2005年08月31日(水)  PO1で最高潮。
 
本物の死体がいろんな形に切り取られて展示してあるという医学やその他の勉学のためではなく、ただリアルな死体が展示されているから見に行きたいという、オバケ屋敷の延長のような心境で来場するような人間ばかりでごった返した「人体の不思議展」が行われていた東京丸の内の東京国際フォーラムでペ・ヨンジュンが映画の宣伝のため来日したみたいだけど、同会場周辺にはヨン様ファン約8000人が殺到し、パニック寸前となった。となったと新聞には書いているけれど、パニック寸前。いったいこれはどういう状況なのだ。寸前ってどういうことだ。
 
すんぜん【寸前】
ほんのわずか手前。その事の起こるほんの一瞬前。(大辞林)
 
一瞬前である。一時期、マジでキレる5秒前のことをMK5と呼んだりしたが、ヨン様ファンはパニック起こる一瞬前。PO1である。日本語で「応援ヨロシクオネガイシマス」と言っただけで、会場の興奮は最高潮に達するのである。最高潮。いったいこれはどういう状況なのだ。最高潮ってどういうことだ。
 
さいこうちょう【最高潮】
ある雰囲気や感情などが最も高まった状態。また、その場面や時期。(大辞林)
 
最も高まった状態である。「マッサージ3マンエンヨ」と、池袋西口付近の暗い路地にたむろする怪しげな外国人女性と大して変わらない口調で「応援ヨロシクオネガイシマス」と言っただけで最高潮である。これが最高潮だったら、あとはどんだけ静かだったんだ。
 
『1階中央席を当てた主婦(58)は「ヨン様が私を呼んでくださった」とうれし泣きしていた』
 
この新聞には、PO1で最高潮に達して馬鹿になった中年女性のことも付して書かれていた。
 
2005年08月30日(火)  なんとかのララバイ。
 
僕の部屋は、収納スペースをできるだけ多く取りたいという関係上、高さが僕の腹辺りにある中途半端に高いベッドを使用している。そのベッドの上で寝る前に読書しながらビールを飲みながらじゃがりこ食べていたらじゃがりこ下に落っこちた。
 
わあ。床にじゃがりこが散乱してしまった。これはとても面倒臭い状況だ。ビール飲み終わって小説が一段落したら寝ようかと思ったのに。深夜に下に降りてじゃがりこを回収するなんてとても面倒臭い。どうすればいいか。ということを彼女に電話をしたら、「拾いなさい! 今すぐ拾いなさい!」と当然のことを言う。
 
ああ、きっと母に電話しても妹に電話しても友人に電話しても職場の看護婦さんに電話しても「拾いなさい!」と言われるだろう。そんなことわかっている。床に落ちたじゃがりこは拾うこと以外、何も選択肢は残っていないのだから。でも彼女だけは。僕の彼女だけは、まあ。寝る前にじゃがりこ落としたの? 全然問題ないわ。来月も私東京に行くからその時にゆっくり回収するわ。今日はゆっくり眠りなさい。疲れ切った体を投げ出して青いそのまぶたを唇でそっとふさぎましょう。
 
2005年08月29日(月)  男らしくなくたって。

他の病棟の婦長さんが、ベッドを移動させるので男の看護師を一人貸して欲しいという連絡があり、あ、じゃあ僕行ってきましょっか。と、何でもない態で言うと、「あの婦長さんとこ行っちゃダメ! こっちだって忙しいんだから!」と、看護婦さんに止められて、別に忙しくないだろう。ベッド移動させる時間なんていくらでも作れるだろうと思ったけど、口には出さず、不満にも思わず不平も言わず、そうですね。忙しいですもんねと、調子を合わせたその日のお昼。食堂でベッド移動をした別病棟の婦長さんとバッタリ。
 
「時間があるときでいいの。手伝ってくれるかしら」
「もちろんです」
 
即答する辺りが、自らを窮地に追い込んで自爆するといういつものパターンの始まりなのだが、手伝ってくれる? と訊ねられ、看護婦さんに止められてるので手伝えませんと答えるのも男らしくない。かといって実際に手伝いに行ってベッド移動を済ませて、何食わぬ顔で自分の病棟に戻って、あのベッド移動の件どうなりましたかねぇ。なんて馬鹿みたいな演技をするのも男らしくない。結局どっちに転んでも僕は男らしくない。
 
2005年08月28日(日)  こればっかりはね。
 
皆、美容院や理髪店に行きたいと思うときってどういうときなんだろうか。そりゃ髪が伸びたときだよと言うかもしれんが、そういうことではなく、その、美容院に赴く決意をするきっかけであって、よし、髪切りたいパーマかけたい今週の日曜に。なんて考えるのだろうか。考えるのだろうな。
 
僕の場合、それが極端に衝動的なのである。鼻をほじってるとき、仕事してるとき、歯を磨いてるとき、「あ、美容院行きたい。今すぐ行きたい。絶対行きたい」と、もう頭の中が美容院のことでいっぱいになり、どうしてオレは今までこんな恥ずかしい頭で生活してたんだと、つい2・3分前までは考えもしなかったことを考え出し、一刻も早く髪型を整えてもらわなければという追い詰められた心境のまま美容院に行くので僕の係のお姉さんはいつも怒っている。
 
「……」
「あ、ちょっと軽い感じで、ゆるーくパーマかけてください」
「……また予約しなかったでしょ」
「あ、はい。あとちょっと襟足長めでお願いします」
「……私が休みだったらどうするつもりだったの?」
「別の人に切ってもらうよ」
「ヨシミさんの係は私なの。私のカットが一番しっくりくるって前言ってたじゃない」
「だからこうやってここの美容院に来てるわけでしょ」
「そういうことじゃないの。私が休みだったらどうするつもりだったの?」
「別の人に切ってもらうよ」
 
と、堂々巡りの問答のあと、いつものようにカットしてもらうのだが、なんというか美容院の予約というものは、とても繊細な問題で、3日前に美容院に行きたくて予約しても、必ずしも3日後に行きたいという心境になっているとは限らない。というか今度の休み飲みに行こうよーと自分で誘っておいて、休日がくると、ああ飲みにいく約束なんてするんじゃなかったとウジウジ考える僕の場合、美容院の予約というものは無意味に等しく、こうやっていつも衝動的に美容院に訪れて係のお姉さんを困らせてしまう。
 
「次、次来る日、ちゃんと予約してって。予約しないと帰らせないから」
「えー。わかんないよそんなの。じゃあ来月。来月また来ます」
「来月のいつ?」
「わかんない」
「それじゃあ全然わかんないのと一緒じゃない」
 
