2011年03月31日(木)  いつもの夜、ヴェランダで。
 
仕事中は何とか業務に没頭することで喫煙欲求から逃れることができるが、夜に原稿を書いていると自分と向き合う事が多いため、自ずと喫煙欲求と対面しなければならない。それよりも禁煙した状態で果たして原稿が書けるのか。筆が止まるとベランダに赴き、紫煙を揺らしながらアイデアを考える。この手段が使えなくなった今、これまでのクオリティで原稿が書けるか甚だ不安であるし、そもそもこれまでのクオリティが甚だ不安定であるため別段気にしなくていいのかもしれない。禁煙3日目。原稿を書きながら強迫的にミンティアを貪っている。
 
2011年03月30日(水)  プライド。
 
チャンピックスの副作用かわからないが腹が張って屁と溜息ばかりでる禁煙2日目。最初の1週間は1日1錠なので朝服用すると夜効き目が切れて煙草が吸いたくなる。ちなみにチャンピックス服用開始の1週間は喫煙しても構わないそうであるが、何だかその中途半端な行為が美しくない。よって夜に悶々とどうでもよいプライドと格闘している。私は今、南の一つ星を見上げようとベランダに出てみたが、東京の空はニコチンタールのように人工的にどす黒く、誓うものも誓えない。
 
2011年03月29日(火)  トイラン・ブセ・ドルイマ。
 
何の切っ掛けもなく降って湧いたように禁煙を決意した。禁煙外来で処方されるチャンピックスという薬がものすごく効果があるらしく、周囲の喫煙者でこれを服用して禁煙失敗した者は一人もいない。何の決意も切っ掛けもなく、純粋にこの薬だけ服用して禁煙が達成できたら本当にこの薬は素晴らしい。しかも私は別に禁煙を達成したいとも思ってもいない。いつもと変わらない日常に、チャンピックスという内服薬が追加されただけだ。1日1錠をとりあえず1週間服用する。2週目からは1日2錠となる。さようならマイルドセブンライト。逆から読むとトイランブセドルイマでありひたすら体に悪そうな名前である。服用初日。まだ何となく吸いたい。でも何となく吸いたくない。
 
2011年03月28日(月)  良きに計らえ。
 
ヤマダ電機で会計する際、「ポイントはいかがなさいますか?」と訊ねられ、私はいつも「あ、そのままで」と返答するのだが、この「あ、そのままで」という返答が日本語として適切な返答の仕方なのかわからない。そういった釈然としない感覚が発すること自体、適切な返答でないということを証明しているようなものだが、ではどのような返答が日本語として適切なのであろうか。
 
私は職場で返答に窮することや名案が浮かんでこない時に「それでは良きに計らって下さい」と、無責任極まりない発言を平然と述べるのだが、私生活でも全ての事象に「良きに計らって下さい」と決断の放棄を宣言したらもっと楽に生きれるのだろうなとヤマダ電機のポイントカードを差し出すたびに、咽喉まで出てきた「良きに計らえ」を抑え込んで「あ、そのままで」と返答し、人生そのものが釈然としない感覚に襲われるのである。
 
2011年03月27日(日)  積善の余慶。
 
「映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」今日は御ハナの人生初シネマ。妻と大きなポップコーンを買い、期待と期待と期待に溢れた、これぞ幸福! といった顔で私と御ココに手を振りながら映画館に消えていった。御ハナは毎日家事の手伝いをして我侭など一言も言わない。幼き頃からこのような人生を送っていれば自ずと積善の余慶という観念が生まれ、明るい思考を持ち、幸せな人生を歩み、未来にとどけ! 世界をつなぐ☆虹色の花! と、自分のことをプリキュアと信じて疑わぬ美しい女性に育つのであろう。
 
2011年03月26日(土)  儚い方がいい。
 
子供ではなくて私がポリオワクチン予防接種。他の年代は、おおむね80〜90%の抗体保有率を示しているのに対し、昭和50〜52年生まれの人、特に昭和51年生まれの人はポリオの抗体保有率が37%と低い。昨年、まさかのおたふく風邪に罹患してひどく辛い思いをしたので、未然に予防できるものはちゃんと予防するに越したことないと思い、区で指定された小児科へ。
 
