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2005年01月26日(水) チョー不機嫌なジーン

人間は言語を獲得することにより、飛躍的な進化を得た。
コミュニケーション能力が人間を人間たらしめている。
僕らは、生物としては縄文時代から何の進化もしていない。
だが、グーテンベルクの活版印刷、ベルによる電話の発明により、人間の意識は時間、空間を超越する能力を得た。
現在、僕らはコンピュータネットワークにより、意識すら共有可能な段階にさしかかっている。
意識が共有可能になる、ということはすなわち、「個」としての人間の意味の喪失でもある。
僕らは、グリッドの一構成要素。
フラクタルでいうところの自己相似形なのかもしれない。
個体としての人間存在は、免疫学的にのみ、個として識別される領域に近づきつつある。

僕らは、既に生物学的見地による遺伝子理論では説明のつかないところにいる。
僕らの存在意義は、レガシーな遺伝子論では説明がつかない。
僕たち人間が、人類という種の部分的存在として、もっと言えば地球環境の一部として、「ある種の意志の奴隷」である、と考えると、僕たちは個体として、生物学的に子孫を残す意味が見いだせなくなる。
生物学的に子孫を残す意味はもはや存在しないのかもしれない。
ミーム(文化が「変異」「遺伝(伝達)」し「選択(淘汰)」される様子を進化になぞらえたとき、遺伝子に相当する仮想の主体)を残すことのほうが意義が大きい。

僕らの意識の大半は、既に共有化され、並列化されている。
当初、多様化に向かっているかに見えたこの世界は、実は「並列化」され、同質化へ向かっている。
様々な情報が生まれ、そのなかで「変異」し、「遺伝(伝達)」し、「選択(淘汰)」される。
いきつく先は、同質化だ。
つまらない世界。

僕はかつて、ネットは世界を多様化に向かわせるものだと信じていた。
だけど、結果はとしての現実は同質化された世界。
ネットは情報の「変異」、「遺伝(伝達)」、「選択(淘汰)」の速度を飛躍的に高めた。
変異体が現れても、あっというまに伝達され、淘汰され、消費される。
「変異」、「遺伝(伝達)」、「選択(淘汰)」のプロセスは加速度を高め続ける。
脳は並列化され、世界は同質化する。

僕は変異体であるべく努力を続けている。
だけど、僕の変異体であろうする努力は、無駄に終わっている。
同質化されて、生き残るか、淘汰されるだけ。
淘汰されていないだけマシだと、感謝すべきなのか?

僕は、自分の生物学的存在意義はもはや存在しないのではないか?と思う。
自分の生物としての遺伝子を繁殖させる事に意義に重きを置いていない僕は、ある意味、老人である。

僕の職業は「脳の時間貸」である。
僕は何の資格も持っていないし、専門技能もない。
「脳」を時間単位で貸し出すことで対価を得ている。
僕の脳は時間あたりの利用料が単価設定されている。
商売道具は脳だけ。
値札つきの脳。
僕の身体が必要とされているのは、ユーザーインターフェイスの不完全さの補完に過ぎない。

僕がミーム発生器としての存在であり、それが僕のこの世界での存在価値だとすると、僕の生物学的存在価値を見いだすことは難しい。
生物学的存在価値が全くない、とまでは思いたくないけれど、それほどの価値があるとは思えない。

そうか、それで僕は未だに独身なのかっ!
なるほど、なるほど。
僕は「チョー不機嫌なジーン」である。




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