2003年10月31日(金)  実のなる木。
 
「実のなる木を書いて下さい」
 
心理検査室。テーブルをはさんで引きこもりの少女。少女の目の前に数本のペンとクレヨン。バウムテスト。僕はネクタイを締め直して白衣の襟を整える。緊張しないように。この緊張感をクライアントに伝えないように。
 
「あの子に使えそうな心理バッテリーはないかな?」
 
数日前、院長に話し掛けられた。病棟回診の後ぼんやりと立ちながら今夜の飲み会のことを考えていた僕は一瞬不意を付かれた顔をして、すぐに普段の顔に戻した。あの子に使えそうな心理バッテリー。引きこもりで相手に心を開かない少女。いつも氷のような表情をしている。
 
「キミは何ができますか?」
「いや、まだ勉強中ですので。長谷川式とY−G検査ならなんとかできますが……」
「長谷川式はあの子には意味がないなぁ」
「田中ビネー検査もできます」
「IQ検査はあまり意味がないなぁ」
「そうですよね……」
「投影法は?」
「あ、バウムテストなら大学で少し……」
「それじゃあ、それよろしく」
「僕がですか?」
「どうにかしてあの子に光を見出してやりたいんだ。キミ実習生だろ。頼むよ」
「いや、僕は福祉の実習で、心理の実習はまだ……」
「医療も福祉も心理も看護も、人を助けることには間違いない。よろしく頼むよ」
「はぁ」
 
院長に変に言いくるめられてしまって、福祉の実習中の僕はこうして心理検査室に座っている。目の前には自閉症の少女。僕と目を合わそうとしない。下を向いたまま何かを考えているようで、何も考えていないようでもある。
 
「実のなる木を書いて下さい」
 
少女は熱い物でも触るように慎重にクレヨンを手に取った。
 
2003年10月30日(木)  真の沈黙。
 
職業柄、死人に触れることも多く、時には死人と話をすることだってある。
 
死後の処置を終えた患者は腹の上に手を組んで静かにベッドに横たわっている。そこには真の沈黙がある。心拍数も呼吸も思考も停止している。真の沈黙。もうこの世の物ではない、何も意味をなさない冷たい肌に触れ、目を閉じる。
 
話し掛けると返事が返ってきそうで、返ってこないこと自体がおかしいようで、「○○さん」と話し掛けることがある。つい3日前、つい1時間前にだって会話をしていた人が、もう口を開かない。何も語らない。
 
死んだ人に触れたことがありますか? 真の沈黙に身を沈めたことがありますか?
 
何も語らず、何も聞こえず、何も動かない。
真の沈黙に触れたとき、耳の奥で、その人の囁きが聞こえて
 
2003年10月29日(水)  停止。抑制。
 
幸福か不幸かといえば、昔の僕は後者だった。死にたいと思うおとだってあった。それくらい不幸だった。人は不幸のどん底に落とされた時、思考回路はどのように働くか。僕はそのメカニズムを知っている。
 
不幸になった時、人の思考は停止する。
 
表面上は、表面上は何の変化も見せず、笑い、笑い、笑い、主に笑う。馬鹿と言われて喜ぶ。悩みなさそうでいいねと言われて悩みがないのが悩みだよとおどけてみせて、その裏側を誰にも見せず、自分でも見ない振りをする。感じない振りをする。僕を取り巻くあらゆる不幸を抑制する。
 
あの頃はよく考えていた。この抑制された気持ちはどこに行くんだろう。海を見た時や山に登った時、トイレで排泄する時、カラオケでマイクを握っている時、彼女といる時、酒を飲んでいる時に解消されてるのだろうか。そしていつも結論は決まっている。
 
「これは絶対僕の深いところに根付くだろう」
 
あの頃のこの考えは決して間違ってはいないと思う。今は少なくともあの頃よりは不幸じゃないけど、僕の深いところには今もしっかりとあの頃の根が迷路のように複雑に根付いている。僕は知っている。僕だから知っている。
 
2003年10月28日(火)  具体的なあれ抽象的なあれ。
 
最近めっきり酔わなくなったなぁ。いや酔うんだけど、酔うと眠くなっちゃう。もともと酔って騒ぐってタイプじゃないんだけど、いや、どうだろ。酔って騒ぐタイプだったのかも。
 
19歳の頃、酔って喧嘩して前歯が折れた。僕の前歯は差し歯なのです。あの時は確かに酔っ払ってたけど、僕は喧嘩を売ってないし買ってもない。喧嘩っ早い友人がいつの間にか喧嘩大セールやってて、相手10人こっち5人の50%OFFな喧嘩をして前歯折られて負けた。すごい筋肉男に負けた。
 
忘れもしない22の夜。僕はショットガンを5杯くらい飲んでつぶれて店を飛び出してでっかい4WDの車の下に寝てて轢かれそうになった。看護学校の女友達数人に車の下から引きずり出されて事なきを得た。得なかった。ジャケットが破けて顔が真っ黒になった。僕を車の下から引きずり出した4名の女性は今はもうみんな結婚してます。
 
彼女に安心してほしいのは、僕は酔うともう何もできません。何もっていうのは、具体的に申しますと、あれのことです。具体的に言うとあれと申しましたが、抽象的に申すとあれはどれになるんだろうね。はっきりしてるのは酔うともう駄目なのです。睡眠が一番の快楽の歳になりました。
 
2003年10月27日(月)  肉、実習生、不動産、埼玉。
 
えっとこれは27日の日記で、今日は31日だから、5日前の日記を書きます今から。もちろん5日前のことなんて覚えていないのでいい加減なことを書きます。
 
あ、そうだ。すき焼き。いや、焼肉か。違う。しゃぶしゃぶだ。どうだろ。えっとー、やっぱりすき焼きかぁ。すき焼き食べました確か。そう、妹が作ってくれたんだよね。で、妹と彼氏と3人で食べました。自信ない。職場の人たちと焼肉食べに行ったんだよなぁ。そうだそうだ、その日の昼にしゃぶしゃぶを食べて、その夜に焼肉で僕は食べたくないと言ったら「じゃあ食うな実習生」と罵倒され、意地で食って2次会に行って知らない酔っ払いとずっと手を繋いでいた。
 
