rioshimanの日記
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今日の天気もうずうずしていた。いつもより早く午前中に港に行って色づけしていない未完成の絵に取りかかろうとすると、それまでは午後2時頃から描いていたので光線の具合が全く違っている。こりゃ駄目だ、と他の場所に移ろうとするが、まだもう一つ別の港の風景が途中になっていたのを思い出し又戻り取りかかる。
途中でドイツ語を話す中年の女性が私の絵を見て声を掛けてくれる。その褒め方も独特だ。「あなたの持っているセンス、わたし好きよ!」 オーストラリアから来た画家だという女性がやって来て絵のサゼッションしてくれる。「こっちの画面の構成はパーフェクトね」この町にやってくる観光客たちは本当にフレンドリーだ。お世辞でも嬉しい。
だが間もなく空の模様が怪しくなり、雨のしずくを少し感じるようになって来たので慌てて宿に引き返す。
宿では宿のご主人が待っていた。先日約束した島の名所を案内しようと言うのである。私も好奇心でついて行くことにした。 今日は東京─横浜間ぐらいの遠乗りになるという。南の方向にオートバイは走る。 おじさんは風体からして60歳後半だと思うが、軽い車(SUZUKIの100cc?)をブンブンと飛ばし、口には出さなかったがこちらは恐ろしくってしようがない。交通事故を起こして日本人レスボス島で死亡なんて載った新聞記事が頭をかすめた。
おじさんは古いものが好きらしく私があまり興味のない教会などに連れて行ってくれるのだが、残念ながら今日は日曜日、殆どのそれらの施設は開いていない。彼は非常に残念がった。建物の中にはビザンティン美術の素晴らしいものが沢山入っているようだった。人里離れたずっと山の上にある古い教会にも行ったのだが、そこはとても有名な教会らしくギャラリーには沢山の昔からの書物が陳列されているのがガラス越しに見えた。それらは紙ではなく動物の皮に書かれているのだとのこと。二人の黒い衣装を身にまとった僧侶とおじさんは盛んに話をしていたがギリシア語でこちらにはさっぱり分からず。日曜でギャラリーは見られなかったが、ただ礼拝堂だけは鍵が開いてて中を見られた。図書館本でたまに見るビザンティン画のようなものでぎっしりと埋められていた。
途中でコーラを飲みたいという名目で、おじさんの旧知の友人が経営している店に寄り紹介された。
また何百万年も前の木々が化石になったという「Lesvos Petrified Forest」公園。ここは本当に広い土地のあちこちに木の化石が散乱している。こちらも閉園まで20分だということで入口付近の一部だけを無料で見せてもらい資料だけ買って帰ってきた。
ただ私にとって今日の大きな収穫はレスボス島を島の北側に位置するモリヴォスからずっと南に下り、その間に存るいろんな美しい漁村が見られ、島の概要をつかめたことである。特に島の西南に位置する「シグリ」という町は一目で惚れてしまった。この町に到着するには小高い山の上から降りてくるのだが、初めて見る町全体の幾何学模様─沖にずっと左右に横たわっている島、それにからむように曲線を描く海岸線そして入り込んだ湾、港。そしてたたず むようにマストを降ろして沖に浮かんでいる一艘のヨット。それらはすべて美しい。その側には古い城壁が暗い陰を落とす。
私はすぐ明日ここに来て停泊しようと思っている自分を感じた。
おじさんにはとても感謝する。こうしてレスヴォス島をずっと紹介してくれて。道の途中でガソリン燃料の心配もしたけど何とか無事だった。今日おじさんのオートバイで走破してくれた距離は200km近いだろう。ブンブン飛ばしてその度にヒヤヒヤしたけど。腰も肩も痛くなった。おじさんも疲れた。
モリヴォスに戻って来られたのはもう夜10時に近かった。
でも今日は「シグリ」でおじさんにご馳走した夕食だけで勘弁してね。6日間の宿泊費に心持ちのチップと、それにきっと旅行誌「地球の歩き方」におじさんのホテルをうまく紹介してきっと紙面に載せるようにするから。
「翌日へ」
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