2005年07月31日(日)  僕は香川で3度死ぬ。
 
彼女は今年の春に運転免許を所得したばかりで、若葉マーク輝く愛車に乗って私が香川を案内してあげるなんて張り切ってるけど、「赤だよ……。赤。……赤赤赤赤だって!」と、3度ばかり信号無視しようとする彼女に声を張り上げており全く生きた心地がしない。
 
いくら初心者だからと言ったってこんなに信号無視をしようとするかというと、彼女は私が案内すると言ったにも関わらず、香川の道に不案内で、「お前、道あんまりわかってないじゃん」と言われることを未然に防ごうとして顔は平然を装い、頭の中はパニックに襲われ、右に曲がるか左に折れるか真っ直ぐ進むかということばかりに捕われ、信号という存在が視界から消えるというか、信号の色の認識が脳内で処理できないという状況に陥るという、自分のプライドを守ろうとするがために二つの命を同時に落とそうとするこの矛盾した行為。僕は香川で3度死にました。
 
しかし彼女の信号無視を忠告することはなかなか困難を要し、最初の信号無視はエヘッゴメンネなんつって素直に謝ったけど、信号無視に対して多大なる危機感を覚えた僕は、信号が赤になるたびに「赤だよ。赤だよ。ちゃんと止まってよ」と言わなければならず、彼女はそんな忠告に対してもプライドを傷つけられるらしく、「わかってるもん! うるさいわね!」なんて怒っている。わかっているならいいけれど、多分わかってない時もあると思うので、やっぱり僕は信号が赤の度に「赤だよ赤だよ」と、彼女に怒られながらも信号の色を彼女に報告する。そんな努力をしているのに僕は香川で3度死にました。
 
2005年07月30日(土)  うどんの国へ行ったよ。
 
午前9時半に夜勤の勤務が終了して午後2時には四国の地に立っているというのはこれ愛の成せる業であり、彼女への愛が足りなかったら静岡あたりで引き返してるよ全くなんだよこの暑さは久し振り。あ、髪切ったんだ。キレイになったね。すごい似合ってる。灼熱の空の下に咲くヒマワリのようだ。やっぱり髪型はまず空との調和を考えなければいけない。うん似合ってる。さあ行こうか。
 
と、散々彼女を褒め称えたのは理由があるからで、彼女の変化を適当にあしらうと、チェーン店などの適当なうどん屋にしか連れて行かれない恐れがあり、せっかく香川に来たのだから、極上のうどんを食いたい。でも彼女もとい讃岐の人は三食うどん。おやつもうどん。冠婚葬祭まずうどん。受験生の夜食もうどんを食うという話を聞いているというか自分自身ででっち上げているので、彼女にとってうどんはもはや空気のような存在。空気がおいしい所に住んでいる人間に、おいしい空気が吸える所に連れていけと言っても、それは無理な話であるので僕はこうやって彼女を褒めておだてて頬が赤らんできた頃を見計らって、さあうどん食いに行こうか。極上のやつ。と、彼女が運転する車に乗って、助手席に乗っている間も彼女の横顔を見つめながらキレイだね。またキレイになったね。と、口ではそう言っているが、頭の中ではうどんのことしか頭になく、もう愛の言葉でメロメロになった彼女は、とっておきのうどん屋に連れてってくれて、それはもう、本当に美味かったよ。
 
2005年07月29日(金)  明日、会いにゆきます。
 
昔の日記を読み返してみると、それなりに人生を考えてる感があるなぁって思うけどなにこれ最近の日記。本当に日記になってるじゃない。ものの3分の出来事を10行も20行もダラダラと書いてるだけじゃない。なにこれ最近の日記。何この人を小馬鹿にしたような文章。何様のつもりあなた。あなたは自分は何様かさえわからないかもしれないけど、私にとってはあなたは王子様よ。と、ニッコリ微笑んでくれる彼女へ、明日、会いにゆきます。
 
数ヶ月振りの四国です。前回行った時は台風の影響で帰りの飛行機が飛ぶかどうか怪しいという出来事があったので、おそらく1年振りになるのだろう。1年振りの四国。何が変わったのだろう。ってきっと何も変わっちゃいない。東京だって1年じゃ何も変わらない。変わったことといえば僕の腹筋が6つに割れたということぐらいである。彼女もダイエットに励んでいると言っているが、もともとスマートなので、劇的な変化など望めない。っていうか1ヶ月前に会ってる。
 
しかしまず今夜の夜勤を何事もなく終わらせなければいけない。だって夜勤明けで空港行って四国に行くから。夜勤が忙しいとそれだけ体がしんどくなるということで、しんどいのは体なんだけど、それに伴って心もしんどくなって、心がしんどくなるということは、愛の気持ちもパワーダウン。高松空港に到着しても彼女より先に讃岐うどんに飛びつくという事態が起こるかもしれず、ここはなんとか今夜の夜勤は何事もなく終わらせなければいけない。
 
現在午前3時。職場のパソコンを拝借してこの日記を書いている。あと6時間。何事もなく。ってもう何事かあったんだけど、体へのダメージは最小限に食い止めることができた。看護婦さんに手伝ってもらったからね。明日四国行くからしんどい仕事は手伝ってくださいってホントのことなんて言うわけがなく、ただ「ちょっと」と呼んで手伝ってもらっただけ。だいたいホントのことなんて、そんなしょっちゅう言うわけがないよ誰だって。
 
2005年07月28日(木)  ナニシテルニダ。

「なにしてんの」
 
というメールほど馬鹿馬鹿しいものはないと思っているが、僕はよくこのたった6文字のメールを彼女に送信する。で、「勉強してる」「ゴハン食べてる」「今からお風呂に入る」等の返信がきて、何してんのかというメールを送ったにも関わらず、実際何をしていようがさほど興味がない僕はそれに対する返信もせずに、ゲーム、読書、腹筋などを随意に行っており、これが彼女に対して無関心な態度の表れかと思うとそうでもなく、僕はちゃんと彼女のことを考えている。ただ遠く離れて住んでるだけで、見えないものはどうあがいても見えない。見えるものは努力して目をこらすという姿勢は持ち続けなければいけないだけのことで。
 
そんな彼女に最近変化が現れた。「なにしてんの」と、いつものメールを送信した後、数分後に「韓国ドラマ見てる」という返信が多くなったのだ。最近彼女はたいてい韓国ドラマを見ている。「ちょっと忙しいから電話切るよ」なんて言われてションボリしながら数分後に「なにしてんの」というメールを送ると「韓国ドラマ見てる」という返信。「もうすぐ資格試験なの」と言われて電話を切って、数分後に「なにしてんの?」そして数分後に「韓国ドラマ見てる」
 
もう毎日韓国ドラマ見てる。例えば僕がハリウッドの映画を見ていて彼女から「なにしてんの」というメールが届いたら「映画見てる」と返信する。「アメリカ映画見てる」とは返信しない。だのに彼女はドラマや映画の前に国名を入れる。きっと作品によっては「ウズベキスタンドラマ見てる」とか言うのであろう。
 
韓国ドラマの何が良いのであろうか。と、見たこともないくせに批判的な態度を取ってはいけない。よって僕は彼女が韓国ドラマに熱中していることを中傷する権利はないのだが、それにしても韓国ドラマを見すぎだと思う。まあ韓国ドラマを見てるとか言って、本当は違うことというか、リアルでドラマを演じている可能性もなきにしもあらずだが、見えないものはどうあがいても見えない。見えるものは努力して目をこらすという姿勢は持ち続けなければいけないだけのことで。
 
2005年07月27日(水)  カマイタチ!
 