その酔っ払い、不動産屋を経営しているそうで、「アパート借りる時はおじちゃんに連絡したらいいとこ紹介してやるから。で、キミはどこに住んでるんだ?」と訊ねるので「埼玉」と言ったら「あぁ、埼玉」と言ったきり僕の手を離した。
 
2003年10月26日(日)  呂律がまわらない愛の言葉。
 
日記の更新が遅れているのは朝も昼も夜も自分の時間がないからです。自分の、自分だけの時間が作れないのです。朝は6時に起きなきゃいけないし、仕事が終わっても大抵誰かに誘われて大抵断れなくて深夜0時。風呂に入って寝る。朝起きて仕事。懐かしい友人とも会えず、読みたい小説も読めず、浮世の辛さを忘れる為にひたすら酒を飲む。
 
身体も壊すし心もすさむ。酒を飲むと抽象的なことばかり考える。具体的なイメージが沸かない。呂律がまわらなくなる。メールもうてない。皆、酔った時、恋人に書くメールはどのようにしているのだろう。「飲みに行ってる」「酔っている」「今夜は遅くなる」等の言い訳をだらだら並べた後「愛してる」などと打つのだろうか。
 
例えその「愛してる」が気持ちを込めた真の愛が産出した言葉だとしても、台無しじゃないか。酔ってたら何もかも駄目じゃないか。愛の効力はビール1杯で薄められるのです。
 
2003年10月25日(土)  ブラックコーヒー3杯目。
 
精神科は他の診療科と違い、身体が元気な患者さんが多いので大運動会というイベントがある。今日は大運動会。去年はこの運動会の実行委員長をしていたのだが、今年は実習生という立場上、傍観者という立場。というわけにはいかず、運動会前日、明日早朝5時半に職場近くのファミレスに集合と新実行委員長からの命令。
 
早朝5時半。魂を布団の中に置いてきた僕は、死人のような表情でファミレスの不味いコーヒーを飲んでいた。早朝5時半と言ったのに同じテーブルには後輩2名。やはり表情は死んでいる。
 
「おい。実行委員長は」
「電話しても留守電なんです」
「もっかい電話」
「絶対出ないですよ」
「5時半にジョイフル集合って言ったのは誰だ」
「実行委員長です」
「僕は実習生なのに運動会の準備の為に早起きしてるというのに実行委員長はいつから寝坊するほど偉くなったんだ」
「そうっすよね。言い出しっぺなんすけどね」
「実行委員長といえども」
「先輩の後輩なんですもんね」
 
早朝6時半。肩を降ろしてファミレスに入ってくる実行委員長。僕たちは3杯目のブラックコーヒーと8本目の煙草を吸い終えていた。
 
「おいこら」
「すいません」
「何時だと思ってんだ」
「すいません」
「お前何様のつもりなんだ」
「すいますいません」
 
すいますいません?
 
2003年10月24日(金)  お父さんのためのワイドショー講座。
 
ファブリーズのCMのお母さんの異常なまでの潔癖症っぷりにちょっとひいているヨシミです。あんな奥さんもらったら家にいても窮屈だろうなぁ。浮気だってするだろうなぁ。
 
虐待のニュースを見て、胸が痛くなった。母親は僕と同じ歳。こんな女は母親になる資格はないのだけど、同じ歳で愛がどうだセックスはどうだと嘆いている僕は父親になる資格は、まだない。
 
鈴木宗男のガン告知。なぜか松山千春と会見。涙を浮かべて胃ガンだと。まぁ小っちゃいポリープだと思うんだけどね。後援会の人たち、「選挙より、まず病気を直すことが先決だ」と言ったそうだがそういう問題ではなく!
 
日本シリーズで2連敗したあと2連勝したチームの優勝確立は100%だということで、もはや阪神の優勝は確実。もし今日負けていたら優勝確立16%だということで、本当に今日の試合は広沢の来期を掛ける決戦だったということになる。なんてね。広沢。実況の人はメチャクチャ調子いいようなこと言ってるけど全然打たない。濱中も打たない。赤星もまだ2安打。金本だけで勝ってる。
 
眠い。もう誰とも話したくない。
 
2003年10月23日(木)  添付ファイル削除。
 
仕事帰り、職場の事務員の人たちと居酒屋に行ったが、日本シリーズが気になって気になって、居酒屋にもテレビは置いてあるけど、僕たちのテーブルからそのテレビまでの距離が長く、阪神が打っているのかダイエーが走っているのか星野が吠えているのか王が笑っているのかちっともわからぬ。とりあえず乾杯。今日もお疲れ様でした。あと阪神の優勝を祈って。
 
ビールを飲みながら野球談話に花を咲かせたいのだが、テーブルをはさんで座っている事務員2名。ちっとも野球には興味ない様子。ねぇ、松井出てるの? アメリカだっつの。ねぇ、清原怖いの? 知らんよ。ねぇ、原監督ってもう打ったりしないの? だから監督だっつの。ねぇ、ビールおかわり。自分で注文しろっての。
 
と、事務員。突然不機嫌になる。僕がテレビばかり見ているからだろうかと思い、しばし雑談に集中したがそうでもないらしい。「料理が美味しくなーい」そうである。そんなことはない。肉じゃがも美味しかったし、串焼きも美味しかった。ビールも美味しいし、阪神も強いし、仕事は辛い。朝起きれない。時々人生に絶望を感じる。そうかと思えば根拠のない幸福に包まれたりする。僕は僕なりに気分の変動が激しい。だけど外見には出ないから誰もわからない。だけど文章には出るから誰かが僕がおかしいと気付く。
 
