に至るまでのラインで、

そこに、ギリシャ像のような造形美を見たのだった。


私が彼のそういうところを初めて意識したのは、会社の帰りに飲んで、

何人かと上司の家に泊まったある夜のこと。

彼が上司に借りたTシャツに着替えるためネクタイをはずし、

Yシャツのボタンを3つばかりあけた時、隙間から覗く、彼の隆起する骨や筋肉の

美しさにドキッとしたのだった。



あれから12年経った今日。

さっき、顔を洗い、化粧水をつけようと、旦那が寝ている部屋に行った。

狭い家である。ワゴンの中の化粧水を取るため、

必然的に彼をまたぐ格好になった。

で、手を化粧水のボトルの方に伸ばしながら、ふと彼を見下ろしたら・・

造形美どころか、

全体をぐっと圧縮したような、

首と胴体の境のない、

大福でできたトドみたいだった。


おしまい。


...

バースデーケーキ。 - 2005年04月03日(日)

3月28日は旦那の誕生日だった。

ところが、その日、彼は忙しくて夜遅かったため、

ケーキにロウソクを立て、ハッピバースデーの歌を歌う、という

セレモニーができなかった。


で、その後も私がケーキを買えずなどで、伸び伸びになっていたのだが、

昨日、ようやくハッピバースデーの歌と共に、ケーキを囲むことができた。

ケーキにはもちろん旦那の名前を「くん」付けで書いたチョコプレートが

乗っかっている。

それを見て、

「え〜、オレ大人なのに”くん”ってどうかなぁ〜」と旦那はやや困り顔。


そんなこと言われてもしょうがない。

お店の人が聞いてきたのだ。

「くんってつけますか?」と。

昨日の私はヨレたジーンズに、ひっ詰めた髪。そして化粧がすっかり剥げた

おばさん丸出しの風貌。

だから店員さんは、当然息子用のケーキだと思ったのだろう。


「くんでお願いします」

その時、私も何故かそんな期待に答えたくなって、すかさずそう言うと、

店員さんはやっぱり小さいお子さんには

「くん」もつけなきゃ!みたいな納得顔で、ニコニコし、

さらに

「ロウソクは何本ご入用ですか?」と続けて聞くのだった。


あ〜、来た。これを言うと絶対そういうことになるなぁ〜と瞬間

予想できたのだが、なきゃ誕生日ができないので、思い切って

「お、大きいの3本とぉ〜、ち、小さいの6本」と伝えると・・・


やっぱり、、店員さんの顔がサッと変わった。

えっ!?今なんておっしゃいました?っていうふうに。


おしまい。



...

贈り物。 - 2005年04月02日(土)

おととい水曜日、二年間勤めたバイトが終り、

夜、事務所が開いてくれた送別会に参加した。

閉鎖になる私の部署から出席したのは仲の良いSちゃんと私の二人。


私もSちゃんも分かっていた。送別会といっても、メインが

私達ではないということを。

そう、メインは事務所のアザラシのゴマちゃんに似た、Mおじいちゃんである。

彼は71歳。もう充分働いたので、ここらへんでリタイアして

今後は住んでいる町内会の役員をするそうだ。


二時間あまり経ち、終わりも見え始めた頃、

幹事の子の動きが慌しくなった。

隠してあったのだろう。どこからか花束を3人分、紙袋を一つ持ってきた。

「長い間、ご苦労様でしたぁ〜」

拍手とともに一番にそれを渡されたのは、Mおじいちゃんである。

花束と紙袋。紙袋には何か付属のプレゼントが入っているようだった。


おじいちゃんが

「こんなにもらって、かえって気を遣わせて申し訳ない」などと

お礼の挨拶をした後、私達にも花束が渡された。

ちょっと工夫を凝らしてある。

可愛いピンクの紙のボックスにブーケがきれいにおさまっていた。


私達の部署はどちらかというと、厄介者扱いであった。

だから、当然、Mおじいちゃんのように花以外のプレゼントは

もらえないさ・・などと思っていた矢先、

幹事が、「そうだ、忘れてました〜、これこれ」と言いながら

大きな紙袋を渡してくれた。

うれしかった。絶対付属の、例えば写真立てとかのプレゼントだと確信した。

そりゃそうだ。二年間、同じ仲間として働いてきたのだもの・・と。

だが、幹事の口から出た言葉は

「その紙袋に花束入れて持って帰ってくださいね!」


言ったように、花束はボックス入り。そこにはちゃんと持ちやすいように

プラスチックの紐のような取っ手がついている。


そんな袋なくても、持って帰れるわい。


おしまい。


...

ある風景。 - 2005年04月01日(金)

旦那がとうに出かけた昼近く。

夢と現実が交差するまどろみの中で、ひとつの音を聞いた。

「ふにゃっ!」


蒲団から起き上がり、その音に導かれるように

窓の方へ行き、カーテンを開けると・・・


隣りのSさんちの茶ネコが、

うちのベランダにおいてある粗大ゴミの洗濯機の洗い槽に、

すっぽりとはまって

もがいてた。


「ふにゃっ!」という声は

Sさんちの方からベランダづたいに歩いて来たネコが、

うっかりとはまったその瞬間、ビックリして出したものと思われる。


バカよのぉ〜。



おしまい。


...




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