愛玩人形の抱き方+

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2003年04月29日(火) たとえば君が居るだけで

春の闇も強い風も降り続く雨も、あなたが居れば怖くないの。

けど、ただ、安穏と。何もせず庇護されるだけの生き物になる気はないから。自分の足で立って、動く生き物でありたいから。そうあろうと、しているから。


だから、繋いだ手をにぎっていて。離さないでね。ひとときも。


2003年04月26日(土) 愚かにも

この文章を打つのにも使っている、私のこのメインマシンは、あの人からのお下がりなのだけれど。


このマシンの中には、あなたが消し忘れたあなたのメーラーが入っているのよね。




譲り受けてから何ヶ月も経ってから見つけた、昔あの人が女に宛てたメールの数々。本当は知りえるはずもなかったあの人のこと。相当華やかだったらしいことや、暇潰しのためだけに遊んでいた人がいたこと、などなど。最悪なのはアドレス帳までしっかり残っていて、相手の名前や連絡先まであったことだ。



これ見つけたとき、よく倒れなかったな、と。
今日、データを整理していた時に再発見して、倒れかけて、そう思った。


2003年04月14日(月)



「猫ってさ」
「ん」
「水に落っこちると、小さないきものになるよね」
「小さな?」
「濡れて毛がはりついてさ。普段はその三倍くらいあるのに」
「あはは、そういうこと」
「うん。で、目が三角になっちゃってさ、寂しそうなの」
「そうだねえ」
「可哀想だからって、タオルで拭いてやろうと近づけば威嚇するし」
「うん」
「ドライヤーで乾かしてあげようと思ったら、音が怖いって逃げるし」
「うん」


「水に落ちてるってこと、気付いてもらえてる?」
「…さあ。どうだろ。分からない、あの人が何を考えてるかなんて」



2003年04月06日(日) 桜の咲く

暗い夜の中、燐を含む桜の花がぼんやり浮かんで、はらはら散る。
のっぺりした夜でも、その静けさを快いと思える。

春の闇は好き。あなたが一緒にいるのなら。

せがんで、手を繋いでもらって、満開の桜の木の下で、二人きりになった時。あなたはそっと裾から手を差し入れて悪戯したけれど。
あの日は寒かったね、身体じゅう冷え切ってしまった。おかしいの。二人して笑った。でも、本当は抱いて欲しかった。満開の桜の中で、手を絡めて、そうっと抱いて。桜の花が散らないよにね。



今年もまた、桜咲く。


2003年04月02日(水) 言えなかった言葉


「あのね、あなたと、別れようと思っていたの」



過去形で語るのなら、意味のない文章だと。思うことにしている。


ichino |MAILBoardText庵Antena

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