もちろん彼女も気付く。彼女は僕の文章を読まなくても電話で話す声のトーンで気付く。だから彼女の前では素の自分が出せる。時々喧嘩をする。翌日には喧嘩の内容を忘れる。僕だけケロリとしている。彼女はまだ考えている。彼女は思慮深い人です。好きなんだけど、こうやって離れてる状況で会いたい会いたい言っても悲しくなるだけなので僕は言わない。男は表情で真実を語る。だけど物理的に遠く離れている彼女はその表情が見えない。だから写メールを使う。僕はauで彼女はdocomo。見れない。写真送っても「添付ファイル削除」ってメッセージが出る。だから表情も伝えられない。
 
「ねぇ、今度はもっと美味しいところに行こうよ」
 
僕は美味しいと思ったんだけどね。東京に帰ったら彼女と同じ感性で舌鼓を打てるようなお店に行くのです。
 
2003年10月22日(水)  残り12日。
 
鹿児島での生活も残り12日となり、病院の仕事なのか実習なのか、そもそも看護師なのか精神保健福祉士なのか自分でもわからなくなっていて、看護婦さんに僕は何者か訊ねると「あなたはどうにでも使える人間です」と誉められているのか馬鹿にされているのか。どっちでもいいけど。あと12日なので。
 
ここ数日、日記が遅れているのは、日本シリーズに夢中になっているのです。妹の彼氏は、野球ファンで格闘技ファンで、音楽の趣味も同じで、妹の彼氏じゃなくて、普通の友達として遊んでいるのですが、その妹の彼氏と日本シリーズを見ながら一喜一憂しているのです。もう一人の妹の旦那は僕と同じ年で、考え方も似たようなところがあって、これまた友達のような関係で、今度飲みに行くのですが、こうしよう。下の妹の彼氏と、上の妹の旦那と僕でお酒を飲みに行こう。残り12日なので早めに計画を立てよう。早めに計画を立てないと僕はすぐ面倒臭い虫が出てくるので、思い立ったが吉日。よし、来週の水曜日。
 
パソコンにメールを送って下さっている方、ありがとうございます。パソコンに届いたメールは携帯でもチェックできるようにしてるので、いつも寝る前に読ませていただいてますが、返信が遅れているのは決して僕の怠慢ではないのです。えっと、言い訳がましいですが、長文のメールには、その文章量を超す長文で返信したいのです僕は。だから、携帯で親指のみで、顔文字なども駆使しつつ、何十分も掛けて、2・3行だなんて、僕の思いの一つも伝わらないのです。だから、埼玉に戻ってから返信します。決して僕の怠慢ではないのです。メールありがとうございます。ちゃんと読んでます。読みながら涙してます。
 
2003年10月21日(火)  幸福のヒント見つけました。
 
布団のCMの「人生の3分の1は布団の中」というセリフに軽く絶望感を覚え、ぶっちゃけ人生というものは与えられた時間の3分の2しか楽しめない。しかし人生の3分の2が楽しいことばかりということでもなく、むしろ辛いことが多いわけで、多く見積もっても睡眠を省いた残り3分の2の人生の4分の3くらいは辛いことで、残り4分の1くらいが楽しいことなんだろう。こういうことを考え出すと生きるということに意味を見出せなくなってしまうので阪神タイガースの話をしたかったけれど、今日は雨で中止でした。
 
3分の1をどうにかしたいなぁ。どうせ布団の中で過ごすんだったら、ちょっと高価な布団を買ってもいいかなぁ。だけど一度眠ってしまうと、意識を失うわけだから高価も安価も関係ないような気がするんだよなぁ。高い布団で眠っているという優越感は寝る前の数十分しか味わうことができないんだよなぁ。人の優越感を侮ってはいけない。
 
人間というものは、優越感に浸ってこそ自分の価値を見出せるのだから、どだい、優越感を感じない人は謙虚とか謙遜とかそういう日本的な言葉で片付けるのではなく、鈍感なんだと。言いたい。誉められても謙虚な姿勢を見せるという優越感。ほらね。あらゆる行動の語尾に「優越感」という言葉を付けてみましょう退屈だから。
 
明日も仕事だという優越感。
今とてもオシッコに行きたいけど我慢して日記書いてるという優越感。
靴下に開いた穴を一日中隠し通したという優越感。
殺人事件のニュースをブラウン管越しに眺めるという優越感。
 
ほらね。幸福へのヒントは人間の根底に眠る優越感に隠されているのです。
 
2003年10月20日(月)  性交渉の真実。
 
僕はセックスが嫌いです。気付けば27歳。今まで何人と関係を持ったか思い出すこともできないですが、それだけ印象的なセックスというものが記憶に残っていないのです。最近は何もかも基本に帰って自分を見直すことが多いですが、セックスについての見解を、今日は書きます。
 
何の延長線上にセックスは存在するのか。例えばそれは二人の愛の確認作業なのか、動物的本能に憑き動かされた行為なのか、それとも、恋愛の「おまけ」なのか。
 
僕はこの人とセックスしたいなぁと思ったことがありません。セックスするんだろうなぁとは考えることがあります。それが当たるにしろ外れるにしろ大したことではありません。しなければしないでいいし、シャワーに入ってる間、煙草を吸いながらテレビを見ることになっても大した気持ちの高揚もありません。
 
これは誰かに質問したくて、馬鹿にされそうでずっと黙ってきた質問なんですけど、この日記を読んでいる皆さんに質問します。
 
セックスに個性を感じますか?
 
付随するものは全て省いて、セックスという行為のみに焦点を絞り、セックスの個性を考えてみてください。前にセックスした相手と今、上に乗っている相手、その二人は何が違いますか。声が違う、身体の線が違う、感じる場所が違う、髪型が違う、優しさが違う。他は? 
 
