斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
β版
目次 | <<前へ| 次へ>>
2005年01月20日(木) |
「ツーカーS」、正直、スマンカッタ |
「ツーカーS」が売れているらしい。 「ツーカーS」とは、カメラやメール機能はおろか、液晶画面、メモリダイヤル、マナーモードすらついていない、という僕の常識では理解できないレベルの超シンプル携帯である。 自宅用のコードレス電話よりも更にシンプルである。 製品名の「S」もシンプルの「S」。
僕は、「ツーカーS」が発表されたとき、悪ふざけだと思った。 「話せりゃええやん」と言ってもこれはいくらなんでもやりすぎだ。 いくら老人向け、とはいえ、メモリダイヤルすらないんじゃ、電話をかける度に、いちいち電話番号を打ち込まなきゃいけないじゃん、っと。
ところが、世の中は僕の想像をはるかに超えていた。 世の中のデジタルデバイド、というかデジタルデバイド以前の携帯電話レベルでのデバイドは、想像以上に大きかったのである。 「ツーカーS」、正直、スマンカッタ。
よくよく自分の周りを見渡してみる。 いちばん身近なベンチマーク対象は僕の両親である。 僕の父はカメラ、メール機能、i-modeつきの携帯電話を使用している。 僕は、父が携帯電話を使う様子を観察してみた。
父は携帯電話で電話をかける際、まずは手帳を取り出し、住所録の電話番号を見ながら電話番号を直接打ち込んでいた! すなわち、携帯電話のメモリ機能を使っていない。 聞いてみると、「携帯電話への文字の入力方法がよくわかならい」、という理由で携帯電話のメモリ機能は全く使っていなかった、とのこと。
更に聞いてみると、カメラ、メールは全く使ったことがないという。 i-modeに関しては、そのような機能があることすら知らなかった。
僕の父にとっての携帯電話は、全く必要としない機能のカタマリであり、必要としない機能のせいで、余計なボタンが増え、使いにくいだけのシロモノだったのである。
僕の父は、まだ60歳を過ぎたばかりで、老人、とまではいかない。 現役で働いているし、車の運転も普通にこなしている。 でも、携帯電話の「話す」以外の機能は全く使っていないのである。 僕の父にとって「話す」以外の機能がてんこ盛りな現在の携帯電話は、単に使いにくいだけの機械だったのだ。
そして、次に母に目を移す。 母は、メモリ機能は使っている。 メールもかなりヘビーに使っている。 だが、カメラ、i-modeは全く使わない。 最近の愚痴は、「メールを使えない友人、知人とのやりとりが不便でしょうがない」である。
僕の両親の世代である「60歳前後」では、携帯はほぼ全員が使用しているが、メール機能を使っている人と使っていない人が混在し、メールが使える、使えないでコミュニケーションのデバイドが起こっている、という状況らしい。
僕の両親より上の世代になると、メールはほとんど使わないようだ。 通話を主な利用目的とした携帯電話の普及率も下がると思われる。 デジタル・デバイド云々の前に、通話でのコミュニケーションですら、深刻なコミュニケーション・デバイドが生じているのが現状である。
僕の両親にとっては、DoCoMoの「らくらくホン」ですら高機能過ぎる。 「ツーカーS」の登場は、僕にとっては、当初は理解不能だった。 でも、それを必要としている人たちは、たくさんいるのだ。 他のキャリアもぜひ追随して「超」シンプルな携帯電話を発売してほしい、というか発売する社会的責任がある、と思う。
■ケータイ新製品SHOW CASE 「ツーカーS」 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/showcase_top/21845.html
目次 | <<前へ| 次へ>>
|