いつの間にかソファーの上で眠っていて、ふと目覚めると口から胸の辺りまで血だらけになっていた。なななんぞ。寝てる間に何が起きた誰に襲われたどこを負傷したと、飛び跳ねて鏡を見ると下唇がパックリ切れている。
 
ひゃー下唇切れてるー。寝てる間にー。カマイタチッ! と、なぜか手をクロスにして鏡の前でポーズを取るという奇怪な行動を経て、負傷している事実に対して、真面目に検証にかかる。
 
この部屋には当たり前だけど僕しかいなくて、えっと仕事から帰ってきてさっさと風呂入ろうと思いながらソファーに座って、じゃあこのニュースが終わってから風呂に入ろうと、いつもの僕ルールが始まって、そのニュースが以外に早く終わったので、リモコンを手に取り、チャンネルを切り替えたところがCMだったら風呂に入ろう。もしCMじゃなかったらその番組がCMに入ってから風呂に入ろうと、僕ルールがいつものように利己的かつ複雑になってきて、チャンネルを切り替えた先がCMじゃなかったのでラッキ。CMに入るまでソファーに座っていられるって結局風呂に入るのが面倒臭いがために、自分自身を励まして、騙して、合理化して、わけがわからんようになっているなぁと考えていると、突然睡魔が襲ってきてそのまま就寝。
 
で、それが19時前だったから、かれこれ3時間風呂に入らずにソファーで寝ており鮮血まみれになっていたということになる。この空白の3時間に一体何が起こったんだ。なにがどうしてこんなに血まみれになってるんだってことはホントは最初から知ってる。理由はわかんないけど、眠りながら下唇を強く噛み続けていたのだ。
 
何も出血するほど噛まなくてもいいだろうと、自分自身に冷静にツッコミを入れたくなるが、悪い夢を見たとか、体のどこかの部位の疼痛を耐えていたとかそういうことではなく、これはきっとストレスだ。日々蓄積されているストレスが発散できずに、その発散のベクトルが外面に向かってタバコをポイ捨てする、道端に痰を吐くなどの破壊行動などを起こせばいいのだが、僕の場合、そのベクトルが内面に向かって、上の歯が下唇を破壊するというワケのわからない行動を起こしている。ストレスだ。これはストレスだ。疲れてるんだね。疲れてるんだよね。もうちょっとゆっくりしたいよね。と、風呂に入る時間をあと30分延長することに決めた看護主任の私生活。
 
2005年07月26日(火)  ふーんとしか。
 
先日どっかの警察の巡査部長が飲酒運転で現行犯逮捕されたという、まあよくあるニュースが流れたが、また警察が飲酒運転かよーと思ってゲンナリするのはちょっと間違ってんじゃないかと思いました。
 
というのは、こういうニュースを見て国民は何に対して呆れるもしくは怒るのかというと、「酒を飲んだ人が車を運転した」ということではなく、「警察が飲酒運転した」ということであり、お前そりゃ警察もたまには飲酒運転もするよと思ってしまうのである。
 
要するに、飲酒運転は警察だからしてはいけないということではなく、人間だからしてはいけないのであって、八百屋のおっちゃんが飲酒運転して捕まったこともニュースとして取り上げるべきなのである。
 
なのに八百屋のおっちゃんが飲酒運転で捕まったと聞いたら人はこう思うだろう。「まぁ人間だからね」これではいかんのである。僕だって未成年を酒の席に誘ったことだってあるし、未成年の時に酒を飲んだことだってあるのである。それはただ僕がアナウンサーじゃなかっただけのことだし、顔写真をうちわに印刷されて若い女に振り乱されなかっただけである。
 
スマップが風俗行ったなんてニュースが流れても、じゃあスマップは風俗行ったらいかんのかと疑問を抱かなければならないし、ミッキーがUSJに行ったら、そりゃあネズミだもんなと寛大な心で受け止めなければいけないと思う。

警察だからけしからんじゃなくて、そういう論点じゃなくてって、でもニュースがこういう事件しか取り上げないから僕たちはそういうものでしか情報を収集できないわけだし、アナウンサーだっていかにも警察が酒飲んで車運転してもうグウの音も出ませんみたいな顔してるし、そういうことじゃないんだよなぁ。そういうことじゃないんだよなぁーなんて思ったことを彼女に話しても「ふーん」としか言われなかったりする。
 
2005年07月25日(月)  時間差被害。
 
夜勤で患者さんに夕食配って食事介助して一段落すると、食堂に行って職員が夕食を食べるのだが、今日はいつもより早く終わってしまったので、食堂には僕と別の病棟の看護婦さんしかいない。オツカレサマデスと挨拶を済ませ、離れた席に座りマタサカナカヨーなんて不貞腐れていると、「この前の地震、怖かったですね」と離れた席から看護婦さん。
 
「ええ、怖かったですね」と、オウム返しで答えるのは今日の夕食も魚料理だったということも少し関係しているかもしれない。僕が夜勤の日の夕食は魚料理が多い。ということを栄養士さんに一度言ってみたら「ヨシミさんの夜勤に合わせて夕食を作ってるんじゃないんです」と、恐ろしく当然のことを言われてしまったので、この件以来あの栄養士さんには冗談を言わないようにしている。キレイなのに。
 
で、離れた席の看護婦さん。私の友達なんてエレベーターに閉じ込められた。私なんて帰りの電車が止まってて大変だった等、先日発生した震度4クラスの地震についての被害自慢みたいなことを話し出す。
 
ここで辛いなぁと思うことは、僕はその看護婦さんの顔はなんとなく覚えている程度で、名前や性格などが全くわからず、冗談なども言ってみたいけれどあの栄養士さんみたいに物事を言葉通りに受け止められない人なのかもしれず、ただただ「そうですね。そうですね」と、タモリに従順ないいともの観客みたいな返答ばかりしている。
 
しかも席が離れすぎているので、言葉の断片しか聞き取れず、会話を注意深く聞くために魚を食うということを一時中断しなければならず、夜勤の食事の時間なんてそんな悠長に取れるわけがなく、さささっと済ませて仕事を再開しなければならないのだが、先日の地震のお陰で僕は時間差で被害を受けているのであって、魚料理じゃなければ地震も起きなかったし看護婦さんの名前も知っていたなんて頭がどんどん壊れてきて。
 
2005年07月24日(日)  面識面構え。
 
職場で看護婦さんや患者さんから「今日はちょっと元気ないね」「今日顔色悪くない?」なんてことをよく言われる。
 
僕は気分の変動があまりない人間で、クオリティじゃなくてターゲットじゃなくて何だっけ? コスチュームじゃなくてコンパニオンじゃなくてアレだよアレと、書きながら思い出してってああそうそう。コンディションなんて悪くもなければ良くもない。客観的に見ると、いつも元気かいつも元気ないかのとっちかだと思うのだけど、周囲の人たちはいちいち元気ないだの顔色悪いだの言ってきてちょーウザいと思うことが多々ある。
 
いったいこれはどういうことなのか。元気なのに元気がないなんて言われると悲しくなるのでやめて欲しいし、怒られてションボリしてる時に若い人はいいねーとか言うこともやめて欲しい。要するに僕にあまり構ってくれるなと思うのだけど、職場というか病院というシステム上、男性の絶対数が少なく、どうしても男性職員の行動が浮いてみえてしまうのであろうと僕は考察する。
 
別の病棟の全然面識のない看護婦さんから突然話し掛けられても、突然話し掛けられてビックリしているのは僕ばかりで、看護婦さんにしてみれば、あぁ、あの病棟のヒゲの看護師だ。看護師のくせにアゴヒゲなんて生やして。何様のつもりかしら。と、看護婦さんにしてみれば僕は僅かながらも面識のある人間でこの後のことはまた明日書きます。
 
