蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




お酒は二十歳を過ぎてから。
2004年02月24日(火)
町を歩いていたら、
大手チェーン居酒屋の前で、
男子中学生が3人身を寄せ合って、
店の前に出してあるメニューを覗き込んでいた。

体こそまだ小さいが、
お揃いの制服を着て、
お揃いのカバンを持ち、
お揃いのぼっちゃん刈り。
全身で
「僕達、○成中学の生徒です」
と主張しておきながら、
昼日中から居酒屋の前に佇み、
メニューを覗き込もうとはいい度胸ではないか。

よぉし、おじさん注意しちゃおっかなぁー!
などと思いつつ、
少年達の視線を追ってみて、僕はふと気付いた。
餌を前に「待て!」と命じられている犬の如く、
少年達がじっと凝視しているのは、
そのメニューの中でも一画に限られていたのだ。

それはメニューの中でも、
右下の片隅辺りにひっそりと佇む、
何やら涼しげで、
ほんのり甘い香漂う瀟洒な一画。
そう、「デザート」のコーナー。
彼らの視線はそこに釘付けになっていた。

「ウマソウダナァ…」

ふと、少年の中の一人が呟いた。
それを契機に少年達は弾けるように活気づき、
さらに一人が気勢を上げた。

「俺、
 大人になったら
 絶対ココ来よう!!」




ハッハッハ。
いいじゃないか、その発想。
可愛いではないか。
実に少年らしいではないか。
思わず頭をナデナデした後、
3回ぐらい小突き回してやりたくなっちゃったぞ。
少年よ。
あと十数年後には貴様も立派な「大人」だ。
大人になったら好きなだけ居酒屋に行け。
そして、好きなだけデザートを頼め。
周りからは散々顰蹙を買うだろうが、
負けるな。
日本酒の一升瓶を片手に、
「俺は甘党なんだ!」と豪語しつつ、
クリームあんみつを貪り喰え。
そんな剛毅な大人になるんだ。

但しな、坊主。
一つだけ言っておくぞ。

酒は魔物DEATH。
良くも悪くも。
衝動買いは良くないので。
2004年02月23日(月)
メガネを買い替えることにした。

最近一段と視力が落ちたの気になっていたが、
何より、地元のメガネ屋さんが、
2月いっぱい決算セールということで、
普段お高いメガネもかなり安く買えるとのこと。

話は若干逸れるが、
実を言うと、我が親類一同はメガネ一族である。
祖母は老眼と近視。
父も老眼と近視。
母は老眼と近視、乱視。
僕は近視とド乱視。
ちなみに叔父は生粋のド近眼だし、
その息子である僕の従兄弟は、
三十路に入るや急激に視力が低下し…、
と、いちいち上げていたらキリがないくらい、
メガネっ子大集合なのだ。
祖父の法事などで集まった日には、
寺のお堂をメガネ族が埋め尽くす。
すさまじいメガネ密度だ。
どこを向いても、
ユラユラと揺れる蝋燭を映したメガネ、メガネ、メガネ…。
なかなかに荘厳な風景だ。
おまけに仏壇上で微笑む祖父の遺影にまでメガネ。
我が祖先のお目目に一体過去に何があったのだっ!?
と問い詰めたくなることもしばしばで…。

まぁ、そんな家族の小ネタはともかく。

そんなわけで、このセールを機に、
我が家のメガネは一新される運びとなったのだ。
父も母も真新しいメガネを掛けているのを見て、
僕が居ても立ってもいられなくなった、
という事実はひっそりと隠しておくとして、
僕はいそいそとそのメガネ屋に向った。

メガネ族の皆さんなら既にご存知かと思うが、
最近のメガネは猫も杓子も細身細身…と、
やたらと縦幅の狭い(細い)メガネが大流行。
これ、車運転する時にえらい不便なのである。
ほら、ちょっと斜め上見るとそこはレンズの外でしょ。
ルームミラーなんて見えやしない。
仕方なく顔ごとそちらに向けると、
折り良く前の車が急ブレーキ踏んだりして、
オカマ掘りそうになることも幾度か…。

今回は意を決して、
この細身メガネと決別すべく、
店員さんにその旨を伝えた。

そして店員さんが持ってきてくれたサンプル。

「コチラ、『紳士用』になってしまうのですが…」

それは確かに「紳士用」であった。
まさに見紛うことなき「紳士用」であった。
あの…。
これ、いわゆる「鼈甲メガネ」デスヨネ?
これって社長とかがしてる奴デスヨネ?

