2006年03月31日(金)  レベルアップ。
 
当の本人もつい2日前に思い出したくらいだから皆さんはもう忘れてるかもしれないが、今日は精神保健福祉士の国家試験合格発表の日だったのである。午後1時に。まずネットで発表される。
 
んで午後1時。僕は仕事をしていたわけで、合格したかなぁ不合格かなぁ。でもやたら自信たっぷりな日記を書いてたし、周囲の人間にも絶対受かる。落ちるという選択肢の存在すら考えたことがないというようなことを吹聴してたもんなぁ。落ちてたらみっともないよなぁ。でも僕はそうやって変な自信をつけて自分を追い込まないと勉強しないタイプだもんなぁ。
 
でもいっか落ちてても。みんな多分忘れてるし。試験が1月の末にあって発表が今日でしょ。3ヶ月も待たされたんだぜ3ヶ月。価値観の合わないカップルだったらとっくに別れて次の恋人ができてる月日だよ3ヶ月。落ちてても給料が減るわけじゃないしね。でもいっか落ちてても。
 
と、脳のシナプス全てを駆使して自己肯定をしながら仕事が終わるのを待って、全力で自転車をこいで帰宅して、即パソコンの電源を入れて、うちのパソコンは立ちあがりまでちょっと時間が掛かるのでその間にタバコを吸って、コーヒー飲んで、はぁ、今日も仕事疲れたー。ゲームでもすっぺ。と、先日購入したプレステ2のソフトを起動させて、主人公が何度も何度も同じボスキャラにやられるものだからムカつく。
 
やっぱレベル上げなきゃ勝てないのかなぁ。でもレベル上げメンドクセー。こんなに疲れてるのにどうしてゲームでもしんどい思いをしなければいけないんだー。でも頑張る。だって次のステージに進めないから。と、黙々とレベル上げをこなし、もうこれであのボスにも勝てるだろうと自信をつけたところで彼女帰宅。
 
「試験受かってた?」
 
と、聞かれるまで忘れてた。合格してた。
 
2006年03月30日(木)  私の六法。
 
彼女はネットをあまり利用しない。全く利用しないというわけではなく、たまに「パソコン借りるねー」と、一人で黙々と調べ物をしている。
 
そんな休日。30分ほどネットをしていた彼女はごそごそと収納を漁り始める。何を探しているのか問うと、「私の六法全書知らない?」と言う。彼女は法律とは無関係ではない仕事をしているので、こんな桜咲き誇る晴れた休日も仕事のことを考えているのだ。法律とはあまり関係のない仕事をしている僕は、こんな晴れた日にベランダで洗濯物を干している。
 
「ねぇ、私の六法全書知らない?」
 
洗濯物を干し終えた後も彼女は収納を漁りながら六法全書を探していた。彼女はネットをあまり利用しない。旅行の計画を立てる時もネットで探すことなく、旅行店にパンフレットを取りに行くタイプなのだ。
 
「何調べてんの?」
「六法がないとわかんないのよ」
「試しにネットで検索してみればいいじゃん」
「うーん……」
 
晴れた休日。僕は部屋の掃除を始める。彼女はパソコンに向かっている。一体彼女は何を検索しているのだろう。そっと後ろからパソコンの画面を覗く。
 
「私の六法知りませんか」
 
グーグルに我が家の六法のありかを訊ねていたのだ! そんなものわかるわけないじゃないか。ネットにあまり親しんでいないとはいえ、これは本気なのか? ギャグなのか?
 
「試しにネットで検索してみれば」と、僕が言ったのはもちろんそういうことではなく、本気にしては怖くなるほど天然である。それがギャグだったとしても、グーグルに「私の六法知りませんか」と書いた時点で僕を呼ぶなり、画面に注目するよう何かしらのアクションを起こすはずである。
 
しかし彼女はただ静かに「私の六法知りませんか」と書いて、知るわけがない検索結果を眺めていたのである。僕は部屋の掃除をしていた。気付かないかもしれなかった。彼女は一人でグーグルと会話していた。たまらなく愛しかった。
 
2006年03月29日(水)  人生のM。
 
まぁあれだね。終始イライラする状況を笑顔で乗り切った後の達成感といったらたまらないね。人間的に成長したなぁって充実感? 感情をコントロールできたという実感? なんかそういうやつを体全体で感じることができる。もう死語にすらならないけど、MK3? マジでキレる3秒前? なんかそういうやつを経験したの。しかも断続的に。5分置きくらいにMK3。それでもマジでキレそな3秒後には笑顔でいるんだから俺ってすげェ。もうホント気が優しすぎ。怒るときは怒らなきゃダメよって婦長さんにも言われ続けてるけど、やっぱりそういうのってできないんだろうなぁ俺。笑顔だった。ただ笑顔だった。そして達成感が訪れた。やっぱりマゾなんだろうなぁ。人生という観点でマゾ。自ら発するの不幸の蜜を美味ぇって言うタイプ?
 
