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2005年01月19日(水) 携帯電話の「放送と通信の融合」に関する間違った方向性

2005年度末には、地上波デジタルワンセグ放送がはじまる。
来年の今頃には携帯電話各社から、「テレビケータイ」が発表され、盛り上がっていることだろう。
直近の携帯電話の進化の方向性は「PDA化」、「Felica搭載」、「地デジ」の3点である。
で、Felicaと地デジ、従来のiモード、iアプリが連携してほにゃららら。
「PDA化」と「Felica搭載」は、いまさら書くほどのことではないので、「地デジ」についての所感。

「地デジ携帯電話」とは、簡単に言ってしまえば、「携帯電話でテレビが見れます。通信じゃないので、パケット料はかかりません。そのうえ通信機能があるので双方向で番組に参加したり、ショッピングを楽しむことができます」と、いったサービスである。
だが、ただテレビが携帯で見れても、番組のアンケートに参加できても、ショッピングができても、おもしろくも何ともないので、放送事業者と携帯電話キャリアが、キラーコンテンツは何なんだろう?とアタマを悩ませている、というのが現状。
そして、答えはまだない。

だが、待てよ。
である。

そもそも地デジ云々の前に、携帯電話でテレビなんか見ないぞ。
携帯電話でノイズなしでテレビが見れて、そこで双方向コミュニケーションができれば、うれしいか?と問われると、僕は首を傾げざるを得ない。
双方向性云々の前に、携帯電話でテレビを視聴する、という事そのものに違和感を感じる。
もっと言えば、テレビに限らず、携帯電話で動画コンテンツを視聴する、ということに果たしてニーズがあるのか?

映像コンテンツは時間消費型のコンテンツである。
基本的にリニアな時間軸のなかでしかコンテンツを楽しむことができない。
テキストや静止画のように時間を無視して、自由にジャンプすること、自分のペースでコンテンツを楽しむことができない。
どうしても「時間」という制約条件が生まれる。

携帯電話のコンテンツ消費は、電車の待ち時間のようなちょっとした隙間時間に行われる。
首都圏であれば、乗り換えなしで電車に乗っている時間もそう長くはないので、時間消費型のコンテンツは消費しづらい。
動画は「時間消費型」という制約条件がある限り、普及は難しいと思う。
いくらインタラクティブにしようと、コンテンツを細切れにしてジャンプできるようにしようと、「時間消費型」という動画コンテンツの宿命的制約条件から逃れることはできない。

僕は、携帯電話事業者も放送事業者も「放送」という概念を「動画」、「音声」にこだわりすぎているように思う。
「放送」は「動画」、「音声」でなくても良いはずだ。

僕の考える携帯電話における「放送」と「通信」の融合とは、「データ」を中心とした放送である。
携帯電話向けには、「データ」を「放送」として携帯電話のメモリにキャッシュする(リアルタイムじゃなくキャッシュであることが重要)。
ここで流されるデータはマス向けに編集されたベースとなるコンテンツである。
ウェブサイトの巡回ソフト的かもしれない。
放送事業者がウェブサイト的なデータコンテンツを携帯電話に対して「放送」として流す。
ユーザーは携帯電話のメモリにキャッシュされたウェブサイト的なコンテンツを視聴する。
そして、キャッシュのなかに情報が存在しない場合、「通信」として、コンテンツを参照する。
コンテンツのベースはあくまでも「テキスト」であり、「静止画」である。
意地でも「動画」を流したいのであれば、ベースとして動画があるのではなく、ウェブサイトと同様に静止画や動画がベースとしてあるべきだ。
テキストや静止画がベースとしてあり、動画が見たければ、動画をキャッシュ内から呼び出す、もしくは通信として参照する。
百歩譲ったとしても、インタフェースは現在のEPGとウェブサイトの中間的なものにすべきだと思う。

僕はこう思うのだけれど、世の中の流れはまったく違う。
携帯電話事業者、放送事業者はいい加減に、「動画からの呪縛」から逃れたほうが良い。

■1セグ放送×モバイル放送 徹底比較
http://www.itmedia.co.jp/mobile/features/housou/index.html
■携帯向け1セグ放送、魅力を「感じない」が過半数(2005/02/03追加)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0502/02/news082.html




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