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ここからはすべて27日分の出来事であります(あんだけ長々書いといてまだ綴るか、と怒らないでね)。
電話して5分経った。まだかなー。10分経った。おーい、まだかよぅ。15分。おい、はよ来んかいこの糞ポリがぁぁ。何も悪い事してないにも関わらず、交番所の前を通り過ぎていく人々の視線がとても気になって胃が痛い。何だか国家権力に放置プレイされている様な辺な気分だ。そっから更に幾星霜、遙か遠くに白黒ツートンカラーに包まれたセダンが見えた(こういう時、視力が抜群に良いというのは便利だなぁ―まぁ視力が良くなければお金を見つけずにこんな目には遭遇していない訳だが)。数々の苦労(=全部自分に起因しとるが)がようやく報われる、やっとこの耐えきれない交番ひとりぼっちから解放される、という何とも表現しがたい充足感。パトカーが仏さんの使いに見える。そして、その天からやって来たクルマから降りたった、親切な巡査長さんの手によってものの数十秒でお馴染みの(といっても、拙者が前回それを手にしたのは12年前だが―余談だが、その時は堺銀座のブティックかなんかの権利書を拾い、同店のオーナーのおばあさんにあれこれ買って貰って非常においしい思いをした)白い書類が作成され、やっと我が輩は五千円の呪縛から解放されたのでありまふ。
バスは八条口でお客さんの多くを降ろした後、塩小路通から河原町通に入り、再び碁盤の目を上がっていく。なんか一端八条口まで下がってから四条・祇園へと向かうのは非効率的な気がしないでもないが、京都交通の京都口でのターミナルが祇園で、山陰線とのシェア争いを考えれば先に(逆向きは後に)八条口に寄らなければならないのだろう。まあこの車両なら多少のタイムロスは許せる。さて、バスは相変わらず祇園を目指して北上を続けている。ここでふと思った。このまま祇園まで行くという事は、阪急でたかだか10分前後しか要しない西京極〜河原町間をわざわざ数十分も掛けて移動する事に他ならない。これでは何だか馬鹿をしているだけな様な気がする。こりゃいかん、と河原町五条で下車する。どうだ、これで殆ど一筆書きルートを維持しているやろ(註:私は特に急がない場合は必ず公共交通でも自分のクルマでも同じ区間を同じ経路で往復せずに別ルートを進むというどうでもいい事に情熱を燃やす)恐れ入ったか、と自分自身の中でだけケリを付けてみる。いやー、そら実に快適な移動空間でしたよ。もし、これを読んでいるあなたが京都市内でJR・市営地下鉄と京阪・阪急を乗り換えるケースがあったならば、こういう選択肢も加えてみては如何でしょう。
休日とはいえ、時間が時間なのでホームの上は急行から降りた人や近鉄からの乗り換え客でごった返している。そんな中でやたらと場所を占有して騒いでいる女子高生の集団がいた。なんじゃこいつら、とジャージの背中に書かれた文字を見てみると“OTANI XXXXXXXX CLUB”とあった。まあ、車内でも駅前でも中高生は往々にしてやかましいもんと相場が決まっているが、この連中は伏せ字にしているクラブ名まではっきり書いてやりたいぐらいに騒ぎ放題。タニ高も一部共学化して随分と変わったもんだな、悪い意味で、と殴りつけてやりたい衝動を抑えつつ電車を待つ。暫く経って特急がホームに入って来た。すると件の女子部員軍団が一斉に、整列乗車の列の横からなだれ込んでくるではないか。あっけに取られて得意の死角からこそっとエルボー(こういう姑息な事すんのが大好きな拙者もアレだが)を打つのも忘れてしまうほどの強引さ。そうして、誰よりも先に車内に乗り込んだ彼女らではあったが、この混雑した時間帯では当然空いた座席はないし、補助椅子も使用中止となっている。けっざまあみやがれ、と思っていたら連中、涼しげな顔で電車の階段部(乗ったのがちょうど二階建て車両だった)にめいめい座りだし、お菓子をむさぼりながら再び大騒ぎ。もう殆ど無法状態である。