2006年03月28日(火)  一人TKO。
 
浴室にて洗顔。どのくらい高速で顔をこすれるかという、わかったところでどうなるという実験の途中、人差指が右目の瞼に突き刺さり流血。シャワーに流れていく自分の血を呆然と眺めながら、あぁB級ドラマの自殺場面みたいだと思いながら鏡を見る。まるでボクサーのよう。意味もなくファイティングポーズ。血が止まらない。一人TKO。
 
2006年03月27日(月)  記念日。
 
彼女は毎日僕より帰宅が遅いので、最近は頑張って夕食を作るようにしている。こうやって男は料理にハマっていくのだなぁと思うけれども、僕は全然ハマる気配がない。彼女の帰りが遅いからご飯を作っている。ただそれだけである。
 
「ただいまぁ」と午後7時半彼女帰宅。食卓には僕が作った夕食が並ぶ。というのに。彼女の右手には焼き鳥十数本。左手にはショートケーキ。なんなんだ一体。頑張ってご飯作ったのに。なに焼き鳥って。なにケーキって。
 
「だって今日、あなたの本が出版される日でしょ」
 
あー忘れてた。僕の手元には出版社からもらった本がいっぱいあって、ネットでも告知を散々行ってきたのでてっきりもう発売されていると錯覚していた。でも今日、僕の本は本屋に並ぶのである。今日は出版記念日である。そして出版記念日を覚えていた彼女、焼き鳥とケーキという盆と正月が一緒にやってきたようなお祝いをしてくれようとしている彼女、僕の彼女、今日もなかなかお風呂に入らない。
 
2006年03月26日(日)  「月刊男心」TVで紹介。
 
NHK「これであなたもブログ通!」に「月刊男心」が紹介されます。
放送は3月26日(日)時間は19:30〜21:30。
 
もう終わってます。放送日が今日だってさっき気付きました。
そして引越ししてネットが繋がっていない僕はネットカフェでファンタを飲むかコーラを飲むか散々迷った挙句カルピス飲んでたりします。こんな大事な日だったのに。
 
番組では30のブログを紹介し、選考委員には天野祐吉、中川翔子、みうらじゅん、YOUなど錚々たる面々でございます。
 
先月、番組制作者から紹介させて下さいとメールと電話がきて、「絶対見ます!」と目を輝かせて言ったにも関わらずカルピス飲んでます。ああ。
 
自薦他薦含め、1100通ものブログから選ばれたことは光栄に思います。ありがとうございました。カルピスが水っぽくて辟易してますが、まだ希望は残されています。
 
3月30日(金)20:00からBSハイビジョンで再放送されます。絶対見ます。これで僕もブログ通です。ああ。
 
2006年03月25日(土)  最後の難関。
 
彼女は本当に良く眠る人で、仕事から帰るとウトウトしながら夕食を食べて、その後決まってソファーに横になる。僕は彼女の肩を優しく叩きながら「ねぇ、お風呂入ってよ。お風呂入ってから寝てよ」と言い続ける。たいてい「うるさいうるさい」「言われなくてもわかってるわよ」と、母親に宿題を迫られた思春期の娘のような反応をするのだが、10回に1回くらいは「……入ってくる」と、すんなり入浴する時もある。
 
「君がお風呂に入るか入らないかは1日の最後の難関なんだよ」と、今日も僕は彼女の肩を叩きながら速やかに入浴するよう促し続けている。さもないと深夜2時頃にノロノロ起きて、身体中から倦怠のオーラを発しながら、ちゃんと入浴を勧めてくれなかった僕に対して小声で呪いの言葉を呟きながら浴室に向かうのである。で、深夜2時半ぐらいにドライヤーの音で安眠を妨害されるのである。
 
それでもゴソゴソしながら僕の胸に顔を押しつけてベットに入り込んでくる彼女が好きで好きでたまらないのだから恋愛って訳がわからない。
 
2006年03月24日(金)  恋のマジックリン。
  
27日に発売となる「月刊男心」って最近自分の本の話しか書いてないけど、それぐらい力を入れた作品であって、出版社の方も「社運を賭けてますから」と言うくらいそれはもう真剣に取り組んでくださった作品なだけあって、装丁にしても帯にしても、何よりも内容が本当に自信のある出来になっている。
 
手前みそで申し訳ないが、ただブログを本にしたというわけではなく、5作の掌編小説が掲載されていて、ブログだけでは味わえない「月刊男心」の世界を展開している。みんな買ってみんな苦い笑みを浮かべてみんな読み終えた後に満足してほしい。そんな思いを込めて、1作1作慎重に作品を選別し、書き下ろしの掌編を書いた。
 