ポリオは経口の生ワクチンで、接種量は0.05mLと口に入ったのか入ってないのかわからない量。接種後に高齢の医師が、「今日は吐かない方がいい。ワクチンが出ちゃうからね。大食いとか控えた方がいいね」と、面妖なアドバイスをもらい、摂取量0.05mLの微量の効果と相まって胡散臭さばかりが残った予防接種だったが、一安心といえば一安心。自分で安心だと思ったらそれはもう根拠がなくたって安心。
 
2011年03月25日(金)  皆どこかへ。
 
今日は看護師と保健師の国家試験発表の日であって、今年保健師の試験を受けた部下のナースが合格発表が掲示される厚労省のウェブページを私に開いて欲しいとせがむので、そんな大役私にはできぬ。自分で随意に開けばよかろうと返答すると、ああそうですかそうですか。ということは私が不合格かもしれないと思っているわけですね。だから自信を持ってウェブページを開くことができないんですねと言いがかりのようなことを申すのでしょうがない。明らかに私に非はないし、この行為が別段部下の為だとも思わないが私が開くことにしましょうといった問答の間に、合格発表に興味津々なナースが数人集まってきて、このナース達は今はウキウキした顔をしているが、この部下がもし不合格だったらどんな顔をするんだろうか。私だったらこんなシチュエーションには絶対参加しない。女という生き物は本当によくわからぬといった表情でアクセスが集中して開きずらい厚労省の画面を眺めながら部下の合格を心から祈り、晴れて合格。「ヤッター!」と他のナースと喜びを分かち合いながら私を残して皆どこかに行ってしまった。
 
2011年03月24日(木)  妻は今日も。
 
ジョージアのポイントプログラムでPS3を当選させようと小遣いと命を削ってエメラルドマウンテンを飲み続けたけれど、PS3が買えるくらい飲み続けたところで俺は諦めた。ジョージアポイントプログラムもPS3も諦めた。妻はちょっとした懸賞好きでコンスタントに当選を続けている。当選する秘訣はなんですかと訊ねると、そんなことより早くお風呂洗ってきてと言われたのでお風呂を洗って、そうそう当選する秘訣ってなんですかと訊ねると、そんなことより洗濯物たたんでと言われ、このままでは当選する秘訣を聞けず仕舞いで日が暮れてしまうので、洗濯物をたたみながら当選する秘訣はなんですかと訊ねると、妻は今日も美味しい夕食を作っていた。
 
2011年03月23日(水)  優しさの含有量。
 
これまで水がないなんて考えたことないくらい平和ボケしていたので、水の中に放射能が含まれるなんてにわかには信じられなくて、1リットルあたり190ベクレル前後の放射性ヨウ素131が検出なんて言われても意味がわかるはずもなく、無暗にミネラルウォーターを買い占めてしまうのは理解の範囲内で、このご時世、責められる人は誰一人いなくなった。皆が赦し、皆が許される。寛大な方も厳格な人も。これからは器の大小関係なく、皆一様に少量の放射性ヨウ素131が注ぎ込まれる。人間なんだから誰だって消化できない。ワカメを食えばよいと聞いた。
 
2011年03月22日(火)  ピクニック論争。
 
とあるナースが「あー、ピクニック行きたいなァ」と何気なく呟いたことを切っ掛けに端を発したピクニック論争。
 
近くの公園。遠くじゃなきゃダメ。芝生は絶対。バトミントン必須。牧場。バスケットにサンドイッチ。湖。ブランコ。レジャーシート。曇ったらダメ。昼寝。
 
様々なナースが唱えるピクニックの定義のばらつきがあまりにも激しく、このように常識と思えることが実は人それぞれの定義を持っており、結果として齟齬をきたして人間関係に微妙なずれが生じるのだなと感じながら、私はピクニックは高原じゃないと駄目だと思うんだよね。
 