と、カットが終わっても堂々巡りの問答を繰り返しながら、心の中では申し訳ないと思ってるんだけど、こればっかりはね。
 
2005年08月27日(土)  プライドだけで生きていくよ。
 
今日は通信大学の試験の日でした。前日は2時まで駅前で飲んでおりました。だって職場の人に誘われたんだもの。いや、誘われたっつうか、僕も翌日の試験が憂鬱で、勉強できないけど誘われたから行かなければいけない。という誰も得をしない言い訳を考えながら酒をしこたま飲んだ。ソーシャルワーカーのお姉さんの歌がメチャクチャ上手かった。「ボイストレーニング行ってたの」とか言いながら一向に歌おうとしなくて、マーウソツイテンジャネ? と、酒を飲みながら好い加減にうなずいていたら、本当に上手かった。キレイな声してたなァ。
 
僕の彼女も歌が上手い。幼い頃からってまだ幼いのだけれど、音楽を嗜んでいたのでメチャクチャ上手い。でも彼女の前では上手いとは言わないなぜならつけあがるから。
 
で、今日は試験。昨夜は勉強がさっぱりできなかったので試験受けたくない。でも受けなければ単位が取れない。単位を取りたいけど、単位を取れるだけの学力がないなぜなら深夜まで酒を飲んでいたから。
 
本日は小論文の試験4科目。午前に2科目、午後に2科目。まぁ午前の2科目は勉強してたから大丈夫だけれどもね。午後の2科目。これは一夜漬けで勉強しようと思ってた科目だからね。知識の一夜漬けだったらよかったのだけど、今の僕は酒の一夜漬けだ。あのお姉さんの歌上手かったなァ。僕の彼女も上手いけれどもね、彼女の前では上手いとは言わないなぜならつけあがるから。
 
で、結局、午後からの試験ができたかできなかったかと言われれば、できた。ちゃんとできた。なぜか、それはプライドが許さないから。フリーライターという仕事をしつつ、たった千文字程度の小論文が書けなくてどうするんだ。その科目に対する知識がなくても、わけのわからん難しい言葉を散りばめつつ文章を完成させれば小論文らしくなるのではないか。これまで養ってきた文章に対する知識を生かして。よーしやるぞやったるぞ。そして今日は電車じゃなくてバスで帰ろう。と試験が終わって何を思ったのかバスに乗って2時間の渋滞に巻き込まれひたすらウンコを我慢。
 
2005年08月26日(金)  やれるだけ頑張ってみる。
 
何日滞在したか覚えてないけど、彼女は四国に帰ってしまった。ああ幸せな時間であったよなぁ。いつも隣に彼女がいたんだもんなぁ。でも暑かったよなぁ。極度な寒がりなんて初めて知ったよ。エアコンだめなんて。たまにしか会わないから我慢できるものの、もし結婚したらどうすんだよ。たかがエアコンといえども、これは価値観以上に深刻な問題だよ。ピーマンだめとか人参食えないのとは訳が違うよと、彼女がいなくなった部屋でタバコ吸い放題エアコン入れ放題の中、ぼんやりと考えていたが、育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めない。まあ頑張ってみよう。やれるだけ。と、Jポップのような安っぽい悟りを開いて、彼女に電話すると、彼女はもう四国にいて、遠いなあ遠いなあ。
 
2005年08月25日(木)  たまには渋谷で。
 
台風は去ったが旅行の日程も同時に消えたので、さあ今日は何しよう。お台場行こうかやっぱやめた今の嘘。あんな人が多いとこには行きたくないよもっと静かなとこでゆったりとした時間を過ごしたいよ。だから箱根に旅行に行くつもりだったんだしさ。台風さえこなければね。何しようどこ行こうどこ行きたい? 「渋谷」 え? まさか? こんな暑い日に渋谷? 心配だな。ドキドキしてきたな。この暑さで、あのスクランブル交差点渡りきるかな。やだな渋谷行きたくないな。
 
と、彼女に手を引っ張られてやってきました半年振りくらいの渋谷。人多いなあ。まあ池袋も多いけど、ちょっと人種が違うよね渋谷って。ああしまった。ガムを踏んでしまった。帰りたいなあ。なんてヘラヘラしながら彼女の後ろを歩いていると、いつの間にか小さな店に入っており、ここはどこなぁにこれ。と、子供のように店内をキョロキョロしているのは、
 
彼女は数ヶ月前からカメラに凝り始めて、つっても僕もカメラが大好きで、僕は主にLomo LC-Aというロシアカメラ。遊び心でFisheyeというトイカメラを使っていて、彼女はSmena8、通称スメ8というカメラを愛用していて、デジタルカメラの時代にひたすらアナログに走っているのだが、この店はこんなアナログなカメラの専門店であって、彼女以上に目を輝かしている僕は彼女そっちのけでいろんなカメラをペタペタ触り、これ欲しいな。これ欲しいな。でも給料日前だしな。これ欲しいな。うーん買っちゃおうかななんて一人で盛り上がって盛り上がって気分が若くなって、よーし帰り原宿行ってみよーなんて張り切って竹下通りを歩いている時に土砂降りにあってずぶ濡れ。
 
2005年08月24日(水)  台風、非常ベル、私ジャージ。
 
台風が関東地方を直撃したので、箱根に旅行に行く事をキャンセルした2人は、並んで体育座りをしながら交代でプレステ2の「戦国BASARA」というゲームをしながら、暴風雨が窓を打つ午前1時に、雨の音以外の音が鳴り響いていることに気付く。
 
「なんかベル鳴ってない?」
「鳴ってるね」
「浴室から聞こえない?」
「聞こえるね」
「浴室から聞こえない?」
「聞こえるね」
「浴室から聞こえない?」
「わかったよ行ってくるよ」
 
と、嫌々立ちあがり、浴室へ行ったが、目覚まし時計のようなベルの音は浴室からではなく、浴室の向こう側、このマンションのドアの向こうから聞こえている。一体なんぞと、マンションのドアを開けると、おびただしい量の雨と一緒に、通路で鳴り響く非常ベルの音が部屋になだれこんできた。
 
「非常ベル鳴ってるよ」
「じゃあ火事ね」
「このマンションのどっかが燃えてんだよ」
「じゃあこの部屋も危ないわね」
「でもこんな大雨降ってんだからすぐに消えるんじゃない?」
「そんなわけないわよ。部屋の中は雨降ってないんだから」
「そっか」
「そうよ」
「じゃあ避難しなきゃな」
「いやよ。私ジャージだし」
「僕も靴が濡れるの嫌なんだよね。臭くなるから」
「ねぇここどうすればいいの?」
「あのロボットみたいなやついるだろ。あいつを先に倒せばいいんだよ」
 
と、ゲームの話にスムーズに戻る僕たちはきっと馬鹿だ。平和ボケしすぎてるよ。戦争起きたらこういうやつらから死ぬんだよ。戦争が起きたとしても、あのロボットみたいなやつを先に倒せばいいんだよとか言ってるんだよ。死ぬよ僕らは。と、思いながらその後1時間、台風の夜に非常ベルは鳴り続けた。ドアを開けるといつの間にか消防隊員が非常ベルの前に立っていて、僕の姿を見ても、避難するようにという指示もなかったので、そのまま部屋に戻りゲームをしてそのあと電気を消してセックスした。
 
