2006年04月30日(日)  エロカワイイ。
 
しかしこのソファーは気持ちいいなぁ。4月26日の日記から、この日記まで、池袋のスターバックスコーヒーのソファーに座ってまとめ書きをしている。妻は正面に座ってまだダ・ヴィンチ・コードの上巻を読んでいる。
 
4月30日の日記なのに、今日は5月5日。一歩外に出ると、無双メーターがマンタンだったら躊躇せず無双ボタンを押したいくらいの人間がいる。敵将、討ち取ったー! と叫びたい。きっとゲーム好きの人しかこの話はわからないと思う。それが悲しい。30近くになって毎晩ゲームをしている僕が悲しい。この日記書き終わったらパルコに行って買い物する。
 
ここに来る前は池袋ロフトに行って、妻が家計簿を購入した。6年間毎日日記を書き続けている僕からエールを送ったら、「ああもうウルサイウルサイ。今日からちゃんと書くわよ」と、自分から家計簿買うと言いだしたくせに既にもう三日坊主に怯えている様子。そんな様子がエロカワイイ。なぜエロいのかというと、妊娠してからやたら胸がでかくなったから。
 
2006年04月29日(土)  また逢う日まで。
 
今日は汚い話だから、汚い話が嫌いな人は読まないほうがいい。汚いと言っても、私文書偽造とか賄賂とかそういう知的な汚さではなくて、子供が喜ぶストレートな汚さ。そう、今日はウンコの話。
 
僕のウンコは毎日下痢に近い軟便で、形があるウンコなんてしたことがなかった。まぁ毎日形がないものだから、形がないウンコが僕にとって普通だと思っていたことが間違いだと気付いたのだ入籍してから。
 
毎朝、固形便が排泄される。普通のウンコだ。子供が絵に書くような。ありえない。僕のウンコはなんかもっとだらしないはずだ。健康的なウンコ。快活な便臭。何かの罠だ。このウンコに何かメッセージが記されているのではないだろうか。ウンコは健康のバロメーターというではないか。ああ臭い。早く流そう。こんな複雑な思い、水に流そう。と、流れ去るウンコをぼんやり見送ってから、最近カタチのあるウンコしか出ないんだ。この健康的な罠。ハッスルトラップ。何かあるのではないだろうか。と、妻に相談。
 
「そりゃそうよ。コンビニの弁当食べなくなったでしょ」
 
あ、そういえばそうだ。一緒に暮らしてから、朝食もちゃんと食べるようになったし、昼食は病院食で、夕食は自炊するようになった。食生活に関してはちょー健康的じゃないか。普通のウンコが出て当然の生活をしているではないか。ビバ健康。サラバコンビニ。ヨウコソ固形便。バイバイ下痢便。サヨウナラナミダクン。
 
2006年04月28日(金)  そんな10年。
 
高校の頃の友人から、来年の正月に同窓会するよとメールが届いて気が付けば30歳。高校の友人は現在5・6人くらいしか交友がないので、その他大勢のクラスメイトの去就は一切不明。逆も然り。その他大勢のクラスメイトは僕の去就を知らない。東京に住んでることも、看護師してることも、本を書いてることも、結婚してることも知らない。10数年振りの再会に、何を思うのだろうか。
 
ちなみに僕は情報処理科という学科に在籍していた。毎日毎日パソコンに向かってプログラム入力して出力して一喜一憂しながら気が付けば看護師になっていた。我ながら訳がわからない。情報処理検定2級その他、様々なコンピューター系の資格を所得して、今やってることと言えば素人でも簡単に開設できるブログのみである。そんな10年を過ごしてきました。
 
2006年04月27日(木)  地獄節。
 
僕は去年の末くらいから強度のストレスで脂漏性皮膚炎という皮膚病を患ってしまい、毎月1回、皮膚科を受診。飲み薬とおびただしい数の塗り薬をもらい、風呂上がりに軟膏やらクリームやらをベタベタ塗ってこのままオーブンに入ったら香ばしい匂いがするんだろうなぁと全身マーガリン状態でチョー不愉快。
 
あまりにも不愉快なので今日は薬塗らなくていいやと怠慢かまして布団に入ると、深夜に全身が痒くて痒死にしてしまいそうになる。でも塗ったら塗ったでマーガリン状態になるんだから、どっちにしたって不愉快なんだ僕は。アー。熱湯のシャワーを浴びると痒い場所が過敏に反応して気を失うほど気持ちいいけど、その後、気を失うほど痒くなる。この世は地獄だ。
 