「それハイキングじゃないですか」
 
とあるナースが何気なく呟いたことを切っ掛けに端を発したハイキング論争。
 
2011年03月21日(月)  好きな人できたのに。
 
AKB48の柏木由紀のことが好きになったので妻にその旨を伝えたら「ふーん」と素っ気無い返事をするのみで、職場のナースに柏木由紀のことが好きなんだけどと告げてもAKB48にいそうなナース(モンハン部)だけが「だ、誰ですか誰ですか」と食いついてきただけで、他は柏木由紀の外貌も確認せず「へーえ」とやはり冷たい。御ハナはAKB48と発音することができず、「エーケービーコーディネート」と言う。妻はAKB48と発音せずに「あのコたち」と言う。
 
2011年03月20日(日)  それはそれはきれいな。
 
現在、中古で購入したauのPRISMOIDというiidaブランドの携帯を使用しているのだが、デザイン・カラー共に致命的にダサい。「過去の人々が想像していた未来」をコンセプトに作られたものなので確信犯的なデザインではあるのだが、何を思ったか黄緑色を購入してしまったので34歳にして黄緑はあまりにも不調和。先日白衣から携帯を取り出した際、目の前にいたナースが残念そうに首を振って「……それはない」と呟いたのでこれ以上、いろんな人の失望の眼差しを受けるのは精神衛生上よろしくないので今流行りのAndroid携帯を購入しようと近所の家電量販店に行ったが先日の震災で天井が一部剥がれ落ちており、お前ら家電選んでいる場合ではないですよと剥がれた天井の暗闇の奥から家電の神様が呟いた気がしたというか家電量販店に行くと本屋並みの便意を催したため撤退。ただのトイレの神様の声だった。
 
2011年03月19日(土)  備えて憂れて。
 
職場が計画停電の対象地域になり、夕食の配膳や日没後の看護、介護業務に支障をきたす恐れが高い。よって日没後の人員を厚くするため、いろんなスタッフに頭を下げて勤務調整に翻弄する日が続くが実際に停電になったことはなくことごとく徒労。備えあれば憂いなしというのは、備えた後に事が起きて適切な対応ができたから憂うことがなかったということだが、万全に備えた後にスタッフから「勤務代わったのに停電こなかったじゃん」と俺に言われてもというようなことばかり言われて憂う毎日。
 
2011年03月18日(金)  春なのに。
 
今までちょっと黙ってたんだけど、今年は乾燥性皮膚炎が鳴りを潜めている。どうして黙っていたかというと恋の始まりと同じようなもので、一端強く認識するとその後漫然と意識を始めてしまうため、今はちょっと肌が痒いと「かいーなー」とボリボリして終わるのだが、意識しはじめると「かいーなー。もしかして乾燥性湿疹が出てきたのではないかしら」と、皮膚の状況を確認して再びもう一度掻くという不毛な行動に出て結果、肌を刺激して乾燥性皮膚炎を誘発するという事態に陥るため、この冬は意識しないことに努め、軟膏や保湿剤を使用してのスキンケアも結果として乾燥性皮膚炎を強く意識することになるため使用を控えていた。何がいいたいかというと、春目前になって突如乾燥性皮膚炎の悪化が始まったのだ。恋のサインを無視し続けると相手のアクションがいよいよ激しくなるっつう寸法。
 
2011年03月17日(木)  悠長な日々。憂慮する夜。
 
いつぞやのなにかしらのイベントの際に私が妻にプレゼントしたふわっふわでもっこもこでふっかふかの室内用の靴下が欲しい。私の書斎にはエアコンがなく、暖房器具はハロゲンヒーターのみである。しかし妻がハロゲンヒーターのことを電気代が掛かりすぎると目の敵にして忌み嫌っているため、この節電のご時世も相まってハロゲンヒーターは御役御免。温かなハロゲンの光は、明日も勿論続くであろうとの錯覚を繰り返していた悠長な日々の象徴として、静かに物置の片隅で眠ることになった。
 
そして明日の夜の光を憂慮する日々に、妻がアリとキリギリスのアリの如く、来たるべく冬に備えていたふわっふわでもっこもこでふっかふかの室内用の靴下を私にもちょっと履かせてほしいと頼んだところ、「いやよ。自分で買えばいいじゃない」と、妻は別段、虫の居所が悪くない時も普通にこんな冷たいことを仰る。
 
2011年03月16日(水)  ホンノチョット。
 
今日は御ココの定期受診の日。車でかかりつけの大学病院まで行ったのだが、特に大きな渋滞もなく、軒並みガソリンスタンドが閉店している以外は世の中はいつも通りに動いているように思えた。
 
