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2003年07月02日(水) コンサルタントは知的所有権が生命線

今日、クライアント先で知的所有権の問題で少し揉めかけた。
結果的にはクライアントに納得してもらったのだけれど、知的所有権の問題は結構やっかいである。

コンサルティングファームがコンサルティング業務を行う場合、知的所有権はコンサルティングファームとクライアントの共有財産となる。
ごく稀にコンサルティング業務を行う過程で得られた知的資産の全ての所有権を占有したい、というクライアントが存在する。
コンサルティングファームはそのような契約は締結しない。
場合によっては仕事そのものをお断りする。
だが、国家機関や特殊法人等、例外的に知的所有権の共有、といった契約を締結することができない場合もある。

今回のクライアントは特殊事情により、知的所有権の共有が認められなかった。
僕は長い長い交渉の末、知的所有権はクライアントに所属するが、無制限の利用権を僕達に認めてもらう、という点で落ち着いた。
名目上の知的所有権はクライアントに移転するが、僕達は結果的には権利を放棄していない。

しかし、名目上の権利の移転とは言っても、僕達は権利を放棄することになる。
僕は、名目上とはいえ、権利を放棄することは認めたくなかったので、クライアントへの報告書には契約書に記述された最低限の内容のみを掲載した。
権利を放棄したくない付加価値の高い内容については、僕達のコピーライトを付記したうえでクライアントに提出した。
用心のためにパワーポイントやワードのファイルでは流用可能なので、プロテクトのかかったPDFファイルで提出した。
僕が、なぜそこまで権利にこだわるのか理解できない同僚も多いが、僕はコンサルタントの命は知的所有権であると信じている。

知的所有権に対してそれほど明るくないクライアントは、当然の事ながら訝しがる。
なぜ、報告書がこのような変則的な形式になっているのか、という疑問を投げかけてくる。
知的所有権に関して関心のない日本企業のサラリーマンにとっては、僕のように契約書や知的所有権にこだわる人間は「日本語をしゃべるガイジン」である。

僕はコンサルタントであり、クライアントのビジネスを変革することが仕事であって、知的所有権をクライアントに売り渡す仕事をしているわけではない。
僕は作家でもライターでもなく、コンサルタントである。
時間単位で脳を切り売りしているわけでもない。
僕はクライアントに知恵を与える事には努力を惜しまないが、知恵を特定のクライアントやプロジェクトに独占されることは認めない。

コンサルタントは時間単位でフィーを請求するので、クライアントにとってみれば、コンサルタントがクライアントのために費やした時間に得られた知的資産は全てクライアントに帰属すべきだ、と考えるクライアント担当者が多い。
だが、コンサルタントは自分の頭だけで全てを考えるわけではない。
コンサルティングファーム内に蓄積されたナレッジデータベースをフル活用するのである。
コンサルティング業務がコンサルタントの頭脳の時間貸しであるのならば、コンサルティングファームは組織であることの存在価値を失う。
コンサルティング業務がコンサルタント個人の資質に大きく依存しているのは事実だが、組織としての知的財産を活用しているからこそ、大きな付加価値を創出できる。
組織としてのコンサルティングファームはナレッジの蓄積が生命線であり、存在価値である。
知的所有権を放棄することはコンサルティングファームにとっては、自分達の存在価値を否定する事につながる。
知的所有権を放棄する、という事は場合によっては、同様のテーマのプロジェクトをファームとして今後は全て放棄する、ということにも繋がりかねない。
なので、僕は知的所有権には強くこだわる。

でも、知的所有権にこだわっていると「カタイ事を言わずに、まあまあ」という人間が多いのも事実。
僕らの存在価値は知的所有権なのにね。
自分の頭脳だけで商売をやっている、と思い込み、知的所有権をいい加減に考えているコンサルタントは、救いようのないアホである。

ごめん、つまらなかった?




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