2006年04月26日(水)  進化の停滞。
 
休日のスターバックスコーヒー。大きなソファーに座り、妻は小説を読み、僕は小さなノートパソコンでこの日記を書いている。チョーナウイ。ベリーヤングシティーボーイ。まだ4月26日の日記を書いている。泣きたい。今日は5月5日の子供の日。妻は小説を読んで僕は溜まっている日記を書いている。
 
妻は「モカフラペチーノのショートお願いね」と言って、先に行ってしまった。はいはいモカフロ、モカフレ、モカフリ……なんだっけ。「はい次お待ちのお客様どうぞー」あ、はい。えっと。スターバックスラテのトールサイズと、モ、モ、モカフ……えっと、モカフロート……「はい? モカフラペチーノですか」ああそうそれ。それのショートサイズ。といった具合にスターバックスのメニューはほんと覚えにくい。
 
この店は、スムーズに注文できないと鈍臭い田舎者だという雰囲気がムンムン流れているので、鈍臭い田舎者の僕は、そういうプレッシャーを正面から浴びて、今思うとモカフラペチーノなんて1回聞いただけですぐ覚えられるものの、あの都会的なシティーボーイシティーガール。プレイボーイプレイガール達に囲まれると脳が止まる。進化が止まる。妻はもう1ヶ月もダ・ヴィンチ・コードの上巻を読んでいる。
 
2006年04月25日(火)  大正デモクラシー。
 
最近目に見えて料理が上達している僕に対抗して、今夜は妻が魚をおろして食事を作った。「昨日今日で料理覚えたようなあなたに負けたくないから」と言ってライバル心を剥き出しにしてるけどそりゃあ間違ってるよ。僕は君に料理バトルを仕掛けてるんじゃなくて、仕事を終えた君ができるだけゆっくり休めるように頑張ってるだけなんだよモグモグ。あ、醤油取って。ちーがーうーよー。味付けが気に入らないんじゃなくて、醤油かけた方がより美味くなるんじゃないかなぁって思っただけだよ。しかし君の作った料理は美味いなぁ。この口の中に入れた刹那、故郷を想起する懐かしい味。まるで味の大正デモクラシーやぁー。ってちーがーうーよー。馬鹿にしてんじゃないよー。おかわり。あ、僕の方が炊飯ジャーに近い場所に座ってるから自分でおかわりします。
 
2006年04月24日(月)  自然にこう。
 
夜勤明けの日は、朝10時に帰宅してシャワー浴びて午後1時くらいに就寝して午後8時ぐらいに目が覚めて、夕食を食べて再び風呂に入って本読んでゲームしてガバガバ酒飲んで午前3時くらいに無理矢理就寝するという独身生活から一転、午後1時に就寝して午後4時には起床して夕食の支度をするという生活。
 
休日だって午後3時頃に目が覚めて、あー今日何しよっかなぁーなんて考えてるうちに晩飯の時間になって、遅くまで眠っていたものだから夜眠れなくなってガバガバ酒飲んで午前2時ぐらいに就寝するという生活パターンを懐かしく思いながら、午前7時に起床してパンを焼いて目玉焼きを作ったりしている。
 
この数ヶ月で生活パターンががらりと変わったが、適応する努力をしたわけではなく、自然にこうなった。
 
「自然にこうなった」ということが、結婚生活を営むうえで結構重要な感覚だと思っている。
 
2006年04月23日(日)  まっいっか。
 
結婚式は親族だけ呼んで7月に東京でする予定だけど、妻方の家族は山陰地方の妻の故郷で式をしてほしいという意向があったり、うちの方は式は東京でいいけど、披露宴を鹿児島でしてほしいと希望したり、自分の思い通りにいかないものが結婚というものだろうけど、まぁそういう調整で忙しい。
 
とりあえず7月の式の準備を始めなければということで、都内の式場をいろいろ回っているけど、なかなかこれだという場所が見つからない。妻のお腹が大きくならないうちに新婚旅行にも行きたいし、僕は彼女の田舎の方には挨拶に行ったけれど、妻はまだ鹿児島に挨拶に行っていない。
 
まず子供ができて、妻の実家に挨拶して、同棲して、入籍して、うちの親に挨拶して、新婚旅行に行って、結婚式を挙げて、子供が産まれて披露宴をするという、もう訳がわからない順番になっているのは、明るい家族計画を行わなかったからであって、コンドームに書いてあることは本当に真理を突いているなぁと思うけれど、幸せなんだからまっいっかと思ったり。
 