御ココは今月で術後三ヶ月を迎える。毎朝1回の浣腸で排便はあるが、自力排便が1日1回あるかないか。直腸の縫合部がまだ狭い状態らしく、これからも毎日1回、肛門に指を入れて腸を広げる指ブジーという処置を続けるよう主治医から指示が出た。
 
そんな状況でも御ココは笑い、夫婦は未来を見据えている。待合室で会計を待っていると、妻が「ちょっとATM行ってくるね」と言って席を立った。義援金を入金してきたらしい。「いくら寄付したの?」と、夫婦だからこそ言える不躾な質問に、妻は明るく私の小遣い数ヶ月分の額を言った。
 
私は金額に驚いたのではない。術後三ヶ月後の乳飲み子を抱えながら、時間の隙間を縫ってATMに小走りで向かうその真摯な姿勢に驚いたのだ。
 
妻はとても強い人だと思う。だからこそずっと守っていこうとも思う。
 
2011年03月15日(火)  桃屋のラー油が余る時代。
 
近所のスーパーに買い物に行ったら米もパンも水もカップ麺もパスタも粉ミルクも何もないなか、桃屋のラー油が大量に余っていてテンションの行き場に困った。皆似たような妙なテンションでもって買い占めしてしまう心理はわからなくもないので責めることはできないが、こういう心理が常態化した後の優しさの欠如が怖い。買い占めしながら募金する矛盾した行為に気付いた時が怖い。矛盾するならしっかりと意識を持って一貫性を持った行動を取る方が精神衛生上健全である。桃屋のラー油が余っている状況は、やっぱり不健全だと思う。
 
2011年03月14日(月)  先ずは我が身の。
 
本日、職場がある区でも計画停電が行われるとのことで朝から対策に東奔西走したが結局停電せず、節電された病棟はいつもより静かな印象だが、スタッフの焦燥はひしひしと伝わってくる。違う部署の所属長が「ヨシミさんてヒットラーの生まれ変わりだと思うんです」と、驚くようなことを数日前に言っていて、何をもって私がヒットラーなのか検討がつかないが、仮に生まれ変わりだったとしたら、一時の独裁でもいいので、職場の中の一つの部署だけでもいいので、いつも以上の統制を取ることができたらと思う。とその前に先ずは我が身の安寧を。
 
2011年03月13日(日)  一知半解。
 
ブラウン管の向こうで、なんて書くと時代錯誤になるかもしれないので、液晶の向こうで、プラズマの向こうでなんて書くといいのかもしれないが、そんな今の時代を意識した言葉を選んだって今の時代はどんな言葉でも表現できない光景が広がっている。
 
情報を鵜呑みにすると圧倒的な虚脱感に襲われるので、心を空虚にしてテレビを見ると瞬く間に痛嘆に満たされる。情報の読み方がわからない。前途の予測が立てられない。忖度を生業としているというのにそれすらもままならない。
 
あの地震の日、本棚の上に置いてあったウルトラマンのフィギアがベッドの上に落ちてきた。ウルトラマンはまだベッドの上でファイティングポーズのまま横臥している。
 
2011年03月12日(土)  何か適当。
 
余震が続いた夜勤明け。妻に電話する。
 
「何か適当に買ってきて。とろけるチーズとか」
 
私の中では「何か適当」なものに、とろけるチーズは絶対に入っていなくて、往々にしてそういう部分から夫婦関係に齟齬をきたしやすいため、「何か適当」というカテゴリに分けずに具体的に言ってもらった方がありがたいのだが、帰りに寄ったスーパーでは、パン、水、カップラーメン、惣菜、私の中で「何か適当」に部類されるものは全て売り切れていた。
 
これから先、「何か適当」では乗り切ることのできない日常を、少しずつ感じ始めた。
 
2011年03月11日(金)  日常。
 
夜勤明け午前8時帰宅。御ハナは保育園。妻と御ハナは窓際で日向ぼっこをしている。シャワーを浴びて少し原稿書いてから妻が作ってくれた昼食のパスタを食べて、今夜も夜勤なので午後1時にベッドに潜り込む。
 