秋の高校野球。私は基本的にプロ化したようなチーム同士の戦いにはあんまり興味がないので、甲子園大会は殆どテレビで観戦する程度、スタジアムに足を運ぶのは夏の京都大会ぐらいしかないのだが、よくよく考えれば高校野球の京都大会って秋も春もやっているのよねぇ。今迄何でナマの試合を観に行かなかったんやろ――などと平安VS西高のラジオ実況を聴きながら悔しがって2週間。今秋の近畿大会は我が京都府で開催されるってんで、こりゃ観に行かなくっちゃ、なんせ今年見逃すと次観られるのは6年後だもん(私は他の多くの人達みたいに過剰なほど高校野球という競技に思い入れはないので、皇子山など近隣の野球場で開催されない限りわざわざ足を運ぶ気にはならない)、と急いで支度する日曜日の朝。冷蔵庫の残り物を土鍋にぶっこんで、その間に掃除して、猫にご飯やって、お風呂入って、炊けた鍋かっ喰らって、7時50分いざ出発。
正面ゲートから階段を上がってネット裏のスタンドへ。おお、朝の9時やというのに満員やないか。それにしてもおっさんだらけやなー。まるで大阪球場跡の場外馬券場みたい...。ネット裏十数列目の通路側の席が二人分ばかしぽこっと空いていたので(こういう時、つくづく自分の視力の良さを有り難く思う)こりゃラッキー、と座席を確保。スタンドを見渡すと、見た事のある顔が結構いる。あっ、あんな所に高嶋さん(智弁和歌山高校監督)が。普通の服着てはるとそこらのおっちゃんと変わらへんなぁ。おっ、向こうにいるのは尾藤さん(箕島高校元監督)や、実物は意外と小さいんやなー。あーモンチッチの格好させたい。向こうからグラサン帽子に乗っけた井戸さん(南部高校監督)がやって来はるぞ。これから試合やからか怖い表情やなー。おおっ、目の前にいるのは長谷部さん(東山高校前監督)ではないか。背筋がしゃんとしていてとても70過ぎには見えへんなぁ。それにしてもあの総白髪の銀髪は綺麗だなぁ。あっ、今度は森本さん(MBSアナウンサー/東山高校OB)が観客の邪魔にならんように海老みたいな体勢で走ったはる。腰低いなぁ。今年もこの大会のラジオ番組あんのかな。きっとあの手に持ってるデジカメはご自身のサイト用に撮影しはるんやろな・・・これ以上書いてるとキリがないが、その他、色んな有名人が場内にわんさかいてひたすらミーハー状態。気を取り直し、改めてスタジアムを俯瞰する。秋の澄み渡った空にぽこぽこっと雲が浮かび、そのまま視線を下げていくと見慣れた濃緑の磁気反転式スコアボード、同色のフェンス、黄緑の芝生に鮮やかな黒土。大好きな西京極の風景がめいっぱい拡がる。昨日と違って今日はいいお天気になりそうだ。
第1試合は天理と育英という全国制覇経験済みのビッグネーム同士の対戦。わたしゃコレを観んが為に1時間以上掛けてここ迄やって来たんだよ〜。ワクワクしながら試合を見守る。1回表、育英は無得点。それにしても育英の控え選手はよく声が出てるなぁ。阪急の駅を降りた途端に聞こえてきたもんなぁ。一体何デシベル位あんのかなー。さっ、1回裏だ、久しぶりに天理のブラスが耳に・・・聴こえてこない。し〜んと静まりかえった中で試合が進行していく。こりゃあれだ、交通渋滞かなんかで吹奏楽部がまだ到着してないんやろ、と勝手に解釈していたら3番打者のところで急に天理の控え部員&女子マネ達がアカペラ応援を始めた。♪レーフトへライトへーホームラン、そーれそれそれ(ラブミーテンダーのメロディで)とかやってる。違うっ、天理ってえのは、お前それ反則やろっ?!てなガタイのいい野球センスに溢れる選手が軽快ながらも威圧的なチャンステーマに乗ってバカスカ打って、凄い球を投げるエースが相手打線に殆どまともに打たせないで圧勝する強いティームの筈やん、こんなん天理やない!!大体、応援がアカペラに乾いたメガホンの音ってあんたんトコには太鼓もないのか天理高校硬式野球部!!スタンドからの野次も育英からのんばっかりやし!!あまりにヘボヘボな応援風景にふてくされていたらあっという間に6点差。8回に相手ミスに絡んで1点取ってなんとか完封を免れたものの天理の完敗。はっきり言ってコールドゲームにならなかったのが不思議なくらいのお寒い内容。他方、育英はちょっと内野守備が脆かったものの(記録上は無失策)、前評判の高かった中野くんをはじめ相手の4投手から11安打とことごとく攻略。下位打線もよく打つし、エース吉井くんはスライダーを武器に小気味よいピッチングで天理打線を翻弄して、と流石は兵庫の優勝校という感じ。次の東洋との対決も楽しみだぁ。