2006年04月22日(土)  ロボッツ。
 
ロボッツは2005年に公開されたディズニーアニメで、とにかくまぁ面白い作品だった。
 
子供が見ても楽しめる作品というか、子供が見る作品だと思うが、もちろん大人も楽しむことができて、妻は随所に散りばめられた細かい演出に「クスッ」と大人の笑みを浮かべていたが、僕は結構笑いのレベルが低いので、子供が笑うようなところでも「アハハハ」「わーあぶねー」「なんじゃそりゃー」なんてゲラゲラ笑っていて、同意を求めるように妻の方を見るとメチャクチャ冷ややかな視線を僕に投げ掛けていて、「あ、ゴメン。うるさかった?」なんてしどろもどろで呟いて、小さくなって体育座り。早く自分の子供と一緒に笑って映画が見たい。
 
2006年04月21日(金)  本物の映画。
 
「私が途中で眠らないで最後まで見れた映画は、本物の映画だと思う」
 
なんて偉そうなことばかり言っている妻は本当に映画の途中でよく眠る人で、大抵レンタルしてきたDVDは夜9時くらいから見るのだが、ストーリーの半分も進んでいないうちに妻はベッドで寝息を立ててしまう。そして寝るために僕がベッドに入った時に、「ねぇ、あの主人公どうなった?」「あの悪い人死んじゃったの?」など、半分眠ったまま訊ねてくる。
 
そんな妻が久々に最後まで鑑賞した作品「ロボッツ」を、明日紹介します。
 
2006年04月20日(木)  新郎のレシピ。
 
僕がこの日記で料理のことを書くなど思ってもみなかったが、これも時の流れ。もう結婚しちゃったので妻以外と恋愛することもなく、今までこの日記は恋愛に関することが多く、男のくせに惚れた腫れただのばかり書いてきたが、恋愛の話題が結婚生活の話題にシフトされて、恋愛に惚れた腫れたが料理が煮えた焼いたの話になっただけである。やばい。作風が変わってきそうで。
 
というわけで今夜のおかずは、アサリと豚肉のあっさり蒸し。
 
現在、元料理人の職場のヘルパーさんから、A4用紙に手書きで書いてある「男でもできる料理集」をコンスタントにもらっているので大助かり。そのレシピ通りにすれば料理初心者の僕だってそれなりの食事で食卓を飾ることができる。
 
アサリと豚肉のあっさり蒸し。まずフライパンにアサリを乗せて、上に豚肉を覆うようにかぶせて、適当に酒を振りまいて蓋をして火を入れて蒸すだけ。アサリが開いて豚肉の色が変わったら汁ごと皿に持って醤油かけてネギのみじん切り振って出来あがり。チョー簡単。チョー美味い。塩分も控え目なので妊娠中の妻にもチョー優しい。
 
あとチンゲン菜としめじを炒めて同じ皿に添えて、人参、大根、キュウリを細く切って、氷を入れたコップに入れて野菜スティックにしてチョー御洒落。どこから見ても新婚の食卓。
 
妻が仕事から帰ってくるまであと30分。風呂掃除をして、お湯を入れて、妊娠のせいなのか最近腰が痛いと言っている妻の為に花王のバブを買って、炭酸ガスが温浴効果を高めて血行を促進して、湯上り後もポカポカとした温かさが長続きしてほしいから早くお風呂に入ってね。
 
2006年04月19日(水)  女房酔わせてどうするつもり?
 
まぁ同じことばっかり書いて読者も辟易すると思うが、妻がなかなか風呂に入らないことについて僕も辟易している。
 
いや、毎晩入ることは入るんだけど、入るまでの過程が本当に倦怠に満ちているというか、緩慢に進行しているというか、とにかくもうカタカナ4文字で表現するとグダグダなのである。
 
「お風呂入ってよ」「うん入る」
「お風呂入ってよ」「うん。わかってる」
「お風呂入ってよ」「わかってるわよ!」
 
決して僕がウザいのではない。この「お風呂入ってよ」は続けて言っているのではなく、30分〜1時間おきに言っているのだ。涙が出てくる。星が見えない。早くお風呂に入ったらそれだけゆっくりと休めるというのに。
 
「女房酔わせてどうするつもり?」と言っているウィスキーのCMがあるが、あの石田ゆり子を見てどうするも何もまずお風呂に入って欲しいと思う。髪もセットされてちゃんと化粧もして、衣装も部屋着ではない。家でウイスキーを飲むのならまずお風呂に入ってそれからロックでもお湯割りでも飲めばいい。石田ゆり子もうちの女房もまず何よりもまずお風呂に入ってほしい。涙が出てくる。星が見えない。
 