2005年07月23日(土)  僕も大人になりました。
 
「ヨシミ君、今晩予定ある?」
「はい。帰りに不二家寄るんです」
「どうして?」
「僕の誕生日だから小さなケーキ買おうと思って」
「キャー! 切なーい!」
 
と、本気で考えてた僕は本気で考えてたことをそのまま看護婦さん達に伝えると、どこで知ったのか看護婦さん達は今日僕の誕生日だということを知っており、仕事帰りに誕生日パーティーしましょうよ。ということになったのだけれど、仕事が終わる直前に入院が入って、今日誕生日だということを知らない婦長さんは、「主任、入院のことヨロシクね」と、ウィンクをしてさっさと帰ってしまった。で、看護婦さん達に入院の仕事を手伝ってもらおうと頼んだら、「私、今日ヨシミくんの誕生会に行かなくちゃいけないから」って冗談みたいなことを言って本当にみんな帰ってしまった。
 
通常ならば5時半には終わる仕事が、突然の入院のため、職場を出たのが7時半になってしまった。しかも入院の仕事をしている最中にバカでかい地震があって死ぬかと思った。夜勤の看護婦さん達に手伝ってもらわなければ8時を過ぎていた。誕生日なのに。涙が出てくる。携帯を見ると留守電いっぱい入ってる。「しゅにーん! 早く連絡してー!」「ヨシミくーん! もう始まってるよー!」なんて無責任なことばかり言っている。僕はそんな人たちから誕生日なんて祝ってもらいたくないというわけでもなく、ヤベ、ヤベ、と独り言を呟きながら自転車で全力疾走。
 
お待たせしました。っていうか皆さんが手伝ってくれたらもっと早く帰れたと思います。地震で死ぬかと思ったし。夜勤の人に手伝ってもらったけど、なんで日勤の人帰っちゃったのよって僕が怒られたし。ほんと地震で死ぬかと思ったし。散々な誕生日でした。でもお腹が空いてたまらないので、とりあえずビール……ってナニコレー!!
 
と、看護婦さんたちが座っているテーブルにケーキが乗っていてロウソクが3本立っている。ハッピバースデートゥーユー♪ と、一斉に誕生日の歌が始まって、恥ずかしくて照れ臭くて、頭をかきながらどうしてロウソク3本なんだろ。どうしてロウソク3本なんだろって冷静に考えていて、フーッって吹き消してから、これどうして3本なんですか? って聞いたら、だって30歳の誕生日なんでしょ? なんて尋常な口調で申す看護婦さん達に絶句。ちちちち違いますよー! まだ29歳ですよー! と反論したが、四捨五入したら30歳でしょ。早く食べましょなんて看護婦さん達は一斉に食べ始め、僕はその間に大きな花束を渡されて、その花束をどこに置こうか迷っているうちにケーキはほとんど食べられて。
 
2005年07月22日(金)  彼女が大人になりました。
 
お前は22日を過ぎても私の誕生日のことを日記に書こうとしない。もしやこれは愛がないということか。想いが欠如しているということか。悲しい。非常に残念である。これはもう断腸の思いで別れを考えざるを得ない状況になってしまったって今の嘘。別れるってのは嘘よ。なんて彼女がうじうじと言うので、ようやく今日の日記で彼女が7月19日で21回目の誕生日を迎えたことを書こうかと思う。
 
なんて言ってみたはいいが、彼女と僕は四国と東京との遠距離恋愛で、誕生日に会ったわけでもプレゼントを渡したわけでもない。よって彼女の誕生日だからって特別書くことなんてないって書くとまた彼女に怒られると思うのでまあなんか書くけど、プレゼント。渡してないって言ったけどちゃんと買ってる。来月四国に旅行に行くのでその時に渡そうと思っており、その旨もちゃんと彼女に伝えてある。
 
別に忘れてたわけじゃない。
 
7月19日、午前0時10分。彼女から電話。「どうしてオメデトウって言ってくれないの!」と、彼女は怒っていた。0時ピッタリに恋人に電話するなりメールするなり何かしらの行動こそ、愛が具現化されたものだと信じて疑わない彼女は、0時ピッタリにメールもしくは電話がこなかったことをいぶかしく思いながらも、それから10分待って、というかたったの10分で堪忍袋の尾が切れて僕に怒りの電話をよこしたってわけ。
 
その時僕は何をしていたかというと、なんてことはない。いつもの午前0時10分を送ってたわけで、パソコンの前で鼻をほじりながら原稿を書いていた。彼女は「どうして私から電話しなくちゃならないのよ!」ってプンスカ怒っているが、そもそも午前0時ピッタリにメールや電話をしようとは思っておらず、誕生日プレゼントも買ってることだし、来月旅行に行くし、その時に全身全霊の愛を彼女に注いでやろうと思うと考えてたわけで、別に7月19日の午前0時ピッタリに生まれたわけでもなかろうに、なぜか午前0時ピッタリにこだわる彼女はまだまだ子供だ。
 
「あなたの連絡待ってる間に5件もおめでとうメール届いたってのに!」と、彼女の怒りはなかなか収まらず、そんな誕生日ピッタリに我先にメールしようってのは今日び流行ってないのだよ。それでは何が今流行っているかというと、そんなもの僕は知らん。と、いつものように弁明・弁解するわけでもなく、淡々と会話する僕の姿勢に彼女は本気で怒り出し、こうなったら死ぬまでアナタと一緒にいてやると声を震わせて喚いている。望むところだと思った。
 
2005年07月21日(木)  ご意見番!
 
芸能界のご意見番でもある美川拳一は。NEWSの未成年メンバーAが飲酒・補導された件に触れ、「高校生が親の目を盗んで飲酒するのとは訳が違う。きっと大人の勧めで飲んだんだと思う。周りの大人がダメ。ウーロン茶やジュースを勧めるべきだったわ」と菊間千乃アナら周囲の人間をバッサリ。「私ならそういうことは絶対にさせない」とAに同情を寄せた。(デイリースポーツ)
 
なんでここで美川憲一が出てくるのだろうと思う奴は野暮で無粋な野郎だと思わるので、美川憲一はとにかく「芸能界のご意見番」というただの野次馬魂全開のお節介芸能人ということを踏まえてこのコメントを呼んでみるとなるほど頷けることが多々あるのである。
 
「ウーロン茶やジュースを勧めるべきだったわ」
 
ご意見番はこんな馬鹿みたいな当然のことを言って公共の電波を仕様して我が者顔でいるのである。「私ならそういうことは絶対にさせない」ではなくてアナタだったらそもそもバレー中継に出演できないである。
 
さて、こんなつまんないことを書いている時に部屋のチャイムが鳴り響く。こんな時間になんぞと覗き窓から覗いてみると佐川急便。きっとあれだ。ネットで服を買ったからそれを届けに来たんだ。ありがたいことだ。でも僕は今手持ちの金がないので銀行に行かなくちゃいけない。
 
一度、手持ちの金がないのでマンションの前のコンビニで金おろしてきていいですかと佐川の人に頼んだら、「そんなに待てない」と言われ、なんだよそこのコンビニで金おろすだけじゃねぇか。器の小せぇ野郎だごめんなさい。それでは後日また伺ってください。と、平身低頭。手持ちの金がなかった僕の不甲斐なさに号泣。金おろしに行っている間に佐川の人が退屈しないように何らかの工夫をするべきであった。きっと芸能界のご意見番ならしたり顔でこう述べるだろう。
 
