斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年02月19日(土) |
ツリーとメッシュの複合体としてのネットワーク |
先日僕は、ネットワーク構造はメッシュ構造に向かうと書いた。 だが、実際のネットワークの基本構造はメッシュ構造ではなく、ツリー構造である。
ツリー構造とメッシュ構造は対立概念ではない。 ツリー構造とメッシュ構造は相互に依存、補完関係にある。
インターネットのIPアドレスはツリー構造で管理されている。 それは、IPv4だろうとIPv6だろうと同じだ。 管理体系はあくまでもツリー構造。 RFIDタグのIDもIPアドレスと同様にツリー構造で管理されている。
ツリーとメッシュは相互補完関係にある。 生物、世界、この世界の全てはツリー構造を持ちつつもメッシュ構造と共存している。 ツリー構造とメッシュ構造の相互補完関係をホリスティックとなぞらえる場合もある。
人間を見てみる。 僕たち人間は多くのパーツで構成されている。 腕、足、胴体、頭。 胃、腸、心臓、肝臓、脳。 それぞれの臓器や器官は、それぞれ独立した器官であると同時に、ニューラルネットワークによって、ひとつの統合体としての僕という人間を構成している。 臓器や器官を分解していけば、構成単位は細胞である。 更に分解していけば、原子レベルにまで分解される。 僕らの身体を例に取るならば、統合体としての個人としての僕がrootとして存在し、その下位に臓器や器官が存在し、更にそれは細胞へと分解され、果ては原子まで分解される。 ツリー構造である。 僕自身は原子レベルまでツリー構造により、分解されるのだけれど、僕は統合体として存在している。 僕の器官はそれぞれがツリー構造を持ちつつも、統合体としての僕を構成している。
僕は自分自身を統合体として全てを意識の上で管理しているわけでもない。 僕は、手、足、口、目などの器官を自分の有意識下でコントロール可能だけれど、胃や肝臓を意識的に動かすことはできない。 僕の胃や肝臓は意識を持って活動していない。 僕は自分の多くの器官を意識することはないし、自分が統合体である、という意識もない。
逆に僕という個を外に向かって考えてみる。 僕は、いくつかの共同体に属している。 家族、友人、街、ネット、国家、地球。 僕は、個としての統合体でありながら、僕という個よりも大きな単位の構成要素である。 企業や、家族、国家といった意識下にあるコミュニティーだけではなく、無意識の集合体の部分存在でもある。 僕のどこまでが、僕であるのかは、免疫的な区分けでしかない。
飛ぶ鳥や海を泳ぐ魚の群れは、リーダーが存在しているわけではないのに、集合体として統率が取れている。
ネットワークの構造の基本形態はツリー構造だ。 だが、ネットワークを構成する要素は、P2Pを経て、P2nになり、n2nになる。そして、n2nでメッシュを構成する。 n2nで構成されたメッシュは、それぞれが連携をはじめ、さらに上位のメッシュを構成する。
ネットワークのノードはそれぞれが、部分集合として統合されメッシュを構成する。 構成されたメッシュは、また別のメッシュと連携を行う。 それぞれのメッシュは、閉じてもいない。 メッシュとメッシュは、それぞれの部分を共有し合う。 そこには、中心は存在しない。 統率する者もいない。 メッシュは、それぞれが自律的に生まれ、自律統御される。 ツリー構造を構成するそれぞれの要素がメッシュとして、複合体を作り上げる。
自律した複合体が単位となり、さらに別の複合体とメッシュ構造を生み出し、連携する。 それらの複合体の単位には、さまざまなレベルが混在している。
僕らは、ネットワークを構成するひとつのノードなのだ。 そして、そのノードとしての僕自身も、複数のツリー構造とメッシュ構造で構成されている。 僕自身が、複数のツリー構造とメッシュ構造を持ち、外部に存在するいくつものツリー構造とメッシュ構造による複合体の部分的存在なのだ。
僕らがスタンドアローンな存在であることは、あり得ない。 ツリー構造を持ち、それぞれのツリーの様々なレベルを共有化しているメッシュで構成された存在なのだ。
かつて僕らはアナログ存在として、メッシュに属していた。 今は、僕たち自身がデジタル化され、メッシュを構成しようとしている。 僕たちのインターフェイスの大部分は未だにアナログだ。 だけど、僕たちのインターフェイスの多くは、デジタル化されつつある。 自分の脳のどこまでが、アナログであり、どこからがデジタルなのか? どこまでが、僕の内部記憶なのか、どこからが外部記憶なのか? 境界は曖昧だ。
ネットワークはツリー構造とメッシュ構造の複合体である。 そして、その構成要素は、コンピュータ端末だけではない。 ノードの先にあるのは、人であり、モノであり、コンピュータであり、センサーであり、ロボットであり。 様々なツリー構造とメッシュ構造の複合体が、様々なレベルでの別のツリー構造とメッシュ構造をを構成する。 メッシュ構造の複合体がグリッドなのだと思う。 メッシュ構造の複合体はオートノミックにグリッドを構成する。
僕たちは、今、種としての大きな変革期にいるのではないか、と思う。
■技術動向――急速に進展するサーバの仮想化ネットワークの普及と高度化で新たな段階に突入 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0502/04/0410_p32_35-global.pdf
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