2005年08月23日(火)  そりゃ地球は青いけど。
 
僕らはこんな会話をしつつもいつも幸福に包まれた恋愛をしている。なんて辻仁成も書かないような言葉で昨日の日記は締めくくられているが、実際のところ正味のところ、地球はスペースシャトルから見ると青いのは、電信柱の端にある犬の糞が見えないのと同じで、まあ全体的に幸福だが、細かいとこをいえば不平や不満や不幸の連続であって、例を挙げるとエアコンの設定温度。
 
僕は別に地球温暖化を切実に考えているわけでも、月末の電気代を深刻に憂慮しているわけでもなく、いつもエアコン25度。毎晩寒い寒い言いながら布団をかぶって眠るのが極上の贅沢だと感じる性質の人間である。
 
かたや彼女は馬鹿。エアコン25度なんて信じられない。寒い寒いわ凍え死んでしまうわ。体も愛も。よって今すぐエアコン消して。昔はエアコンなんてなかったんだからなんてお母さんみたいな説得をして僕にエアコンのスイッチを切ることを迫るというか勝手に切っちまう。意外とエアコンなしでも生活できるものよと、午後3時に僕の部屋の温度計は33度に上昇しました。
 
こんな悲惨な状況になっても涼しい顔をしている彼女に、汗が入る目を細めながら、どうしてキミはこんな状態で死なないのだ。僕は死ぬよ33度なんて。ひからびちまうよ。お願いだからエアコン入れてくれよと懇願すると、エジプトはまだ暑いんだからと、世界にはご飯が食べられない子供もいるんだからご飯は残すなみたいに議論をすり替えようとするので、ちょっと待て、そういうことじゃないだろ。お前とは話にならない。ことエアコンに関しては。よって僕はこの部屋を出て行く。ドトールでコーヒー飲んでくると、悠然と立ち上がり部屋を去ろうとすると、ちょっと待って。これも。ってんで、マンション1階に設置されたコインランドリーで頼まれた洗濯物を洗いながらひたすら首を垂れ垂れ汗ダラダラ。
 
2005年08月22日(月)  幸福な恋愛。
 
夜勤明け。午前10時。いつものように誰もいるはずがないのに「ただいまー」と言って部屋のドアを開けるとまぁ! ベッドに彼女が寝ている。水不足が深刻な問題となっている香川在住の彼女が板橋のマンションの一室のベッドに寝ている。くそ暑い日に、布団をかぶって。
 
「ただいまー。おーい。起きなさーい。そして来るときはちゃんと来るって連絡しなさーい」と、彼女の頬をぺしぺし叩きながら起こすのだけど、一向に起きないのは、僕が思うにこれ演技であって、彼女はちゃんと起きている。起きていつつも幸せな寝顔を浮かべている可愛い彼女を演出している。馬鹿らし。こちとら夜勤で疲れてんだ。さっさとシャワー浴びて寝るぞ。ちょっとその前にテレビでも見よっかな。と、テレビのスイッチを入れた3分後、「ムマー!」と、構ってくれないことに業を煮やした彼女が万歳をするような姿勢でベッドからむっくり起きあがってオハヨーと演技臭い寝呆けた声でキスをした。
 
「っていうか暑くないの? 布団かぶって」
「お昼ラーメン食べに行こうよ」
「シャワー浴びてくるね」
「あ、洗濯物たたんどいたよ」
 
と、文章にするとまったく噛みあっていない会話に見えるが、現実の会話はだいたいこのようなもので、僕らはこんな会話をしつつもいつも幸福に包まれた恋愛をしている。
 
2005年08月21日(日)  何が変わったら。
 
「何が変わったら子どもを産みたいか」とのアンケートに、女性の43%が「働きやすい職場」と回答したと、毎日新聞に書いてあったが、働きやすい職場というのは、子育てに寛大な職場ということなのだろうか。それほど現在の社会は育児に対する了見が狭いのだろうか狭いのだろうな。
 
でも「何が変わったら子どもを産みたいか」という質問は、何かが変わらないと子どもを産まないという前提で質問しているのだから、おかしいといえばおかしい。子どもを産まない理由なんてそれぞれ違うと思う。せいぜい職場が働きやすかったら子どもを産むと思ってるのは全体の43%ぐらいだと思う。だからそう結果が出てるじゃないか。
 
でも他の回答ってどんなんだろうな。2%ぐらい「男が変わったら子どもを産みたい」っていう答えが欲しい。でもよく考えると2%以上はいるような気がするけどね。でも「季節が変わったら」「瞳の輝きが変わったら」なんてロマンチックな答えもあったかもしれない。「働きやすい職場」なんて当然なことばかり発表せずに、「その他」に位置する変わった回答も細かく発表してくれると、もう少し真剣に世の中について考えることができるわけがない。
 
2005年08月20日(土)  布団がふっとんだよ。
 
現在住んでいるマンションは、少し形が変わっていて、角部屋のワンルームなんだけど、壁3面に窓があり、5階に住んでいるから全ての窓を開けるとあちこちから強風が吹き込んできて、部屋中大騒ぎになる。
 
休日。晴天。やることなし。この3つの条件が揃った時、ベランダに布団が干されるということになる。窓を開け放ち、強風の中、洗濯物や布団を干し、むやみに風が強いばかりでちっとも涼しくない部屋で、上半身裸になり、ミッシーエリオットのCDを大音量で聴きながら尻を振っていたら強風で布団がふっとんだ。
 
あーあ。落ちちゃった。布団落ちちゃった。自転車置き場に落ちちゃった。自転車置き場の屋根に落ちちゃった。あれどうやって取るんだろ。めんどくせーなー。今夜は自転車置き場の屋根で寝ようかな。でも蚊が。なんて馬鹿なことばかり考えて、一向に動こうとしないのは、上半身裸だということと、強風に煽られて髪の毛がボサボサだということと、今すぐ階下に降りたとしても、自転車置き場の屋根にひっかかった布団をすぐに取る方法がまだ決まっていないからで、とりあえず管理人室行って脚立借りなきゃ。
 
と、管理人室のドアをノックして誰も出てこないのは今日が日曜日だからであって、どうすんだよー。オレの布団をよー。と、強風に煽られて自分の不注意で布団がふっとんだという事実から、管理人室が開いてないから布団が取れないという事実に責任転嫁して、責任という重荷が取れた瞬間に怒りが沸いてきて、馬鹿管理人。バカンリニン。キャタツ出せコノヤロー。と、プンスカしながら自転車置き場に行ったら僕の布団、いつのまにか地面に落ちており泥だらけ。
 
2005年08月19日(金)  学ぶということ。
 
昨日は大学のスクーリングに遅刻したが、今日は定時に出校した。でも家を出る前にウンコしてくんの忘れて、講義の最中にトイレ行って静かな排泄。
 
僕はこの大学で、福祉と心理学を学んでいて、今回の講義は、カウンセリングの演習。カウンセリングなんて職場で似たようなことやってるから楽勝でしょーと、学校のトイレの中で静かに考えながら、あんまり排泄の時間が長いとウンコしてんのがバレてしまうなので、早々に切り上げというか拭き取り、静かに教室に戻ると早速カウンセリングの練習が始まっている。
 