セックスは、何か画一的なものを感じませんか。単調で退屈でただただ疲労するばかりの無益な交渉。僕はセックスの最中に、深く考え込んでしまうことがあります。この人は、誰だ。って。うまく言えないけど、この人は、誰だ。って。声や身体の線など多少の差異はあれ、相手は女性。どこかで聞いたことのある声、どこかで触れたことのある乳房、どこかで見たことのある悶え方。僕はもうずっと前から同じ女性とセックスしているような感覚に襲われます。
 
セックスの最中に相手が抽象化されるのです。あんなに楽しかったデートも、夕食の会話も、一緒に撮った写真も、ベッドに入った途端、台無しになるんです。また始まるという杞憂。その女性が、抽象化された女性に変貌するのです。またこの人だ。って思うのです。この人以外に誰かいるかもしれないと思って、もう何年間も何度も何度もいろんな女性とセックスをしてきたけれど、皆、同じ人なんです。
 
多分、愛のあるセックスなんて存在しないと思います。愛は、もっと別の場所にあるような気がします。決してベッドの上には存在しない。愛があってもなくても、セックスという行為自体には大して重要な問題ではないのです。
 
あぁ、多分こういうのって確実に間違えている考察だと思うけど、現在の僕にはこういう答えにしか導くことができないのです。
 
2003年10月19日(日)  愛の歴霹。
 
基本的なことなんだけど、基本的なことができない。わからない。
 
人を愛するということ。僕はこれがわからない。友人もいて恋人もいて、もちろん愛しているけれど、それは多分、便宜上「愛する」という言葉を使っているだけで、粘土細工のような不器用な言葉は誰の心にも響くことなく、意味もなく繰り返される関係の歴霹。
 
「愛してる」という言葉を使うと、自分自身が嘘臭く感じられ、その嘘が相手にばれてしまいそうで、「心から愛している」と言ってしまう。「心から」誰も見えない言葉に頼ってしまう。見えない言葉に隠れてしまおうとする。
 
僕は誰の為のものなんだろうと考える。多分誰のものでもない。もちろん自分のものでもない。何かに憑き動かされているようでもあって、確固たる自分の意志で行動しているようでもある。何を求めているのか。相手に何を望んでいるのか。
 
皆、「その人」を本当に愛しているのですか。「愛する」って何ですか。自分一人じゃ駄目なんですか。一人で生きてはいけないのですか。その人がいないといけないのですか。
 
これからは真実だけを書きます。
 
2003年10月18日(土)  逃げろ。早く逃げろ。
 
久し振りに恋愛について語りますけれども。毎日わかったようなことばかり言っているけど、僕は何もわかっていない。わかろうとしない。理解できない。歳を取るごとに、恋愛の意味がわからなくなっている。
 
恋愛の延長線上に結婚が存在するのか。僕はそれさえもわからない。昨日の夜はそのことについてずっと考えていて、何かしらの答えが出たけど忘れた。何かすごい結論に至ったけれど忘れた。思い出そうとしないだけかもしれない。どうも僕は真実から背をそむけたがる。
 
何もかもわかっていて何もわからない振りをする。
 
本当に書こうと思っていたことを忘れた。風邪が直らない。尾底骨が痛い。
 
2003年10月17日(金)  逃げろ。もう逃げろ。
 
突然の冷え込みで身体を壊して家でゆっくり静養したいのだが、実習は休めないし余暇の時間も余暇とはいえず、毎日何かしらの予定が入っていて、咳と鼻水は止まらず、なぜか定期的に尾底骨に激痛が走り、この痛みの原因を究明したいけど、昨日から酔っ払っているみたいに目の周りがすごく赤い。
 
何かが僕を蝕おうとしている。心配だなぁ。早く帰りたくなってきた。あの小さな赤い部屋で毛布を頭まで被り、自分の将来を杞憂していることがある意味僕にとっては健康的なのかもしれない。
 
思考が否定的な方向に進んでいる。こういう時は酒に逃げるのが一番。激しい頭痛と尾底骨の痛みに耐えながら、毎日が過ぎていくのをじっと待っている。
 
2003年10月16日(木)  本能に訴えるもの。
 
ミスタードーナツのカリーパンはサクサクしててとても美味しいけれど、ドーナツ店で調理パンを食すという行為がなんだか神を侮辱しているようで罪悪感に苛まれながらサクサク感を味わってます。同じく、ケンタッキーでハンバーガーを食すという行為もカーネル・サンダースを侮辱しているようでちょっとした罪悪感に包まれます。
 
そういえば一時期、マクドナルドではオニギリが売ってましたよね。80年代に。アメリカが日本の文化である米を尊重した行為だったので、当時は特に罪悪感は感じませんでした。むしろ誇りに思ってました。
 
近所のドラッグストアは時々玉子の特売をするけれど、ドラッグストアで玉子1パック98円だなんて、これは邪道です。ミスタードーナツの話に戻るけれど、天津麺とか担々麺とか、これは意味がわかりません。「餅は餅屋」って言葉を忘れてはいけません。
 
だけどミスタードーナツの担々麺ってすごく美味しいですよね。菓子屋の麺類を賞賛する時点で、僕は人生の負け組みに入ると思います。
 
あと、とても小さい個人で経営している古本屋に行くと、必ずアダルトビデオのコーナーがありますが、あれは悲しくなります。人間の本能に訴える商品を販売しなければ物が売れないだなんて、商売として失格です。残念であります。
 
僕は元看護師で、医療の知識も中途半端で現在福祉の勉強をしてます。心から愛している彼女がいるというのに、ミニスカートにロングブーツの組み合わせの女性を見ると、ついマンションまでついていって、マンションの前で求婚したくなります。ミニスカートとロングブーツは男の本能に訴えるものが大きいのでどうもいけない。
 
