デイドリーム ビリーバー
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2002年10月08日(火) 不安だったのは彼のほう

2日に1度の電話を、気まずいままに消化するだけの一週間。

彼から、定期的にきちんと電話が来ることが、救いだった。
私だったら、楽しく話せないのわかっていて、自分からかけたりできない。

最初のうちは、体に力が入らないし、
毎日、抜け殻みたいになったりしていたんだけど

そのうち、どうしてこんなに気まずいのか、だんだんわからなくなってきた。


そもそも私は、確かに働くの好きだけど、何が何でも共稼ぎとか
思っているわけでもないのだ。子供が生まれるとか、いろいろな事情によって
その時その時で、ベストな道を選べばいいと思っているし。
彼だって、何が何でも家にいろと、高圧的に言っているわけでもない。

ていうか、その前にまず、肝心の結婚の約束すらしてないし。
いったい何年後のことを想像して、今から落ち込んでたんだ?私。

理想どおりなんてつまらない。
未来は、これから二人で、つくっていくんじゃなかったの?
それこそが、私の大好きな「冒険」じゃないの?

強さだとか弱さだとか、安定だとか、たたかうだとか
うすっぺらなことを色々と言って、要するに
「あいつも、男とつきあうようになって、つまんねえやつになったなあ」
って思われたくないだけの話で。
で、誰に、そう思われたくないのか、と言ったら、特に誰の名前も
具体的に思い浮かんだりはしないのだ。

つまんない人間になるかどうか、つまんない未来になるかどうか
は、結局、自分次第。

…あれ?

失敗した→生きる価値がない とか
失恋した→もう誰も好きにならない とか、そう言う友達に
「それは違うでしょ」って思っていた私が、なんで

彼とちょっと気まずい→一人で生きていくべき
なんて、極論に行き着くんだ。

ネガティブな思考にはまるには、いくつかのパターンがあって
その代表的な一つが「極論に走る」ってやつだと、よーく理解していた
はずなのに、私はまたやらかしてしまったらしい。



しかし、どうして今回、こんなに気まずくなってしまったんだろう。
なんか、おかしい。
そう考えて、ふと、
今までは、私が多少落ちても、彼が冗談を言ったりして
笑って受け止めてくれていたことに気がついた。
今回はそれがなかったんだ。

友達だった頃は、彼も、いろいろな悩みを私に相談していたのに
つきあいだしてからは、あまりそういうことを言わなくなった。
いつだったか、それを彼に指摘したら
「俺は強くなったんや」とか、意味不明なことを言っていた。

「友達としての私」をなくしたのは、彼も一緒だったのかもしれない。
恋人だからこそ、言い辛くなってしまったこと
吐けなくなってしまった弱音が、きっといっぱいある。

そして、それは多分、彼の夢のことだと思う。



彼には夢がある。
そのために、8年付き合った彼女と別れてしまった。
彼の希望は簡単に叶うものでもないし、すぐに生活が安定するものでもない。
サラリーマンをこのまま続けて、実家に近いこの町で、結婚して欲しい
という彼女と、話し合いがつかなくて、途中別れたけどまたつきあって
それでもやっぱり最後の1年は、ケンカが絶えなかったという。
(これは、友達だった頃に聞いた話だから、あながちウソでもないと思う)

ちなみに、その最後の2週間ぐらいが、私とかぶっている。
まあ、実際につきあってくださいと言われたのは、別れた後だし、
とめられなくてキスしてしまってから、別れるまでの2週間も
何があったわけでもないんだけど。



一週間ぶりに会って、きりだしてみたら
やっぱり、不安だったのは彼のほうだった。

将来的に住む土地として、いくつか候補があがっていて
でも私が転職したばっかりだし、仕事楽しそうだし、更に転勤もありうるとかいっていて、
うまく言いだせなかったみたい。

どうりで、妙に、私を縛るみたいなことを言ってごねていたわけだ。
まわりくどいこと言ってないで、
ついてきてほしいならついてきてほしいって、言えばいいのに。

「広島」「北海道」「沖縄」「長崎」
私の顔色をうかがうように、ひとつひとつ地名を言うのがおかしくって
くすくす笑っていたら
「それに、国内とは限らんねんで」
って脅すように、また、いくつかの国名を言った。
「慣れへん土地で、友達もおらんねんで」
って、私、卒業してから、いくつの町を一人で転々としてきたと思ってんの。

「いいよ」って笑いながら言ったら、彼はますます真剣な顔をして
「それに俺なんかと一緒におったら、いつ結婚できるかわからんし
 収入安定せーへんし、将来テント暮らしかもしれんねんで!」
「ふたりだったらきっと楽しいよ。魚釣って焼いたりしようよ」
本当にそう思ったから、そう言ったら
「そんなことさせるわけないやろ!」って、逆に怒られた。

わあ、この人混乱してるって思ったら
しかもその混乱の原因が、私を必要としてくれているからだってわかったから
なんか、ほんとに、だんだんおかしくなってきた。
一緒にいる未来のことを、話してくれるのがこんなに嬉しいって
どうしてわからないんだろう。

そう思ったら、自然と言ってしまっていた。

「私は、あなたの行くところなら、どこへでもついて行く」



まさか私が、こんなベタなことを口にするなんて、一年前までは思いもしなかった。
だけど、ストンと当たり前のように、このとき、私は言っていた。

今までいっぱいしてきた失敗も、無駄じゃないと思った。
職を何度か変えたことも、何しても食べていける自信に繋がったし
いっぱい転んで、いっぱい傷つくって
「彼についていくことのできる強さ」を、手にしたんだと思った。

彼は、小さい声で「ごめん」と言って
私が笑いながら「どうしてあやまるの」って言ったら
私をぎゅっと抱きしめて、「ありがとう」って言った。そして少し泣いた。

そう言えば、つきあう、つきあわないの頃も
こんなふうに何度か泣いていたなあって思い出した。
本当は泣き虫な(私も負けてないけど)この人を
いつのまにか、随分と無理させてしまっていたかもしれない。



言いたい事を言ってしまった彼は、またいつもの、エロ関西人に戻ってしまった。
どれぐらい低レベルかと言うと、本屋に入るなり私にささやくのだ。
「おっぱいがいっぱいやな!」
「はぁ?」
「一人2個の五十人として、おっぱい百個はあるねんで。この本屋」
「はー?」

もうほんと、なんとかしてください。さっき泣いたカラスが、じゃないけど。
私のさっきの、あのセリフは、ちゃんと頭の中に留まっているんでしょうか。
心配です。


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