6人のグループになって、自己一致、無条件の積極的な関心、共感的な理解など、文字にすると何のことだか全くわからないが、そういうカウンセリングの基本を踏まえ、カウンセラー役になったりクライエント役になったりしながら会話をしていき、それについての問題点をグループで話しあうという、日頃ダラダラ生活している僕にとってはかなり有意義な時間を過ごす。
 
通信大学のスクーリングの良いところは、皆、純粋な学生ではなく、それぞれ職業を持っていることであって、今回のグループも高校の教師がいたり、主婦がいたりOLがいたり、通訳がいたり、検査技師がいたりと、合コンでもしない限り知り合えない人たちと話ができるということで、更にこのような勉強の場となると、それぞれの人格はもちろん、それぞれの職業がバックボーンとなった考えが出てくるので、ひじょうにためになる。これが本当の学ぶということなんだなーとしみじみと感じながら本日2度目の静かな排泄。
 
2005年08月18日(木)  スクーリング初日。遅刻の顛末。
 
夜勤の日は、午前9時半に仕事が終わるのだけど、今日は8時半にあがらせてもらったのは、9時から池袋で通信大学のスクーリングがあるから。
 
8時半に仕事が終わって9時から池袋。まぁ急げば間に合う距離なんだけど、昨日の夕方から働いてるわけだし、外はこんなに暑いし、病院の中も地球に対するエコなのか経営者のエゴなのかわからないけどエアコンは28℃。動くとすぐに汗が出る。よって一度家に帰ってシャワーを浴びたい。でもシャワーを浴びると9時に池袋に間に合わない。でもシャワーを浴びなければ不快な気持ちのまま講義を受けなければいけない。さて、どうしよう。と考えながらすでにシャワーを浴びている。
 
はースッキリしたー。と、タオルで頭を拭きながら扇風機の前に立つ午前9時。あー、講義始まってるね。間に合わないね仕方ないよねさっきまで働いてたんだから。と、ノロノロ支度をして、電車に乗って9時半過ぎに学校に到着。教室に入る時に、遅刻をして申し訳無いという顔をしながら入ったら、講師によってはこういう感情につけ込んで、どうして遅刻したのか、なぜもっと早く出なかったのか、お前は単位を欲しくないのかというようなことを粘着質に話す者もいるので、もう全然悪くない。悪いことなんてしていない。遅刻をしたという事実は認めるけど、さっきまで働いてたからしょうがなかった。シャワーを浴びたという事実もあるけど、汗臭いまま講義に出て学習に身が入るはずがないと思った。全然悪くない。遅刻なんて問題じゃない。遅刻なんてないさ。遅刻なんて嘘さ。寝ぼけた人が、見間違えたのさ。
 
だけどちょっとだけどちょっとボークだって怖いな。
 
2005年08月17日(水)  ジイサン道路で倒れてて(後編)
 
ジイサンをなだめている間も、「今から仕事行くんじゃー!」「やっぱり帰るんじゃー!」「駅はどこだー。いや私は浅草出身なんですけどね」と、言ってることは全然まとまりがないが、意外に元気なので、まあ死ぬことはないだろうと、美味しそうに十六茶を飲み始めたジイサンを後目に、近くにあった区民センターに入って、そこの道路でジイサンが倒れてて、歩くのもフラフラですごく可哀想なのでどうにかして下さいということを言うと、「ど、どうすればいいんですか?」と、区民センターの中年の女性が本当に困ったような感じでオロオロしだして、ったくふざけんなよ役人。臨機応変に対応しろよー。とにかく来て下さいっつって先にジイサンの所へ戻ったらまたジイサン道路の真ん中で倒れてる。
 
なんで道路の真ん中までわざわざ行くんだよー。と、みたび路肩まで引きずって、もう汗でびしょ濡れ。最初は酔っ払ってフラフラしてると思ったんだけど、ジイサンの行動を見ると、どうも認知症のような気がする。あ、認知症ってのは、痴呆症の新しい名称ね。最近変わったやつ。で、僕は仕事で認知症の患者さんと常に接しているわけだから、自分で言うのも何だが、その応対はお手のものであって、遅れてやってきた区民センターの人も、なんだよお呼びじゃないじゃんみたいな顔して突っ立っている。
 
お呼びじゃないじゃんじゃないじゃん。オレは仕事でこんなことやってんじゃないんだよー。つうか今から仕事なんだよー。こういうのは役人、もしくは警察の仕事じゃないのかよー。あ、お茶もう1杯飲みます? すげぇ汗かいてるから水分いっぱい取らなきゃね。死んじゃうよホントに。水分以前に車に轢かれて死んじゃいますよ。聞こえてマスカー。今からどこに行くの? 仕事? あそう。でもほら、血が出てる。こんなんじゃ仕事行けないですよ。ほらもうちょっと日陰のとこ行きましょう。
 
ってジイサンの体を支えながら思ったことは、こういうことは助けたいという気持ち以前の問題で、自然に体が動いてしまって、日常生活の中であっても、つい仕事モードになってしまうんだなーと新しい発見をしたということ。僕もまだまだ捨てたもんじゃない。あ、またジイサン道路の真ん中に行こうとしてる。
 
2005年08月16日(火)  ジイサン道路で倒れてて(前編)

今日は真夏日33℃。暑いよ暑いよ暑くて死ぬよと、自転車をこぎながら銀行に向かっていたら、道路の真ん中でボロボロのワイシャツにネクタイを締めたジイサンが倒れている。
 
ジイサンあぶねぇよ。って自転車を止めて、路肩までジイサンを引きずって、それから日陰のとこまで引きずって、道路で寝てはいけない。なぜならすごく危ないからということを短く説明して、ジイサンは酔っているのかボケているのか、「はあ。わあ。ふむふむ」なんて聞いてるのか聞いていないのかわからないような感じ。じゃあっつって自転車に乗って銀行に向かう。ジイサンをしきりに気にしながら。50メートルほど進んだときにジイサンが立ち上がったのが見えた。周囲の人はジイサンをよけるように歩いていく。
 
銀行で用を済ませ、さぁ頑張ろうと気合を入れているのは、今日は午後4時から夜勤の仕事であり、現在午後3時。急いで家に帰って夜勤の準備をしなければならないのに、またさっきのジイサンが道の真ん中で倒れている。
 
ジイサンあぶねーって言っただろー。と、再び路肩までジイサンを引きずって、周囲の人にも手伝って頂戴というサインを送ったのだけど、さすが東京の人、面白いように周囲から遠ざかっていく。ふざけんなよ。こっちは1時間後に仕事始まんのによ。みんな地震で死ね。と、思いながら、ジイサンは33℃の真夏日に道路の真ん中で倒れていたので、みんなが地震で死ぬ前に、このジイサンが死んでしまうような気がして、近くの自動販売機で十六茶を購入して、ちょっとこれ飲んでて。で、勝手に立ちあがんないで。今人呼んでくるから。と、ここまで書いて続きは明日。
 