あからさまに狼狽する僕に、
店員が矢継ぎ早に次のサンプルを手渡す。

「コチラですと、若干レンズは大きくなるのですが、
 いかんせん、形が大分変りまして…」

確かにそれは変っていた。
丸い。
真ん丸い。
レンズに貼られたラベルには「復刻版」の文字が。
装着後の姿が容易に想像され憂鬱になったが、
とりあえずおもむろに装着し、鏡の前へ…。

「…ッ!?ブフッー!(ゲラ」

そこに昭和初期の冴えない小市民が一人立っていた。

思わず自分で自分を笑った自分が悲しくなる。
必死に笑いを堪える店員を絞め殺してやりたくなりつつ、
「あの、他のありますか…?」

次に店員が持ってきたメガネを見て、
ふと「コイツ、客をバカにしたおるまいか?」と、
嫌な疑念が頭を過ぎった。

何と言えばよいのだろう。
まずフレームは無色透明のプラスチック製だ。
しかもかなりごつい。
形状は極めて四角に近く、
そして、エッジが立っている。
しかも、極めつけに、
メガネのつる(耳に掛けるとこね」)が、
笑っちゃうくらい波打っている。
もうね、コレかけた瞬間に、
「Hey!」とか「Yo!」とかしか言えなくなるんじゃねぇの?
そんな雰囲気を全身から醸し出しており…。



そんなブラザーメガネを手にしつつ、
店員と見詰め合う。
彼の顔が歪んで見えたのは、
裸眼で見ていたせいだろうか?
それとも涙?

「ちょっと考えさせてください…」

僕は結局何も買えずに店を出た。
思えば遠くへ来たもんだ
2004年02月21日(土)
電車の中で、
周りの目など一切気にも止めず、
猛烈な勢いでキスを繰り広げる、
ゴスロリ&似非イケメン風バカップル。

それを、
「遠慮」という文字など知らぬかの如く、
猛烈な勢いで凝視する小学生。

そんな小学生を、
仏のような笑みを浮かべつつ、
猛烈な勢いで寵愛するおばあちゃん。

嗚呼、厚顔すぱいらる。

なんとくなく気持ちもわからんでもないが、
どこか変だよ、にっぽんじん。

この国は一体どこへ向うんだろうか。
飲めません
2004年02月20日(金)
面接の時に、
たまにお茶を出してくれる会社があるのだが、
(まだ面接受けてんのかよ…とか言わんといてくれ)、
アレ、飲むタイミングが全然掴めない。

「絶対何かの作戦だ…。
 コチラのボロを引き出そうという罠に違いない。
 ククク、貴殿の考えはお見通しですぞ…」

面接は戦いであるからして、
面接官はそこかしこにトラップをしかけてくる。
いや、確証はないけど、そうに違いない。
だから、「お茶」一つにしても油断は禁物である。

しかし、面接官は百戦錬磨の兵であるからして、
こちらが「お茶は飲まない作戦」を展開しても、
「あ、どうぞ。飲んでください」
の一言でコチラの作戦を木っ端微塵にしてくれる。
勧められて飲まないのはさすがに気が引ける。
据え膳喰わぬは武士の情け。
また何かを間違えてる気がするが、
とりあえず紙コップを取り、お茶をすす…

「ところで、失礼ですが、
 大学を辞められた理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「…ッ!ええ…、ああ、ええとですねぇ…」

モロに策略にかかってしまった。
敵ながらアッパレ。
もう「思う壺」である。
用意してきた解答など3万光年の彼方に消え去り、
頭の中では高見盛がコサックダンスを舞い踊る。
しどろもどろも良いところだ。
「ブーッ!ゲへガハァッ!!」と、
面接官にお茶の雨を吹きかけなかっただけ、
まだマシなのかもしれない。

こんな具合でいつも飲むタイミングが掴めない。
飲もうとして、話しかけられる。
飲もうとして、話しかけられる。
飲むの諦めたら、勧められる。
その姿、
まるで洪水の如く車が行き交う大通りにかかる横断歩道で、
オドオドと左右を窺うパグ犬の如しである。

次お茶出されたら、
熱かろうが、ぬるかろうが、
一気に飲み干して男気見してやろうかしらん。
ほろ苦いFe
2004年02月14日(土)

隣の会話
2004年02月13日(金)
久々に家族で外食。

僕の向かいの席にいかにも、
彼:「父さん、母さん、これが僕の彼女です…」
彼女:「どうも初めまして…」
父:「あ、こりゃどうも…」
母:「お父さんってば、鼻の下…」
といった感じの、
幸せと緊張感が入り混じった家族連れ様が一組。