一度眠ったらなかなか起きることのない私が、妻と御ココのもとへ駆け寄っていた。妻は不安そうに御ココを抱き締めている。部屋全体が揺れている。いつまでもいつまでも揺れている。「大丈夫」という言葉が宙に浮く。
 
日常が非日常な日常となった。非日常は日常としての非日常となった。
 
2011年03月10日(木)  ニュータイプ。
 
ロン毛でしたので家ではオールバックにしてちょんまげでしたので職場ではナースにボサボサしてて気持ち悪いと言われましたので美容院に行ったら担当が前回と同じ女性でしたのでバッサリ切って下さいと頼みましたら、私は長い方が好きですと仰るので、長いのが好きも何も貴女が好きでも職場のナースが嫌いと言うのでどうか短く切って下さいとお願いしましたら「かしこまりました」と案外あっさりと了解してくれて、短髪になった後、「やっぱり私長い方が好きでした」と言い切るあたりにサービス業という枠を超えた美容師に新しい可能性を見出した。
 
2011年03月09日(水)  ベネベネベネフィット。
 
職場の会議で「リスクとベネフィット」という言葉が飛び交い、リスクはわかるがベネフィットの意味がわからない。私は以前、とある女子大で開かれた会議で「実習生のレディネス(事前準備)」という言葉が飛び交った際、あまりにも皆がレディネスと連発するため、さっぱり意味がわからんが女子大なだけにレディーのなんたらであろう。よって女子大の実習生のレディーのなんたらといえば、おそらく「女性の品格」というような意味であろうと推測し、「うちの実習生のレディネスは」と、女性の品格という意味で発言し、事前準備という意味に置き換えても辛うじて意味が通った発言だったという九死に一生を得た苦い経験があったので、ベネフィットという言葉はリスクという言葉と付随して発言されるので、リスクとベネフィット、危険と損害というような意味であろう。ベネフィット、なんだかベネベネした言葉だしネガティブな言葉に違いないと思ったけれどレディネスの件もあるのでここは一丁、大人らしくではなく子供らしく手を挙げて「すんません。ベネフィットってなんスか」と、俺は阿呆ですとアピールするような口調で質問し、横に座っていたイケ原君が「利益って意味っすよ」と教えてくれたので「あそう」とそっけない返事をするあたりがほんともう汚い大人。
 
2011年03月08日(火)  まあるくみえた。
 
仕事中に「寝返りした!」と、妻からメールが届き、添付された写真には両手を広げ今まさに全力で寝返りせんとする御ココが写っており感動したので「感動した!」と返信したらそれっきり返事がない。私も人の事を言える立場ではないが、妻は必要な時に必要なことしかメールしないクールな人である。
 
仕事が終わり帰宅後すぐに御ココに「寝返り見せて!」とせがんでみたが、ヘラヘラ笑うだけで寝返りする気配がない。御ココの傍らにしばらく正座していたが一向に寝返りしないので私が横になって寝返りしてみたら世の中がまあるくみえた。
 
2011年03月07日(月)  背徳エメロン。
 
同年代のナース二人と喫煙所でシャンプーの話をしていたところ、私の紙がボサボサなので短く切るかもしくは毎日リンスをしろという二者択一を迫られ、一人のナースが「私も小さい頃頭がボサボサだったから毎晩お母さんにリンスが入った洗面器に頭押さえつけられてたわよ」と言った刹那、三人が一様に「!?」という表情を浮かべた。
 
「……そういえば、リンスって洗面器のお湯に薄めて使ってたよね」
「使ってた使ってた!」
「あれっていつからなくなった?」
 
リンスは洗面器のお湯に薄めて使うもの。三人は煙草を手に持ったまま記憶を辿るようにそれぞれの過去へ旅立っていった。私は小さい頃はずっと坊主頭だったが、母の目を盗んでは洗面器のお湯に薄めたリンスを頭に撫で付けていた。坊主頭にリンスを塗ると、女性の衣類をまとったような背徳感に包まれ、何だかモヤモヤした気分になっていた頃が、あの感覚が鮮明に甦ってきた。
 