2003年10月15日(水)  僕は悪魔になりました。
 
体調を崩していて日記の更新が遅れています。決して遊んでいたのではありません。むしろ懸命に働いてました。未来の医療の為に、将来の福祉の為に。そして結果的に風邪をひきました。本末転倒です。
 
えっと、1週間が過ぎました。この1週間毎日のように酒を飲んでいたので、汗をかいたらアルコールの臭いがします。2日酔いだか4日酔いだかわからない症状に襲われています。なぜか便秘してます。顔中吹き出物だらけです。耳が尖ってきました。頭頂部に10円ハゲができて、そこから2本の角が生えてきました。
 
僕は悪魔になりました。
 
僕は悪魔になりました。
 
2003年10月14日(火)  億劫は普遍的な。
 
雨が止んだと思ったら急に寒くなって、元々出不精の僕は外に出るのが億劫で、街を歩くのも面倒臭くて、だいたい仕事に体力を使い過ぎてアパートに戻ったらソファーに横になってそのまま寝てしまいたいけれど、毎夜毎夜のように用事があって、まぁその用事っていうのは生ビールを飲んだりワイングラスを傾けたり焼酎を一気飲みしてたらあっという間に深夜の1時を過ぎていて、あっ、ヤベェ。終電過ぎちゃったよ。なんて思いながら電車の通っていない地元の飲み屋街からトボトボ歩いて帰宅するのです。
 
実習はもう実習とはいえず、完全に仕事と化していて、仕事と異なる点といえば、実習なのでいくら働いても無給ということで、そこに決定的な矛盾があって、僕はそれを声を大にして叫んでいるのだが、まぁいいや。世の中という観点で金を考えると、意外と小さい。
 
金はごく狭い世界でしか通用しないものだと思うよ僕は。金はいらないから休日が欲しい。帰郷して1週間経った。彼女が風邪をひいたと言っていた。「お大事に」としか言えない距離が悲しい。
 
2003年10月13日(月)  場末の女マスター。
 
そのビルに、あのバーはもうなかった。
 
「先月、つぶれちゃったんです」
 
彼女はカウンターの奥で氷を割っていた。そのバーはテーブルもカウンターも全て空いている薄暗いショットバーになっていた。
 
「昨日、オープンしたばっかりなんです。昨日はお客さん多かったんだけど、今日はお客さんが最初の客です」
 
彼女にばれないようにそっと腕時計を覗く。午後10時。この時間に客は僕一人。照明という概念を無視したあまりにも薄暗いショットバーのカウンターに座り、女マスターを試す意味で最初にソルティードッグをオーダーした。
 
「え? なんですかそれ。すいません。まだカクテルのことあんまりわかんないんです」
 
そうだろうと思った。カウンターの奥に並ぶ酒の量を数えたらわかる。あまりにも少なすぎる。
 
「お酒のこと勉強したいんだけど、飲めなくって……」
「弱いの?」
「いえ、私、18歳なんです」
 
未成年の女マスター。その事実で驚くべきだが、1時間ほど2人きりで話していたその時、その女性、いや女の子は、突然、
 
泣き出してしまった。
 
理由を書くのも面倒くさいくらい哀しい話で、18歳でマスターをしなければならない理由、真っ二つに割れた携帯、カウンターの隅に置いてある割れたワイングラス、傷が付いたレザーのブーツ。彼女は涙を流しながら僕のグラスが空く度に、鼻を鳴らしながら鳴れないカクテルを作った。
 
僕は何本も煙草を吸いながら、誰か客が来ないか終始ドアの方を見ていた。
 
もうあのバーには二度と行くことはないだろう。
あの女の子はこれからもずっと幼い瞳に涙を溜めながらオレンジジュースのようなスクリュードライバーを作るのだろう。
 
2003年10月12日(日)  テーブルをはさんで思ったこと。
 
僕には妹が2人いて、長女の方が今回入籍したということで、僕が帰郷したということもあり、
今日は主人の親族と御対面する食事会が開かれた。文章が始めからグダグダになっている
のは、こういう状況に不慣れだから。
 
入籍ということは、えっと、親類が増えるっていうことだから、テーブルをはさんでいるこの初
対面のこの人たちも、これから親類として付き合うことになるのかしら。それとも「知り合い」な
んていう意味の定義が曖昧な間柄になるのかしら。
 
とある料亭。次々と運ばれてくる料理。落ち着かず煙草ばかり吸っている僕。妹が結婚すると
いうこと。家族が増えるということ。僕がまだ独身だということ。知らない人たちに「今後よろしく
お願いします」と酒を注いでまわり、もう一人の妹に「早く、帰りたいなぁ」と耳打ちし、母親はと
いうと「酒を飲まないと緊張して何も話せないわ」なんて言ってビールばかり飲んでたいして
話もせず、既に眠そうな顔をしている。
 
結婚式を挙げる前に入籍したのは、子供が先にできたからで、来年の3月には僕もとうとう叔
父さんになるわけで、次回は3月に帰郷しようと思うけど、妹に先を越されてしまった不甲斐な
い兄は来年の3月は何をしているだろうと考えたら、やっぱり今考えても予想できないことを
やっているに違いない。
 
僕は僕の人生を、将来を、数ヶ月先のことさえ予想することができない。それだけ僕は衝動的
に何かを始めてしまう習性があるので、それが不安でもあり、楽しみでもあるわけで、結婚。
結婚かぁ。結婚は40歳になるまで待って頂戴。
 
2003年10月11日(土)  心境、葛藤、煩悶。
 
何もすることがない。あまりの退屈に堪え兼ねて、近所の古本屋に漫画を買いに行ったが、ここ数年、漫画など買ったことがなく、何を読んでいいのかわからない。かといって気分的に小説を読む気にはなれない。パチンコ屋に行ってみたが3000円分楽しんでみたがイマイチ。確変が2回続いて単発になった時点でやめる。外は雨が降っている。
 
