2004年09月30日(木)  それ以上開けてみよう。
 
夜勤の日は深夜の2時とか3時に決まって腹が減るので、看護師さん達はみな夜食を食べるのだけど、大抵インスタントラーメンやインスタントうどんなど身体に悪いものばかりで、深夜にズルズルズルーっと麺をすすりながら、「私たち、長生きできないよねぇ」などと語り合ったりするのである。
 
カップラーメンというものは蓋の中ほどに、「ここまで開けましょう」という注意書きがあって、そう書いてるんだからそうしましょうという具合に、ちゃんと「ここまで開けましょう」の線ギリギリまで開けてお湯を入れるのだが、今日の看護婦さん、一気に蓋を開け、端っこギリギリで止める。
 
あぁーっ! なんしてんねーん! と思った。心の中で思った。「ここまで開けましょう」ってちゃんと書いてるやんけー! と叫んだ。心の中で。びっくりした。というのも、インスタントラーメンの「ここまで開けましょう」という記載には、これ以上開けたらお湯入れた後なんかまずいことが起きるよと、暗にメッセージを送っているようなもので、気の小さい僕はドキドキしながら「ここまで開けましょう」の線を越えないように細心の注意をはらって今まで蓋を開けていたのだが、この看護婦さんの傍若無人の振る舞い。まさに傍に人無きが若し振る舞い。しびれました。感動しました。
 
この常識を何の抵抗もなく破る行為。こういうもの、結構大切だと思った。僕たちの日常生活は、いくつもの「ここまで開けましょう」の線で行動を制限されているのではないか。これ以上開けたらどうなるのだろうなんて考えずに、そう書かれているからそうしない。そう思っていることが、案外多いのではないだろうか。常識や規則の向こうに新たな発見があるのだと思うのです。
 
2004年09月29日(水)  メリットゼロ。
 
彼女のことを愛していたら、遠距離恋愛のメリットなんて一つもない。という結論に至った午前0時。
 
特にやることもないのでパソコン開いて彼女にメッセンジャーで話し掛けるけれども、返信が遅い。「何してるの?」と問い掛けて、なんだ返事しないな。と、トイレに行って小便して、はぁスッキリしたと再びパソコンの前に座ったところで漸く、「あ、勉強してた」と返信。別にいいんだけどさー。
 
その後、大した話の盛り上がりもみせず、僕は何となく小説を読み始めて、彼女の方は遠距離だから何をやっているかわからない。何をやっているかわからないから、何をやっているか気になり始める。しばらくして「何やってるの?」と再度話し掛ける。彼女は「今?」と返信する。
 
この「今?」という言葉がイライラさせる。この言葉の裏に隠されている嘘を僕は見抜こうとする。「今?」と言い、次に「テレビ見てた」と答えた場合、「今?」と「テレビ見てた」との間に、小さな嘘が存在する。どんな嘘かわからないけど、メッセンジャーで「今?」と答える必要なんて、あまりない。「今?」と言って、それから何をやっていたって答えようか。と悩んでいる時間がそこに存在する。
 
とまぁなんて被害的な文章なんでしょう! なんなんだこの高校生が抱くような心境は! 文章は! 厭になってきた。全然楽しくない。明日給料日なのに。お金の使い道すらない。寝よう。なんだってんだこの遠距離恋愛というのは。愛すること一つ取っても、どこに力を入れていいのか、どこで力を抜いていいのかちっともわからない。離れているから力を抜いていいのか、離れているからこそ力を入れるべきなのか。わからない。遠くのステーキは美味いのかどうかさえわからなくなってきた。
 
彼女のことを愛していたら、遠距離恋愛のメリットなんて一つもない。という結論に至った午前0時。
 
2004年09月28日(火)  <中山内閣参与>首相が辞任を了解。
 
北朝鮮の拉致被害者支援を担当しつつ、主婦業もこなしている中山恭子内閣官房参与は28日午後、小泉純一郎首相、細田博之官房長官とドトールコーヒーで待ち合わせをして、池袋パルコで秋物の服を選びながら自らの進退問題を協議した。

中山参与は「最近雨ばかりで一向に洗濯物が乾かない。溜まった食器や洗濯物など、政治より前に解決すべき問題が山積みになっている」として辞意を伝え、大筋で了解された。政府と被害者・家族のパイプ役だった中山氏の辞任は今後の気象に影響しそうだ。
 
中山参与は28日、協議に先立ち記者団から「最近、洗濯物どう?」と聞かれ、「まず自分の奥さんに聞いてから質問しろ」と答えた。中山参与の夫、中山成彬文科相は28日、内閣改造で山崎拓自民党前副総裁や川口順子前外相が、永田町1丁目のコインランドリーを首相に無断で使用していたことなどを区切りに、中山参与が辞任する意向を明かしていた。
 
戦後と比較し、現代の洗濯のスタイルが変貌を遂げている。中山参与のように仕事を持つ女性が増え、夜に洗濯をするようになったり、風が強く外に干せない時や、寒冷地に居住する者、花粉や塵、排煙をさけるために、部屋の中で洗濯物を乾燥させる女性が年間を通し増加の一途を辿っている。
 
中山参与は「部屋干しトップでも多少は生乾きのイヤな臭いが残ることをようやく理解した。特にタンパク汚れは、皮脂汚れやドロなどの粒子汚れ、菌などを互いにつなぎ止める役割を果たしており、これを分解・除去することが汚れもニオイも落とすことにつながっていたが、この特徴を利用して持ち運びに便利なワンパックタイプを利用してコインランドリーへ無断で赴いた山崎拓自民党前副総裁や川口順子前外相の行為がどうしても許せなかった」と語った。
 
家族会が「諦めないでください」と訴えると、中山参与は「台風さえ来なければ、台風さえ来なければ私の休日は洗濯しなければいけないという憂慮に一日中支配されることもなかった」とも述べたという。
 
2004年09月27日(月)  9月の窓。
 
もう9月も終わろうとしている。そろそろ秋だなぁ。秋らしくなってきたなぁ。なんて考えていたが実際すでに秋だった。
 
話し合えばきっとわかり合えるなんて、それはきっと嘘で、話し合うからこそ、その溝を深めることもあるわけで、僕とあのコの距離はものすごく近い場所に位置しているけれど、その間には、落ちたら決して這い上がってこれない深い深い溝が存在する。だけど僕はあのコの場所に、ちょっとジャンプしただけで近付くことができる。要は足を踏み外さないように気を付ければいいだけだ。
 
たしかにあの地下室で暮らすようになってから、彼女は滅多に地上に出てこなくなった。「最近よくわかったの。私には太陽は必要ないな、って」彼女が住む最近流行りの地下マンションのロビーには、天井に、天井と行ってもその上は地上なんだけど、大きな空気ダクトが休むことなく小さな音を立てて回っている。
 
彼女の部屋には窓がない。この地下マンションの部屋全てに窓なんてものは存在しない。その代わり彼女はコンクリートの冷たい壁にどこかのリゾート地の空が広がったポスターを貼っている。窓なんて必要ない。ポスターがあるから。地下にこそ住んでいないけれど、僕たちの生活も似たようなものかもしれない。真実なんて必要ない。本があるから。愛なんて必要ない。キミがいるから。本が真実であってキミが愛であってポスターが窓である。そんなものだと思う。
 
もう9月も終わろうとしている。そろそろ秋だなぁ。秋らしくなってきたなぁ。なんて考えていたが実際すでに秋だった。そんなものだと思った。彼女に太陽が必要でないように、よく考えてみたら僕たちの生活に、季節なんて大して必要ではないのかもしれない。
 
2004年09月26日(日)  雨が降るから洗濯できないの。
 
僕は都内の賃貸マンションに住んでいて、結構な額のする家賃の割には洗濯機置き場がなく、ここの住人達は皆洗濯など野暮なことはせずに、Tシャツが汚れる度に新しいシャツを購入したり、それも億劫ならばパンツを裏返しに履いたりして生活しているのだろうかと思ったりするが決してそういうわけではなく、
 