「……いつからしなくなったかなあ」
 
一人のナースの独り言で私達は職場の喫煙所に戻ってきた。「ヨシミさんどうしたの?」
 
意味もなく顔が赤らんでいた。
 
2011年03月06日(日)  やっぱりただただ。
 
突然御ハナが「お風呂掃除する!」と言い出し、「一人でお風呂入る!」と意気込み始めたので夫婦してうちの娘に一体何があったんだと首を傾げていたのだが、先日、イケ原ファミリーがうちに遊びに来た時に、小学2年の長男が毎日お風呂掃除をして、もう一人でお風呂に入っているという話を聞いて、私と妻が揃って「偉いねー」と褒めていた場面を御ハナは脳裏に焼き付けていたのだ。
 
片や小学2年、片や4歳である。お風呂掃除も一人で入浴もまだ早すぎる年齢である。しかし小さなエプロンをまとい、小さなズボンをまくって半身浴槽に乗り出して洗う後姿を見て、「パパ手伝おっか?」「ひとりで入るからパパ入ってこないで!」と私を風呂から追い出す姿を見て、嬉しいような悲しいような。やっぱりただただ悲しいような。
 
2011年03月05日(土)  春先のバーバリー。
 
私は寒がりである。白衣の下にはタイツを履き、腹巻をして白衣の上にカーディガンを羽織ってなお暖房が効いたナースステーションで寒い寒い喚いているほど寒がりである。
 
とりあえず南国生まれなもんでといった理由で寒がりを肯定化しているが、南国生まれでも暑がりの人がきっといるだろうから実際のところ理由なんてわからない。
 
職場の男性看護師イケ原君が、「アイヒートいいっすよ。この季節でもアイヒート1枚で過ごせますよ。いやマジですって」と、アイヒートを大プッシュするのでアルペンと東レが共同開発した吸湿発熱ウエア「アイヒート」を購入。
 
体から自然に発する水分に反応し、生地自ら新たな熱を生む素材らしく、部屋でじっとしている分には温かさを感じないが、身体を動かすと汗に反応するのか本当に身体全体が温かくなる。しかし家ではあまり身体を動かさないので体から自然に発する水分も少なく、アイヒートにパーカーを来てバーバリーの柄のようなチャンチャンコを羽織って原稿を書く毎日。
 
2011年03月04日(金)  家族と家族といちご。
 
イケ原ファミリーが我が家に遊びに来た。何度も言うがイケ原君とは同じ職場の看護師でイケメン原付の略でなぜイケメン原付かというとイケメンで原付に乗っていたからであって、なぜイケメンかというとそれは知らない。ただただ女にモテそうな面をしている。なぜ原付かというと過去に訪問看護で原付に乗っていたからであって、もうオレ原付乗ってないですからイケ原じゃないですよとロッカーで着替える時にパンツ一丁で言っているが散々この日記でもイケ原君と書いているので今後もイケ原。
 
そんなイケ原ファミリーは5人家族。イケ原君、妻、男の子3人。うちは女の子2人なので男の子3人がいる生活は想像ができない。さぞ賑やかな家庭だろうなと思っていたが、男の子3人はとても穏やかというかマイペース。このキャラクタは美人で穏やかなイケ原君の妻あってのキャラクタに違いない。
 
イケ原君の妻はこのブログの熱心な読者でもあって、食卓を囲みながら私が面白エピソードを語ると、「ああ、それ日記に書いてましたね」「ブログで読みました」と、日記に書いていない面白エピソードを持ち合わせていない私は少々困ってしまったので、今後は日記には書いていない面白エピソードを溜めておこうと思う。
 
2011年03月03日(木)  二人並んですまし顔。
 
雛祭り。御ココの初節句である。妻がちらし寿司やお吸物などの祝い膳を作ってくれて、私は仕事帰りに御ハナが食べるケーキを買う際、「スイートプリキュアおこさま白酒」という物を見つけて、妻はきっと鼻で笑って一蹴する代物であるが、御ハナに対する思いは甘酒以上の私がこんな物を見て買わないわけがない。またこんな物買ってと妻の小言を覚悟して「スイートプリキュアおこさま白酒」を購入。卑怯である。プリキュアと名がつけば何だって買うだろうという販売戦略は卑怯である。白酒とプリキュアって全然関係ない。でもプリキュアと名がつけば甘い親とそれを享受する子供は喜ぶに決まっている。卑怯である。
 