ところでこの試合、私の座ったところが育英のOBだか保護者だかファンだかの固まっていた場所だったんだが、「あの子は山口から来たやっちゃ〜」とか「あれは打撃がいいけど守備が雑やから監督もスタメンに困るとこやのう〜」とか、色々と内部の話題が聞けて良かったんだが、やたらめったら審判のジャッジに大声で文句言うし、よその学校の悪口ばっか言うので閉口した。いや、別に自校可愛さに他校をけなすんはしゃーないけど、天理の外野手が引っ込んでバッテリー丸ごと交代してる状況が理解できずに「あれっ、ピッチャー代わっとぅー、エースの奴はあそこにおるしライトと代わったんやな」「そやそや、あれっ、でもキャッチャーも背番号2じゃなくなってんで」「どないなっとんじゃ(以下何人も同じ様にガヤガヤ・・・)」とか騒ぐなヴォケ!!目の前のスコアボードにちゃんと表示してあるやろうがっ!!その前に騒いでんと場内アナウンスちゃんと聞け!!挙げ句の果てに「天理って智弁でも郡山でもない無名の弱っちいトコに負けてんねんから大したことないやろー。これで姫路も勝ってるし、八代も勝つやろし、もういっこ勝たんなセンバツはしんどいな〜、ところで八代の相手なんて読むんや」ってあーた、もっぺん学校戻って日本史勉強し直してこい!!そもそも斑鳩は昨春も奈良で優勝して近畿大会に出てたやろーに。野球の事しか頭にないんやったら、そん位の情報仕入れとけってんだ。嗚呼、軟式の時(8月の記事を参照されたし)といい、私の大好きな育英高校のイメージが崩れて行く・・・。ついでにひとつ疑問が残ったんだが、どーして育英って試合終了後、「フレッフレッいくえー」と自分トコの校名だけ連呼して引き上げていったんだ?他方の天理はというと何もせずに荷物片づけてたし。ひょっとして試合後にやるのは京都だけ?んなあほな、と次の試合の終了後に両スタンドを凝視していたら両校ともちゃんと交換し合ってた。うーん、未だにエール交換の仕組みがわからん。
第2試合は京都成章と南部の対戦。先の試合と同様、どっちの学校にも勝って欲しいが、夏には私の贔屓校(平安、ガシ、タニ、花園、西高etc...)に出てもらわにゃいかんので春のうちに甲子園に行っちまってくれい、と成章を応援することにする。あー久しぶりだなこの応援曲。なんせ98年の全国準優勝以来、夏の京都大会ではいつもあっさり負けちゃってたもんなー。私の期待していた選手達(3月辺りの記事を参照してちょ)は殆ど引退して抜けちゃっただろうけど、その先輩達の悔しさや後輩に託した気持ちを受け継ぎ見事に大谷・平安等に競り勝って府準優勝、近畿大会出場を決めた成章ナインがこのまま甲子園に行けますように、何とか勝てますように、と祈るもやっぱり今年の南部は強かった。5回終わって5−0。南部のエース岡本くんは制球こそ悪かったものの、常時130km/h後半台を出してそうな力強い投球で、成章打線が全く打てそうにない。投打ともに南部が圧倒しとる。こりゃもう終わりかな、とインターバルを利用して売店でカレーまん喰いつつ珈琲飲んでたらスタンドの方がワーワー騒がしいので急いでシートに戻ってみると塁上を成章のランナーが賑わしていた。で、2点返して尚満塁とし、次打者がなんと走者一掃の三塁打。このままいけばコールド負け、という悲壮感漂う三塁側スタンドがこのままひっくり返して甲子園へGO!!という雰囲気に一変する。けれども甲子園切符はそう易々とは手に入らない。何とか立ち直った岡本くんは成章打線にそれ以上追加点を許さず、逆に南部があっさり勝ち越しを決めてそのまま6−5で試合終了。うーん、正直なところ実力差がない、といえば嘘になるけれども成章の選手達はよく健闘しました。今日マウンドに上がった二人の投手はいずれも一回りも二回りも大化けする可能性のある1年生、まだ夏春夏と3度も甲子園が狙えるんだし、目的意識を高く持って日々精進していけば夢は自ずと叶うかもしれない。