2005年08月15日(月)  なんでもないようなことが。

っていうか毎日3回ちゃんと歯磨きしてんのに何で虫歯になっちゃうんだよー! と、一昨日、歯が砕けたことについて、今更ながら怒りが込み上がってきたが、毎日歯磨きして、歯磨きの後はリステリンでうがいまでしているというのに、歯が、砕けてしまった。歯科医曰く、歯根部に膿が溜まっていると言われた。ショックだった。
 
そういえば僕の前歯は、若い頃、集団でケンカをして殴られて折れてしまって、あの時は駐車場でケンカをしていたのだけど、カランカランカラーンって歯が転がった音を、今歯っきりと思い出す。大雪が降ったせいで、車なんて1台も止まっていなかったけど、僕の手を握り返し、差し歯が欲しいと言った。
 
なんでもないようなことが幸せだったと思うけど、前歯がないようなことは全然幸せじゃない。どうしてあの時あんな大勢でケンカしたのかわからないけど、とにかく僕は前歯が折れてしまった時点で敗北を認め、僕を殴った奴も、前歯を折ろうと思って殴ったわけではない。申し訳無いけど敵同士。ゴメンねって謝るわけにもいかない。でも本当に前歯を折るつもりはなかったという表情を浮かべており、いいよいいよ気にしてないよ。ケンカなんてどんな理由であれお互い悪いんだしね。さあ、今夜はもうこれくらいにしよう。さっさと帰って風呂に入ろう。で、朝一番で歯医者に行こう。と、殴った奴と殴られた僕。二人して呆然とまだ収まらぬケンカを眺めていたら、一人の鼻が曲がって二人の肋骨が折れた。
 
でも寝る前に歯磨きして、ベッドに入ってビール飲むよな。あれってやっぱりいけないのかな。でも寝る前にお菓子食べてるわけじゃないし。ビールを飲むことによって熟睡できるわけだし、そもそも寝る前に小説読みながらビールを飲むことが日常生活での唯一の楽しみなのに。寝る前のビールっていけないのかな。じゃあビール飲んでから歯ぁ磨こうかな。でも面倒臭いよね。少なからず酔ってるわけだし。飲んだらそのまま寝たいよね。起きたらそのまま死にたいよね。仕事の日は。憂鬱だよね。朝が。でも酒があるから今日も頑張ろうって思うわけだしね。虫歯1本できたぐらいでクヨクヨ悩むことないよね。ね。ね。ね。と、涙を浮かべて鏡を見ながら歯を磨いていたら、歯科で応急処置で詰めた白いやつがポロッと取れて鏡に向かって全力パンチ。
 
2005年08月14日(日)  危機目前にして。
 
電話するたびに彼女は「水がない。水がないの」と、泣きべそをかいているのは、彼女は四国は香川高松の出身であり、日照り続きのせいでダムが渇水。生活飲水は勿論、糞すら流せない状況になることを杞憂しているのであって、可哀想なことは可哀想なのだけれど、見かけだけの優しさでボルヴィックを10本送ったとしても、何の解決にもならず、「大変だねぇ」としか言えない自分自身に自己嫌悪しながら電話を切ったらシャワーを浴びようと平気で考えている。
 
しかし水がなくなるということはどういうことなのだろう。僕たちは日頃、電気はついて当たり前。水は流れて当たり前。空は青くて雲は白くて足は臭くて当たり前と考えているが、その当たり前が突然崩壊したらどうなるのだろう。電気が消えて水が止まって、空が赤く雲は黒く、足からミントの香りが漂ってきたらどうするだろう。なんらかの対策は考えると思うが、それを真から受け容れることができるのだろうか。
 
人はいつか死ぬ。でも今生きている人は死んだことが一度もないから、死んでも魂が残るとか、化けて出てくるとか、生まれ変わって鳥になるとか、死ぬという事実に対して、何かと抵抗を試みる。しかしそれが何になるのだ。魂が残って、オバケになって、鳥となって羽を広げて、ボルヴィックを10本送っていったい何になるのだ。
 
彼女は、彼女を含む香川の人間は、今、目前に迫っている渇水の危機に何を思っているのか。彼女は、何を、思っているのか。
 
「えっとねー、今日お兄ちゃんとユニクロに行ったの」
 
何を思っているのか。
 
2005年08月13日(土)  選民思想。

入院があるというので外来に赴き、医者の診察についていると、突然バキバキバキーッっていうかボロボロボローッっていうかガリガリガリーッってな感じで、右上の歯が突然砕け散った。
 
なななななんぞ。虫歯じゃないはずなのに、固いもの食ったわけでもないのに。ただポカーンと半口開けて医者の診察についてただけなのに。ななななんだ。歯が、歯が、なくなってしまった。砕けてしまった。今どんなことになってるかチョー鏡で見てみたい。と、砕けた場所を舌でもってなぞっていた3分後、関東地区が震度3の地震に襲われた。東北で新幹線が止まった。どっかのプールの屋根が落っこちた。
 
ということを、地震がやんですぐ、近くにいた看護婦さんに話したら、僕だったらこういうことを言われると、すかさずそりゃぁ嘘だ。んなわけないよと反論するが、看護婦さんは真に受けてしまって、今度また歯が砕けたらすぐに教えてね! と、真剣に言っている。こんなのただの偶然に過ぎない。もしこの歯が砕けたことが地震への予兆だとしたら、いずれ僕の歯が全てなくなってしまう。そんなのイヤだしそんなワケないけど、百歩譲ってこれが偶然ではなく、予兆の一種だとしたら、ちょっと嬉しい気持ちもあることはある。
 
仕事帰り、歯医者に寄って、ことの顛末、といっても地震のことは話さずに、ただ単に突然歯が砕け散ったということを話しても、どうしてですか。それまで痛みは感じてたのですか。突然とはどういうことですか。と、なかなか現実を受け容れられない受付嬢に、これはやっぱり地震のくだりを話したほうがいいのかなと思っているうちに、診察室に通され、歯科医にこれはただの虫歯で、デンタルケアを怠ってここまで放っておいたお前は馬鹿だというニュアンスのことを言われ、唾液と一緒に地震の予兆と、期待していた選民思想を飲み込んだ。
 
2005年08月12日(金)  僕は悲しくなりました。
 
暑くて暑くて右手の指とか左足のふくらはぎが溶け始めてきたような気がしたので、涼しい場所で一服でもしようかと、目についたドトールコーヒーに入ってから30分後、一服するつもりで店に入ったというのに、僕はまだ一服もできないでいる。隣に座っている若い女性が赤子を抱えているのだ。
 
あぁ赤子か。赤子がいればしょうがない。副流煙は体に悪いって言うしね。赤子が近くにいては駄目だ。肺病になってしまう。と、まぁそういうことだけどそういうことでもない。だって赤子を抱いている女性は煙草を吸っているのだから。
 