雛人形の前で御ハナが御ココを抱えて記念撮影。御ココはまだご馳走を食べることはできないが、祝い膳を食べる私達を眺めてニコニコしている。私と妻はビールを飲み、御ハナは「スイートプリキュアおこさま白酒」のパッケージを見て大喜びし、「おいしくなーい」と一口飲んだきり。ほらねと言わんばかりの妻の視線から目を逸らし、食後にケーキを出すと、御ハナはケーキがあまり好きじゃないのでケーキの上のイチゴを食べたきりフォークを置いたので「御ハナさん、ケーキちゃんと食べなさい」と妻に叱られていた。ケーキをちゃんと食べなさいと叱られる子供はなかなかいないと思う。
 
2011年03月02日(水)  ビュッフェで一息。
 
先日部下と仕事帰りに箱根に行った際、夕食を摂っていなかったのでロマンスカーにビュッフェはないのと部下に訊ねたところ、ないと言うのでそんなわけはない。こういうほぼ旅行目的で長距離を走る列車にビュッフェがないわけがない。ちょっと調べてくると席を立ち、車内を移動するとビュッフェがあったので席に戻りやっぱりビュッフェあるじゃないかてめえこのやろう腹が減ってるというのにいらぬ体力使わせやがってと部下を叱ったがそれでも頭を傾げているので、そんな人を信用していない態度を取るのならば自分で見にいったらいい。3両くらい移動するとあるからと部下にビュッフェを確認しに行くよう指示し、私は事前にビュッフェをこの目で見たので大勝利。実際あったんだからあるに決まっていると鼻息を荒くして部下が戻るのを待っていると、やっぱりありませんでしたと戻ってくる。
 
そんなわけがない私はこの目で見たんだよビュッフェ。ビュッフェ絶対あったってと熱弁すると、ヨシミさんもしかしてビュッフェって列車内で食事を摂る専用の車両のこと言ってません? と言うので、何を今更。列車で飯を食う場所のことをビュッフェと呼ぶのが普通じゃないのかと返すと、いいえ違いますよ。ビュッフェっていうのは食べ放題のことですよと尋常な口調で申すので、いいやそれは違う。食べ放題はバイキングって言うんだ。
 
百歩譲ってビュッフェが食べ放題だとしたら、バイキングがある列車の車両のことをビュッフェって言うんだ。でもバイキングがある列車の車両なんて見たことない。だったらやっぱり食事を摂る専用の車両のことをビュッフェというんだ。と、半ば敗戦を意識しながら部下が隣のシートで寝た隙に携帯でビュッフェを調べると本当に食べ放題の意味で電車に関連することなどひとつも書いていなかった。
 
34年間、なぜ列車内で食事を摂る専用車両のことをビュッフェと誤認識していたかは不明。
 
2011年03月01日(火)  電子書籍第2弾配信。
 
本日、『AXEL BOOK』での電子書籍第2弾である作品、「ととのいました!キモいけど言われてみたい日本語〜恋したくなる三行詩〜」が配信された。
 
昨今の電子書籍の普及拡大に伴い、今まで伝統的な文芸に興味を持っていなかった読者に対しても、電子書籍を通じて伝統的な作品に触れる機会が増えてきた。この作品は、短歌や俳句などの、短詩型文芸を踏襲した三行詩によって、日本語の面白さ、言い回しの妙や表現方法の幅広さを示すことに挑戦している。
 
「恋愛」という、若者であれば誰もが共感できるものを題材とし誰もが使っている自然な言葉で、恋人同士の会話のように男が謎を掛け、女が訊ね、男が答えるという形で、恋愛で起こりうる様々な事象を表現している。
 
過去にケータイ書籍として発売した「桃色浮世草子」のスタイルを踏襲しているが、スマートフォンに映える三行詩として、恋人と、友人と、もちろん一人でも楽しめる作品に仕上げている。
 
妻は私の作品にあまり興味がないので残念だが、周囲の反応はとても気になるので是非ともレビューをお願いします。現在、電子書籍第3弾も執筆中。
 

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