微笑ましさ半分。
羨ましさ半分。
隣接した席の都合上、
聞く気がなくても会話が漏れ聞こえてくる。

父:「……。」
彼:「……。」
彼女:「……。」

これを会話というのか甚だ疑問だが、
緊張感が隣の席にまで伝播して、
うちの家族まで口数が少なくなるのは適わない。
こういう時に突破口を切り開くのは、
やはり女性である。

母:「○×さんはおしいもの好き?」
彼女:「え…。あ、はいぃ!」

お母さん、その切り口ナイス。
そこから一気に雰囲気は好転。
「おいしい物話」に花が咲き、
ご家族の舌も滑らかになる。
我が家族も一安心(?)

母:「それでねぇ、あすこの中華がおしいのよ」
彼女:「フーン(尻上り)」
父:「あ、それなら横須賀にある◆△園もいいよ」
彼女:「フーン(尻上り)」
彼:「東京のさ、四谷に今度できた店がね…」
彼女:「フーン(尻上り)」


幸せそうなのはいいが、
どうも彼女の「フーン(尻上り)」に気になる。
なんなんだ、
その妙にドップラー効果がかかった「フーン」は。
なんだ、ここはサーキットか?
しかもさっきから「フーン(尻上り)」しか
口にしてないじゃないか。
貴様、彼氏はともかく、
ご両親に失礼であろうが!
相槌をうつならせめて「えぇ」とか言いなさい!



母:「この子(息子)、ほうれん草が苦手なのよ」
彼女:「へぇー」



ト、トリビア。
ぎゃふん。
2次作用
2004年02月04日(水)
昨日、母が玄関で撒き散らした豆が、
モロに靴の中に入っていた。
しかしそれに気付いたのは、
バスを降り、電車に乗ろうと、
駅の通路を猛ダッシュしている最中だった。
もはや靴中の豆など気にしていられない。
発車ベルは既に2回目の演奏を終えようとしているのだ。

階段を2段飛ばしで降りる。
こんなに機敏に動く自分を見るのは、
一体何年ぶりだろう。
最後は一気に5段分を飛び降りた。

俺もまだまだ若いな。フ。



華麗に着地。
その瞬間、
ゴリッという何かがつぶれる音と共に、
足から頭へと抜けるような激痛。
ザ・即席ツボ押し効果発生。

お陰で今日は、
なんだか体の調子が良い。
豆を数える
2004年02月03日(火)
「伊豆」と「逗子」という地名を、
よく取り違える人がいる。
しかし、両者の共通点は、
「海沿いにある町」ということと、
「名前の中に『豆』の字が入っている」
ということだけである。
そんな間違え方は大人としてどうかと思う。
I Love 逗子.

そんなこんなで節分。THE 豆繋がり。

「鬼はそとー 福はうちー」

無邪気に豆を撒き続ける母を横目に、
無心に豆を数える。

掌に山盛りになった、
28粒のソレ。

豆の山を見て
不意に憂鬱になった。

これを喰うのか…。
ていうか、
こんなに喰うようになったのか…。

モサモサモサ
ボリボリボリ

減らない。
食べても食べても減らない。
昔は一口でヒョイと食べられるくらいしか、
数えられなかった豆。
それはいつの間にやら20粒を越えた。
そしてこれかも30、40と増えていく。
…。

25粒目。
ついに心理的にも物理的にも
豆が喉を通らなくなった。

食後で満腹のところに持ってきて、
さらに乾燥した豆を数十粒喰うのは辛い。
胃が変。
シクシクと痛い。
しかも、
これがまた腹に貯まるのよね。
豆。
童よ 遊べ
2004年02月01日(日)
ふと窓の外を眺める

冬空に雲二つ

眼下を童が二人 駆けてゆく

転がるような足音と共に

笑い声が窓の下を通り抜けてゆく

それを追う悲しげな呼びかけ

「待ってよぉ 待ってよぉ」

前を走る童が早いのか

後を追う童が遅いのか

自然と笑みがこぼれる



よく目を凝らすと

前の子が何かを手に駆けてゆく



もしやアレは あの白い布は



パンツ…?




冬の澄み切った空気の中を

後を追う童のプリチーな生尻が

揺れながら遠のいていった

少年よ 強く在れ 優しく在れ




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設計*しゑ(繊細恋愛詩)
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