なんだ。母親が吸ってるんだから、赤の他人のお前は満足して喫煙、略して満喫すればいいじゃないかと人は言うかもしらんが、そういうことではない。母親が吸っているから僕も吸うという道理が通れば、赤子は二重の副流煙を吸ってしまうのだ。煙を吸って満たされるのは、母親と赤の他人の僕だけ。赤子はまだこの世に生まれて数ヶ月しか経っていないのに、場末の安コーヒー屋でワケのわからん煙を吸ってエーンエーンと泣き喚き、うるせぇなぁこの野郎と、白い目をして睨む心ない人の視線を感じつつ、オレは泣きたくて泣いてんじゃねぇ。煙てぇんだ。時々目に入って痛てぇんだ。オレだっていつもニコニコ笑っていたいよ。泣くときはオムツが濡れた時だけにしたいよ。でも煙が。煙が目に。
 
なんて言えるはずがなく、母親も母親で、自分が吸っている煙草が締泣の原因だと知らず、あららどうしたの。はーいよしよし。イナイイナイバーとやっているその顔がブサイクなこと。僕は悲しくなりました。煙草が吸えないという事実よりも、母親だけが喫煙しているという現実よりも、ただただ、赤子の泣き声が、悲しいと思いました。
 
2005年08月11日(木)  ジェンガに熱中。
 
だいたい僕は急な用事があって鹿児島に帰ってきたというのに午前1時。妹の旦那と二人きりでビールを飲みながらジェンガをしている。ジェンガを知らない人に説明すると、高さ30センチほどに折り重なった積木を一つずつ抜いていって、崩した方が負けという、知ってる人ならあぁアレのことねと思うかもしらんが、知らない人にはこんな説明でわかるはずがないと思っている。
 
そんなジェンガを二人きり。つまみがなくなったのでビールとタバコ、タバコとビール、ビールとタバコも切れちゃって。1本、いい? あ、あ、いいっすよ。と、まだ芯から馴染めていない二人は、どこかよそよそしさを残しつつもジェンカに熱中しながら夜が耽る。
 
それにしてもジェンガ。ちょー面白い。僕はジェンガのために鹿児島に帰ってきたのではないかと思うほど面白いわけがない。眠い。眠いよ。でも勝ったら勝ったで妹の旦那が「あと1回、あと1回だけ」と必死に懇願するし、負けたら負けたで「くそ。こんなはずじゃなかった。さっきの場面まで巻き戻せたら絶対勝てる。あと一回。これ最後」と言い訳がましく兄の威厳を振る舞い、こんな調子で一向に決着がつかない。
 
あ、そういえばポテトチップスありましたよ。と、妹の旦那が深夜の2時ぐらいに言い出して、いいねポテトチップス。食おうぜポテトチップス。つまみももうないことだし。と、ジェンガの横にポテトチップスを広げ、お互い食う気満々だったくせに、ポテトを食うと手に油が付着して、ジェンガを取り除く際、滑ったりしてちょっと危ないんじゃないか。ポテト食うと負けちまうんじゃないかと、そんなことばかり考えてポテトは開封されてそのまんま。二人深夜にジェンガに熱中。
 
2005年08月10日(水)  待ち人、来たらず。
 
また鹿児島に帰ってきた。用を済ませてさっさと帰ろうと思う。本当は帰郷してる場合じゃないのに。でも急な用事ができたからこうやって再び帰ってきた。でも急な用事は急であるからそれなりに行動を起こさなければいかんと思うけど、急じゃない用事、すなわち普通の用事に対しては、どうも僕は適当に考えてしまう風があって、今回のように、用事は急なものに限るなぁと馬鹿なようなことを考えながら故郷の空を見上げる。遠くに櫻島が見える。
 
さてレンタカーでも借りようかなぁと空港で手続きを済ませ、レンタカー会社の人が迎えに来ますので駐車場へ向かって下さいと空港のインフォメーションのお姉さんが言って、駐車場に向かう途中に実家の方へ向かうバスが来たのでこりゃ良かったとバスに乗って、レンタカー会社の人は駐車場で待ち人来たらずな状況に置かれて悪いとは思ってるよ。
 
さて。故郷に着いて母から車を借りて、頼まれてた用事をさっさと済まそうと思ったけど、海に行きたいとも思うし、長旅に疲れたので昼から酒を飲みたいとも思う。要するに海で酒を飲みながら用を済ませることが僕にとって一番いいのだけど、世の中そんなにうまくはいかないもので、まずは海に行って、友人が経営する海の家で酒を飲んでそのまま夕方まで就寝。用があるところには出発前に、今から向かいますと電話を入れたのだが、僕を待っている人は、待ち人来たらずな状況に置かれて悪いとは思ってるよ。
 
2005年08月09日(火)  プラズマに集中。
 
プロ野球の全日本チームなどを見ると、なんて豪華メンバーなんだ。上原がいて松坂がいる。小笠原がいて松中がいる。赤星がいて高橋がいる。世の中広しといえども、このメンバーに勝てっこないよ。オールスターだよすげぇよすげぇよ。と、つい少年のような瞳になって興奮してしまうが、サッカーの全日本チームを見ても、瞳は輝かない。理由は簡単。個々の選手がどの程度すごいか全然知らないから。
 
野球を見ると、ヒットを打ったりホームランを打つと、こいつぁスゲェや! と、凄さが非常に解り易いのだけど、サッカーなんてのはシュートを入れる以外、何が凄いのかちょっとわかりにくいところがあり、おまけに選手の顔も名前も馴染みがないものばかりだから、こいつの顔がイヤだ。髪型が気に入らない。など、判断の基準が甚だ稚拙で、おまけに全日本という名がついていても、安心感というものが欠如していて、先日の東アジア選手権ではとても残念な思いをした。洗濯物、食事、原稿など、あらゆる作業を中断してブラウン管に集中したというのに。
 
と、ここまで書いて、僕は確かにブラウン管に集中した。ブラウン管に集中したということは、テレビに釘付けになったということで、あと数年後には地上デジタル放送が始まろうとしている時代に、ブラウン管に集中したという表現はいつまで使えるのだろうかと考えた。サッカーの全日本の話がこれ以上書けそうもなかったので。
 
あらゆる作業を中断して液晶に集中したというのに。あらゆる作業を中断してプラズマに集中したというのに。何なんだプラズマに集中するって。でも昔はこう表現していたはずだ。蓄音機に耳を傾けるって。そして時代は流れ、レコードプレイヤーに耳を傾ける。そしてコンポに耳を傾ける。全然おかしくない。だからプラズマに集中するという表現もそのうち自然に使われていくのかもしれない。そういうわけで僕はプラズマに集中したという表現を使用したパイオニア。
 
2005年08月08日(月)  パンがなければ。お米がなければ。
 
彼女に「モウヤメテ!」と、涙ながらに止められているのだが、とうとう筋肉トレーニングが日常生活の一部にまで浸透してしまった僕は、今夜も腕立て数百回、腹筋数百回、あとダンベルとか名前がよくわからないでっかい洗濯バサミみたいなやつを強く握って握力を鍛える道具を使って汗を流し、鏡の前でマッスルポーズ。うーん。まだ腹の肉が軽くヤバイ。と、この心理過程は、拒食症のそれと一緒で、いわゆるボディイメージの障害。
 