2006年04月18日(火)  新婚旅行。
 
月刊男心はまどか出版という出版社から発売されており、まどか出版は台湾についての書籍も多く出版している。月刊男心と台湾。全く関係がない。でも新婚と台湾となると俄然結びつきが強くなる。
 
「任せて下さい!」
 
いつも懇切丁寧かつヤクルトスワローズファンの営業のお兄さんが肩を叩く。新婚旅行のプランを一緒に考えてくれるというのだ。心強いたらありゃしない。
 
早速知り合いの旅行代理店かつ巨人ファンのお兄さんを呼び、3人で昼飯を食いながら、いかに思い出に残る新婚旅行を演出できるかと、僕も野球のファンなので、旅行の話の途中で出た3人で野球観戦に行くという話にばかり気持ちを奪われて、あまり週中できなくなったけど、彼等はそれはもう真剣に旅行のプランを練っていた。
 
まずハズレのないプランが立てられると思います。自信満々にそう言い切る彼等に本当にありがとうございますと頭を下げて、できれば阪神戦がいいですとお願いしました。
 
2006年04月17日(月)  旬。
 
結婚指輪はティファニー。婚約指輪はまだ買ってない。いつか買おうとは思ってるけど、今は何かとお金が必要な時期だしね。いつか突然小さな箱を君に渡して「開けてごらん」と言う日が来るよ。夜景が見えるレストランで。
 
「それはやめて」と、妻は言った。
 
婚約指輪は欲しくないというわけではない。私抜きでそんな高価な買い物をするとは何事か。私のものなのだからデザインは二人で選ばせて。あなたはテレビの見すぎなのよ。確かにそういう演出は嬉しいかもしれないけど、指輪のデザインが気に入らなかったら本末転倒よ。一生の宝物なんだもの。二人で選びましょ。
 
確かにそうだと思った。危うくドラマの典型的な一場面に騙されるところであった。結婚指輪を購入するときに感じたことなんだけれど、指輪選びって結構しんどい。デザインは数あれど、奇抜なデザインなものなどそんなにないし、毎日つける指輪のデザインに奇抜さを求めても意味がない。
 
シンプルなデザインを探すと全てシンプルに見える。ショーウィンドウを前に、なんだかどれでもよくなってくる。膝が痛くなって座りたくなってくる。それでも二人にとって大切なものだから真剣に選ばなければいけない。何十件ものジュエリーショップを巡り、辿りついたのがティファニーだった。
 
そのプラチナの指輪の裏には、二人の名前が記されている。二人のものだから二人で選ぶ。結婚指輪を購入してから婚約指輪を買うのもおかしな話だけど、旬な出来事は味が落ちないうちに。
 
2006年04月16日(日)  結婚指輪。
 
何十件ものジュエリーショップをまわり、もうリングのデザインが全部一緒に見えてきた頃、僕が何気なく言ってしまったある一言が彼女の逆鱗に触れ、約3日間シカト。
 
僕はつわりで気分が悪くて話す元気がないとばかり思っていて、シカト自体気付かずに根気強く話しかけたり自分で言ったギャグに自分で笑うという悲しい生活を送っていて、まぁこれはないだろうと思いながら「……もしかして怒ってんの?」と訊ねたら、彼女は強く強く頷いて、え? え? いつから? みたいなことになって彼女は更なる怒りを募らせた。
 
そんな経緯を経て、僕は彼女と腕を組んでティファニーの敷居高きエントランスに足を踏み入れたのである。
 
2006年04月15日(土)  過干渉。
 
鹿児島で働いていた頃の病院の医療事務の男31歳。何を考えたかこの年になって上京してきた。「都内の病院で働いてます」そんなメールを受けとってそんな馬鹿なと一蹴した一週間後、メールの整理をしているときに、これは本当の話なのではないのだろうか。と、一週間遅れの返信。
 
「気付くの遅ぇよ」
 
彼は本当に東京に来ていたのだ。31歳独身。26歳で上京してきた僕が言うのもなんだけど、その決断は遅すぎるのではないか。一体どういうことなのだと3杯目のビールを飲む。
 