「ウーロン茶やジュースを勧めるべきだったわ」
 
2005年07月20日(水)  だからいわんこっちゃない。
 
だから言わんこっちゃないと思ったのは、あの女子バレーのミーハーな応援っぷりで、俺バレーのことなんて興味ないしルールもよくわかんねぇし。なんか空気がパンパンに入ったビニール製の棒状の奴でパンパン叩いてたら勝手に盛り上がるっしょ。だって俺らNEWSだもん。
 
という姿勢がひしひしと感じられるあのバレー中継。見てるこっちが冷めちゃうよ。NEWSなんてみんな顔が同じに見えるよ。と、この感想は僕の加齢によるものだが、ホストに囲まれて中継そっちのけ。ただひたすらに空気パンパン棒をパンパン打ち鳴らすやかましいアナウンサーがすったもんだで減給処分。はしゃぎすぎだっつーのと思いました。
 
でもよく考えてみると、減給&無期謹慎ってなんだか得なような気がする。まぁ給料が下がっちまうのはしょうがないけれど、逆に考えると、謹慎中でもそれなりの給料がもらえるはずで、よーし僕も一丁、未成年に酒飲ませて働かずして富を蓄える生活を送ろうではないかと一念発起。出会い系サイトで中学生を売春して白木屋で酒飲ませてホテルでエッチして無期懲役。
 
2005年07月19日(火)  30時間の出来事。
 
で、今日東京に帰ってきたわけだけど。って、昨日帰郷したばっかりでしょ? 何で1泊だけなの? と驚くかもしれないが、そんなこと今の僕には知らん。ただチケットを取った段階での僕が、「1泊でいいや」という心境にあったからで、現在の僕は3泊くらいしたかったなって確かに思うけど、過去の僕も現在の僕も僕は僕。言ってることがわからんけど、昔の僕を責めるということは今の僕を責めるということになり、人を愛する前に自分を愛さなければいけないという人類普遍の原則にのっとり、僕は怒らない。そして後悔しない。僕は僕だから。今の僕があるのも刹那の僕の凝集であるのだから。
 
とにかく僕は今日帰ってきた。1泊して帰ってきた。そして、故郷の滞在時間が僅か三十数時間だったが、その三十数時間の半数以上を妹の子供、いわゆる甥と過ごした。
 
1歳半のヨチヨチ歩きの甥を公園に連れてってひたすら走って転んで泣かせて泣かされて。ゲームセンターに連れてって100円で数分動くアンパンマンの形をした奇妙な車に揺られながら一緒にアンパンマンマーチを歌ってというのは僕の錯覚で、甥は1歳半だからアンパンマンマーチなんて歌えるわけがないし、愛と勇気だけが友達なんていう、どこか厭世的な意味を感じさせるフレーズの意味など理解できるはずもなく、車に揺られながら何が君の幸せ? と自問自答しているのはもうすぐ二九歳の誕生日を迎える僕だけであった。
 
肩車をして近所のスーパーに買い物に言った。甥の好物の、って、好物か何かは親が決める主観的なもので本当に好物なのかは知らんが、グリコのリンゴジュースを購入して、このリンゴジュース、4つパックで売っているのであり、近所のスーパーの近所の公園のベンチでそのリンゴジュースを1パック甥に渡し、どれどんな味がするのか、ってリンゴの味がするに決まっているが、ちょっと飲んでみようかしらと、僕も1パック手に取ってストローを刺したら甥が突然大声で泣き出した。
 
なななんぞ!? と、狼狽してすかさずオムツの中身を確認したが失禁はしておらず、なのに何で甥はいきなりこんな壊れたように泣き出すのか。おかしな奴だ。と、予測不可能な動物を見るような目を向けながらリンゴジュースを飲んでいるってそれがいけなかったみたい。
 
家に帰って甥の母である妹に聞いて始めてわかったのだが、甥にとってみれば、リンゴジュース=オレのものという価値観があるらしく、妹夫婦もその原理に従ってリンゴジュースを購入すると4パック全てを我が子に提供していたのであり、そんな確立された価値観があることなぞ知らん僕は、自身の口乾という一時的な生理現象によって、甥の価値観を崩壊させてしまった。
 
すまなかったすまなかった許しておくれ。と、棒読みでとっくに泣き止んで僕の携帯を口に入れて離さない非衛生的な甥の頭を撫でながら謝罪し、お風呂に入れてくれる? と、妹の要望を快く承諾。甥と一緒に風呂に入り、二人で黙って湯船に浸かっていると、急に甥の表情が変わり大人のような口調で「お前、今日のこと絶対許さないからな」なんて言われたらどうしようとビクビクしながら媚びるように頭を撫でて。
 
2005年07月18日(月)  キリギリスのよう。
 
朝4時半に起床。これがデートの日であれば二度寝が許されるのだが、いや、許されないけど、許されない中のどっちかっつうと許せる方寄りの許されないって感じなのだが、今日はそんなややこしいこと考えて理屈をこねて合理化して二度寝しても始発の飛行機が発ってしまう。午前7時30分、羽田空港発、鹿児島行き。
 
そんな馬鹿げた時間に帰郷する羽目になったのは、まぁいつもの僕自身の横着の結果であって、余裕を持って行動するという余裕の意味を取り違っていつまで経ってもダラダラして、あぁもうあと3日後だ。チケット取らんとヤバいかもな。と思った時には本当にヤバい。始発以外の便は全て埋まっており、こういう状況になって誰に怒るかというと、真っ当な意味の余裕のある行動をした人たちに対してであって、早朝の山手線に揺られながら、まるで冬支度を忘れたキリギリスのよう。
 
このように僕がどのくらい好い加減な人間かということを説明するときりがない。この好色一代男という日記を定期的に読んでいる人たちならなんとなくわかると思うが、いつも抽象的なことばかり考えて、現実とのギャップに何の対処も施さない。余裕を持って行動するという意味も効果も理解しているはずなのにそれをしない。その代わりに本を読んだりゲームで遊んでばかりいる。
 
午前9時。鹿児島到着。さぁ家に帰ろう。誰か迎えに来てないかな。と、そこで自分でもわからない「誰か」を探すところがまた他人にしてみれば本気でムカつく所以であって、というのは母、上の妹、下の妹、前の職場の後輩、友人数名に、本日帰郷するということをメールで報告して、メールは必ず返信しなければいけないというルールなんて学校でも社会でも習っていない僕は、「迎えに行こっか?」の返信が返ってきた時点で、「先程はメールを出したい時間だったからメールをしたけど、今はもうメールはしたくない時間」に突入しており、それらのメールをことごとく無視。
 
そして無視のまま現在というか今日、鹿児島空港ロビーでの朝を迎え、誰かが迎えに来てたら感謝を述べ、誰も来てなかったら誰に対しても決して怒らず黙ってバスに乗る。と、行き当たりばったりの人生を送ってたらきっと罰が当たると思うし、周りの人だって忠告するけれど、僕の中に振り分けてある「努力ポイント」みたいなポイントは全て職場で使い果たしているのであって、私生活の努力ポイントは2ポイントくらいしか残っていないと思う。で、「早起き」という項目で2ポイント消費。そして僕は冬支度を忘れたキリギリスになる。
 
2005年07月17日(日)  自省、自傷を繰り返し。
 
近所のコンビニで、カレーパン、ヨーグルト、発泡酒、牛乳、缶コーヒー、そして夕食の弁当をカゴに入れてレジに持っていった仕事帰り。今日は早く風呂入ってビール飲んで寝よう。その前に昨日できなかった分の腹筋しなきゃなんて考えながら。
 