1階に無料のコインランドリー、いや、無料という言葉が付く時点でコインという言葉は不必要になるから、1階に無料のランドリー、いや、ランドリーとはクリーニング屋という意味であるから、1階には決して無料のクリーニング屋があるわけではないので、1階には単に無料で使える洗濯機が置いてあり、洗濯カゴに洗濯物を入れてエレベーターに乗って1階に向かうというその行為が甚だ面倒臭く、
 
僕が住んでいる部屋はどちらかというと高層部に位置するので、なぜこんな高い場所に住んでいるのにわざわざ1階まで降りなくてはならないのだと憤ったりするけれど、エレベーターに乗ったら30階も3階も同じで、大した苦労もなく1階に降りることができるのである。
 
しかしそれでも溜まっていく洗濯物をよそに億劫億劫と呟いて一向に洗濯するという行為を実行しないのは、単に洗濯が面倒くさい。とそれだけなのである。1階に住んでいても、部屋に洗濯機置き場があっても結局一緒のことなんだろうと思う。
 
2004年09月25日(土)  どんぐりまなこ。
 
映画鑑賞しかやることがないのかこの三十路前の男は。と、思われそうだけど、実際たまの休日は映画鑑賞くらいしかやることがない。休日の前日の夜、明日何しようかなぁ。と、溜まっている原稿を書けばいいのに、原稿という文字は頭に浮かばぬ振り。よし映画に行こう。と、短絡的な自宅からの逃避行動。
 
今日は『SURVIVE STYLE 5+』という映画を見に行った。サバイブスタイル5+と読むのだが、僕はずっとサービススタイルだと勘違いしていて、チケットを購入する際も、「サービススタイル大人一枚」なんて言ってしまい、チケット売り場の若い女、「は?」と首を傾げる。
 
「だからサービススタイル大人一枚」と繰り返し言っても、「は?」と、怪訝な表情をするばかり。というかこの時点で若い女は機転を働かし、「この三十路前の男はサバイブスタイルをサービススタイルと勘違いしているのだわ」と思うべきであり、そんな機転なんて大して難しいことではない。普通間違えてるってわかる。
 
しかしこの若い女は機転が悪いというか融通が利かないというか僕を苛めたいだけなのか、「は? は?」なんて間抜け面を繰り返すばかり。痺れを切らした僕は、若い女の後方にある上映される映画の名前が記されている板を指し、「あれ、あれですよ」と少し語気を強めて言ったにもかかわらず、「はい、忍者ハットリくんザ・ムービーですか?」と驚くべきことを言う。阿呆だと思った。彼女にすると正常位ばかり要求して騎乗位を嫌がるタイプだと思った。知らんけど。そんなことないと思うけど。
 
というわけでサバイブスタイル5+は断念。あぁ忍者ハットリくんって読むんだ。サービススタイルって読み間違えちゃった。ゴメンなさいと僕の方が折れて、三十路前だというのに、忍者ハットリくん ザ・ムービーをどんぐりまなこにへの字口になりながら閲覧した。主演の香取慎吾は僕と同じ歳だというのに、本当にどんぐりまなこにへの字口だった。
 
2004年09月24日(金)  デジカメと風景描写。
 
現在、喉から手が出て耳から足が出るくらいデジカメが欲しいのであって、物欲に衝き動かされてビックカメラに赴くと、そこには喉から出した手でデジカメを吟味している大衆でごった返しており、貴殿達は如何なる理由でデジカメを欲しているのだ。写真なんて大して取らないくせに。と、僕は思うのだけど、僕自身もLOMOというなんともクセのあるロシア製のカメラを使っているのであって、デジカメを購入したとしても大して使途がないですよなぁ。と、誰かに話し掛ける口調で独り言を呟いたりするのだが、先日とある雑誌にとある作家が書いている記事を見て、あぁデジカメ万歳。なんと素晴らしい使い方なんだろうと至極感動し、感動と物欲に衝き動かされてビックカメラの店頭で大衆に揉まれ足止めを食らう。
 
僕は趣味で、たまに実益で小説を書いたりするのだけど風景描写。これがすごく苦手であって、大した取材もせずに執筆に取り掛かる僕は好い加減な想像で風景を描写するのであって、読み返す度にその描写に矛盾が発生。彼女や友人や出版社の人にここおかしいと指摘され、その度にじゃあお前が書けよと不機嫌になったりするのだが、もう僕は大丈夫。デジカメあるから。
 
なぜかというとその記事には、「私は風景描写を正確に表現するため、デジカメで何枚も写真を撮ってその写真を見ながら執筆をしている」と書いていたのであって、あ、汚ねぇ。ずりーよ。いんちきだよ。なんて小学生が抱くようなひがみを持ったのであって、プロの作家がそうしているんだからアマがしたっていいじゃないかと思い、店員に「どういうった使途でご使用されますか?」と問われても「な、な、なんだよ。写真見ながら風景描写書いたらいけないのかよ!」と狼狽し逆上する準備も整い、写真を見ながら風景を描写するという、今まで試したことがなかったことをしようとするドキドキ感? ちょっとした背徳感? みたいなものを抱きつつ池袋に赴き、ビックカメラの店頭で大衆に揉まれ足止めを食らう。
 
2004年09月23日(木)  三大義務。
 
もう月末であるというのに、今月僕は朝起きて職場へ行くという労働者として至極当然な行動をまだ2回しか行っていない。今日は9月23日で、そのうちの2日しか朝出勤していないとなれば残りの21日間は何をしていたのか。
 
家に引きこもって人生について考えていました。なんて読む方までイヤな気分になるようなことは一切していない。家にいるときは暗いこと考えないで戦国無双してるか、ちょっと暗い気分になって原稿書いてるかどっちかで、後は働いているのです。夜に働いているのです。
 
よって大抵昼過ぎまで寝ているので、たまに鹿児島の友人から電話が掛かってくると、お前はいつも昼過ぎまで寝て廃人のような生活をしているようだが、納税と教育はどうか知らんけど、労働くらいの日本人の義務を果たしたらどうなんだと、お叱りを受けるのであり、そんなこと言われなくてもちゃんと働いている僕は大きなお世話であり、しっかりと労働に見合った報酬を貰っているのであり、その報酬で映画を見たり飯を食ったり若槻千夏のDVDを購入したりゆうこりんの写真集の購入を彼女に全力で阻止されたりしているのであって、要はちゃんと朝出勤して夕方帰宅するという労働者として真っ当な行為を果たし、その行為を万人に、そして彼女に認められさえすれば、ゆうこりんの写真集を手に入れることができるのではないかと思いつつこの日記も笑っていいとも見ながら書いている。
 
2004年09月22日(水)  退屈な休日と七福神。
 
休みの日はほんと何もやることがなくて、それでも1日家に閉じこもってましたみたいな休日の過ごし方だけはしたくないと思い、取り敢えず歯を磨いて顔を洗って小説持って近所のドトールコーヒーに行ったりするんだけど、コーヒー飲んで小説読んでいるのでは部屋で過ごすことと大して変わらない。でも、今日のように突拍子のない出来事に遭遇したりすると、あぁ、取り敢えず退屈ではない休日だったと思ったりするのです。
 
と、ドトールコーヒー。僕の隣に座っているオバサン。なぜか子供1人入るくらいの大きなリュックを背負っている。お世辞にも綺麗な格好とはいえない。コーヒーの量が少なくなると店員に「水ちょうだい」と言って、その水をコーヒーに注ぎ足している。
 
東京は変わり者に寛容な街で、こんな特異な行動をしている人を見ても誰も驚かない。僕は驚くんだけど周りは驚いていない様子なので僕も驚かない振りをする。平静を装って小説を読む。
 
「ねぇ」
 
平静を装っている。
 
「ねぇ」
 
全然驚いていない。
 
「ねぇ」
「な、なんですか」
「これ、わかる? 全部言える?」
 
隣のオバサンが話し掛けてくる。そんな気がしてたのだ。僕がその席に座った時から、明らかに僕の方を何度もチラチラと見ていた。チラチラではなくあからさまに見ていた。何かが起きることはわかっていた。わかっていたけれども。
 
「これ、言ってみな」
 
オバサンは僕に七福神のイラストが描かれたテレホンカードを差し出した。初対面の相手に七福神の名前を言ってみろと訊ねている。文章にするといまいち理解できないシチュエーションだが、実際そうなのだから仕方ない。
 