この試合は一度行ってみたかったバックネット裏の最上段、放送ブース(夏の大会で設けられているボールカウント表示器下の実況席ではなくって、プロ野球中継等で使用されている密閉型のそれ)の並ぶ真横で観戦。うわっ、思っていたよりもかなり高いんだなぁ。あー、遠くの山並みが綺麗だ。太陽が丘では絶対見られない光景やなー。おや、なんか壁の所に人がたかってるぞなんやろ・・・と近付いてみると、お隣の陸上競技場でやってるアメフトの関西学生リーグの模様がばっちし見えるではないか。以後、試合がだれた展開になってくると、他の人達と一緒にアメフトを見ておりました。
第3試合は神戸国際大付と斑鳩。あの天理に競り勝って奈良を制した斑鳩、とどんなティームか期待していたのだが、先の試合での天理の大惨敗からして今秋の奈良は駄目駄目なんやろうなぁ、この試合も一方的に虐殺されちゃうんやろなー(神戸国際は兵庫大会西神戸予選で育英に勝っている評判の高いティーム)、とちょっと見る気が失せてくる。そもそも自分が運動しているのなら全然苦にもならないけど、一日に3試合もひたすら試合をじーっと観てるだけってのは辛すぎる。なんでこの人達は一日中野球ばっか観てて飽きひんのやろか?と周囲を見渡せば穏やかな陽気に誘われて眠ってる人の多い事。別にどうでもいい試合なんやったらそこまでして観戦するなよ、あんたら。私のすぐ近くで観戦リポートを書いていた東海大仰星の部員らは一部を除いて必死に試合を凝視していた(まぁみんなだいぶ集中力が途切れまくってはいたけども)。折角の日曜日にわざわざ極寒の京都まで来て全試合観戦も大変だねぇ。ま、勝ち進めば準決でこの2校のどちらかと当たるかもしんないんだから退屈でもデータ収集に努めるのだよ。そんなこんなで試合開始が刻々と近付く。
んで、このスタンドの馬鹿騒ぎに影響されたんだかどうだか判らんけども、国際の野手陣がファンブル連発。あちこちからクスクスと聞こえてくる。大一番を前に緊張している上にこの寒さやから選手は大変やなー、こいつら何笑っとんねん、と思っていたら、最後の内野ノックで一人の選手がトンネル。黒土から芝生へと勢いよく転がっていく白球。だが、外野手は既に整列しており、ボールは誰に止められる事もなくどんどんフェンス方向へ驀進していく。どうすんのかなー、と観衆が見守る中、国際の皆さんは一礼してそそくさと退場。速攻で出てくるトラクターやグランドキーパーの方々。ありゃ、あのボールどうすんねんやろ?数十秒後、トンボで地面を馴らす係員の皆さんの間をばつが悪そうに走り抜ける国際の控え部員の姿が。思わず大爆笑。嗚呼、レギュラーがヘマしたが為にこんな衆人環視の中で球拾いに走らなきゃなんないこの少年の心中や如何に。さあいよいよ試合開始だ。
埼玉県さいたま市(←おっ、ATOKで一発変換出来たっ!!)の政令指定都市移行に伴う区名の決定に対して、「見沼区」該当地域の一部住民が“沼と付くと地価が下がる!田舎だと思われる!”等といった理由から新区名を「東区」にするように求める署名運動を行っているそうな。なんだかなぁ。
唐突に東山の学園から封書が届いた。何やろ?と思いつつ封を切ると、中から硬式野球部の甲子園報告と1000円分の図書カードが出てきた。そうそう、幾ばくか払っといたら甲子園行きのバスに乗っけてくれへんかな〜、と思って8月の頭に東山高校へ一口5000円分の寄付金出してたんやった。その後、礼状のひとつも寄越さへんなんてなんちゅー学校法人じゃ、と暫く周りにブー垂れてたっけな。
親不知。北アルプスが日本海に没する地。500mクラスの断崖絶壁が続き、有史以来交通の難所として知られる場所・・・の方では勿論なくって、第三大臼歯とか智歯などと呼ばれているあの難儀な歯のおはなし。