「過干渉から逃げてきました。でも東京は空気が悪すぎる。鼻の中が真っ黒だ」
 
5杯目の焼酎を飲みながら仕事帰りのスーツ姿の彼は呟く。久々の再会と、東京での新しき飲み友達の獲得に乾杯しつつ10時に帰宅したのは僕が新婚だから。
 
2006年04月14日(金)  どうですか皆さん。
 
この日記は2000年から始まって、今年で6年目になるが、ざっと推敲して「はてなダイアリーブック」というサービスを利用して、1年ごとに本の形にしている。2000年の7月から書き始めたため、1冊目はと2001年と同じ巻にまとめて、今年で6冊目となる。
 
妻は寝る前に本棚からこの日記を取りだして真剣に読みながら、「ねぇ、これってどういうこと?」と、赤裸々に記された過去の女性関係について次々に訊ねてくる。「もう昔のことは忘れちまった」というと、「忘れないために日記があるんでしょ」と、なるほどなことを言う。
 
しかしこの日記は、一人でひっそりと書き綴る日記ではなく、ワールドワイドウェブに乗って万人に公開されていた日記なので、そこには嘘大げさまぎらわしい表現があると思うが、嘘は嘘なりに、大げさは大げさなりに僕の思いが込められている。
 
過去が不透明な旦那よりも、過去を公開している旦那の方が、そりゃ知らなきゃよかったと思うこともあるかもしれないが、いいことだと思うんですがね。皆さんどう思いますか。
 
2006年04月13日(木)  職人技。
 
食事作りは未だ苦痛でたまらないけれど、妻が仕事の日は毎晩僕が頑張っている。職場のヘルパーさんから激励の意味を込めて、使い慣らされた包丁をプレゼントされて、これがまたちょー使い易い。誤って料理が好きになっちゃいそうになるくらいの切れ味。
 
エプロンは八百屋とか魚屋の店員や、市場の人がまとってそうな店名や商品名が書かれたエプロンを、原宿の観光外国人がたむろするような店で購入して、一人キッチンで職人気分で頑張っている。
 
食事が早く出来あがった時には早く帰ってきてくれないかなと思う。順調に進まない時は今日残業になってくれないかなと思う。
 
2006年04月12日(水)  ベッドになりたい。
 
「このままベッドの中で1日を過ごしたい」
 
仕事の日の朝によく思うことである。このまま眠り続けることができたらどんなに幸せなことか。ああ起きたくない仕事行きたくない。そんなことを僕は毎日考えている。でも妻は違う。
 
「私、ベッドになりたい」
 
発想がとにかく凄いのだ。ベッドの中にいたいという欲望を通り過ぎて、ベッドそのものになりたいと思っているのだ。
 
「な、何を言ってるんだ」
「私、ベッドになりたいの。ずっと眠っていられるでしょ」
「知らんよ。起きてる時もあるんじゃない」
「仮に起きてたとしても横になってることは確かでしょ?」
「そりゃそうだけど」
「だったら私、ベッドになりたい」
 
と、必死に体をクネクネさせてベッドとの一体化を試みている。まるで馬鹿のようだ。僕はそんな妻をほっといてパソコンがある隣の部屋に移ってこの日記を書いている。
 
「んっと。うんっと」隣の部屋から一体化の夢を諦めていない妻の声が聞こえる。どうするつもりなんだろう。
 
2006年04月11日(火)  うまくやっている。
 
僕も寝起きが悪いが、負けず劣らず妻も寝起きが悪い。朝が弱い二人は共倒れにならないために、朝食は当番制にしようと決めて1週間が経った。妻が朝食を作る日は僕は朝食ができるまでの時間、長く眠ることができる。反対に僕が朝食を作る日は妻は朝食ができるまでの時間、長くベッドに潜っていられる。
 
「朝ごはんできたよ」
 
この言葉で二人は毎日目覚めることになる。はずだったのだが。
 
妻がなかなか起きない。「朝ごはんできたよ」と3回くらい言っても起きる気配を見せない。この日記は当然、夫である僕が書いているわけで、もし妻が日記を書いていたとしたら、旦那は「朝ごはんできたよ」といくら言っても起きようとしないと書くと思う。
 
しょうがないので僕は、ベッドの中の妻を無理矢理お姫様だっこして朝食が準備してあるリビングの椅子に座らせる。お姫様だっこをされている妻は「いやんいやん」と首を振りながら強制的に朝食を目の前にすることになるのだ。「早く食べなさい」と言っても「いやんいやん」と、ボサボサの頭を振りかざしてまるで子供の様。そんな妻をシカトして黙々とパンをかじっていると、頬を膨らませて目玉焼きをつつき始める。
 
