2003年11月14日(金) |
認知の歪みの定義(4) |
::::::『いやな気分よさようなら』より:::::: デビット・D・バーンズ
■マイナス化思考■ (disqualifying the positive)
うつ病でもっと始末の悪い錯覚は 何でもないことや良い出来事を 悪い出来事に すり替えてしまうことです
単に良いことを 無視するだけではなく 正反対の悪いことに 替えてしまうのです
私はこれを 「さかさま錬金術」 と呼んでいます
中世の錬金術師は ただの鉄を金に変えることを 夢見ていましたが
うつ病者はこれのちょうど 反対をやろうとしています
つまり黄金の喜びも 鉛の気分に変えてしまうのです
しかもそれを意識することなしに
このことは 誰かにお世辞を言われたときに あなとのとる態度のことを考えると 理解しやすいでしょう
たとえば仕事とか 服装とかについて 誰かにお世辞を言われたとします
おそらくあなたは
「あの人はいい人だから お世辞を言ってくれるんだ」
と考えて その人の言ったことを あまり大きくとりあげなくて
「いや、たいしたことありませんよ」
と謙遜するでしょう
この場合 お世辞に対する反応ですから これで良いのですが
もし万事この調子で 人から言われた誉め言葉や 他の良いことを無視していては さぞ暗い人生になってしまうでしょう
マイナス化思考は 認知障害の中でも 最もたちの悪いものです
たとえば いつも自分のことを 二流だと思っている科学者は 実験がうまくいかないと
「やっぱりそうなんだ」
と考えますし もしうまくいっても
「これはまぐれだ」
と考えます このような考え方は悲惨です
そして時に ひどいうつ病を引き起こします
重症のうつ病で入院した ある若い女性は私に言いました
「私はどうしようもない人間だから 世の中で誰一人 私のことなんてかまってくれません 私って完全に孤独なんです。」
彼女が退院したとき たくさんの患者や 病院のスタッフが見送りました
しかし彼女は言いました
「これは本当のことでない 病院の外の世界の人なんて 誰も私のことはかまってくれないんです」
そこで私は聞きました
「病院の外だって 家族や友達がたくさんあなたのことを 心配しているじゃないですか それをいったいどう考えるんですか?」
彼女の答えはこうです
「それも本当のことじゃないんです みんな私のことを知らないんです いいですか、バーンズ先生 私は完全に腐った人間なんです
この世で一番悪い人間です 一瞬でも誰かが好いてくれるなんて ありえないことです。」
このようにマイナス化思考によって 明らかに現実と異なる歪んだ マイナスの信念をもってしまうのです
もちろん たいていは ここにあげた例のように 極端ではないにしても 良い出来事を 無視してしまうことはありませんか?
そのようなやり方は 人生の豊かさを奪い 必要以上に寂しいものにしてしまいます ::::::::::::::::::::
昨日とても悲しいことを 知りました
長い間 学校や地域の子供達の 世話をしていた方が 自ら命を絶ちました
病気の奥さまと3人の子供を残して
詳しい事情は分かりませんが 会社の倒産が一因のようです
お子さんの一人は 家の息子と同級生
病気のお母さんに代わって 買い物をする姿を何回か 見かけました
胸が痛みます
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