拒食症の人は、痩せているのにも関わらず、まだまだ痩せなければいけないと、強迫的な思考回路に陥るのだが、僕もまだまだ腹を引っ込めなくてはならないと、別に腹の肉が出ているわけではなく、むしろ腹筋はうっすらと割れ始めているというのに、腹が、腹が、彼女に、彼女に、嫌われる前に、これを、腹を、あぁ、軽くヤバイ。ふんぬふんぬ。あと100回。なんて具合に病的な思考回路自体を楽しんでいる風があり、別に悪いことをしてるんじゃないからいいじゃないか何回腹筋したって。と、心は意外に晴れ晴れとしている。
 
そしてトレーニング後に欠かせないのがプロテインである。楽天市場で買ったやつ。ばかでかい袋に入っている3キロの重量のプロテイン。この何の思慮分別もないでかさが、世の中に筋肉以外必要ないとでも言っているようで辟易するが、それを毎日付属されている軽量スプーンで2杯、牛乳に混ぜて飲む。これがまたマズイ。こんな飲みやすいプロテインなんて初めて。デザート代わりに飲めます。なんて阿呆みたいなことが書いてあるが、飲みにくいったらありゃしない。だいいち牛乳にあまり溶けない。ミルメークのようにコップの底にいつまでも固まっている。
 
ミルメーク。懐かしいな。うちの小学校では毎週土曜日は給食がなくて牛乳だけが出ていたのだが、牛乳と一緒にミルメークが出ていた。あれはうまかった。なんて画期的な代物なんだろうと感動さえしていた。だが時は経ち、今じゃ雑誌のカヴァーじゃなくて、雑誌の巻末に短編小説を連載するようになったというのに、コップの底に沈殿したプロテインをどうやって飲もうかと四苦八苦している。
 
そこで僕は考えた。牛乳に溶けないのだったら直接この粉末を口の中に入れ、牛乳で流し込もうではないかと。パンがなければケーキを食べればいいじゃないかと。米がなければお餅を食べればいいじゃないかと。
 
こんなもの直接口に入れて大丈夫なものかと、毒々しい色をした粉末のプロテインを眺めしばし葛藤した後、思い切って口の中に入れてゴブホッ。飴食い競争で小麦粉が気管に入ったような咳をして、周囲に粉末をぶちまけた後、一気に牛乳を流し込んでやはり溶けない。口腔内のプロテインは牛乳に反応して急速に膨張を始め気管を圧迫。このままでは死んでしまう。窒息死してしまうと、止めどなく膨張し続けるプロテインは突然、高熱を発して口腔内で大爆発。煙の中から姿を表した僕の体は筋肉隆々になっていたという夢を見た。
 
2005年08月07日(日)  日記が書けない。
 
また「日記が書けないサイクル」が巡ってきている。日記が書けないサイクルというのは、その名の通り、日記を書こうにも言葉が頭に浮かんでこないという状態で、細かく調べたことがないのでよくわからないが、半年に1回くらいの割合で訪れるようである。
 
まあ何年も続けて毎日日記を書いてると、そんな日だってあるさと、それ自体は特に深刻に考えてないのだけど、今みたいに、文章がスラスラ書けないときは、やっぱり何か気持ち悪い。しかし、日記が書けないサイクルというのは、日記に特化したことであって、そういうときは短編の原稿が書けないとか月刊男心が書けないとか、そういうわけではない。ただ日記だけが書けないのだ。
 
毎日何もないわけではない。ネタがないわけでもない。ネタなんて日常にいくらでも転がっている。ただそれを、文章に変換できないだけのことで、ネタ不足に悩むということは、自分の実力不足を吐露をするようなもので実に心細い。でも毎日書き続けるというのはやはり意義のあることで、自分の言葉のコンディションのようなものもわかるし、書きたくないのに書かなければいけないというこの無駄な義務感はいつかどこかで役に立つと信じている。日記書かなくちゃな。日記書かなくちゃな。と、かれこれ5年も思い続けている。そしてこれからも思い続けると思う。いつの間にか僕は僅かながらも文章でお金を貰うようになっている。
 
2005年08月06日(土)  規則正しい生活。
 
このところ、夜勤がないということもあって、朝起きて夕方帰るという規則正しい生活を送っている。午前7時起床。一晩中26℃で起動していたエアコンのせいで体が重い。いつもエアコンは2時間で切れるように就寝前に設定しているのだが、2時間後にきっちり起きて再起動、そのまま朝まで26℃という馬鹿な生活。体がだるくてしょうがない。
 
朝はパンとコーヒーとヨーグルト。たまにはご飯を食べたいと思う。味噌汁だって飲みたいと思う。でもご飯や味噌汁はそれなりの準備が必要だし、何しろそれは食器を使う。食器を使うということは、食器を洗わなければならないということで、食器を洗わなければならないということは、帰宅してからの仕事が一つ増えるということである。億劫。面倒臭い。ただでさえ仕事で体力の大半を酷使しているというのに。できるだけ自宅では何もしないで過ごしたい。
 
でもご飯を食べたいと思う。朝にご飯を食べたらどんなにうまかろうと思う。朝に味噌汁を飲んだらどんなに素晴らしい1日を過ごせるだろうと思う。でも朝は体が動かない。いつも就寝前にしこたま飲んだ酒が残ってるような気がするから。朝の陽光に照らされて絶望に打ちひしがれながら、煙草を吸ってクラクラして、スポーツニュースを見ながらパンをかじり、天気予報を見ながらヨーグルトを流し込み、最後に缶コーヒーを一気に飲み干す頃には、もう1日が終わっていればいいのにと思いながら時計を見て、ヤベ、もうこんな時間だ。と、焦っている時に限って足の爪を切り始めたりする1日の始まり。
 
2005年08月05日(金)  なんて駄目な人。
 
ちょっと所用があって、来週再び鹿児島に帰るのだが、今こうやって来週鹿児島に帰るという日記を書いていても、帰省の準備を始めるのは決まって前日で、下手すれば当日であって、いつもいつもあぁ余裕を持って準備始めとけばよかったと後悔するのは目に見えてるのに、こうやってダラダラと日記を書いていて、日記を書き終わったらきっとプレステとか始めるんじゃないかと思う。
 
僕は本当に物事に素早く取り掛かれない人間で、例えば封筒。何かしらの書類が入った封筒が届いても、それをすぐ開封する気になれない。封筒を開けるなんて大した労作でもないだろうに、1週間も1ヶ月もそのままにしていることがある。で、1ヵ月後にその書類を閲覧した時は、もう時すでに遅し。あぁもうちょっと早く開けとけばなぁと残念な気持ちになりながら、やはりプレステで遊んだりしてる。
 
よく職場で僕と結婚したらきっといい家庭ができるなんて看護婦さん達から褒められたりするけど、それは謙遜でも何でもなく、本当にまともな家庭など築けないと思う。私生活の僕の行動を見て、イライラを通り越して殺意を覚えると思う。今の彼女とはもう長いこと付き合っているが、やはり大抵僕の行動を見てイライラしている。
 