「これが大黒天で、これはたぶん恵比寿神、毘沙門天だったかな」
 
よせばいいのに、あまりにも休日が退屈なので突拍子もない質問を真面目に答えようとする僕は馬鹿なのかもしれないが、あとの四人の神様の名前がどうしても思い浮かばず断念。すいませんあと知らないですと謝って小説の続きを読み始めた。
 
「ちょっと、これで電話してくるからこれ見ててね」
 
と、オバサンは七福神のテレホンカードを持って外へ消えた。これ見ててねと言った先には飲みかけのコーヒーと、なぜかタウンページが置いてあった。ほんとに文章にすると意味がわからないが、実際そうなのだから仕方ない。
 
そして僕は待った。そしてオバサンはいつまで経っても帰ってこなかった。僕の休日が一層意味のないものになった。
 
2004年09月21日(火)  2人のお祝い。1人のケーキ。
 
昨日彼女は帰ってしまって、また暫く会えないね。私のこと忘れないでね。当たり前じゃないか。忘れないだよ。と、惜別の悲しみのあまり忘れないだよとヘンな言葉を使ってしまうほど悲嘆に暮れている僕は、彼女を東京駅まで送った後、涙しながらこの日記を書いている。というのは嘘で彼女は実家へ戻ってしまったけれど、冷蔵庫には彼女がプレゼントしてくれたケーキが入っている。
 
吉見マサノヴとしての初の著書「恋愛歪言」この本、現在売れてるのかそうでないのかさっぱりわからないけれど、うちの職場では面白いように売れている。職場ではあまり売れなくてもいいけど、「買いましたー」「面白かったです」なんていうメールが届くと嬉しい。しかし職場の看護婦さん達は「あなた仕事は真面目だけど実は遊び人だったのね」「その顔でよくそんなこと言えるわね」「あ、サイン書いて。あ、やっぱいらない」などと酷評され出版したお陰でなんだか肩身の狭い思いをする羽目に陥っている。
 
そんな僕を慰めてくれるのが彼女であって、「まだ一緒にお祝いしてなかったから」なんて可愛いこと言ってケーキを持ってきてくれて、うちにはケーキを切るナイフなんてものはないから100円ショップで買った穴開き包丁でケーキをカットして、幸福に包まれた出版記念パーティを開催したのであります。
 
そして、その日の夜、彼女は遠いところへ戻ってしまった。冷蔵庫にはその時のケーキがまだ残っている。さっきから食べたくてしょうがないんだけど、もったいないなー。食べ終わっちゃったらパーティ終わっちゃうなー。またお祝いしてもらいたいなー。でも次の出版なんて皆目見当もつかないもんなー。と1人で残りのケーキを前にしていつまでも考えているのであります。
 
2004年09月20日(月)  明日お礼言うからね。
 
電車で数駅も過ぎれば、そこは混沌をきわめた大都会東京の繁華街に着くのだけれど、僕が住んでいる町はとても穏やかな空気が流れていると思うのです。
 
近所に酒屋があって、その酒屋の店前には店主の趣味と思われる数々のガーデニングが広がっていて、草花や盆栽はもちろん、野菜なども作っているらしく、いつも店の前を通る時にその色鮮やかな花や野菜で目を楽しませてくれて、ちょっと帰りにビールでも買って帰ろうかなと、そんな気にさせてくれるのです。
 
酒屋は夜10時に閉店します。僕は彼女を東京駅まで送った後、とぼとぼと家に帰っている時、その酒屋の前に1人のお婆ちゃんが立っていました。
 
「ゴメンなさいね。明日お礼言うからね。明日お礼言うからね」
 
お婆ちゃんは独り言を呟きながらガーデニングの枝豆を摘んでいたのです。この酒屋は老夫婦で営んでいるのですが、おそらくこのお婆ちゃんと老夫婦は古い付き合いなのでしょう。
 
明日お礼言うからね。隣の部屋にどういう人が住んでいるのかすらわからない僕の日常に、この人間味溢れた言葉は、部屋に帰ってからも僕の胸の中で繰り返されるのでした。
 
2004年09月19日(日)  あらかさまに混沌をきわめる。
 
電車で数駅も過ぎれば、そこは混沌をきわめた大都会東京の繁華街に着くのだけれど、と、ここまで書いて、この「混沌をきわめた」という言葉。本当にそんな言葉あるのかしら。と、「混沌をきわめた」で検索してみると1件もヒットしない。あちゃぁ。間違った言葉を使ってしまっていた。確か昨日の日記にも「混沌をきわめた」なんて書いてるはず。
 
僕は25歳くらいまで「あからさま」という言葉を「あらかさま」と使っていたが、これと同等、いや、あらかさまって間違った言葉を使っていたということは友人と話をしている最中に発覚したのだけれど、この文章はワールドワイドウェブの波に乗り、不特定多数の人が閲覧しているのであって、「ハッ。何? 混沌をきわめたって何? どういう意味? 馬鹿だねヨシミは。足短いし冷蔵庫にマヨネーズ入ってないし救いようがないね」と思われてしまう。自意識が人一倍高いのか低いのかわからないけど、とにかく内気な僕にとってそれは耐え難い。
 
というわけで本当の言葉を探すべくグーグルで「混沌をきわめる」で検索する。8件ヒットする。グーグルのトップページには「4,285,199,774ウェブページから検索」と記載しているにも関わらず、たったの8件。甚だ信憑性が薄い。多分間違ってる。試しに「手持ちぶさた」ではなく「手持ちぶたさ」とブタみたいな言葉で検索しても2,020件ヒットする。検索結果8件なんて間違い中の間違いである。
 
でも「混沌をきわめる」は間違っていても「混沌を」までは正解かもしれぬ。と、「混沌を」で検索。9,260件ヒットしていやになる。じゃあ「混沌をき」までは正解かもしれない。もしかして「混沌をきもめる」とかそういう言葉なのかもしれぬ。と、「混沌をき」で検索。1件ヒット。「混沌をきわめる」で8件なのに「混沌をき」じゃなんで1件なんだよー。と憤ってみても、なんかそういう仕組みなんだろうな。とこれまたいつもの調子で適当な結論に持っていって問題は先送りになり更に混沌をきわめる。
 
2004年09月18日(土)  新宿で遠距離。
 
僕の彼女はハタチであって学生であって、この日記に彼女との出来事、出来事というのはムフフなことやウハハな、ちゃんとした言葉でいうと淫猥な、言葉を崩していうとエッチなことを書くと、次の日の朝、学校で「またアンタの彼氏、日記にエッチなこと書いてたよー。ほんとにあんなことしたのー。ムチとかロウソクとか使ってんのー」と、内容は飛躍。あることないこと質問攻めに合い彼女は疲弊。その日の夜に「なんであんなこと書くのよー!」と僕がお叱りを受けるのであんまり書かないようにした。その代わりにビールを飲みながら若槻千夏のDVDを見た。ムハハ。
 
さて、遠距離遠距離と大した悲愴感もなく言っているが、僕たちは本当に遠距離恋愛なんだけど、あまり悲愴感が漂ってないのはこれ結構会っているからであって、今日も従兄弟の結婚式か何だかで彼女が東京に来た。
 
新宿で待ち合わせをしたのがそもそもの間違い。週末の人だらけ糞尿の匂いだらけの新宿駅は混沌をきわめており、それに加えて駅の構内が改修工事を行っており何がなんだかわからない状況になっていた。東口で待っていると彼女に電話すると彼女は「はーいわかったー」と軽く返事をして電話を切り、ややあって「南口の改札出ましたー」と電話が掛かってくる。東口言うたやんかー。と関西弁で怒っても混沌をきわめた新宿駅。東も南もわからなくてもしょうがない。「じゃあ僕はちょっと東口で買い物するからキミは南口でナンパでもされればいいよ」と言うと、彼女は再び軽い口調で「はーいわかったー」と電話を切ってそれっきり。2時間後に「今高田馬場にいます。迎えに来て」とメールが来たので迎えに行った。
 