発売まであと3日。彼女は先に僕の本を読み終えてこう言った。
 
「面白かったり悲しかったりで不思議な気分になるね。あ、お風呂掃除あなたの番よ」
 
バスマジックリン切れたので買ってきます。
 
2006年03月23日(木)  幸せの意味。
 
来週発売される「月刊男心」は、周知の通り「歪み冷奴」のコンテンツの1つが書籍化されたのである。
 
フリーライターとしていくつかの雑誌にコラムや短篇を掲載してきたが、自著となると、1作目、ネオブックオーディションの優秀賞を受賞した「恋愛歪言」、2作目、先日発売されたケータイ書籍「桃色浮世草子」、そして3作目の「月刊男心」と、全て「歪み冷奴」のコンテンツがそれぞれ書籍化されているということになる。
 
よって次作も「歪み冷奴」のコンテンツからの出版だろうと思うけれども、もう僕には手持ちのコンテンツがない。「月刊男心」の更新が精一杯でこの「好色一代男」の更新頻度でさえ著しく低下している現状、新しいコンテンツを考案する時間がない。同棲生活始まったし。
 
よって次作はオリジナルの小説を書くことにした。というのは嘘で、とある編集者から長編小説書いておくれと長いこと言われ続けてるけど、そんな技量もネームバリューもありません。同棲生活始まったし。と、何かにつけて同棲生活を引きあいに出して逃避行動を起こすほど同棲生活は幸せなのです。
 
2006年03月22日(水)  4巻読んで。
 
彼女は小説も漫画もあまり読まない。いったい何を読んでるのと訊ねても、「毎日あなたの心を読んでるの」と話にならない。まぁ小説は好き嫌いが激しいだろうから、とりあえず漫画を勧めてみようと、僕もあまり漫画を読まないのだけど、唯一部屋に置いてある「デスノート」という漫画を彼女に勧めてみたら大当たり。同棲生活だというのに漫画ばかり読みふけってまともに僕と話すらしなくなってしまったとよく考えたら大外れ。
 
部屋にはデスノート1〜3巻があり、3巻を読み終えた時点で勘違いをして5巻を買ってしまい、4巻を読まなくちゃ5巻が読めないので、3巻から先の展開は知らない。彼女もちょうど3巻を読み終え、明日にでも4巻買いに行かなくちゃねーと話をしているというのに4巻を飛ばして5巻を読んでいる! 驚愕しました。唖然としました。
 
「な、な、なんで飛ばして読むんだ」
「だって4巻ないじゃん」
「4巻ないなら買ってくるまで待てよ」
「大丈夫。ほら、5巻に前巻のあらすじ書いてあるからこれ読めばわかるよ」
「なっ……! それだったらあらすじだけ読めば済むじゃん」
「だったら漫画読んでる意味ないじゃん」
 
と、言い負かされたのかどうかさえもわからない論理で平然と5巻を読み始める彼女。A型の僕としては考えられないB型の彼女の行動。「お願いだから4巻買うまで待ってくれ……」と、弱々しく懇願するも、「あん、ちょっとうるさい」と一蹴され部屋の隅で萎縮しながら洗濯物きれいにたたみました。 
 
2006年03月21日(火)  サイン本。
 
先日、プレゼント用のサイン本を渡すために、まどか出版の営業のお兄さんとKDDI本社に行った。
 
KDDI本社はこれで2回目。1回目は発売記念ページ作成の打ち合わせとインタビュー。すごくタイプなコピーライターのお姉さんに質問攻めというウハウハな状況でガチガチに緊張していた僕は支離滅裂で荒唐無稽なことばかり喋ってしまい、いったいどんな記事に仕上がるんだと内心ドキドキしていたが、発売記念ページのインタビューを見ると、これは編集した人が偉いと思うのだが、ちゃんとしたインタビューになっていた。ウハウハでガチガチだったのに。
 
というわけで2回目のKDDI本社。エレベーターが無茶苦茶早い。数秒で20階に辿り着いてしまう。もうほんとすごい速さで上昇してるんだと思う。エレベーターに乗るたびに身長が1ミリずつ縮まってしまうのではないかと思うくらい早い。
 
営業のお兄さんが包装紙に包まれた「月刊男心」数十冊の封を解く。作者のくせにここで自分の本と初体面するのである。ドキドキ。
 
「それではお願いします」
 
と、プレゼント用のサインを30冊渡される。サイン。昨日の夜、職場の勤務表の裏に思いっきり練習したサイン。彼女に「ははっ。がんばれがんばれー」と馬鹿にされながら練習したサイン。ここに来る電車の中でメモ帳片手に練習したサイン。
 
これで応募数が少なかったら二度とKDDIのお姉さん達に合わせる顔がないので、皆さんどうか応募して下さい。
 
2006年03月20日(月)  渾身。
 
苦節一年。とうとう「月刊男心」が書籍化、1週間後の3月27日、まどか出版より発売される。
 
書籍化の企画が持ち上がったのが去年の春。書籍化が決定したのが去年の夏。そして発売が今年の春。この1年、ブログで作品を公開しつつ書籍化の準備を進めるという結構ハードなスケジュールをこなしてきた。
 
