ディリー?闇鍋アラカルト
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2005年05月16日(月) 切り取られて貼り付けられた歴史

歴史とはこの世が始まって以来の全ての起こった事を意味する。
記述された歴史の場合は、その起こった事のすべての内のほんのほんの少しの事に付いて記述している。間違いや書き手の好みも含まれている。
通常「歴史」と言うと、政府機関によって公認された教科書的な歴史を思い浮かべる人が多いと思う。それは歴史の全てではない。人類の歴史の概略でもない。人類はどのように愛し合ってきたのか?などという事に付いて書かれていない。どのように争ってきたのか?という事については書かれている。大きな虐待を加えた側の視点から記述される事が多い。殺戮とか虐待という言葉は通常使われず、征服とか治めるなどという表現が好まれる。例えば「ピサロはインカ帝国を征服した」という表現になり、以後スペインを母国とする人々に治められる訳だが、あなたが治められるor征服される側としてピサロ達と出会った以後の体験や経緯について記述するならかなり違った表現になるのではないかと思う。
また、インカではスペインにも負けないだけの文化が既に存在していたが、その事についても世界史の教科書では殆ど記述がないし、ピサロに出会う前にも長い歴史があったはずなのにそれについても記述される事は無い。滅ぼされる直前に現れ、滅ぼされて消える歴史なのではなく、そのように記述された歴史という事なのだ。
同様な事は日本史にも言え、日本史ではアイヌについての記述が殆ど無い。また、庶民がどのように愛し合っていたかなどという記述もない。どのようにして鼻をかんだかとか、ウンチの処理はどうしてたかとか、何をどのようにして食べていたかとか生活に関わる部分については書かれない事が多い。だから、大抵の人は知らない。弥生時代に稲作が伝えられたとは教科書にはある(縄文時代に既に稲は栽培されたらしい)が、稔った米が口に入る過程は書かれない。どのようにして脱穀したのだろうか?玄米を食べていたのだろうか?消化が悪くまずかったのだろうか?
私たちが生活を考え直してみようとする時、過去はどのようであったかが分かれば大きな参考になるはずなのにそれは歴史の本では殆ど書かれる事は無い。
そして、「ヒトは、大昔から殺し合っていた・・・・このヒトの社会だけに存在する戦争と殺戮。それは、決して現代社会だけの事ではない。・・・・要するに、ヒトはその進化史の初期から、それなりに殺し合っていたという事だ・・・(栗本慎一郎著 パンツをはいたサル)」などという本が結構売れたりする。
大抵の歴史の本が支配という所に焦点を当てて書かれている以上、殺し合いによって支配者の変遷が有った以上、それが人類の歴史の本筋であると思い込んでしまう人が多いのは仕方のない事だと思う。栗本氏の場合にはそれを進化の初期にまで持ち込んでしまったのだ。同じ種を殺すという事はヒト以外にも存在するが、そういう事については論述しないし、どのような時に争いや殺人が起こったのか?全人口の何%が殺人を犯したのか?などの考慮も無く「ヒトは他の動物と違って殺しあうのが特徴である」という筋に従って論旨が展開される。
「歴史に学ぶ」という言葉があるが、私たちが与えられた歴史というのは切り取られて貼り付けられた歴史である事に気づく必要がある。そうでなければ与える側の論理に簡単に組み込まれてしまう事が起こるだろう。


いなっち |MAILHomePage

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