うまくやっている。多分これが新婚生活というものなのだ。
 
2006年04月10日(月)  バンザイ。
 
夜時計を見て針が11時を指していると、「まだ11時かぁ。あと1時間はゲームできるな」と頭で考えて、12時を指してると「そろそろ寝なきゃなぁ。明日仕事だしなぁ」と考えて、1時を指していると「ヤバイヤバイ。ホントに寝なきゃ」と焦ってしまう。反面、眠たくてしょうがない夜、時計が10時を指していると、「眠いけどあと2時間はゲームできるんだよなぁ。もったいなぁ」と考える。
 
ということを妻に話したら「世の中にそんな人がいるなんて!」本気で驚いていた。ということに僕は驚いた。
 
僕は必要に迫られて眠るタイプなのに対し、妻は眠くなったら寝るタイプなのだ。
 
妻はシャワーを浴びた後、ドライヤーで髪の毛を乾かして、化粧水をペタペタ顔につけてベッドに横になってTシャツをめくって腹を出す。腹を出したことを確認した僕は、妊娠線予防クリームを手に取ってマッサージを始める。10分ほどのマッサージを終えた後、妻は雑誌を読み始めて、僕はパソコンに戻ったり、読書やゲームを再開したりする。
 
そして妻はいつの間にか眠りに就く。
 
それが夜の9時だろうが10時だろうが、休日前の夜8時だろうが、眠たくなったらすぐに眠ってしまう。決まって2時頃にトイレに起きて、それから朝まで目覚めることがない。すごくもったいないような気がする。人生という観点からもすごくもったいな気がする。ということを妻に話すと、「え? え? どういうこと? 眠いから寝るんじゃない。眠らなきゃいけないから寝るって何? そんな機械的な生き方で大丈夫なの?」と、話にならない。
 
午後10時。妻は今、バンザイをした格好で寝息を立てている。これから僕は何年も何十年もこの寝顔を見続けることになると思うと、ちょっと幸せな気分になってしまう。
 
2006年04月09日(日)  内緒の話。
 
本屋で僕の本を見つけるたびに見えやすい所に並び替えるという悪行を犯している。2冊しかなかったら10冊仕入れて8冊売れたと思い込んで悦に浸っている。1冊も置いてなかったら完売されたと飛び上がりたい気持ちになるわけがなく店長を気持ち睨みつける。
 
婦長さんの娘さんが僕の本を気に入ったらしく、婦長さんに本の表紙にサインをせがまれてこそばゆい面持ち。職場では職場のキャラがあって、モノを書くときはモノを書くときのパーソナリティが存在する。それがナースステーションの中でごちゃまぜになって恥ずかしい。
 
そんなゴチャゴチャな状況の中に、ナースステーションに妻がひょっこり顔を出す。妻は僕に一瞥した後、入院予定の患者さんの情報を話し始める。妻と僕は同じ職場なのだ。看護師とソーシャルワーカー。職種は違うけど、僕たちはたびたび顔を合わせミーティングを行う。
 
妻と僕は仕事中、二人の会話は一切しない。それはお互いプロとして医療に関わっているから。私情を一切介入させず、付き合う前も、付き合った後も、結婚した後だって、僕たちは職場では仕事の話しかしない。でも僕は時々妻のお腹越しに「ややちゃん。パパとママはこんなに頑張ってます。そしてソーシャルワーカーとしてのママにまたちょっぴり怒られてます。また家に帰ってからこのバカ主任って罵られるのです」と、下唇を気持ち出しながらテレパシーを送っているということは妻には内緒。
 
2006年04月08日(土)  ややちゃん。
 
妻のお腹はまだポッコリとしか出ていなくて、一見、妊婦らしくないけれど、僕は毎晩妻のお腹に妊娠線を予防するクリームでマッサージした後、ヘソの部分を「ピンポーン」と押して、ヘソ越しに我が子に今日の出来事を話している。妻はその間テレビを見て、フフフッと笑ったりそのまま眠ったりしている。
 
昔の人はお腹の中の子を「ややちゃん」と呼んでいた。これは「稚児(ややこ)」からきた言葉らしく、職場の看護婦さんが「ややちゃん元気?」と僕に訊ねたことから、「ややちゃん」という言葉がいたく気に入り、毎晩毎晩ややちゃんに今日自転車のブレーキが壊れただの、カレー作ったけどジャガイモが溶けてしまっただの、タイムカード押して帰るの忘れてきたような気がするなど他愛のない話ばかりしている。
 
妊娠線予防クリームはなんだか古臭いおばあちゃんちのような匂いがする。妻がこの妙な匂いでつわりが悪化しないかと心配したが、別に気にならないらしい。僕は妊娠線なんてどこにどんな風にできるのかわからないので、妻のお腹に適当に塗ってあべこべにマッサージしている。でもややちゃんには優しく話し掛けている。早く産まれてきてほしい。大きくなったらこの日記を見せてあげる。
 
2006年04月07日(金)  料理しんどい。
 
味噌汁の作り方さえわからなかったのだ! 僕は。彼女が仕事から帰ってくるまでに夕食を準備したいのに味噌汁の作り方さえ!
 