その間にもケータイ書籍「桃色浮世草子」の出版が決定したり、婦長さんに怒られたり、通信大学を卒業したり、精神保健福祉士の国家試験を受験したり、彼女と別れたり、新しい彼女と同棲を始めたりと、お前どんだけエネルギッシュなんだと客観的に思うようなこの1年こんな1年の結晶が、今回出版される「月刊男心」である。
 
しかもただブログの作品をそのまま載せたのではなく、推敲に推敲を、編集長にダメ出しにダメ出しを重ね、細かい訂正数知れず。自信を持って新しい「月刊男心」を読者に魅せることができると思う。
 
発売までまだ1週間あるが、渾身の作品をどうか楽しんでいただきたいと思う。
 


2006年03月19日(日)  愛の糖尿病。
 
引越ししてネットが開通してないものだからこうやってネットカフェで1時間400円払って日記を書いている。自分の日常を残すために400円払っている。でも自分の日常を残すためにジュース飲み放題。ホットコーヒーはできあがるまで時間掛かるのでホットココアばかり飲んでいたら吐き気がする。コーラとかファンタとかも飲み放題だけど冷たいものいっぱい飲むとすぐお腹壊しちゃうから。同棲生活だからそんなしょっちゅうウンコ行けないから。
 
今日は彼女も休日で一日何やっていたかというとWBCの準決勝見てて一喜一憂してたのは僕だけで彼女ずっと寝てた。寝起きも寝顔もキレイだから得だよねって前の彼氏から昔言われたみたいで、僕だって彼女の寝起きも寝顔もキレイだと思うけど前の彼氏が先に言ってるので言わないようにしてる。
 
で、彼女が晩御飯準備すると言ったので僕はその間に徒歩5分のネットカフェに来ている。徒歩5分にネットカフェ。なんて素晴らしい立地条件。でもネットが開通すればこんな距離も全然素晴らしくなくなる。でも徒歩5分の距離にゲームショップもあって随意にゲーム買い放題。でも同棲生活だから今後は自分の金銭感覚にも気を付けなきゃね。
 
今日の晩御飯はなんだる。ムカつく。ネットカフェのキーボードが手に馴染まないものだから「なんだろう」と打つところを「なんだる」となってしまう。でもジュース飲み放題。ココア4杯目。愛の糖尿病。
 
2006年03月18日(土)  消しゴム。
 
彼女は今日友人と飲みに行って家にいなくて僕一人ぼっち。一人ぼっちっていうかお前今まで一人で暮らしてたんだろうと思うけど、不思議なことに同棲生活で一人になった途端、何をしていいかわからなくなる。なんだこの感覚は。パソコンしてもプレステしても身に入らない。とりあえず洗濯物たたんで食器片付けてベッドの上でなぜか正座しながら小説読んで、めちゃくちゃお腹が空いてるけど、帰りに彼女に買ってきてもらおうと思いながらテーブルの上に置いてあったハイチュウを10個くらい食べ続け吐き気がする。なんなんだこの落ち着かない感覚は。もう一人じゃない。ここに僕じゃない誰かが住んでいる。この感覚。彼女早く帰ってこないかなぁと思いながらもいつまでも風呂に入ろうとしない僕の頭の中の消しゴム。
 
2006年03月17日(金)  同棲初日。
 
無事に引越しも終わった夜半過ぎ、彼女とソファーでキスしたあと、思い出したように「これからどうぞよろしくお願いします」と言ったら、彼女も袖を正して「こちらこそお願いします」と他人行儀な挨拶にフフフと笑ってお祝いのビールを飲んで就寝したのは彼女だけで、僕は彼女の寝息を確かめてからプレステを始めるあたり、独り暮らしのリズムがまだ身に染み付いていて、結局夜中の2時までプレステしてて次の日起きれないのもいつもと同じ。
 
いつもと同じじゃないのは彼女が起こしてくれて、リビングに行くと朝食ができているということで、こういうことを同棲生活というのかー。いいなー同棲生活。お得だなー家賃半分。やっぱキレイだなー恋人。こういう生活がこれからずっと続くんだなーと思いながら朝飯食っていたら便意を催してしまい、、同棲生活初日の朝に食事中にウンコ行くのはあんまりだろうと思いつつも腸が悲鳴を挙げ引きつった笑みを浮かべながら。
 
2006年03月16日(木)  お祝い返し。
 
午前中に引越しを依頼したはずなのに、時間指定は伺っておりませんと電話先で言われて憤慨したけれど、そう言われると時間指定言ってないような気もして、言ったという証拠がない為に泣き寝入り。朝7時に張り切って起きて、クロネコヤマトは午後4時に。
 