2004年09月17日(金)  何もない。
 
毎日毎日毎日毎日、どうしてこんなに毎日が過ぎていくんだ。と、何を今更なことをパソコンの前で考えているのはこの日記を書こうと思い立ったからであって、毎日書いてるこの日記は毎日更新しなければなんとなくブルーになるのであって、それでもその日のうちにその日の日記を更新すれば、風呂上りの爽快感に日記を書き終えたという達成感がプラスされるのであって、その後に彼女がベッドに横になっていたら、なんというかフーーーー!! というハッピーな気分になるのだが、既に日記の更新が一日遅れていてなんとなくブルー。
 
日記の更新が遅れているのは戦国無双・猛将伝が発売されたからであって、これちよーおもしろい。もうかんじとかかけなくなるくらいばかになってあそんでしまう。やった人ならわかるがやったことのない人は全くわからないという日記は読んでる人たちにとって何の得にもならない無駄なことであって僕は嫌いなんだけど戦国無双は面白いですよ。最近書くことが何にもないなーんにもない。
 
2004年09月16日(木)  キミの生理が来る前に。
 
昔の日記を読み返していたら、僕は驚くほどに料理をしている。楽しんでいる。趣味として食物を扱っている。なのに今の僕のこの体たらく。毎日コンビニ弁当もしくは近所のラーメン屋。キッチンの電気コンロはお湯しかわかしたことない。食器もヨーグルトを食べるときだけのスプーンしか使ったことない。お箸は洗うのが面倒臭いので割り箸を使っている。
 
あの時の料理に対する情熱はどこにいったんだ。自分で言うのもなんだが驚くほどに美味しかった明太子スパゲティーを作っていたテクニックはどこへ消えたんだ。なぜ料理をしなくなったのだ。なぜ部屋にはこんなに細かい毛が落ちているんだ。
 
同じく僕の昔の日記を読み返していた彼女が、「ふんがー。昔の彼女には料理作ってるじゃなーい。私にも作ってよー何でもゴハンが美味しく感じられる生理前に」というので、今度彼女の生理前にゴハンでも作ろうと思う。
 
2004年09月15日(水)  デート資金規正法違反。
 
「日本歯科医師会」側が2001―2002年、自民党旧橋本派へのヤミ献金1億円以外に、国会議員(元議員含む)25人前後に総額2億数千万円を提供、そして20歳の女性にも2千円の現金(500円玉含む)、3千円の図書券の提供を小遣い帖に記載していなかった疑いの強いことが東京地検特捜部の調べで分かった。
 
特捜部は、同派政治団体「歪み冷奴」の会計責任者・渡辺愛容疑者(20・彼女)を18日の拘置期限までにデート資金規正法違反で起訴する予定だ。
 
一方、橋本元首相については不起訴とし、他の議員側も立件を見送る方針。「なんで私だけ起訴されんのよー!」と渡辺容疑者は怒りを露にしているが、怒りの矛先は起訴ではなく生理だという事実も明るみになった。
 
特捜部の調べなどによると、2004年8月、渡辺愛容疑者は政治恋愛団体「歪み冷奴」管理人吉見マサノヴ(28・禁欲中)と8歳の歳の差がありながらも双方同意の上、数回に渡るわいせつな行為を行い、避妊具として使用していたスーパーミントの香りがするコンドームがヒリヒリするとして逆上、吉見氏を首を絞めて殺害。吉見氏が通院していた歯医者に「吉見はもう虫歯が治ったと言っておりますので通院を拒否しております」と電話。歯医者側も「吉見氏は予約した時間を守ったことがない。虫歯が治らないのはプラークコントロールができない本人の問題」として通院拒否を受諾。渡辺愛容疑者はその謝礼として「日本歯科医師会」から2千円の現金(500円玉含む)、3千円の図書券を受け取っていたこともわかった。
 
渡辺愛容疑者側が、「日本歯科医師会」から提供を受けながら、お小遣い帖に記載していなかった疑いのある献金額は、総額5千円だった。渡辺愛容疑者の貯金通帳からも除外され、完全なヤミ献金となっていたケースもある。
 
しかし、特捜部では、デート資金規正法違反で立件した過去の事件に比べ、金額が少なく、悪質性も低いことなどから、刑事責任の追及は見送る方針だ。
 
2004年09月14日(火)  臨時党大会に行ってきた。
 
昨日都内のホテルで開催された民主党の臨時党大会に行ってきた。臨時の党大会なので前もって予定されていたわけではなく、池袋のABCマートで秋物の靴を選んでいた僕は「今から党大会開くから来て! ケンジとかリエにも連絡したから! ミキはちょっと遅れるかもだって!」と岡田克也代表から電話が来て、もう人が集まってると言うので家に帰ってスーツに着替える時間はなく、しょうがない。臨時だもんね。とジーパンとポロシャツ姿のまま都内のホテルへ向かった。
 
「おっそいよー! もう乾杯しちゃったよー! 生でいい?」
「あ、ついでにウーロンハイたのんでー」
 
と、到着するや否やすでにできあがっている川端達夫幹事長と鳩山由紀夫の間に座って、端の方でオレンジジュースを飲みつつ「これスクリュードライバーだよ!」と言い張る酒の飲めない岡田克也代表を再選させるかどうかの話し合いが始まるかと思っていたら、僕が到着する前にすでに再選が決まっており、「山手線が脱線しちゃって」とバレバレの嘘を言いながら登場した菅直人を完全に無視しつつ、氏曰く「スクリュードライバーでちょっと酔っちゃった」と、オレンジジュース片手に岡田克也代表が就任の挨拶をした。
 
「この2年間で民主党を日本の政治の本流を担う政党に育て上げ、次の総選挙で政権交代を実現することが唯一最大の使命だ。ちょっとそれ俺のカラアゲだよ!」
 
と、政権交代よりも自らのカラアゲへの強い執着を見せ、この宴会ともども民主党も解散した。
 
2004年09月13日(月)  逆メーテル。
 
あごヒゲを生やしているのです。衛生的な環境を求められる看護師のくせにあごヒゲを生やしているのです。しかし僕はしっかりと手入れしているのです。長過ぎず野暮過ぎず。長さを一定に保って自然な無精ヒゲを演出させているのです。
 
そんな僕のオヒゲライフに欠かせないのが「ギャツビー ヒゲデザイニングセット」長さ、形をデザイニングできる簡単ひげトリマー&レザーセットタイプです。安全で切れ味のよい快適なT字カミソリでございます。メーカー希望小売価格1050円でございます。
 
男のヒゲというものは結構面倒臭いことが多く、剃らなきゃ生えてくるし放っとけば伸び放題。一定の長さに保とうとするのは並大抵の努力ではできることではなく、ハサミでちまちま切ったり、シェーバーで目見当で長さを揃えたりと不自由なこと甚だしい。
 
しかしギャツビー ヒゲデザイニングセット1本あれば僕のオヒゲライフは保障されたも同然。彼女のオッパイやオマタをまさぐるとき「ヒゲがチクチクして痛い」って言われてもなんのその。僕はこのヒゲで大人を演出しているのです。
 
というオヒゲライフを送っていたが、最近どこを探してもギャツビー ヒゲデザイニングセットが売っていない。おかしいな。もしかして人気商品で売り切れになってるのかな。と訝り、ギャッツビーのサイトをのぞいてみたが、商品案内にギャツビー ヒゲデザイニングセットの記載がない。もしかして販売元はギャッツビーじゃなくてギャッシビーなんていういかがわしい企業だったのかと思ったが本当はそんなこと思わず、しかも人気商品でも売り切れでもなく、単に不人気商品で製造中止になっただけの話である。
 
よってギャツビー ヒゲデザイニングセットを失ったオヒゲライフを送っている僕のオヒゲは伸び放題。アゴヒゲがお腹の辺りまで伸びて逆メーテル状態になっている。
 
2004年09月12日(日)  スカイプ使う。
 
遠距離の彼女とは電話なんて使わずにイヤホンマイクを使ってヤフーメッセンジャーなどで毎夜お話しているのだけど、このメッセンジャー、ただで話ができるのはいいが、相手に会話が届くまでの時間が長く、まるで衛星中継で話すアナウンサーみたいな会話になってしまう。僕はそれが煩わしくて仕方がなかった。
 
というもやもやした毎日を送っていたある日の朝、新聞に「無料のIP電話スカイプ」という記事が目に入った。なんだ無料のIP電話って。そもそもIP電話って無料なんじゃなのか。へんなのー。ちっぽちっぽたーん。
 
ちっぽちっぽたーん。という擬音は僕も何を意味するのかわからないが、とりあえず記事に目を通してみる。パソコンを起動させてみる。スカイプをダウンロードしてみる。彼女に電話してみる。
 
「む、無料のIP電話!」
「何よいきなり」
「おそらくちょー便利! キミもダウンロードして!」
「はーい」
 
と、彼女のパソコンにもダウンロードを強制させてパソコンでIP電話できるというスカイプを使ってみた。こ、声がキレイ! しかも会話が衛星放送じゃない! ちょースムーズ! しかもエンドツーエンドの暗号を使用した高いセキュリティを兼ね備えている! そして何よりも、ファイアウォールやルータのコンフィギュレーションが一切必要なく、すぐに使うことのできる手軽さ! ちっぽちっぽたーん!
 