「630円になります」
 
630円になってしまった。こんだけカゴに入っているのに630円になってしまった。は? という表情をレジの若い女性に向けるが、学生とおぼしき手首にちゃらちゃらとアクセサリーをつけたままコンビニの制服を着ている女性は、何見てんのよ。彼氏いるんだから私。こんなとこで出会いなんて求めてないからというような視線を僕に投げ掛け、さっさと去れと言わんばかりに少し乱暴に商品をビニール袋に入れている。
 
630円になってしまった。こんだけ買ったのに。とりあえず会計を済ませ、レジから少し離れて少し考えると別に難しいことではない。あの女性は弁当の値段を精算してないのだ。弁当が490円だから、本来ならば1120円になるはずである。
 
やった儲け。チョーラッキー。明日いいことあるかもね。明日いいことなくても明後日あるかもね。明後日なかったらそういうことを考えること事態がハッピーな日々なのかもね。なんてことは考えない。ただただ腹が立った。これが仕事帰りだったからということもあるのだろうが、あのバイトの女性の労働をナメきった態度に腹が立った。自省することのないその勤務態度に御立腹した。
 
「すいません」
「はい?」
「会計、間違ってますよ」
「は?」
「会計、間違ってますよ」
「は?」
「会計、間違ってますよ」
 
と、文章にしてみれば妙だが、日常会話では本当にこのような馬鹿な会話が起こりうる。僕は会計が間違ってることを伝えるためだけにこの女性に用があるわけで、ということはこの女性には「会計、間違ってますよ」としか会話の選択肢がない。だから「は?」と訊ねられると同じことしか言うことができない。
 
「これ、安すぎますよ」と、ビニール袋を彼女の目の高さまで持ち上げ言ったのだけど、やだな、あと30分でバイト終わるのに。面倒臭いな。家に帰って洗濯もしなくちゃいけないのに。という、いぶかしげな視線を投げ掛ける。
 
「これ、安すぎますよ」また同じことを言って、レジにビニール袋を置く。なぜ安すぎると感じたのかは言わない。頭を使わないでただ目の前の仕事をこなしてるからそんなことになるんだ。なぜ安すぎるのかちょっと考えてみたまえ。君がレジ打ったんだから。と、ちょっと無愛想な応対をしたが、すぐ後ろに客が並んでいて、「あっ、すいません」と一転、気弱な台詞と共に、その客にレジを譲り、会計が済むまでフィギア入りのお菓子などを手にとり、最近のオマケはすげぇななんて感慨に耽りながら満天の星空を思う。
 
2005年07月16日(土)  空気が読めないぷぅ。
  
だいたいね、僕は真面目な人間なんだよ。推察だけど。生真面目な人間なんだよ。こうやってさ、常に斜に構えたような感じで文章書いてるけどさ、真面目なものを真面目と言われたくないから、こうやって真面目を隠す為に、気が小さい人間だからね、グレてんのと一緒だよ。こうやって文章でグレてる。本当はただの頑固で生真面目な男なんだよ。つまんない奴だよ。
 
でね、君が春に言ったことを覚えてる? 「もう少し体鍛えてよ」君はもう忘れてるかも知れないけど、僕はこのことを聞いて、ただ「ああ。体鍛えなければいけないな」と思った。それ以上のことや、難しくてややこしいなんてことは考えない。ただ彼女が僕に体を鍛えてくれと言っている。早速実行しなきゃいけないな。嫌われる前に。
 
で、それが春の話だから3月? とにかくそれから時間さえあれば体を鍛えるようになった。毎日寝る前に腕立てや腹筋を100回も200回もこなして、ドンキホーテでダンベル買って、不味いプロテイン飲んで、ヒィヒィ言いながら街中走って。で、その経緯を誰にも話さなくて、いつの間にか夏が来て、Tシャツなんて着てみると胸が少し厚くなっている。腕もいつの間にか太くなっている。これで君も喜ぶだろう。と、体中に筋肉がつくことに喜びを感じるのではなく、君が喜ぶと思うことに喜びを感じてる辺りが真面目なんだなぁ。生真面目なんだなぁ。自分で言うのもなんだけど純粋なんだなぁと思って君の前で裸になると、君は目を丸くしてこう言ったんだ。
 
「あなたは限度を知らない」
 
限度って何ぞや。今は腹に力を入れると、うっすらと腹筋が6つに割れるようになっている。僕は別にそんなことどうだっていいんだ。ただ君が体を鍛えてって言ったからそうしただけで、君が喜んでくれなければ腹筋が18個に割れたって嬉しくともなんとも思わない。せっかく君の為に毎日血のにじむ思いをして頑張ってきたのに、君は僕を笑いながら指差してレイザーラモン住谷みたいだって言う。涙が出てくる。フォー! って道化を演じている自分に涙が出てくる。こんなことなら体なんて鍛えるんじゃなかった。
 
もうあだ名が「マイケル」と呼ばれるのも時間の問題となっている。君の為にやったのに。君の為に頑張ったのに。君じゃない誰かの為にもやったのに。あーこれは嘘。
 
2005年07月15日(金)  トルネコの大冒険3。
 
「それはね、あなたの顔が怖かったのよ」
 
と、トルネコを買い取ると言った女学生が消えた件について彼女は言った。要するに、勇気を振り絞ってコワモテの兄ちゃんにトルネコを売ってくれと言ってはみたものの、なんだかすごく不吉な感じのするイラストが描いてあるTシャツに腹まで伸びた無精ヒゲ、破けたジーンズからはレッサーパンダが顔を出し、ベースボールキャップから覗く後ろ髪は虹色に染められて、デッカクナッチャッタ! と言ってもないのに既に耳がでかい20代後半の男に、ただであげるなんて言われて、もしかしてトルネコをタダでやった。タダより高いものはねぇんだよと、恩を着せられ脅されて、私たちは異人さんに連れられて行っちゃうかもしれない。やだな。怖いな。この兄ちゃん。初対面の人間にタバコ買ってくれとか言ってるし。逃げよ。ねぇエリ。逃げようよ。えっだってせっか……。来たよ! こっち来るよ! エリ早く! キャア! エリッ! ミカ……私にかまわず逃げて! そんなことできるわけないでしょ! 早く私の背中に! ミカ……。エリ……。明日の4時間目なんだっけ。社会よ。やだなー明日の社会自習にならないかなー。なんて言いながら去っていったに違いないと彼女は言う。そんなことあるかと僕は思った。
 
2005年07月14日(木)  トルネコの大冒険2。
 
「さっき、トルネコの大冒険売ろうとしてましたよね。あれ、私たちに売って欲しいんですけど……」
 
なんじゃいそんなことかい。期待して損した。ってそもそも期待なんかしておらんけどね。負け惜しみじゃないぞ。僕の文章は中学生が読むような文章じゃないんだ。僕の文章の良さが女学生如きにわかってたまるかバカヤローと、涙を浮かべながら微笑み、「いいですよ。でもカウンターに持ってっちゃったし……ちょっと待ってね。今カウンターから持ってくるから」
 
「いえいえいえいえいいんです」と女学生。「買い取り価格よりちょっと高い値段で買いますので、買い取り価格が出るまで待ってもらえますか」と、なんだかすごく面倒臭いことを言うので、そもそも僕は金を儲けるためにブックオフに来たのではなく、本棚がすごく散らかってたからいらない本、CD、ゲームソフトを持ってきたのであって、値段なんて二束三文でも構わない。処分できたらそれでいいと、すごく軽い気持ちで来てるので女学生の金に対する価値観にちょっと心を打たれました。
 