時間指定してないにしても遅せーよ。午前中だったら晴れてたのにほら雨降ってきた。あーあやる気しねぇなぁ。お引越しのお祝い返しは微笑みにして。ってあの歌の意味は何だろう。お祝い返しって何だろう。しかもなぜお祝いしてもらってるくせに微笑みだけで済ませようとしているのだろうあの主婦は。よーし僕はお祝い返しに含み笑いだ。
 
と、搬送する引越しスタッフを見ながらニヤニヤ笑っているだけでちっとも手伝おうとしない僕は、そういう態度が祟ったのか先月買ったばかりのチェストに目に見えて余るほどの傷を付けられた。あと引越し単身パックと何だか便利そうなプランにしたにも関わらず、単身なのに単身パック1つじゃ足りなくて追加料金取られた。全然微笑み返せない。
 
2006年03月15日(水)  プレステ4。
 
というわけで明日引越し。前回の引越しの時に、いるものといらないを分けていらないものがいっぱいあって愕然として、いるものだけをこのマンションに持ってきたのだが、あれから二年経って再びいるものといらないものを分けるといらないものがいっぱいあって二年越しの愕然。次のオリンピックでもメダル取れなかったような心境に似て。
 
今回はただの引越しではなくて同棲生活なので、電子レンジとパソコンデスクは職場の友人が貰っていった。テレビは僕のやつが21型なので彼女の14型のテレビはゲーム用にするとして、あとプレステ2。彼女もプレステ2を持っていて僕もプレステ2を持っている。処分するには勿体無い。というわけで意味もなくプレステ4の同棲生活明日から。
 
2006年03月14日(火)  トの字。
 
家賃二万一千円のベランダ風呂アパートの次は、下の妹との二人暮らし。十畳ほどのキッチンに六畳部屋が二つ。家賃三万円。二二歳くらいから二六歳で東京に出るまで約四年。僕はここで暮らした。そこで彼女が四人くらい変わった。
 
パソコンを買って好色一代男を書き始めたのもこの頃で、妹は彼氏の家にいて滅多にいなかったから暇な時は日記を書いて、暇じゃない時は誰かが部屋にいた。まだ看護学生。僕はその部屋に女の子を沢山呼んで遊んでいた。遊び呆けていた。
 
二六歳。何を思ったのか東京に行こうという考えに固執。当てもない。知人もいない。別に人生に迷っていたわけではない。その頃はその頃で自分の人生に満足していた。このまま九州の端っこでひっそりと生きていくと思っていた。
 
東京に出てきてもうすぐ四年経つけど、僕はまだ東京のトの字も理解していない。だいたい東京の人は東京のトの字が理解できてもウの字が理解できずに人混みに紛れて放浪している。このまま都会の波に埋もれるもよし。田舎に帰るのもよし。いろんな選択肢があって、みんな真面目に考えてる振りして実はなんとなく選択して漠然と生きていると信じたいよ僕は。
 
2006年03月13日(月)  トタンと星と。
 
私があなたに惚れたのは、ちょうど十九の春でした。という唄の台詞とは全く関係がないけれど、僕は十九の頃に家を出て独り暮らしを始めた。
 
初めての独り暮らしは六畳一間。一畳ほどのキッチンがあって風呂とトイレは別。トイレは当たり前だけど室内にあって、風呂は全然当たり前じゃなくてなぜかベランダにあった。ベランダにとりあえず作りましたみたいなトタン屋根の風呂があった。窓を開けると風呂に入りながら星が見えた。全然嬉しくない。冬はとても寒かった。
 
まだ看護学生だった僕はその部屋に女の子を沢山呼んで遊んでいた。遊び呆けていた。家賃は二万一千円。家庭事情が最も最悪な時で夢も希望もなかったけど風呂から星が見えた。あんときゃこれからどうなるかと思ったけど、僕は今なぜか東京で、こうやってぼんやりとどうにか生きている。
 
2006年03月12日(日)  愛の力瘤。
 
愛だけじゃどうにもならないのはまず引越し。僕は愛する彼女と同じ屋根の下で暮らすと決めたのに梱包作業が全くはかどらない。もう嫌になる。
 
僕の中に愛さえなければ。義とか仁とか男臭いものしかなかったら引越しなど計画しなかったというのに僕には愛があった。不動の愛があった。不屈の思いがあった。運ぶ運ぶ運ぶ力瘤。
 
なぜ唐突に同棲を決めたのかというと、答えは明快。そこに愛があったからで、お互い自転車で10分の距離の往来が面倒臭いというか愛の為の合理化? 昇華? 運ぶ運ぶ運ぶ力瘤。
 