夜はビールを飲む。彼女と飲んでいるときはあんなに美味しかったビールも、たいして美味しくない。彼女に電話が通じなくなった。なかなか時間が合わない。やっぱり離れてるとね。物理的な距離と精神的な距離は比例するのかもしれない。否定したいけど。むしろ声を大にして否定するけど。
 
仕事、いや実習。今後、どういう方向性で進めていこうかしらと思案中。早く帰ってきなさいと院長に何度も念を押されて揺れ動いている心境、葛藤、煩悶。まだ上京して4ヶ月なのに。やりたいことをまだ何一つ成し遂げてないのに。早く埼玉に帰りたい思いとまだ帰りたくない心境、葛藤、煩悶。
 
これから帰郷するときは慎重に行動しないとね。
 
2003年10月10日(金)  パペットマペット見ながら書いた。
 
衆議院、解散しましたね。金正日も交通事故起こしたみたいだし。世の中がまた少しずつ動き出しましたね。世の中が絶え間なく変化している間、僕は妹と妹の彼氏とカラオケに行ってました。あと家賃の振りこみを忘れていたので銀行に行きました。もちろん実習もしてます。実習というかもう注射も点滴もうってます。
 
カラオケに行ってお酒を飲んでいるうちに暑くなってエアコンを起動させたわけですが、エアコンのリモコンに「寒いとき」は△のボタンを、「暑いとき」は▽のボタンを押すわけですが、いつもワンテンポ考える時間を置かなければボタンが押せない自分に失望。
 
「寒い」ということは、どちらかというとマイナス的なイメージがあるが、「△」のボタンは上を向いているのでプラス的なイメージがある。だから戸惑ってしまう。
 
深夜、彼女に電話をしたら久々に酔っていた。僕と一緒に飲む時はあまり酔わないのに今日は銀座で酔っていた。どうすればいいんだろう。
 
2003年10月09日(木)  ついていい嘘 悪い嘘。
 
実習生だというのに、実習内容らしきものは何もせず、数ヶ月前と全く同じ仕事をしていて、やはり僕はこの仕事が一番向いていると思ったり思わなかったり。何の為の実習か考えたりノスタルジーに耽ってみたり。
 
明治生まれの94歳のおばあちゃん。最近物忘れが激しいということで孫と一緒に来院。診察の後、心理検査室へ。記憶力を測定する心理検査をする。看護婦さんに「僕は実習に来てるんですけど」と言うと「そういう時だけ実習生にならない」と一喝され、お婆ちゃんこんにちは。はじめましてヨシミと申します。どうぞよろしく。わぁ、随分声がしっかりしてますね。お肌もすごく綺麗ですけど、お歳はお幾つなんですか?
 
と、会話の中に既に最初の質問項目である「年齢」を何気なく挿入する。カウセリングや心理検査を上手くできない人は、ただ「それではこれから述べる質問に答えて下さい。○○さんは何歳ですか?」と何の工夫も施さず単刀直入に質問するので相手が緊張してしまう。これじゃ相手との距離はいくらたっても縮まらない。
 
へぇ94歳なんですかぁ。僕よりはっきりした言葉を話されるのでもっと若いかと思ってました。はい。だいたい30歳くらいかなぁなんて(ここで笑いを取る)。しかし今日は暑いですねぇ。昨日までは少し寒かったんですけどね。あ、今って何月でしたっけ?
 
と、第二の質問。「今日の日付」相手に質問と気付かせない質問。もちろん検査用紙は手元に置かない。回答を全て暗記して後ほど記入する。このことについては人の短期記憶には限界があるんだなんて昔から賛否両論あったけれど、僕はかたくなにこのやり方を変えない。僕の為ではなく検査をされる相手の為に。
 
30分経過。
 
すでに検査は終わっている。結果も出ている。しかし、検査が終わってはいさようならお大事に。ってのは、なかなかできなくてついつい雑談に時間を取ってしまう。前回の営業の仕事でもネックになっていたのは契約を取った後の雑談に時間を費やし過ぎるということだった。検査して終わり売って終わりではあまりにも相手に失礼過ぎる。
 
「今日はとても楽しかったよ」
 
と、そのお婆ちゃんは検査室を出る時、車椅子の上でそう言った。検査されているとも知らず、その楽しさに満ちた表情を見て僕は少し後ろめたい気持ちになる。ついていい嘘と悪い嘘。雑談の中に検査項目を挿入させた罪悪感。そんなものに苛まれながら検査結果をまとめ医者に提出するとき「キミは時間が掛かり過ぎる」などと嫌味を言われる。
 
全てが僕の為ではなく検査をされる相手の為に。
 
白衣を着るということは、そういうものなんだと思う。
 
2003年10月08日(水)  繰り返される惜別を味わう為に。
 
「只今帰りました」
「おかえりなさーい!」
 
僕は再びこの場所へ戻ってきた。茶色から黒色に変化した髪型で。3キロ痩せてしまった身体で。短い白衣から医者用の白衣を来て。白衣の下にはネクタイを締めて。看護師から実習生となって、僕は戻ってきた。
 
前の職場に帰ってきた。
 
鹿児島に帰ってきた目的は、大学の必修課目である精神保健福祉援助実習の為。この4週間の実習を終えなければ国家試験資格が得られない。7年間勤めてきた病院を看護ではなく福祉の観点で学ぶ。
 
「実習生さんおかえりなさい」
 
つい数ヶ月前まで僕のことを「主任さん」と呼んでいた後輩がニヤニヤ笑いながら嬉しそうに寄ってくる。
 
「実習生さんコーヒー買ってきて」
 
つい数ヶ月前まで僕のことを「ヨシミ主任」と呼んでいた後輩が僕に100円玉を渡す。
 
「マー坊、あの患者さんの血圧計ってて」
 
看護婦さんがまるで昨日も出勤していたかの如く自然な口調で看護行為を促す。僕は看護を学びに実習に来たんではないですからといいつつ聴診器を首に巻く。
 
そこには数ヶ月前と全く変わらない風景があった。まだ「久し振り」と声を掛けるには早すぎる月日かもしれない。だけど僕はこの数ヶ月、本当にいろんなことがあった。名古屋に行ったり、大学のスクーリングに行ったり、バナナ工場で働いたり、朝まで原稿を書いたり、営業の仕事をしたり、愛する彼女と出逢ったり。
 