スカイプのホームページからコピーしたので僕にはエンドツーエンドもファイアウォールもコンフィギュレーションもコングラッチュレーションも何のことだかさっぱりわからないが、メディアの進歩のお陰で彼女の距離もまた一歩縮まった。
 
2004年09月11日(土)  生きる理。
 
「ねぇ、子供できたらどうする?」
 
なんて質問はいちいち男をヒヤヒヤさせるものであり、も、も、もしかして、やっちゃった? できちゃった? と、多少なりとも心当たりがあればそう思うのは必然の道理であって、口にこそ出さないけれど、「できちゃったかも」という思いは日々大きくなるばかりで、そろそろ僕も身を固めなきゃいけないなとポジティブに考えてみたり、でもできちゃったなんて相手の親にどう説明すればいいんだろうとネガティブに沈んでみたりと、彼女から「できちゃった」可能性を示唆されると生理前の女性より精神が不安定になるものであります。
 
話は変わりますがゆうこりんラブなのです。時代はゆうこりんなのです。大塚愛も若槻千夏もいいけれど小倉優子が一番なのです。というわけで写真集が欲しいという欲求は、マグロが好きだから刺身が食べたいというメカニズムと同じで、当然の道理としてその欲求を満たしたいわけであります。
 
「まるごとゆうこりん」コンビニの書棚に並んでいたまるごとゆうこりん。本の中身を想像しなくてもまるごとゆうこりんなんだと容易に想像できるタイトル。欲しい。心から欲しい。でもものすごく恥ずかしい表紙。ゆうこりんが水着姿で微笑んでいる。しかもレジの女性が若い。バカじゃないのこんなの買って何がまるごとゆうこりんよ私なんてまるごとけいこりんよ。なんて意味のわからない罵倒を受けるかもしれない。泣く泣く今回はまるごとゆうこりんの購入を断念し、部屋に戻り彼女に電話。
 
「僕はまるごとゆうこりんが欲しいんだよ」
「馬鹿じゃないの! 馬鹿! オタク! 死ねよ一回! 地獄に墜ちろ! んで地獄でもう一回死ね!」
 
なんて烈火の如く怒りだし、僕はうろたえて、「うそ、うそです。キミが一番です。まるごとキミです。ゆうこりんてあれだよね。耳たぶの裏側が臭そうだもんね」なんてどうにかして彼女の機嫌を取ろうと思うのだけど、その尋常ではない怒りはなかなか収まらず、彼女が怒り叫んでいる途中で静かに電話を切った。
 
これは一体どうしたことだ。彼女が小倉優子を忌み嫌っているのは知っているけど、どうしてこんなに怒り狂ってるんだ。おっかないなぁ。参ったなぁ。もう小倉優子の話題はタブーにしよう。彼女の中の何かいけないスイッチが入ってしまうようだ。しかし今日の彼女は一段と怖かったなぁ。もう田舎に帰ろうかなぁ。なんて思っていたその日の夜、彼女の生理が始まった。
  
2004年09月10日(金)  出血多量で悲嘆に暮れる。
 
夜勤の日は午後1時頃に起床して午後3時頃にシャワーを浴びる。シャワーの前に髭を剃る。T字カミソリで髭を剃る。鼻唄交じりに髭を剃る。鼻唄なんて交えるものだから上唇をカミソリでザックリと切ってしまった。
 
洗面所でおびただしい出血。しかも唇なので容易に止血しない。婦長さんに、婦長さんに電話しなきゃ。今日夜勤できなくなりました。なぜなら僕はこれから出血多量で死んでしまうから。洗面所で。洗面所で出血多量で死ぬなんてヨシミ君もしかして手首切ったの? ちょっと待ってて今すぐ行くからと婦長さん急いで僕の部屋に来ても時既に遅し。僕は洗面所で血の海に浸かって絶命している。しかも手首ではなく上唇からのおびただしい出血で。
 
あぁ気が遠くなってきた。死んでしまうよ僕は。東京のマンションの一室で孤独死してしまうよ。あぁ夜勤にも行けなかった。婦長さんゴメンなさい。と悲嘆に暮れたが一向に気は遠くならず、気が遠くなりそうな気がしたのはただ単に今から夜勤に赴かなければならないという事実が億劫なだけであって、出校の時間になるとお腹が痛くなる中学生と同じメカニズムであって僕ってまだまだ子供。
 
2004年09月09日(木)  帰るべき場所。
 
前の職場の友人から電話がきて、お前はいったいいつ鹿児島に、鹿児島のこの病院に帰ってくるのだ。みんな待っている。俺も待っている。今日の会議で院長がぼそっと言ったんだ。「あぁ、それはヨシミ君が帰ってきたら任せたらいいよ」って。院長はお前が帰ってくると信じている信じていないの問題ではなくて、確実に帰ってくるものだと思ってるんだ。お陰でお前の仕事はお前が辞めて一年以上経った今でも山積みしてある。そっちに比べて給料は安いが遣り甲斐がある仕事には変わりない。早く帰って来い。こっちで捨てた何人かの昔の彼女以外みんな待っている。
 
ということを言われて心が揺れる。ぐらぐら揺れる。というのもここ数日、なぜか前の職場を思い出す機会が多くて、仕事中も「前の職場だったらこうするようなぁ。こう動くよなぁ。あいつがこれやって僕がここをフォローして……」なんて考えてばかりで、決して今の職場に不満があるわけではないが、それでも前の職場に10年間働いて、そこのクセが知らず知らずのうちに身に沁みていて、どうしても前の職場ベースで物事を考えてしまう。
 
給料は、前の職場の倍くらい貰っていて、今更故郷に帰って半分になった給料で暮らしていくには少し辛いと思うが、そこは僕、ちゃんと考えている。看護師をベースにして給料を増やす資格なんていくらでもある。要は、その資格を頑張って取得すればいいのだ。というわけで僕は休みは映画、その他は原稿の執筆やお酒飲んでばかりいるのではなく、意外と勉強している。皆忘れているかもしれないが、僕はまだ通信大学の学生なのだ。なんの為に勉強しているのかと問われれば、故郷に胸を張って帰れる為にと答えるだろう。
 
僕の帰る場所は、東京に来たときから既に決まっている。皆が待っている場所に戻ること。僕が生まれ育った場所に帰ること。既に決まっている。でも、僕は、もうその場所に絶対に戻れないことも知っている。
 
2004年09月08日(水)  消えそうな。
 
映画を見に行った。と、休日の度に映画を見に行っているのは、休日の度に映画を見るぐらいしかやることがなく、買い物に行っても欲しいものがない。本屋に行っても既に我が部屋の本棚は本で溢れている。美味しいものを食べようと思っても食欲がない。部屋に一日中いると気が滅入る。彼女は遠距離。さぁ何しようと考えたとき映画しか思いつかず、この東京にはもっともっと楽しいことが隠されているんじゃないかと思うけど、結構そうでもなく、田舎にいても東京にいても人間一人の行動範囲というものはそんな劇的には変わらない。
 
「誰も知らない」という作品。いろいろ悲しくて痛い作品。彼女と一緒に行く約束をしていたのだが、彼女は遠距離。次会える頃は上映は終わっている。「待ってー。私と行くのー」と、受話器の向こうで叫ぶ彼女には申し訳ないが、平日の休日、僕は映画を見るくらいしかやることがない。しかも見たい映画がそんなにあるわけではない。駅4つ先の小さな映画館に行ってポップコーンを買って消えそうな休日に消えそうな人間が消えそうな映画鑑賞。
 
2004年09月07日(火)  小説書きに100の質問。
 
1 まえがき(あなたの意欲をどうぞ)。
* 鼻をほじったら鼻血が出てくるというあまり歓迎されない副産物のような!