というわけで自由奔放コンビニ生活を送ってきた独身生活を呪いながら僕は今、料理を勉強しています。ネギ1本切るときも、これってどこまで食べられるんだろ。この青いところ、今まで食べたことあったっけ。キャベツだって何枚むいたら食べられるんだろ。2枚かな3枚かな。火が通りやすいようにジャガイモを小さめに切ったらカレーに溶けて姿かたちすら見えなくなった! 芽取るのあんなに苦労したのに!
 
という具合に料理をゼロから学んでいるのです。幸い、職場のヘルパーさんが男でも30分以内で作れるレシピ集を手書きでA4用紙8枚も作ってきてくれたので大助かり。毎日昼休みに手書きのレシピ集を眺めながら、わからないところがある度にヘルパーさんに質問するという生活。料理しんどいけど頑張らなくちゃ。
 
2006年04月06日(木)  なんかうまく。
 
大学卒業したこと書いたっけ。この3月でやっと通信大学を卒業したのです。
 
この日記を書き始めた2000年に入学、しかも編入試験を受験して3年次に入学して真面目に勉学に励めば2年で卒業できたというのに、通信大学というクラスメイトがいるのかいないのかわからない状況で、一体僕は何を卒業するのだろう。行儀よくまじめなんて出来やしなかった。夜の職場窓ガラス磨いてまわった。逆らい続け、あがき続けた、早く自由になりたかったのにも関わらず勉強しないものだから卒業に6年の月日を費やしてしまった。
 
しかも今だから言えることだけど、在籍していた6年間のうち2年間は大学なんて入学してない。そもそもそんな大学なんて存在しない。っていうか存在してたんだろうけど廃校になった。つーかこの人生そのものが夢であった。寝ぼけた人が見間違えたのさ。と、大学のことはできるだけ考えないようにしていた。要するに全く勉強をしなかったのである。
 
それでもそろそろ卒業しなきゃなあと、なぜか焦り始めて昨年の秋くらいから必死こいて勉強して課目終了試験受けまくって単位取りまくって今年3月での卒業を目指した理由は自分でもよくわからないが、卒業のタイミングとほぼ同じくして僕はいみじくも婚約した。
 
出版も決まり、大学も卒業し、国家試験も合格し、いくつかの大きな夢が同じ時期に達成されて、ほっと一息ついたら彼女のお腹には赤ん坊が眠っていた。なーんかうまくできてんだなぁと本気で思ってしまう。
 
2006年04月05日(水)  二人パレード。
 
妻! とか言ってみちゃったりして。僕の妻は、って妻! 僕の妻!
 
と、一人で舞い上がりながら日記を書いているのだが、今まで恋人の表記は「彼女」だったのだが、民法第739条の婚姻の成立に法律上の手続を要求する法律婚主義にのっとって、戸籍法に基づく届出によって僕たちは夫婦となったのだから彼女ではなく妻と呼ぶ!
 
妻は今でこそ体調が安定しているけど、つい最近までひどいつわりに悩まされていたのです。つわりに関しては本一冊書けるくらい衝撃的で、CMで仲間由紀恵 with ダウンローズの「恋のダウンロード」が流れるとつわりが悪化するという、わけのわからないメカニズムに混乱しながら頑張りました乗り越えました。妻を苦しめた仲間由紀恵がちょっぴり嫌いになりました。
 
2006年04月04日(火)  不公平。
 
入籍はしたけれど式はまだ先の予定なので、これといって生活の変化は見られない。それよりも入籍する前の方が波乱に満ちていた。引越し、彼女の実家への挨拶、そして妊娠初期の「つわり」である。
 
つわり。看護学校で基礎知識は学んでいたのだが、こんなにも辛いものだとは思わなかった。吐き気はするわ匂いには敏感になるわ食べ物を見ただけで気分悪くなるわ嗜好は変化するわ胃はもたれるわでもう体調不良のオンパレードみたいな状態が何週間か続いて僕はただただ悲しかった。
 