「んー、別にいいよ。じゃああげるよ」と言って、「ホントですか!?」って手放しで喜ばないあたりが都会の女性。そんなうまい話あるかボケって感じでつぶらな瞳に猜疑の光がキラリと光る。「いえいえいえいえそんなあげるだなんて!」なんだよ人があげるって言ってんのにさ。「じゃあ……いくらで買ってくれるの?」と僕。「私たち……あんまりお金持ってないんです……」と女学生。だからあげるって言ってんじゃんかよーと、心の中で叫ぶ僕。
 
「じゃあ、500円で……ってそうだ。表の自動販売機でタバコ2つ買ってよ。それでいいよ」と、女子中学生にタバコを買えと強要する僕はいつの間にかものすごい悪者になっているような気がして、それでも気が弱い女学生たちは「わかりました」と僕に告げ、「ヤッター!」と二人顔を合わせて喜んだ。よかったよかったよかったじゃねぇか。でもあんまりトルネコの大冒険面白くねぇよ。すぐ飽きちゃうよ。
 
と思いながら買い取り査定の時間が終わり、トルネコをのぞいた本、CD、ゲームソフトが合計4000円での売却が成立し、うほ、意外と高く売れた。もうタバコなんていらんかもな。よし、やっぱトルネコくれてやろう。と、店を出て女学生たちが待っているはずの自販機に行くと、いつの間にか女学生が消えていて。待てど暮らせど二度と現れずに。
 
2005年07月13日(水)  トルネコの大冒険1。
 
ゲーム、本、CDなどが本棚から溢れ返っているのでこらいかん。ブックオフ行って売ってこよと午後10時。本日初めての外出。お前貴重な休日に何やってたんだよと訊ねられれば必死こいて原稿書いてたと返す。
 
さて、今日売ろうと思ってたゲームの中にプレステ2の「トルネコの大冒険3」が入っており、買取カウンターでそれらを渡し、10分ほどお待ち下さいと店員が言うので、よし10分ほど待とうではないか。原稿も書いたし。と、当然の寛容な態度を取り、小説などを眺めていたら、隣で中学生らしき女の子2人が僕を見て何やらコソコソ話している。
 
鼻毛なんて出てねーよ今日原稿詰まった時に綺麗に切ったんだよバーカ。と、鼻毛出てるなんて誰も言ってないのに、他のことを考えるのが面倒臭いので、この女学生2人は僕の鼻毛が出てるか否かをコソコソ話し合っている。でも僕は出てない。今日切ったから。と、コソコソ話を一向にやめず徐々に近づいてくる女学生が気持ち悪くなってCDのコーナーに移動したら「す、す、す、すいません」と呼び止められた。
 
にも関わらず、なんと往生際の悪い女たちであろうか。立ち止まって女学生の次の行動を待ってやってるというのに、アンタ言ってよ。イヤよアンタ言ってよ。もー早くアンタ言ってよ。いやよいやよアンタ言ってよと肩やら腰やら尻をクネクネさせながら二人コンニャクみたいになっている。
 
これはもしかして僕の文章のファンなのかもしれない。うほ。サインとかねだられるのかもしれない。ブックオフで。やだなぁ困るなぁ。でも書けって言ったら書くよ。いっぱい書くよ。でもペンないよ。コンビニで買ってこなくちゃ。あ、レジで借りたらいいんだね。オッケーハニーコンバンハ。今日は僕に何の用ですか?
 
「さっき、トルネコの大冒険売ろうとしてましたよね。あれ、私たちに売って欲しいんですけど……」
 
ノマノマイェイ!
 
2005年07月12日(火)  日本が負ける法則。
 
僕がバレー見た日に限って日本は負ける気がする。
 
昔マーフィーの法則に、トイレに行ったときに限ってホームランを打つみたいなやつがあったと思うが、僕の人生常にそんな感じで、サッカーなんて見た日には誰もシュートを決めやしない。なんだよツマンネと思いチャンネル替えると、誰かがホームラン打ってホームベースを踏んだ瞬間だったりして、チキショウと思いチャンネルを替えると、「CMのあとに衝撃の事実が!」のCM中で、なんだCMかと思い、サッカーを見ると誰かがシュートを決めてしこたま喜んでいる。お前バカにしてんのかとブチ切れてチャンネルを替えると2者連続ホームランとかでまた誰かが走ってる。やってらんねーよと思いチャンネルを替えると、もう「衝撃の事実」が終わって次のコーナーに進んでる。阿呆かと思いバレーを見ると日本が負ける。
 
2005年07月11日(月)  敬語難しい。
 
若者ことばの浸透について文化庁が調査結果を公表したが、敬語について、「使い方に間違いが多くなっていると思う」が81・0%に上り、「敬語の使い方に自信がない」も37・1%だった。でも僕はもうどっちかっつうと若者じゃないので、敬語もそれなりに自信がある。仕事上の立場もあるわけだしね。と、本日の総婦長さんとの会話。
 
「ヨシミさん、ボーナスいっぱいもらったでしょ」
「いえいえ、そんなことありません」
 
謙遜の仕方を間違えてしまった。ボーナスとは病院側が善意を込めて支給するわけだから、病院側の人間にそんな言葉を使うものじゃない。でも総婦長さんだってひどいよ。そんな質問しなくていいじゃねぇかと思うけど、まぁいっぱいもらってないことは確かだし、本心から出た本音というか身から出た錆。
 
2005年07月10日(日)  馬鹿思考。
 
渋谷のスペイン坂広場でイエローキャブが新人発掘のイベントをやっていたが、小池栄子曰く、「イエローキャブと言えば巨乳というイメージがありますけど、巨乳にこだわりません」佐藤江梨子曰く「必要なのは胸の中にあるもの。ぜひ応募して」というわけで、なんだ俺でも応募できんじゃんと思いスペイン坂を後にしたが、小池栄子が巨乳にこだわらないのは構わんが、佐藤江梨子が言った「必要なのは胸の中にあるもの」が少し心に引っ掛かった。
 
心に引っ掛かったということは、心がギザギザしていてそれに思考が引っ掛かっているわけで、おそらく僕の心は佐藤江梨子が必要としているものではなく、どっちかっつーと藤井フミヤが必要としているギザギザハートなのかもしれんねと相変わらずの根元はるみ並みの馬鹿思考。
 
2005年07月09日(土)  そんな人生。
 
やるときゃやるってのはこのことで、朝9時に起床。30分で支度して近所の図書館。5時間休憩なしで通信大学のレポート48枚作成。この集中力。この切迫感。いいねぇ。やっぱり男は常に断崖絶壁に立つことだね。常に四面楚歌であるべきだね。と、思いながらも東京働女9月号の〆切を思い出してちょっぴり不安。でも作品自体はほぼできあがってたりする。あとは自分の納得がいく仕上げをして送るだけなんだけどね。
 
と、以上のようなことをいつものようにダラダラと書いてウェブ日記としての体裁を保つつもりだったが、眠くてたまらないため6行で書き終わってしまった。牛乳飲んで健康ぶってるけど右手にはタバコを持っている。そしてこれから歯磨きするけどベッドに入ってからビールを飲む。プラスの次にマイナスがきて、再びプラスで補うけれども結局マイナスで終わる。そんな人生。そんな人生。
 
2005年07月08日(金)  ターニングポイント。
 
ボーナス! ボーナス! と浮かれてはみたものの、小説にしか娯楽を見出せない僕は、その大半を郵便貯金。いつからこんな暗い生活を送るようになってしまったのだろうか。なんかこう、パーッと派手に使いたいよね。でもどうしてパーッと使いたい気分になれないのだろうかと考えるまでもなく、今月僕は29歳になります。20代最後の年を迎えます。20代最後の年というのはこれ何かのターニングポイントとなるはずで、何のターニングポイントだかわからないけど、50歳くらいのときに、あぁあの頃はターニングポイントだったなぁってウィスキー片手に言いたいので何とか何かのターニングポイントにしたいと思っているのです。
 