2 あなたのペンネームを教えてください。
* 歪(わい)/吉見マサノヴ

3 小説の中の人物として○○○○(←あなたのペンネーム)を描写してください(自己紹介)。
* 吉見マサノヴはバナナを買ったはいいが、いつも最後の2本で腐らせてしまう。それは吉見マサノヴにもバナナにも罪はなく、浮世の空気、残りのバナナを腐らせてしまうような酸素や二酸化炭素に問題がある。穴が開いてしまえばいいと思った。オゾンにぽっかり穴が開いてそこに吸い込まれてしまいたいと思った。
 
4 あなたの職業は?
* 看護師/フリーライター

5 あなたのバイト遍歴を教えてください(あれば)。
* ロッテリア・マック・ビアガーデン・ホテルのウェイター・読売新聞。

6 小説書き歴は。
* 3年。

7 小説書き以外の趣味を教えてください。
* さきいか。

8 好きな小説のジャンルは。
* なんかわーってくるやつ。

9 好きな作家は。
* 町田康。

10 尊敬する作家は。
* 松尾スズキ。

11 好きな小説は。
* 夫婦茶碗
 
12 好きな映画は。
* 鮫肌男と桃尻女。
 
13 好きな漫画・アニメは。
* まったく読まない見ない。
 
14 好きなドラマは。
* まったく見ない。
 
15 良く聞く音楽は。
* R&B系
 
16 心に残る名台詞と、その出典は?
* 「口説く時だけ春四月、口説き落としてしまえば日々が真冬の十二月」シェイクスピア「お気に召すまま」

17 月に何冊くらい本を読む?
* 4〜5冊。
 
18 小説以外ではどういう本をよく読みますか。
* 戯曲・シナリオ

19 読書速度は速い方ですか遅いですか。
* 遅い。
 
20 あなたは自分を活字中毒だと思いますか。
* 且つニコチン中毒。
 
21 執筆に使用しているソフトは。
* ワード。紙2001。
 
22 初めて書いた小説のタイトル・内容。
* ラムゼン現象。
 
23 小説のタイトルはどうやってつけていますか。
* ちんちん掻きながら。
 
24 あなたが書く小説のジャンルは。
* 理不尽系。
 
25 一人称と三人称、どちらで書くことが多いですか。
* 一人称。

26 短編と長編、どちらが多いですか。
* 短編。

27 どのくらいのペースで小説を書いていますか。
* 眠れない時。概ね熟睡しているのであまり書かない。
 
28 ストーリーと登場人物、どちらを先に決めるか。
* ストーリー。

29 ストーリーはどういう時に思いつきますか。
* ウンコと一緒に排泄。
 
30 ストーリーはどの程度決めてから書き出しますか。
* 最初の一行。
 
31 人物の名前はどのように決めますか。
* ちょー適当。
 
32 資料をどのくらい集めてから書き出しますか。
* 東京ドームの便器1個分。
 
33 小説を書くときにあなたが気をつけていることは。
* あんまりおちんちんを掻かない。
 
34 小説を書く能力は、どのように磨きますか。
* 主にクリアクリーンで。
 
35 ネタが無いときはどうしますか。
* シャリだけ食べる。
 
36 あなたが小説を書く上で影響を受けたものはありますか。
* エアコンの設定温度。

37 他の人の書いた小説を読むとき、ついつい注目してしまうのはどういうところですか。
* 主にうなじ。
 
38 これから書きたいテーマは。
* 3分間の出来事の長篇。
 
39 感想はどのように得ていますか。
* テレパシー。
 
40 批評されても良いですか。
* いや、お母さんに聞いてみないと。
 
41 あなたの未来予想図、22世紀の世界はどうなっていると思いますか?
* もうちょっと楽に鼻毛を処理できる。

42 ますます発達する科学。人間のクローンについてあなたの考えは。
* 代わりに宿題やってくれるんだったらね。
 
43 超能力やUFOを信じますか?
* それ以前に人間を信じてない。
 
44 世界の終末はどのように訪れると思いますか。
* イモムシとか大発生する。
 
45 世界平和は実現しますか。
* だったら税金ちゃんと納めないと。
 
46 最近の凶悪犯罪についてどう思いますか。
* え、彼女とのケンカのこと?
 
47 政治家に物申す!
* 選挙に一度も行ったことなくてゴメンなさい。
 
48 宗教についてどう思いますか
* 右の頬を打たれたら打ち返しなさい! 倍の力で!
 
49 一日は二十四時間ですが、ほんとは何時間くらい欲しいですか?
* 4時間。
 
50 現代に生まれてきて満足ですか。現代以外ならいつ頃生まれたかった?(過去・未来どちらでも)
* じゃあ未来でいいよ。未来で。あー、明日でいいや。
 
51 「ファンタジー」とは?
* 部屋で一人で没頭するやつ。
 
52 何処かに引越しをするとしたら何処へ引っ越しますか。
* 直腸。
 
53 旅は好きですか。何処へ行きたいですか。
* 膵臓。
 
54 登場人物の死についてあなたの所見を。
* そんなんで気を引いちゃダメ。
 
55 メールや掲示板の書き込みなどで「顔文字」や「(笑)(爆)(死)」の類は使いますか?
* 使わない(偽)
 
56 昨今の日本語の乱れについてどう思いますか。
* 知らんよ。
 
57 社会に不満を感じることはありますか?どういう時ですか?
* 空き缶を捨てようとしたらゴミ箱がいっぱいのとき。
 
58 小さい頃、将来何になろうと思っていましたか。
* 空き缶?
 
59 あなたの人生設計を教えてください。
* 一夫多妻。
 
60 外はどんな天気ですか。風景も含めて少し描写してください。
* じゃあ窓開けてよ。
 
61 読書感想文は得意でしたか。
* パクリが得意だった。
 
62 国語は好きですか?好きだった学科を教えてください。
* 勉強あんまりできなかった。
 
63 学校は好きですか。
* 給食にピーマン出なければね。
 
64 運動は得意ですか。
* 得意というか運動しかできない。
 
65 鉛筆の持ち方、正しく持ってますか?
* 小指に一番力を入れる持ち方。
 
66 実生活で「あぁ自分は小説書きだな……」と実感することはありますか?どういう時ですか。
* 小説書いてるとき。
 
67 新聞はどこまでちゃんと読んでますか。
* 曜日?
 