子供は男と女の共同作業で作られると思っていたのだが、あまりにも女の負担が重過ぎる。神様は不公平だ。彼女の負担を半分僕に分けてほしいとベランダで星に願いを。ついでにタバコを一服。タバコの臭いがダメでキスすらしてくれなくなった。ただただ悲しい。神様は不公平だ。どうか僕にもつわりを。
 
「つわりの症状が男女平等に訪れたら誰が働くのよ」
 
彼女はベッドの中で弱々しく呟く。でも彼女だってつわりと戦いながら働いている。僕は誰とも戦うことなく漠然的に働いている。来月の給料で新しいゲーム買おうとか思っている。本当に不公平だ。彼女が不憫でならない。
 
よって僕は一生懸命することにした。本当に何に対しても一生懸命することにした。家事は全部僕に任せて。料理もちゃんと勉強するから。君は仕事が終わったら何もしなくてもいい。これで平等になるとは思わないけどちゃんと頑張るから。
 
2006年04月03日(月)  キミのために。

彼女との交際が始まったのが今年の1月半ば頃。同棲生活が始まったのが3月半ば頃。その間に国家試験を受験して、山陰地方の彼女の故郷に行って、ケータイ書籍が発売されて、通信大学を卒業して、「月刊男心」が書籍化された。そして今日の仕事帰り、自転車の後ろに彼女を乗せて、区役所の夜間受付に、1枚の、ほんの少しの力で破けてしまいそうな1枚の薄い紙を、提出した。
 
「婚姻届」
 
それは拍子抜けするほどの簡単な手続きによって、僕たちは結ばれた。
 
二人乗りして帰り道、実感も責任も沸いてこない二人は、焼肉屋に寄って小さなお祝いをした。僕たち二人のため。

そして命を宿って13週目の、キミのために。
2006年04月02日(日)  宣言2!
 
「はいはい住所変更ねー。あ、ついでに住民票もいるんだね。じゃあこれ書いててね」
 
という役人のタメ口に僕はキレました。無精髭生やした僕と同じくらいの年齢の役人に僕はキレました。なに無意識に僕より高い位置から見下ろしてんだと。住所変更という煩雑な手続きをしてやってやるみたいな態度取ってんだと。僕はどうもこうダメなんだなぁ役人という人種が。お前こそ「サービス業宣言!」しろっつーの。
 
そういう状況に遭遇した僕は、そういう状況を生みだしている人間に対してかなり冷酷になります。ここは病院じゃないから無条件の優しさなどいらぬ。俺の税金で食ってんだとまでは思わないけど、この役人に対して何かしらの精神的ダメージを与えたい。家に帰ってからも何かもやもやしたイヤな思いを抱いてもらいたい。
 
「あのー。すみません」
「はい? あ、書き方わかる?」
「おたく、公務員ですよね」
「は? そうですけど?」
「あ、やっぱり。なるほどねー」
 
無精髭の役人はキョトンとした顔を浮かべた後、言葉の意味がわかったのか、あからさまに憮然とした表情を浮かべた。ざまぁみさらせ。てめぇのそういう態度まで含めて全てが公務員的なんだよ。はいキミの心にサービス業宣言! と、ニヤニヤ笑みを浮かべながら、住民票の申請用紙にペンを走らせて「少々お待ち下さい」という役人の必死の敬語にも耳を貸さず早々と椅子に戻り、やはりニヤニヤ笑いながら足を組んで1時間も待たされた。
 
2006年04月01日(土)  宣言!
 
銀行に新しい口座の開設に行った。口座開設だけなのに外貨預金とかメチャクチャ難しいことを説明された。利率何%とか豪州ドルとか何もわからない。というより僕はお金を増やすとか儲けるとかそういうことにあまり執着がないので、毎月給料貰えて微々たる貯金ができたらそれでいいじゃないか。とても平和じゃないか。安穏とした人生じゃないか。馬の耳に念仏だよお兄さん。と、銀行員のネームを見たら名前の上に「サービス業宣言!」と記されてあってなんじゃこりゃ。
 
銀行ってそもそもサービス業じゃないのか。八百屋のおじさんが市場でかぶってる帽子に「八百屋宣言!」と書いてるようなものじゃないか。何をいまさら宣言してるんだ。!マークまでつけて。宣言しなくてもみんなもう知ってるよ。と、早く通帳渡してくれねぇかなぁ。ついでに粗品でもくれねぇかなぁと心の中でお客様宣言!
 

-->
翌日 / 目次 / 先日