その月日を全く無視するかのように、まるで辞めた日の翌日であるように。昨日の延長であるように看護婦さん達と冗談を言いながら後輩達と笑いながら血圧を計りながら薬を調剤しながらレントゲン写真を眺めながら患者さんの相談に乗りながら。
 
「なんだか帰ってきたなぁって感じがするよ」
「えっ、誰がですか?」
 
後輩のこの寸頓狂な返事が全てを物語っていた。
僕は帰ってきた。
繰り返される惜別を味わう為に、再びここに戻ってきた。
 
2003年10月07日(火)  これからの行方。
 
羽田空港。今まで電車を乗り継いで行っていたが、今日は彼女の計らいでリムジンバスを利用することになった。バスが来るまでメトロポリタンホテルの喫茶店でコーヒーを飲んだら1杯750円だった。更にその値段の10%をサービス料として上乗せされた。1流ホテルでゆっくりと紫煙を揺らぐにはまだ早い年齢だと痛感。
 
羽田空港の雲は重く、風は強かった。約1ヶ月という日数は長いか短いか。彼女にとってはとても長いらしく、僕にとってはよくわからない。これからの1ヶ月が、今後僕に何をもたらすことになるのか、楽しみでもあり憂鬱でもある。
 
機内は激しく揺れ、右翼がもげた。空中に漂うもげた右翼を眺めながら、これから過ごす1ヶ月を杞憂した。「只今右翼がもげてしまいましたが、ご安心下さい」などと何の慰めにもならないアナウンス。激しく右側に片寄る機体。錯乱する乗客。「只今より海上に不時着しますが、乗客の10%は助かりますのでご安心下さい」と更に不安を掻き立てる機長のアナウンス。誰もが自分こそその10%だと信じていた。窓を覗くとすぐ下に海が見えた。
 
大きな振動で目覚める。機体は滑走路を走っている。夢を見ている間に目的地へ到着してしまった。
 
「今、着いたよ」
 
手荷物受け取り所で、迎えに来ているはずの人に電話をする。
 
「それでは、私は隠れますので、探して下さい」
 
僕は素直に探した。そいつは目立たない場所に位置するトイレの中に隠れていた。
 
2003年10月06日(月)  NHKオンエアバトル。
明日から約一ヶ月、このマンションを離れるのだが、荷物を準備している最中、インターホンが鳴り、隣の部屋の女性かと思いきや「NHKです」迂闊だった。引越し当初、狂ったように受信料の催促に来ていたのに最近はめっきり来なくなって忘れていた頃にまた訪れるという周到な手段。参りました。
 
前回の催促に懲りて、隣の女性にインターホンを鳴らすとき「ピンポンピンポンピーンポーンって3回連続で鳴らしてね」と言っており、3回連続インターホンが鳴った時しか僕はドアを開けないのだが、今日は何も考えずドアを開けてしまった。隣の女性にハサミとセロハンテープを貸していたのでそれを返しにきたのだろうとばかり思っていた。
 
「ここにハンコお願いします」
 
げ。もうダメだ。もう逃げられない。部屋に引き返し、対応策を考える。どうしよう。勿体無いなぁ。お笑いオンエアバトルしか見ないのになぁ。あ、ピタゴラスイッチも見るよなぁ。ポップジャムはあのハイテンションなアナウンサーが嫌いだから見ないんだけど。ってこのアナウンサー、お笑いオンエアバトルの司会もしてるんだよなぁ。ということは僕はこのアナウンサーが嫌いなんじゃなくて、つんく♂が嫌いなんだろうね。
 
よし、ものは試しで言ってみよう。
 
「すいません。実印、実家に置いてきてるんですけど、シャチハタじゃ駄目ですか?」
「駄目です」
 
よし。シャチハタ駄目なんだって。シャチハタってどこに行っても駄目だよね。ぐずでのろまでおっちょこちょいだよね。おまけに僕のシャチハタは使ってもないのにインクが漏れる。いつもティッシュでぐるぐる巻いてあるから格好悪い。しかもインクがついたそのティッシュは鼻血が付着したみたいでもっと格好悪い。
 
「じゃあ実家から実印取り寄せますので、郵送します」
「お願いします」
 
よし。やった。やったよ。郵送しませんよ。だって僕はつんく♂が嫌いなんだもの。
2003年10月05日(日)  磯野貴理子も好きです。
僕は山口もえも好きだけど磯野貴理子も好きです。
 
彼女は道化が何たるかをわきまえている。自分を知っている。あのデタラメなトークは計算され尽くしていて、そのトークを聞きながら「あぁ、この人頭いいなぁ」と惚れ惚れしてしまいます。
 
反面、山口もえは計算されているようで計算されていない。釈由美子は計算していて、その計算の詳細が丸解かりできる点で魅力がない。その打算がばれていないだろうと気付かないのは本人だけだという点で悲しい。
 
山口もえは、そこが見えない。番組によって饒舌なときと寡黙なときの差が激しい。生理がひどいのかもしれないね。磯野貴理子はいつも生理前のようなテンションです。見てて楽しいけど、一緒にいるのは辛いかも。
 
と、彼女が生理になったらしく、僕は明後日から1ヶ月埼玉を離れるから、最後に僕の遺伝子の存在感を見せつけようと思ったけれど、生理だから仕方ないや。
 
昨日の夜、冗談で彼女の首を締めたらポロポロと涙を流し始めて、もう愛惜しいのなんのって。首を締めて泣くなんて、子供っぽいし、首を締めている本人も子供っぽくなってしまうので、あれは何だ。何戯れてるんだ。と自分に突っ込みを入れたりして。
2003年10月04日(土)  軟禁生活。
 