よって今年はターニングポイント探しの年であるのです。代表的なターニングポイントといえば結婚なんだろうけど、まぁそれはそれ。あ、何? 携帯換えたの? と、話題を逸らしたくなるほど、まだまだ先の話であって、じゃあ他にどんなターニングポイントがあるんだと考えた時、ようやくそこで思い出したのだが、僕はまだ大学生でした。通信だけど。3年次に編入試験受けて合格してもう4年くらい経ってるけど。どうにかして今年中に卒業せなあかんなぁ。よしこれターニングポイントにしよ。と、気合を入れてボーナスで単位が買えないものかと真剣に考えるあたり、どうやらどうもダメなターニングポイントになるような気がする。
 
2005年07月07日(木)  最新号出たよ。
 
本日、働く女性のためのフリーマガジン「東京働女100」の最新号が発行され、今まで10部届いていたのが今月号は3冊しか送られてこなかったので、これはもしかしてライターに対する「肩叩き」のようなものかしらとものすごく不安になって夜も眠れないと思いきや、夜だけはちゃんと眠れる。でもさ、暑い日は起きちゃうんだよね。寝る前にエアコンのタイマー1時間に合わせて、1時間経ってエアコンが切れた頃に起きる。あちーよって。で、またタイマー1時間にセットして起きる。で、またタイマー1時間って繰り返してたらエアコンのリモコンいじってるだけで朝を迎えてしまうので最近はタイマーかけずに就寝して翌朝凍える思い。
 
今月号の特集は「おいしい水を選ぼう」田舎に住んでた頃は、水なんて金払って買うことあるか。僕はその神経が信じられない。お洒落なのか。気取ってんのか。なんていつも頭に水に対するクエスチョンマークが存在したのだが、東京に来て納得。水まぢーよ。臭せーよ。こんなん飲めねーよ。病気になっちまうよ。もしかして貯水庫に人一人沈められてんじゃねーのか。それにしてもボルヴィックうまー。と、変に都会に染まってしまい、ほら冷蔵庫開けるとミネラルウォーターとビールしか入っていない。
 
そんな生活をしている働く女性も今月号の特集は役に立ちます。涙が出ます。硬度300ミネラルたっぷりの涙が出ます。
 
そしてあまりの会話の荒れっぷりに違う種類の涙を誘うのは、僕が巻末に連載させてもらってる短編小説でございます。連載1作目は「みんみんぜみ」でシリアスに。2作目は「宣告」でドキリとして、3作目は「ペア割」でクスリと笑う。今回のペア割はだらだらとした会話の中にしっかりとストーリーを散りばめてますので、短編といえども侮るなかれ。きちんと楽しめる内容になってますと自画自賛。
 
2005年07月06日(水)  いつもヘラヘラ。
 
まず笑顔。笑顔はすっごく大切なんですよー。はい笑ってー。と、病棟会議で言ったとしても誰も相手にしてくれないので、僕はいつも一人でヘラヘラしている。
 
笑顔の効能。これは看護の場面においてかなり重要な地位を占めている。例えば患者さんが「大変です! 大変です!」なんつって何かを伝えに来たとき、「どどどどどどどうしたんですか」なんて青ざめた顔して狼狽してるようじゃまだまだ青い。まず笑顔。笑顔はすっごく大切なんですよー。「どうしたんですか?」と落ち着いた態度でうっすらと浮かべる笑顔。大抵のことが起きても動じませんのでどうぞゆっくり話して御覧なさいと、まるで聖母のように。
 
まぁ外科やら内科やらに勤めてると、患者さんが「大変です!」と駆けこんで来た時には本当に大変な事態が起きているのかもしらんが、僕はもう十年来、精神科にしか勤めていないのであって、患者さんが「大変です!」と言ってきても、患者さん同士がとっ組み合いのケンカをしているか、突然喚き始めたとか、別に1秒早く着いたって根本的な原因の解決には至らないものばかりで、それだからこそまず笑顔。
 
まぁそう慌てなさんな。何? ケンカしてんの? あれま。こらこらこらこらやめなさいやめなさい。どっちが悪いの? あそう。そりゃだめだ。どっちも悪いよ。まぁまずあなたからナースステーション来なさい。と、ナースステーションに患者さんを呼んで、別に怒るとか諭すとかそういうことはせずにそこでも笑顔。ヘラヘラ笑いながらいつの間にか世間話して、まぁケンカはどっちも得することないんだからやるもんじゃないよ。と、懐が深いのか、器がでかいのか、そういうのを総称して無責任というのだが、そういう態度で常日頃から接しているわけだから、てめぇ主任、ちゃんと仕事してくれよ。と、看護婦さん達は絶対そう思ってるはずで、でもそう思ってても、僕は大抵のことは笑顔でなんとかなると思っているので、今日も笑顔、明日も笑顔。明日はボーナス。
 
2005年07月05日(火)  内緒の話はあのねのね。
 
僕が常日頃から疑っているのは、内緒話をする人の神経であって、やってる本人にしてはスリルがあって楽しいだろうが、聞いてる方とすれば全然楽しくない。
 
というのは、内緒話というのはある範囲内に3人以上存在する場合に行われるものであり、そこに2人しかいなかったら別にコソコソと話す必要などない。しかし内緒話をする方、される方、そしてその話に無関係なのか関係あるのか定かでない人物が1人がいた場合、内緒話は内緒話として機能し始める。
 
内緒話とは関係ない第三者にとってはこれほど気持ち悪いものはない。自分には全く関係のない話だったとしても、ちょっと気になる。もしかして自分に関係のあることだったらもっと気になる。でもあの二人はコソコソ話しているので何言ってるか全然わからない。まったくムカつく。と、今まで読んでいた小説に目を落とすけど、内緒話が気になるものだから文章が全く頭に入らない。
 
よって内緒話をされた時は、決してアナタの事を言っているのではありません。こいつは馬鹿だから親密性を深める手段として内緒話を用いている不器用な奴です。と、第三者に知らせるために、僕は「へぇ」「そうなんですか」「そりゃ驚いた」と、声のトーンを落とさずに応じるようにしている。内緒話を持ち掛けられて内緒話で返すようじゃ人間甘いと思う。放っといたって人間知らないところで誰かを傷付けて生きてるんだから、何も内緒話というあからさまな手段でむやみに人を傷付けてはいけない。そう思ってるんですよ。僕はそう思ってるんですよと声をひそめながら。
 
2005年07月04日(月)  いつも肯定。
 
数日前の日記にmixiのことを書いたらいろんな人からmixi経由でメッセージをもらった。意外と多くて、ってこの多くてってのはもちろんmixiをやってる人もだけれど、この日記を読んでる人も多くてビックリ。
 
毎日いろんな人からメールをもらって、芸能人ならば返事はできないけど全部欠かさず読んでますって言うのだろうが、僕は芸能人ではなく、しかも全部読まない。しかし僕は黒ヤギさんじゃないので届いたメールは食べずにいつか読む。そんなメールがすごく溜まっている。特にmixiに溜まっている。
 
それはメールを読んだら返信しなきゃならないって思ってしまうからで、読んだメールはちゃんと返信してる。でも読んでないメールは返信しようがない。要するに開いてないメールは返信しない。っていうか返信する時間がないからメールを開かない。どっちにしろ常に逃避の姿勢を貫いている昨今であるが、僕は僕で意外とパソコンの前に座ってる時間は少ない。というのは嘘で、大抵パソコンの前に座ってるんだけど、仕事上の書類を作成したり原稿書いたりネットショッピングしたり。
 