ほんとオレんちゴミだらけだ。
 
2006年03月11日(土)  指切り 三。
 
そんな彼との6ヶ月。彼は今日退院した。
 
退院のことを伝えても理解しているとは思っていなかった。幻聴と会話し、命令に従い、行動する。妄想を抱き、辻褄の合わないことを言い、納得しないと怒り出す。退院の意味がわかっているのだろうか。家に戻っても、もしくは他の病院に転院するとしても、彼はいつまでもこのままなのだろう。だから僕はいつもの調子で彼のペースに合わせて会話をしていた。
 
「長生き安心大丈夫!」
 
彼は時々小指を指し出して、指切りげんまんをしながら、こう言った。長生き安心大丈夫。彼と僕は、いつも指切りをしながら笑っていた。退院の時間は迫っていた。僕は自分から小指を指し出し、指切りをしようとした。たぶんこれが最後の指切りになる。長生き安心大丈夫。僕がいなくても、どこかに君を理解してくれる人がいる。
 
願いを込めて指し出した小指を、彼は悲しい顔で躊躇した。
 
「今まで一生懸命みてくれてほんとありがとね」
 
意志疎通ができない。それは僕の勘違いだったのかもしれない。言葉なんて意味がない。それは僕の思い込みだったのかもしれない。患者さんの前で涙することはあってはならないことだと思っていた。しかし僕は溢れ出る涙を止めることができなかった。それはあまりにも予想外で、悲しいほど不意打ちだった。そしてそれは言葉は通じなくても気持ちは共感することができると確信できた瞬間だった。
 
「主任さんて涙もろいのね」
 
看護婦さんたちは理由も聞かずに僕を笑う。僕はこの仕事に誇りを持っている。長生き安心大丈夫。彼と笑いながら指切りした日々を、僕はずっと忘れない。
 
2006年03月10日(金)  指切り ニ。
 
1日中、幻覚・妄想に支配されて意志疎通ができず、時には暴力を奮う。そんな彼との6ヶ月。
 
30代の彼は身体も大きくて、暴力を受けたスタッフは目に見える傷を負うことも少なくはなかった。暴力を奮うか奮われないかの違い。それは、対象を「自分とは違うもの」として見るか見ないかだと思っている。それは対象を「障害者」と見るか見ないかということと同じことだ。
 
逆の立場になってみるとわかる。暴力を奮うのは相手を「自分と違うもの」として見るか見ないか。それは対象を「健常者」と見るか見ないかということと同じこと。
 
僕は彼の幻覚妄想を否定せず、その妄想に話を合わせながら接し、暴力を奮われそうな時は、決して構えず威嚇せず、平静を保って、暴力そのものを受けるつもりでいた。
 
やがて彼は僕以外のスタッフを受け付けなくなった。暴言を吐き、暴れそうになるとスタッフは僕を呼び、僕はいつもの姿勢で、興奮している彼の乱れたベットを直したり、衣類をたたんでから、何事もなかったように、「で、どうしたの?」と話し掛ける。すると彼も何事もなかったように、いつものトーンに戻って僕を妄想の世界に、彼自身の世界に招こうとする。僕は身を委ね、その話に何分も何十分も付き合う。
 
会話は成り立たない。妄想の世界から発せられた言葉は僕たちが理解できるものではない。それでも、その言葉から「怒っている」「喜んでいる」などの気持ちは察することができる。だから怒っていたら沈痛な表情を浮かべ、喜んでいたら一緒に笑う。会話はできなくても、気持ちの共有はできる。それが僕たちの仕事。
 
2006年03月09日(木)  指切り 一。
 
僕は心療内科・精神科に勤務していて、1日中、妄想に支配されていたり、幻覚に操作されていたりと、全く意志疎通のできない患者さんを看護することも少なくない。こうしたことを書くと誇張されて偏見を招いたりするのだが、時には暴力があったり突然傷を負うことだってある。
 
それでも10年間、この仕事を続けているのは、完治が見込めなくても、よりよい状態に戻したいから。ひどい妄想から少しでも救ってあげたいから。そして、世に蔓延する偏見を少しでも軽減させたいから。だから僕はこの世界に入った時から一貫して患者さんを障害者として見る目は持っていない。
 
「普通」という誰が決めたかわからないボーダーラインに左右される人たちの目を、僕は信じていない。そこに「人」がいる。そこにいる「人」が困っている。苦しんでいる。だから僕は看護する。ただそれだけのことだ。
 
2006年03月08日(水)  ダメじゃん、そういうこと。
 
思い立ったが吉日。今月中に引越しをしようとネットで「数十社から簡単見積もり」というやつで見積もった数日後、来るわ来るわ問い合わせの電話が。
 
「○○引越しセンターです。先日、メールでの見積もりを拝見しましたが、その後、日程や今後のご予定などお決まりになりましたでしょうか」
「あ、見積もりのメール届きました?」
「はい。拝見させていただきました」
「えっと、メールに何て書いてました?」
「はい? えっと、3月に引越しをなさると……」
 