アウンサン・スー・チーさんっていつも軟禁されてるけど、何をしでかした人なんでしょう。ニュース見ても軟禁されてるっぽくないし、いつも民衆とか報道陣に囲まれてる。
 
さて、ちょいとグーグルで調べてみましたら軍事政権によって自宅軟禁されているらしい。他にもいっぱい書いてあったけど面倒臭いので、いや面倒臭いというかカウントダウンTVが始まったので、今日は僕の大好きなソニンがゲストライブするそうなので聴いてみたけど妙な歌だった。
 
カウントダウンTVのあとにランク王国ってあるでしょ。お姉ちゃんとCGのロボットみたいなやつが会話する番組。僕はあのお姉さんの大根芝居がどうしても好きになれないんですね。だからプロレスを見るのです。
 
昨日の日記を読んだ彼女が、もう不幸にならないようにって、1人で神社に行ってお守りを買って来てくれました。彼女が帰るのを待ってから1人で涙したのです。僕は決して涙を流さない冷血漢だと彼女は言うけれど、誰もいない部屋でこっそり涙してるのです。
 
2003年10月03日(金)  不幸。
 
昨日、盲腸の部分が痛いって書いたけど、あれホントです。まだ痛いです。
 
僕は約束を守れない男です。その場しのぎの返事をしてしまい、皆に迷惑を掛けてしまう。その涙の理由を僕は知っている。僕はあまりいい人間ではないと思う。いつも迷惑を掛けてばかり。
 
僕は、わからない。僕と一緒にいたっていいことなんて何一つないのに。多分これからもないと思うよ。今まで、それで失敗してきてるんだから。皆、僕に何かを期待するけれど、何一つそれに応えることができない。だからみんな「ある時期」が来れば僕のもとから去っていくんですね。
 
1日の大半を1人で過ごす。朝陽が昇ると布団を被り、カラスが鳴くと顔を洗う。時間の軸がずれた生活の中で、キミを思う。来るべき何かを思う。それを否定したいけれど、否定する材料を僕は持っていない。
 
「最近は、朝晩、めっきり冷えるようになりましたね。私は、寒いのが苦手で、とっても着膨れてます」
 
今日届いた手紙。ベランダに出て煙草を吸う。彼女の涙。諦め。一縷の望み。
 
最近気付いたんだけど、僕と一緒になる人は、僕と一緒にいる時間だけ、不幸になる。
 
2003年10月02日(木)  盲腸痛いです。
なんかすげぇ盲腸の部分が痛いんですけど! 定期的に鈍痛が襲ってくるんすけど!
 
病院を辞めてから国民健康保険を支払っていないので、病気をするとヤバい。契約社員には厚生年金の制度はなかったのだ。ヤバいなぁ。11月から正職員になるのでどうせだったら11月に盲腸が悪くなったらいいのにな。
 
もーー! いーーーたーーいーーー! 深夜1時半にEXILEのアルバムなんて聴いてるから痛いのかしら。あ、HALCALIって知ってる? なんか21世紀のパフィーみたいな女の子2人組。顔は全然可愛くないんですね。看護学校にいそうな顔してる。だけど歌が可愛いの。可愛らしいの。あぁ痛い。
 
痛いといったらEXILEのダンサーの人たちも痛いよね。今こうやってアルバム聴きながら日記書いてるけど、ボーカルの人たちが歌ってる間、アルバムの収録でも後ろでせっせと踊ってるのかしら。時々前に来て存在感アピールしたりしてるのかしら。
 
あぁ憂鬱になってきた。本当に痛い。看護婦さんに剃毛されるんだ僕は。もう27歳なのに。元看護主任なのに新米看護婦にチン毛剃られちゃうんだ。「わぁ、看護士さんなんですかぁ」なんて勝手にカルテから収集した情報で話し掛けられて僕は赤面しつつ海綿体は膨張するんだきっと。
 
痛い。
 
痛いよぅ。
2003年10月01日(水)  セックスの話ですよ。
昨日は銀座に行きました。初銀座。ただある会社に用があっただけで、そこで用を済ますとすぐに帰ったのですが、丸の内線。東京ドームが見えました。うほー。一度、池女さんと一緒に乗ったときに見た景色もこの丸の内線からの車窓だったのかぁ。うちから東京ドームまで1時間くらいでしょうか。すごい身近に感じてきました。彼女も野球にもう少し興味を示してくれたらナイター観戦に行くのにね。
 
「あなたとは食の趣味が合わない」
「食の趣味が合わないということはセックスの相性も悪いのよ」
 
なんて言われてガックリ。変な理屈でしょ。そうなんですか。セックスと食べ物って何の因果関係があるんですか。僕は「セックスの相性? 絶対存在するよ!」なんて時々言ったりするけど自分でもいまいちよくわかりません。ないような気もします。とにかく誰とセックスしても気持ちいいものです。
 
はい馬鹿ねー。馬鹿なこと言ってるねー。セックスといえば、もう7・8年前のことなんですが、相手の女性の中でコンドームが破けたことがありました。終わった時に自分のオチンチンみてビックリしたのです。全身の血が一気に引いていってそのあとその血が戻ってきて真っ赤っかになって錯乱。
 
セックスの失敗談は、看護学校の実習室でクラスメイトとセックスしてて同級生に覗かれてたということです。覗く方も悪いし学校でセックスする方も悪い。
 
僕の筆卸しは、ベッド柵に手錠で繋げられた夜でした。しかし風俗ではなく現実世界。あの時6歳くらい年上だったバイト先のお姉さんは今計算すると33歳くらいになってます。今でも高校生を酒で酔わせてホテルへ連れ込んでベッド柵を手錠でつなげてるのかしら。

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