ネットショッピングで思い出したんだけど、あれはいけないね。例えば5千円で時計が売ってたとする。どこでもいいや。例えばドンキホーテで。まぁデザインもなかなかいけてるし安いっつえば安い。でもそこまでして欲しくないと思うがネットでは違う。何かにとりつかれたようにクリックして購入してしまうのはこれ生で現金を操作しないからであって、そういう奴がクレジットカードを持った日にはただ自己破産の道をひたすら進んでいくようなもので、僕にはとてもとてもご利用は計画的にできるような代物ではない。
 
頭が痛い。窓閉めてエアコン入れてタバコばっかり吸ってるからすぐ頭が痛くなる。空気清浄機欲しい。で、ネットで検索してほらもう購入ボタンクリックしてる。ダメじゃん。でも空気が綺麗になって頭痛が軽減されたらいっぱいメールを返信できるかもねと自己肯定。
 
2005年07月03日(日)  まんべんなくなく。
 
旧知の友は皆結婚して、理想の家庭を気付いたり珠のような子を授かったりと、まさしく幸福のるつぼと化している最中、独身で彼女まだ学生で結婚なんて遠い未来の話、もしくはただの夢物語と思っている僕は近所のドラッグストアで購入した毛穴すっきりパックを施して鼻唄歌いながら綿棒で耳掃除してる。それが結婚した友たちと比較して幸福なのか否か。そんなことは知らん。
 
とにかく小鼻の角栓を取ることに幸福を感じている僕は、家庭生活云々の前に明らかに人生の負け組だと思うが、気持ちいいんだからしょうがない。だけど気持ち悪いことだってある。
 
何が気持ち悪いことかというと、この毛穴すっきりパック。使い方の欄に「鼻を水でまんべんなくたっぷりとぬらします」と書いてある。僕はこの「まんべんなく」って表現が気持ち悪い。ムカツク。なんか完全への強制みたいな感じで怖い。
 
まんべんなくってどんなんだよー。と弱音を吐く鏡の前。自分なりにまんべんなく濡らしたつもり。でも僕のまんべんなくの価値観と、商品の販売元である花王のまんべんなくの価値観と、ちょっと違ってるかもしれない。花王のいうまんべんなくはもっともっとまんべんなくなのかもしれない。
 
で、さらに気持ち悪くさせるのが、「週1回がご使用の目安です」という注意書き。まんべんなくなくぬらしたままパックを貼ったらまんべんなくない角栓が取れて、中途半端な小鼻のサッパリ感のまま1週間待たなければいけない。こんな気持ち悪いことってあるか阿呆。ちゃんとまんべんなく指標みたいなのを記せ馬鹿野郎。と、僕は花王に怒ってばかりいる。
 
しかし、カップラーメンを3分待たずに4分待つ。2分温め下さいと書いてる弁当を3分にセットした電子レンジに入れる我慢強いのかセコいのか分からない僕は、使用法に「パックを10〜15分乾かして下さい」と書いてあるのなら、10分で剥ぐなど言語道断。もったいないやんけ。15分? 甘いね。僕は完璧を求める為に20分待つよと20分待って、パリッパリに乾いた毛穴すっきりパックを涙目で剥がしながら鼻がもげる思い。
 
2005年07月02日(土)  詩のココロ。
 
現在「月刊男心」というコンテンツで、詩という新しい表現方法に挑戦しているのだが、ただ無暗にポエムっぽいものを書くのではなく、ここは一丁基本から勉強してやろうと、著名な詩人の作品を読み漁っているのだが妙なことに詩って何を書いてるのか全然わからない。
 
「僕は海 永劫の波の揺れの中に 生まれたばかりのイタチを見た」
 
例えば有名なこの詩。まったくヘンテコである。何言ってんだい早く洗濯物干してきなって怒りたくなるような作品である。こんなん書いて印税貰ってんのである。と、ひがんでばかりおらずにこの作品を吟味してみよう。
 
まず「僕は海」お前海じゃねえよ昨日仕事行ってたじゃねぇか。と、文句しか書けないが、著者は小さな存在である自分を絶対的な大きさの海に置き換え、何かを伝えようとしている。
 
「永劫の波の揺れの中」この「永劫」という言葉に並々ならぬ、到底覆せぬ、決して抗うことのできぬ大きさを感じるではないか! 海は広いな大きいな。小さい僕の中に永劫の波が揺れている! と、そんなわけ絶対ないけど、波の揺れはとにかく永劫。これすげぇことなんだよと著者は伝えてるんだ。
 
で、「生まれたばかりのイタチを見た」なんでまたイタチなんだ。と、そんなことはどうでもよくて、永劫という言葉は普遍という言葉を喚起させるので、なぜ普遍なモノに新しい命が? と、読者の頭にクエスチョンマーク。著者してやったり。永劫の中に命あり。命の中に永劫あり。まぁこんなことを伝えたいわけだね。と、僕なりの解釈をしてみた。
 
でもそんな回りくどいことなんてしなくて、最初っから「永劫の中に命あり。命の中に永劫あり」って書けばいいじゃんと僕は思う。詩集を読んでいると、巻末の解説に「この詩はこういうことを表現してるのですよ」みたいな文が書いてあるが、だったら最初っからそう言えよと、短気な僕は思ってしまう。

でも詩人はわかりにくいようわかりにくいよう伝わらないよう伝わりにくいように作品を書く。わかる奴だけわかりゃいんだの姿勢で。そういう姿勢が芸術的なセンスに基づいてならばいいのだけど、ただわかる奴にはわかればいいと表面的な姿勢で、ブログかなんかに自作の詩を書いたりする。まぁ僕がそれに当たるのだが、そんなものちっとも面白くない。
 
で、冒頭の永劫のイタチの詩。この日記を読んでる人はそれなりの解釈をしたのかもしれない。だって僕が「例えば有名なこの詩」と書いたから。でもこんな詩、有名もへったくれもない、ただ僕が適当に考えて作った即席の詩である。
 
ここに詩のヒントが隠されている。要するに、有名だからみんなこれ読んでるから知ってるから、僕も私も知りたい知っておきたいという排他性を恐れる人間のなせる業で、適当に書いた詩もどうにか解釈して合理化して自分の型に無理矢理はめようとする。そんなものだと思うよ。そんなものだと思いたいよ。だってどんな詩集も読んでてさっぱりわからないんだから。
 
2005年07月01日(金)  僕は大衆。
 
サマーバーゲンだサマーバーゲンだわーい! と、池袋に飛び出してきたはいいが、これといって欲しいものがないことに気付いた僕は、ジュンク堂に行って小説を数冊買って、はぁ暑い。もう帰ろうかな。と、このような思考過程はサマーバーゲンじゃない時と全く同じなのでせっかくサマーバーゲンなんだから大衆と同じ行動を取ってみようじゃないかと、やはり大衆の僕は池袋のビームスに行ってキャップとTシャツとパンツとお気に入りの腕時計の文字盤と同じ色のバングルを購入。そのまま丸の内線に乗って後楽園で降りて、GLOBAL WORKというお気に入りのブランドの店でやはりTシャツとパンツ、あとTOUGHのバッグを購入。はー買った買った。大衆と同じ行為をやり遂げた。早く家帰って小説読もうと、歓楽街から逃げるように我が家へ戻り、エアコン入れて小説読むかと思いきや一人ファッションショーをするあたり僕も立派な大衆。
 

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