「そういうことじゃなくて、電話での問い合わせは何て書いてます?」
「えっと……希望、しない、と……」
「じゃあこれ何?」
「あの……その……引越しがお決まりになられましたかどうか……」
「それって問い合わせってことじゃないの?」
「ええ……まぁ……」
「ダメじゃん。そういうことしたら」
 
という問答を5・6回。見積もりを依頼するときに「電話での問い合わせを希望する」という欄のチェックを外したというのにこの有様。もうこうなったら電話での問い合わせがこなかったところに引越しを依頼しようと思ったら、今日最後の1社から電話があって僕は怒りました。いい加減な世の中に。
 
だいたい僕の場合は電話で人と話すのが面倒だから、問い合わせの欄のチェックを外したからいいものの、もし、どういうケースかわからないけれど、ある人が引越しを予定している。しかし家族もしくは同居人に内緒で行いたい。そこで電話での問い合わせのチェックを外し、引越しの見積もりを依頼した。しかし問い合わせの電話がどんどんかかってくる。で、家族もしくは同居人が、依頼人の携帯に勝手に出た場合もしくは訊ねられた場合、引越し会社はどう責任取ってくれるんだってこと。
 
「どう責任取ってくれるんだってこと」
「申し訳ありません。内緒でご引越しされるんでしたか……」
「い、いや、僕じゃないけど……」
「それではどちら様が?」
「いやそんなの知らんよ。僕はただ普通に引越ししたいだけです」
「それではその後、日程や今後のご予定などお決まりになりましたでしょうか」
 
こんな問答5・6回。
 
2006年03月07日(火)  「桃色浮世草子」発売。

本日よりケータイ書籍「桃色浮世草子」が発売となる。
 
この「桃色浮世草子」男が問い掛け、女が「どうして?」と訊ね、男の答えがオチになるという3行詩のスタイルを取っていたブログで、昨年7月に更新が止まり、事実上閉鎖されていたのだが、「恋愛博打」「女王様がロバに鞭」「起動戦士 濡れ男」など数々のケータイ書籍でカリスマ的人気を誇る春乃れぃさんの目に止まり、この度、コラボ企画として発売が決定したのである。
 
書籍の内容は従来の3行詩のスタイルを残しつつ、春乃れぃさんの絶妙な切り返しで返し技の返し技という二段オチになっており筆者が言うのも何だが、男の思惑、女のもくろみが如実に再現されていて非常に面白い。面白いのに210円。本屋に行かなくてもあなたの傍に置いてある携帯電話で今すぐ買える。
 
ケータイで本なんて読めるのかしらと、いぶかしんでいるあなた。初めてのポカリスエットも最初の一口は不味かった。烏龍茶だって飲めたものじゃなかった。それでも時を経てそれらは僕らの日常に。きっとケータイ書籍だってその読み易さに驚愕すると思う。驚愕すると次作が読みたくなる。次作が読みたくなったらまた僕と春乃れぃさんが書けばいい。
 
そんな「桃色浮世草子」ケータイ書籍入門として是非一度読んで戴きたいと思います。
 
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2006年03月06日(月)  夢のない話。
 
『英語を話せると、10億人と話せる』
 
……。
……。
 
「何見てるの?」
「いや、あの中吊り広告」
 
彼女と電車の中。無口な彼女は無駄な話を好まない。無駄な話しか好まない僕と正反対なので、僕は彼女といっぱい無駄話がしたい。でも彼女は饒舌な男を嫌うので、僕はこうやって電車の中であらゆる中吊り広告を静かに読んでいるのである。
 
「英会話の?」
「そう。英語を話せると10億人と話せるんだってさ」
「ステキじゃない」
「でもさ、日本語話せても1億人と話す必要性すらないのに10億って」
「あぁぁ」
「どうしたの?」
「またあなたは夢のない話をする」
 
彼女は小さく溜息を吐いて、僕の肩に頭を乗せる。夢のない話。電車が止まる。英語を話せると10億人と話せるかもしれないけれど。立ち上がった彼女は僕の手を引いて都会の波へといざなった。
 