68 購読している雑誌は。
* ないなァ。
 
69 本は本屋で買いますか?古本屋?図書館派?
* 松屋。
 
70 詩・短歌・絵など、小説以外で創作をしていますか。
* 絵ばっかり描いてる。主に油絵。
 
71 恋人はいますか。
* 若干名。
 
72 何をしているときが一番楽しいですか。
* セックスする前のイチャイチャ。
 
73 あなたの人生の支えはなんですか。
* マイルドセブン。
 
74 懸賞小説に応募したことありますか?その結果は?
* マンション買った。
 
75 日記は書いていますか?
* 毎日。
 
76 今までで一番衝撃的だったことは。
* ウンコからイモムシがいっぱい出てきたこと。
 
77 睡眠時間は何時間くらいですか?
* 4〜12時間。
 
78 夜、眠りにつく前に布団の中で何を考えていますか。
* イモムシのこととか。
 
79 長時間電車に乗る時、車内で何をしていますか。
* ファッションチェック。
 
80 ネタになりそうな実体験を教えてください。
* 6人でセックスしたこと。
 
81 どうして小説を書くのですか。
* そこに山があるから。
  
82 小説を書いていて嬉しい・楽しいときはどんな時ですか。
* そこに山がなかったとき。
 
83 小説を書くうえで苦労することはなんですか。
* 部屋が汚い。
 
84 小説を書く時の状況は?(場所・時間・BGM等)
* 無音・無声・無頓着。
 
85 周りの友人や家族などはあなたが小説書きであることを知っていますか。
* 仮面ライダーってことさえも知らない。
 
86 あなたの周りに小説書きはいますか?何人くらい?
* 知らない。
 
87 スランプに陥ったことはありますか?どう乗り切りましたか?
* 主にセックス。
 
88 長時間パソコンと向き合っていると目が疲れませんか?対策はしていますか?
* 遠くを見る目をしながらパソコンを見る。
 
89 最近難解な漢字を使用する作家が多いようですが、あなたはどうですか?
* 烏龍茶。
 
90 こういう小説は許せない!
* なんかヘンな臭いがする。
 
91 自分の小説に満足していますか。
* してたら直木賞でも取ってるよ。
 
92 他の人のオンライン小説、どれくらい読みますか?
* まったく読まない。
 
93 同人誌に参加したことはありますか。
* Folio
 
94 将来的にプロ作家になりたいですか。
* 乗り気じゃない。

95 それはどうしてですか。
* 謙遜ですよ。

96 あなたの自作小説を一つだけ薦めてください。
* ラムゼン現象。

97 構想中のネタをこっそり披露してください(言える範囲で)。
* なんかどうしようもないことばかりかくの。
 
98 いつまで小説を書き続けますか。
* 明後日くらい。
 
99 読者に一言。
* もう寝る。
 
100 あとがき。
* 普通に日記書いたほうが楽だった。
 
2004年09月06日(月)  リゾートによる自己再生計画。
*【CROWD】7月号特集「鹿児島から一番近いリゾートへ」連載コラム
 
物事の語源を知るということは、非常に意義深いことであります。例えば貴女のソファーの上に置いてある雑誌「JJ」の語源は、なんと「女性自身」の頭文字から命名されたものです。7月号の特集は『夏「あっ!これ欲しい」全リスト』でございます。この夏に絶対外せない流行アイテムやスタイル、ブランドなどを総力取材しています。そして我らのタウン情報誌CROWDの語源はというと、僕はわかりません。しかし7月号の特集は、『リゾート』でございます。この夏に絶対外せないリゾート地を総力取材しています。よってこの夏、リゾートを満喫するあなたも、リゾートするか迷っているあなたも、まずはリゾートの語源を知って、自らの見識を広げ、合コンで自慢するなどから始めてみましょう。この小さな一歩は確実に癒しの楽園へと連れて行ってくれるはずです。
 
というわけでリゾートの語源は、『リーゾ・オッティモ(最高の米料理)』という言葉が短く詰まったものであります。玉ねぎを炒めた後、洗っていない米を加えて炒め、ブイヨンを加えながら煮込み上げる。このブイヨンをいかに米に吸わせるかが重要。ってこれリゾートじゃなーい。失礼しました。これはリゾットの語源でした。僕の彼女はお粥にボイルした野菜を入れてお洒落な皿に盛っただけでリゾットを作ったと言い張ります。お決まりの話題の脱線申し訳ない。
 
リゾートの語源は、平安時代には「白人(しろひと)」と言い、白塗りをしただけで芸のない遊芸人をさす言葉でありました。この「しろひと」という言葉がやがて「素人」になったのです。シロート。って全然リゾートじゃなーい。ラテン語の「バレットレ」で打つという意味。それがフランス語の「ラバットル」を経て、英語になり、現在の「賄賂」という言葉が生まれた。リベート。これもちがーう。1933年頃のロンドンのとある名前のストリートの緩やかなカーブに、このヘアスタイルのラインをたとえてこの名がついた。リーゼント。申し訳ありません。いい加減しつこいです。嫌われる男の上位を占めるものに「しつこい」という条件があります。もうこれで終わりです。ちゃんとリゾートの語源についてお話しします。ちなみに脳をシーンと鎮めてしまうということから頭痛薬「ノーシン」の名が生まれました。もうホントしつこい。
 
リゾートの語源は、フランス語のre(たびたび)sortir(外へ出ていく)を合わせたrestoreという言葉からきており、「再出発」を意味したり、日常生活圏を離れ、「しばしば訪れるところ」であり、「一定期間滞在するところ」という意味もあります。よってリゾートとは非日常的な場所で本来あるべき自分を取り戻すことが目的となるのです。
 
ということは、しばしば訪れ、一定期間滞在し、再出発を計れば、そこはもう立派なリゾート地となるわけで、彼女の部屋に今日で丸3日滞在している僕は、リゾートの定義をしっかりと踏まえ、よし、再生しよう。この部屋で生まれ変わろう。とりあえず明後日までここにいよう。このマンションの方が僕の職場に近いしね。と、彼女の部屋で心身を休め、自己を開放しようとした午後6時。彼女仕事から帰宅。まだいたの? と冷酷なセリフを僕に投げ、都会の荒波によって、一つのものを分かち合うという慈悲の心を失ってしまった彼女は、一人分だけ買ってきたコンビニの弁当を一人で食っている。
 
腹が減った。ここでは再出発などできない。やはりリゾートとはスポットのパワー、ネイチャーのダイナミズム、ピースな愛のバイブスでポジティブな感じが重要なんだ。本物の自然に触れ、生命の真理を感じることで自分自身も再生してやる! と、意味のわからぬ決意を胸に秘め、彼女の部屋を飛び出し、池袋東口「キャバクラ・ワイキキ」に行きました。3時間滞在し3万円取られました。それはハワイへの片道航空券相当の値段でした。
 
2004年09月05日(日)  在庫ゼロの因果。
 
あのAmazonである。極度の出不精である僕の利用頻度ナンバーワンであるあのAmazonでも【恋愛歪言】が買えちゃうのです。Amazonで「恋愛歪言」と検索すると「恋愛歪言」が検索されるのは当たり前だが、注目して頂きたいのは作者の吉見マサノヴの部分もクリックできるのであって、その部分をクリックすると吉見マサノヴが【恋愛歪言】以外に書いた作品まで表示されるという便利な仕組みが施されているのである。
 
というわけで吉見マサノヴは、このエロことわざ集の他にどのような著書があるのだろうと、吉見マサノヴ本人も気になりクリックしたが、吉見マサノヴはもう何年もフリーライターで小銭を稼いでいるというのに著書が【恋愛歪言】しかなく、おかしいぞ。あれだけ血のにじむ思いをして原稿を書いてきた過去があるのではないかと追憶してみたが答えは明白。
 
吉見マサノヴはゴーストライターという名前は格好良いが結構屈辱的なお仕事をいくつか書いていた時期があって、それらの決して光を浴びない仕事が今の吉見マサノヴの偏屈ぶりを形成したのは明らかで、その屈曲した性格から生まれたのが【恋愛歪言】といえるわけで、結局何が言いたいのかというと、鼻をほじるのも因果を感じずにはいられないのである。
 
は? と、みな首を傾げたところで、【恋愛歪言】を書うならAmazonで購入した方が断然いいと思うのです。送料がタダとか思わぬオマケがついてくるとか、そういうことはありませんが、このサイトに貼ってあるAmazonのリンク先から【恋愛歪言】を購入すると、感謝料みたいなやつが僕に振り込まれるのである。
 
この感謝料、1冊売れると幾ら発生するのかわからないが、これはAmazonにとっても僕にとってもいいことばかりで、Amazonも儲かるし、僕も儲かる。しかも感謝料プラス印税でウハウハ。その後CDデビューして、俳優なんてものにも手を出して、何を暴露していいかわからないけどとにかく暴露本を出して、それから徐々に仕事がなくなって「おもいっきりテレビ」とか「ごきげんよう」とか、深夜の通販番組に出るようになって、それにも出れなくなったらヌードになっておしまい。と、妄想は徐々に膨らみ、ハッピーエンドにすればいいものの妄想の中でさえバッドエンドで幕を降ろしてしまうのは、やっぱり鼻をほじるのも因果を感じずにはいられないからである。
 