4年ぶりの歯医者さん。待合室で待っていると扉一枚隔てた先から「キュィィィ〜ン」という例の嫌〜な切削音が聞こえてくる。既に生きた心地がしない。十数分後、名前を呼ばれ、まずは2階の小部屋でレントゲン撮影。ガツッ。おもむろに階段で頭を打つ。ええい、ここのたてもん全体的に高さ低すぎんねん、毎回毎回レントゲン撮る度にたんこぶ作らしやがって〜(と自らの学習能力の欠如は棚に上げてる拙者も拙者だが)。同じくやたらと背の低い装置にかがんで無理矢理頭を挟み込み、装置のバーを噛む、というとてつもなく変な格好であのぐるぐる回るカメラでの記念撮影も無事終わり、いよいよ診療台へ。んで先生のご登場。「それでは、今から痛み止めの処置を行います。」注射される事もなく、ドリルでガーガーされる事もなく、何か薬品をボンドで詰めておしまい。あー、良かった。親知らずだけにどんな恐ろしい事されるんやろー、って思ってたけどこんな簡単な治療で良かったんやー、とほっとしていたら先生がぼそっと一言、こんな事を仰るではないか。「この歯は(中略)なくなっても影響がないので、次回に抜歯します。」 ゚Д゚ 嘘やろー。
顔面蒼白のまま、いざ診療台へ。強力ライトが点灯される。「大丈夫ですかぁ?」と助手の女性が心配そうに何度も尋ねてくる(一体どんな表情だったんだ、ワシは?)。「それでは始めます。」と先生。口をあ〜んと開け、もうどうにでもなりやがれ、と全てを先生の手に委ねる。麻酔液が歯茎やほっぺたの内側に注入されていく。どうせやったら全身麻酔にしてくれたらこんな精神的苦痛を受けないで済むのに・・・と思わずにはいられない。ちょっと間を置いて、少し他の患者さんの治療を行っていた先生がこっちに戻ってきた。「いきますよ。」と言うその手にはお前それ医療器具じゃなくて日曜大工道具やろっ!!ってなツールが。その器具が小生の親知らずをグワシッと掴んだかと思うと一気に力が加えられていく。うぉーっ脳天がシャッフルされるぅ。それよりめっちゃ痛いやんけぇ〜。顔を歪めてフガフガ言ってたら「うーん、もうちょっと麻酔した方がいいなぁ。」と先生。おいっ、頼むから後遺症残らんギリギリまで、いつも以上に麻酔しまくってくれぃ。また暫く時間を置いて再度抜歯が執り行われる。診療室の有線からはゴンチチの「放課後の音楽室」が流れているが、こちらはまさに粛々と為されている最中の死刑執行室である。前日にネットで見た“抜歯中に意識がなくなり酸素吸入で三途の川から帰ってきた”旨の体験談が鮮やかに脳裏に蘇る。ガリガリガリ・・・と物凄い音がひたすら続く。歯を引っ張りながら先生が「ちょっと歯が虫歯で脆くなっているので破裂する様な音が聞こえてくるかも知れません。」と説明してくれる。パニック状態の最中に適切に進行状況を教えて頂けるのはとてもとても有り難いが、同時に人の歯をグイグイしながら冷静な顔して淡々と説明しているあんたが怖いよ、先生〜。その後、ガコッという感じの鈍い音がして、歯の根っこが抜けた様な感覚がする(麻酔かかってるからあくまでも憶測だが)。あ〜、やっと終わった、と思ったのも束の間、今度はやっとこみたいな器具が口の中に入り、三たび脳内シャッフル。死ぬ〜、死ぬ〜。ガタガタ、ギシギシ、グワワワ〜。脳内時間で数時間ぐらい経過した頃に突然「カコッ」という軽い感じの振動が伝わってきた。「よしっ。」と先生が呟き、やっとこがピンセットに変わる。ついに、ついに、恐怖の抜歯が終了したのである。あ〜、歯茎切開されたり顎を切削されたりせんで本当に良かった。
このガーゼを噛んだまま最低でも30分間は口を開けないで下さいねぇ―抜歯後の諸注意の書かれた用紙と処方箋を貰って医院を後にする。放心状態のままその足で斜向かいの薬局へ。店内に入ってからまだ口を開けちゃいけないんやった、と超うっかりミスに気付く。カウンターで薬剤師さんに「んんばぜん、ごれごねあいじます(すんません、これお願いします)。」と処方箋を手渡す。左のほっぺを手で押さえながらおいらは今抜歯した直後やねんぞー、と必死でアピールしながら。不審がる薬剤師さんから何とか抗生物質をゲットしてとぼとぼ帰宅。麻酔が切れたのか、一気に抜いた辺りが痛み出す。痛みと共に今まであった場所にあるものがない、という喪失感。暫くはこの痛みと喪失感に苛まれるんだろうなぁ。でも、今回は幸いな事に上記に挙げた諸々の体験談の様な悲惨な目をせずに済んだだけでもよしとしなきゃいけないんだろうな。だけど、まだ右上にも親知らずは存在してるし、将来下の2箇所にも生えてくるかもしれないんだよなぁ...。
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