2006年03月05日(日)  ロマンティックバトン。
 
「クリスマスに恋人と2人。どんな演出をしますか? 」
雨を夜更け過ぎに雪へと変えるさ。
 
「無人島に連れてくなら誰? 3人まで選べ」
院長と総婦長と婦長と事務長。僕は家にいる。
 
「自分の誕生日はどうやって祝ってほしい? 」
せめて夜勤にしないでほしい。
 
「さあ願いをいえ。……お金はなしよ」
当選確実な宝くじが欲しいよ僕は。

「遠距離恋愛で恋人が風邪を引いています。あなたは明日休日です。どうしますか?」
恋人と会うより医者に会った方が賢い選択だと思うような彼女がタイプ。
 
「友達の中から顔を交換できるとしたら? 」
自分の体とのバランスを考える。
 
「自分は、レズorゲイです。誰になら話せますか? 」
細木数子。
 
「同棲している猫好きの恋人がいます。猫を飼いたいと言い出しました。自分は実は犬派ですが……どーしますか? 」
犬派だけど鳩派なので猫派。
 
「友達がドラえもんと一緒に暮らしています。どういう風に接しますか? 」
はいはいウソウソと相手にしない。
 
2006年03月04日(土)  10年看護師。
 
暖房が効かなくて寒いので引越しますと昨日の日記に書いたが、部屋の暖房が効いてないわけではなく、ただ単にあの日記を書いていた時に既に体の変調を感じていたというだけで、あの日記を書いてから寒い寒い言いながらベッドに入って布団をかぶっても寒くて寒くて、ホント暖房ムカつく。なんでこんなに効かねーんだ。彼女の部屋に行こっかな。でももう遅いし面倒臭いな。胸は熱いが体は寒い。まるで風邪をひいたような。って。あ。もしかして風邪ひいてんのかも。
 
と、お前何年看護師してんだと思うくらい、風邪の悪寒をエアコンが効かないと勘違いし、布団にくるまって愛だの恋だの考えて気付いた時はもう遅い。体温計を取り出すと38度。途端に体がフラフラしてきて彼女に「オレキトク。ワタシハノドカラ」と怪文メールを送信し悶絶。イブプロフェンとエテンザミドのダブルブロックを弾かれて卒倒。
 
2006年03月03日(金)  やっぱりイナヴァ!
 
日本全国イナバウアー。どこに行ってもイナバウアー。猫も杓子もイナバウアーと言っているのはマスコミだけで、僕の周りでイナバウアーをやってる奴なんて見たこともないと書こうとしたら電車の中で小学生が「イナバウアー!」と叫びながら荒川静香真っ青のブリッジをやっていたわけがない。部屋が寒い。暖房が効かないので今月引っ越すことにしました。
 
2006年03月02日(木)  強制バトン。

「見た人は全員やること!」なんて小学生並みの脅迫に乗ろうとは思わないが、昔から横断歩道の白い部分を踏み外したら死ぬ。あの電信柱に触れなかったら将来不幸になるなどとネガティブな強迫観念を持っている僕は、この強制バトンに答えないと何だかとてつもなく悪いことが起こるような気がするわけがない。書くことないから答えるだけさ。
 
Q1.モテたと思う時期はいつ? (20代前半から20世紀末。ここ数年、あまりモテたいと思わなくなった)
 
Q2.似てると言われたことのある芸能人は? (笑点の緑の人が僕の祖父に見える)

Q3.恋人を選ぶポイントは? (と、恋人に訊ねたら、その答えが僕に一つも当てはまっていなかった)

Q4.ここぞという時の香水や服装がありますか? (キャロライナヘレラの212。もう十年近く愛用してる。服装はモード系。ただ僕の人生でここぞという時があまりない)

Q5.告白されたことがありますか? あれば何人? (克服されたことならある。8人)

Q6.わざとデートに遅れて行ったことがありますか? (本気でデートを忘れたことならある)
 
2006年03月01日(水)  例えて?
 
とにかく僕は例えたがる。もう口癖のようにあらゆる人に「例えて?」と言っている。ことに気付いた。
 
夜勤の夜、書類のコピーに事務所へ行くと、事務員がまだ仕事をしている。「もぉー。全然終わんなくてメチャクチャ大変ですよ」医療事務のお兄ちゃんが背伸びをしながら話し掛けてくる。僕はすかさず訊ねる。「例えて?」
 
「えーっとですねぇ。落ち葉を履いても履いても上から落ちてくる感じ?」
 
田舎の女友達から久々に電話がきた。「結婚したのはいいけどー。姑との仲が悪くってー。ちょーストレス溜まってんだけど」友人が僕にストレスをぶつけるような口調で話し掛けてくる。僕はすかさず訊ねる。「例えて?」
 
「んーっと。ディズニーランドに行ったはいいけど、ドナルドダックの目がやけにリアルで恐ろしい感じ?」
 
妹の旦那から電話。「あのゲームなんスけど。ボスの最終形態が倒せないんスよ。すげぇ強くって。何やっても勝てない」ゲーム好きの妹の旦那が助けを求めるように話し掛けてくる。僕はすかさず訊ねる。「例えて?」
 
「え? あのー、ボスがー、ちょー強くってー、一撃で死ぬ魔法とかバンバン打ってくるんスよ」
「それ例えてないじゃん」
「あー。すいません。なんつーかなー。酒飲んで豹変したオヤジを止められない感じ?」
 
皆、それぞれ必死に考えて僕にその苦しさや辛さをわかりやすく教えてくれる。事務の仕事が終わんないことや、姑との不仲や、ラスボスの強さなんて僕は実際に経験していないのでわかるわけがない。でも、その思いを共感したくて僕は今日も訊ね続ける。
 
「例えて?」
 

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