「さてと……」と、今の行動が一段落して次の行動へ移る過程に1時間を要したりする。職場ではあんなにきびきびしてるのに。どっちが本当の僕なんだろうかと思う。彼女も職場の僕を見ると、きっと最近言わなくなった「好き」って言葉も言ってくれるだろうと思う。でも職場の僕はいつも崩れた泣き笑いのような笑顔を浮かべていて、あの顔はあんまり見せたくないなぁと思ったりもする。
 
2005年08月04日(木)  ありがとうございました〜。
 
こんなこと言っても誰もわからないかもしれないが、僕は「でこぼこフレンズ」のサボサボが大好きで、一人になるといつも「……サボサボです」とモノマネをしている。時々彼女の前でも「……サボサボです」って小声で真似をして、彼女が「は?」と答えると、「でさ、この前さ」と、何事もなかったように会話を進める。
 
で、サボサボって最近まで何をモチーフにしたものなのかわからなくて、周囲に「でこぼこフレンズ」を見ている成人などいるわけがなく、ただ漠然的に「……サボサボです」「ありがとうございました〜(泣き声)」などとモノマネをして自己満足を得るに至っていたが、妹は1歳の子供がいる関係上、「でこぼこフレンズ」をよく見ているらしく、あなぐまやケンバーンのモノマネをしては我が子を喜ばせている。よって妹ならわかると思い、僕がサボサボのファンだということを告白。そしてファンだけれどもこの物体の意味がわからないことも随して報告。
 
「お兄ちゃんバカね。サボサボってサボテンじゃない」
 
あー。そういえばそうだ。っていうかそうとしか見えない。どうして今まで気付かなかったんだろう。サボサボはとにかく小心者でビックリすると体中のトゲが落ちて「ありがとうございました〜」なんて誰に感謝してるのかわからないが、すぐに退場する奴で、どうしてこいつはトゲが生えているんだろうと、常日頃から懊悩していたのだ。そして僕は彼女からいつも無駄遣いをするなと釘を刺されているのにも関わらず、サボサボ見たさにDVDを購入したりする。
 
2005年08月03日(水)  いつも10ポイント足りない。
 
最近ようやくわかったんだけどね。僕がどうしてこんなに忙しいのかって考えたんだよ。寝る前に赤い枕を抱きながら。実に簡単なことだった。
 
「主任さん、これお願いね」なんて言われて大して考えもせずにとりあえず「はいわかりました」という昔からの癖。これがいけないと思う。仕事に与えられたポイントが100あるとして、「はいわかりました」って返事するのは1ポイントしか消費しない。だって返事だけだからね。でもその仕事をこなすのに10ポイント費やしてしまう。
 
ということは、1日10回なにごとか仕事を頼まれてしまったら、返事だけに10ポイント費やして、残り90ポイント。仕事内容にもよると思うけど単純計算で100ポイント必要。でも残りは90ポイントしかないから、10ポイント足りなくなる。その10ポイント分はどう処理するかというと、ひとり残業して泣く泣く処理するのである。
 
はぁー。こういうことだったのかー。どうして今頃気付いたんだろ僕ってば。もう何年社会で働いてるというのだろう。安請け合いなんてするからいつもこうなるんだよなー。たまには断ってみようかしら。「主任さんこれお願いねー」「できない!」って。できない! って。言ってみたいなぁ。できない! ねぇ、明日の休み変わってくれる? できない! ねぇ、この点滴うってきてくれる? できない! 主任さんできる? できない! できる? できない! できない! できない!
 
2005年08月02日(火)  決意表明。
 
のどが渇いた午前1時。マンション下の自動販売機でペプシコーラを買ったその時、背後からこちらに向かって駆けてくる足音。
 
ヤバイ。刺されるか何かされる。と、頭の中ではそう思ってるが、体はまだ取り出し口からペプシコーラを手に取ろうとしている時で、背後から近付いてくる人間に尻を向けている恰好。こりゃ無防備だ。防ぎようがないな。怖いな。ちょー怖いな。なんて考えている暇があればすぐに体勢を整えればいいものの、いつまでもダラダラと動いているものだから、「すいません」と声を掛けられた時に必要以上にビクッと体が反応してしまい、恥ずかしくて、夜中にペプシを買いにきているということも加えて恥ずかしくて。
 
振り向くと、どこにでもいそうなどこにでもいる程度のキレイなお姉さん。「イ、イタバシ区役所はどこですか?」と息を切らしながら訊ねている。板橋区役所なんて引越しの手続きの時に一度行ったきりで、正確な位置なんて覚えているわけがなく、だいいち板橋区役所なんてここからものすごい遠いとこにあったような気がする。
 
「多分あっちの方だと思うけど、遠いですよ」
「どのくらいですか」
「いやよくわからないですけど」
「走っていきます」
「え?」
「走っていきます」
 
そう言って彼女は一目散に駆け出していった。午前1時なのに。ジョギングウェアじゃなくてデートの帰りみたいな恰好なのに。しかも僕に対して意味不明の決意表明。彼女は無事に板橋区役所に辿り着いたのだろうか。どこかで挫折して環状7号線でタクシーでも拾ったのだろうか。そしてこんな夜中に区役所に何の用があるのだろうか。
 
2005年08月01日(月)  震源ペリドット。
 
というわけで香川でのあっという間の3日間が終わってしまい、書きたいことが多ければ多いほど、無意味な文章に行を費やしてしまうという悪癖を脱することができず、何か香川らしいことを書かかないとね、ってまた地震。わー。揺れてる揺れてる。今揺れてますよ。最近多いよね地震。あーまだ揺れてる……ような気がする。この「揺れてる……ような気がする」という時間、実に勿体無いよね。揺れてるか揺れてないか意識を集中させて何になるってんだ。
 
さて、地震も止んだようだし、今回の香川の旅について書こうと思うけど、うどん食ってるか彼女が運転する車の助手席に乗ってピチカートファイブ歌ってるかのどっちかで、別に観光名所を巡ったわけじゃないし、そんな予定も立てなかった。でも瀬戸大橋には行った。大きかったな。まあ橋を見た感想なんてそれぐらいしか抱けないのだけど。
 
あと誕生日プレゼント貰った。彼女にもあげた。お互い誕生日が近いからね。四葉のクローバー好きな彼女にはペリドット石でできた四葉のクローバーのネックレスをプレゼントした。高かったのに。「ペリドット」という言葉を調べるために今、購入した宝石店のホームページを開いて調べてみたら、このネックレス、購入した時の半額以下の値段で販売されていてとても嫌な気分。
 
彼女からは浴衣を貰った。浴衣なんて着たことないし、着たくても買ってまでして着ようとは思わなかったので、このプレゼント、とても嬉しかった。嬉しかったので東京に帰って早速試着してみてあまりにもピッタリなので外に散歩でもしてみようかしらと思い、浴衣姿にスニーカーで外に出て三歩歩いて引き返す。
 

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