2004年09月04日(土)  世界が嫉妬。
 
僕は世界が嫉妬する髪が大好きで、世界が嫉妬する髪を持っている女優といえばチャン・ツィイーしかいないわけで、世界が嫉妬する髪を嫉妬する人たちといえば妙なしかめ面でチャン・ツィイーに拍手を送るあの外人たちしかいないわけで、映画見に行きました。「LOVERS」チャン・ツィイー主演であります。
 
チャン・ツィイーとの最初の出会いは「グリーンディスティニー」という作品で、なんだこのめんこい娘は。空とか飛んでるし。湖の上走ってるし。ちょっぴり仲間由紀恵に似てるし。仲間由紀恵は看護学校のクラスメイトに似てるし、そのクラスメイトはもう結婚しちゃって子供が生まれて「アジアンビューティの女の子に似てるよ(^^)」ってメールが届いて因果だなぁと感じているわけであります。
 
で、この「LOVERS」という映画、要約してみればチャン・ツィイーのプロモーション映画といっても過言ではありません。いかにチャン・ツィイーが美しいか、いかに世界から嫉妬されているかをあらゆるカメラアングルからヘンテコなワイヤーアクションからそれを証明しようとしている作品であるのです。
 
僕は映画の途中でチャン・ツィイーお腹いっぱいになって、もういいよ。ストーリーも先が読めるよ。それよりも隣に座ってるコ、えぇ匂いがするなぁ。香水何使ってるんだろう。いやこれは香水の匂いじゃなくて髪の毛の匂いだ。きっとシャンプーはアジエンスに違いない。顔はどんな顔をしているのだろう。きっとチャン・ツィイーに似ているに違いない。
 
と、映画が終わり館内が少し明るくなるのを待ち、ちらとその横顔を見ると、アジアンビューティな香りがする彼女は、同じく主演の金城武に似ておりました。
 
2004年09月03日(金)  お洒落死ぬ。
 
9月5日、さんまのからくりテレビを見ながらチンチンを掻いている最中に地震が起きる。と予言したところで、そしてそれが的中したからといって驚く人など誰一人いないということは明白で、単に9月3日の日記を9月5日に書いているのであり、現に僕はさんまのからくりテレビを見ながらおチンチンをお掻いていました。
 
あ、貧血だ。と思うわけであります。日の本の国で生まれ、過去何度も地震を経験しているはずなのに、地震に遭遇したファーストインプレッションは、あ、貧血だ。と思うわけであります。貧血なんてしたことないのに。
 
あ、ぐらぐらする。眩暈かな眩暈かな。身体も揺れている。これは重症だな。ほうれん草とか摂らんといかんなぁ。いやお前まで揺れなくてもいいよ。蛍光灯の紐。紐が貧血なんて聞いたことないよ。いやいやいやいや揺れなくていい揺れなくていい。ってこれ貧血じゃない。地震じゃないですかー。と驚くのが頗る遅いわけであります。
 
そして地震だと知覚してからの思考も鈍行を極めておりまして、えっと、このまま揺れが大きくなったら避難しないといけないなぁ。でも僕は今パンツ一丁だし、ズボンはそこの衣装ケースの上に乗ってるジーンズを履くとして、要は上着だね。Tシャツに半袖シャツでも羽織ろうかしら。あのストライプの半袖シャツ。でもあれに合うTシャツって今洗濯してんだよなぁ。お、揺れが強くなってきた。んー。じゃああの茶色のポロシャツでいいや。
 
なんて避難時の身だしなみを考える始末で、本当に大地震が起きたらきっと僕は死ぬ。お洒落死んでしまう。私の息子は享年28歳。東京でお洒落死んでしまいました。と、きっと母も悲しむ。何もお洒落死ななくてもよかったのに。と数少ない友人たちも嘆くであろう。
 
お洒落死ぬ前に僕はこのマンションの非常階段の在り処さえしらない始末で。
 
2004年09月02日(木)  プロポーズ。
 
「こっちの独り暮らしには慣れた?」
「どっちもこっちも独り暮らし自体に慣れないよ」
「もう独り暮らし始めて何年になる?」
「9年目かな」
「嘘。あなた誰かと同棲してた時期あったじゃない」
「じゃあ7年」
「嘘。2年も続かなかったでしょ」
「じゃあ7年と半年」
「嘘。1年半も続かなかったでしょ」
「うるさいよ。どうでもいいじゃないか」
 
「自炊してる?」
「してない」
「じゃあ他炊?」
「そんな言葉あるのか」
「毎日何食べてるの?」
「コンビニのご飯」
「セブンイレブンいい身分ね」
「そんな気の効いたこと言わなくていいよ」
 
「ちゃんと自炊しなさい。お金貯まんないわよ」
「余計なお世話だよ。ちゃんと貯金してるよ」
「毎月?」
「毎月」
「いくらくらい?」
「なんでそんな突っ込んだこと聞くんだよ」
「ねぇ知ってる? 『いくらいくらい』って逆から読んでも『いくらくらい』なんだよ」
「へぇ。……いらく……いらくい。なんだよ全然違うじゃん」
「赤パジャマ青パジャマ黄カクチカコ」
「なんで早口言葉なんだよ。しかもカクチカコて」
 
「言ってみて」
「……赤パジャマ青パジャマ黄チカチコ……」
「なにキチカチコって」
「知らないよ。もう電話切るよ」
「あ、ちょっと待って」
 
「んだよ。洗濯そろそろ終わるんだよ」
「あー。私干すの得意」
「ふぅん」
「掃除も得意」
「へぇ」
「独り暮らし5年目だもん」
「そうなんだ」
「料理もできるし、貯金もしてるし」
「ほぉ」
 
「来年26歳になるし」
「……いやだ」
「結婚してくれない?」
「いやだ」
「あなたもう相手選んでる歳じゃないのよ」
「余計なお世話だよ」
「気付けば誰もいなくなるのよ」
「その時は黄色いカクチカコとでも結婚するよ」
「赤パジャマ青パジャマ黄キキキリン」
「キキキリンはいやだなぁ」
 
2004年09月01日(水)  東京2連休。
 
折角東京に住を構えているのだから、公休日は家にばかり閉じ篭っていないで池袋や渋谷、原宿、六本木等、随意に遊びに行けばいいじゃない。と、彼女は受話器の向こうで申すのだけど、僕はちっともそんな気になれない。
 
そんな気になれないというのはどんな気になっているからそんな気になれないのかというと、ひとたび家を出ると人、人、人。丸の内辺りに大きな穴があって、皆そこから湧いてきてるんじゃないかと僕は思っているのだが、とにかく百貨店に行っても商品の数より、食堂に行ってもメニューの数より人が多いのであって気が滅入る。
 
プレステの三国無双や戦国無双で遊んだことがある人ならわかると思うが、無双メーターというものがあって、そのメーターが満たんになると、○ボタン一つ押すだけで必殺技が炸裂し、周囲の敵を斬った棄てたの一網打尽にできるのだけど、僕の無双メーターは常に満たんなのにも関らず、僕の身体には○ボタンがついていないので、一向に必殺技を出すことができず、往来や駅の構内で臭い男や若い女の肩にぶつかり足を引っ掛けられる度に、うぐぐ、と奥歯を噛み締めるのである。
 
よって休日、明日から2連休なんだけど、予定という予定はまったくなく、家に閉じこもりムフフ、ワハハと、「笑っていいとも」→「ごきげんよう」という具合に低次元の笑いのコンボを炸裂させ、下半身の無双メーターが溜まってきたらレンタルビデオ屋で、僕と同世代、若しくはもう少し若い女性が裸になって、僕より若くない男性と抱き合って繋ぎ合うようなビデオでも見たい。
 
しかしわざわざレンタルビデオ屋まで足を運んだにも関らず、射精後というのは全ての自らの行為を責めたくなるという自己嫌悪の極地に陥るため、馬鹿じゃないか、僕は阿呆じゃないのか、いい年にもなって彼女でもない女の性交を見て興奮しておまけに射精にまで至ってしまった。死のうかしら。と考えたりする。
 
東京2連休。僕は明日も明後日も予定がない。
 

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